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行政・公共サービスにおけるブロックチェーンの活用方法5選

解説系記事

ブロックチェーンと聞くと、ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)で利用されている技術だとイメージする方が多いのではないでしょうか?

しかし、ブロックチェーンは金融以外にも様々な業界での利用が検討されており、行政や公共サービスもその一つです。

そこでこの記事では、行政・公共サービス×ブロックチェーンにフォーカスして、その活用方法などを詳しく解説していきます。

行政・公共サービスにブロックチェーンを活用するメリットや課題などもご紹介していくので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。

ブロックチェーンを行政・公共サービスに活用するメリット

詳しい活用方法をご紹介する前に、まずはブロックチェーンを行政・公共サービスに利用するメリットを解説していきます。

以下の項目について、それぞれ確認していきましょう。

  • 文書などのデータ改ざんを防止できる
  • データの消失を防げる
  • スマートコントラクトで業務の効率化ができる

文書などのデータ改ざんを防止できる

行政・公共サービスにブロックチェーンを活用するメリットとして、文書などのデータの改ざんを防止できることがあります。

ブロックチェーンはその名前の通り、複数の取引履歴をまとめた「ブロック」と呼ばれるデータを格納する箱を生成し、それらを鎖(チェーン)のように繋げて保管する仕組みです。

また、各ブロックには取引履歴だけでなく、一つ前に生成されたブロックのハッシュ値(ハッシュ関数によって生成される不可逆な文字列)も保管しており、全てのブロックが時系列に繋がるようになっています。

仮に、過去のブロックに保管されたデータを改ざんすると、改ざん前とは全く異なるハッシュ値が生成されます。そのため、後続するブロックとの整合性が取れなくなり、容易に改ざんを検出することが可能です。

データの消失を防げる

ブロックチェーンを活用することで、サーバーからのデータ消失といった問題を防ぐことが可能です。

過去には、自治体向けIaaSの「Jip-Base」でシステム障害が発生し、一部のデータはバックアップが存在しなかったことから、データを復元できないという大きな問題が発生しました。

日本電子計算は2019年12月16日、自治体向けIaaS「Jip-Base」を利用中の自治体でシステム障害が発生している問題について記者会見を開き、山田英司社長が「大変申し訳なく思っている」と謝罪した。同社によると、15%のデータはIaaS内のバックアップも見つからず、単独での復旧が不可能。残りの70%は復旧、15%は復旧作業中であることが明らかとなった。

引用元:「33自治体のデータがIaaSから消失」、日本電子計算がシステム障害の詳細明かす

こういった問題は、データをサーバーなどで一元管理していることが原因であり、単一障害点とも呼ばれています。

しかし、ブロックチェーンは別名「分散型台帳」と呼ばれるように、ネットワークに参加する各ノードがデータを分散管理しています。そのため、もしあるノードに問題が発生したとしてもシステムの運用を続けることが可能であり、データの消失を防ぐことができるでしょう。

スマートコントラクトで業務の効率化ができる

ブロックチェーンを行政に導入するメリットとして、スマートコントラクトによる業務効率化も挙げられます。

スマートコントラクトとは、ある一定の条件下で契約を自動的に行う仕組みです。イメージ的には、お金を入れると自動的にジュースが出てくる自動販売機がちかく、人手を介さずとも様々な手続きや契約を履行できます。

例えば、住民に何かしらの給付金を行う場合、スマートコントラクトを活用することで条件に合致する方に自動で給付手続きを行うといったことも不可能ではないでしょう。

ブロックチェーンを活用することで、これまで人手を介していた手続きを効率化することができ、業務効率を大幅に改善できる可能性があります。

なお、ブロックチェーンについてさらに知識を深めたい方は、ブロックチェーンを理解するための完全ガイド!仕組みや注目される理由を徹底解説の記事もぜひ参考にしてみてください。

行政・公共サービスにおけるブロックチェーンの活用方法5選

ここからは、本記事の本題となる行政・公共サービスにおけるブロックチェーンの活用方法を5つご紹介していきます。

今後、どういった形でブロックチェーンの活用が想定されているのか把握したい方は、詳しく確認していきましょう。

  • 電子投票
  • 文書管理
  • 不動産登記
  • トレーサビリティ
  • 公証

電子投票

行政でのブロックチェーンの活用方法として、まず電子投票での利用が挙げられます。

ブロックチェーンを使った電子投票の場合、従来の紙ベースで投票を行うのではなく、インターネットを利用して投票を行う形となります。また、住民による投票をブロックチェーンに記録するため、結果を改ざんすることはほぼ不可能であり、非常に公平な投票ができると言えるでしょう。

2020年にアメリカで行われた大統領選挙では、投票に不正があったとして大きな問題となりましたが、ブロックチェーンを利用すればそういった疑いは発生しづらいといえます。

加えて、ブロックチェーンで集計した投票結果は第三者によって検証することも可能であるため、透明性という観点でも大きなメリットがあります。他にも投票の開票作業や会場設営、人員の削減ができるため、多くの経費を削減することも可能です。

しかし、インターネットでの投票を行うためには、投票する住民の本人確認を確実に行う別のシステムを必要とすることを踏まえておきましょう。

文書管理

文書管理という面でも、ブロックチェーンは行政・公共サービスの業務で大きな役割を果たすと考えられています。

現在、日本政府としては公文書の電子化を推進しているものの、まだ多くの自治体では文書を紙ベースで保管しています。仮に書類の内容が改ざんされていた場合、紙ベースだとそれらを見抜くことはかなり困難だと言えるでしょう。

また、書類を電子データとして保管していたとしても、全ての改ざんを検知するのは難しく、不正が行われていても気がつかない可能性があります。

そういった課題を解決できる可能性を有する技術がブロックチェーンです。作成した文書を前述のハッシュ値化し、チェーンの次のブロックに記録するという活用方法が検討されています。文書をハッシュ値にして保管すれば、少しでも改ざんが行われていた場合に異なるハッシュ値が返されるため、容易に不正を検知することが可能です。

ただし、ブロックチェーンに記録する前の文書の改ざん・不正は検知できません。そのため、記録前まで文書の真正性をチェックするスキームがしっかり構築されている必要があります。

不動産登記

土地・建物の所有者や面積、所在地などを正確に記録している不動産登記に関しても、ブロックチェーンのテクノロジーが役立つと考えられています。

前述の通り、ブロックチェーンはデータの改ざんに対して強い特徴を持つため、各種不動産登記情報をハッシュ値化して保管すれば、不正があった場合でもすぐに検知することが可能です。また、不動産の登記手続きは現在でも紙ベースで行われており、多くの事務作業・手間が発生している状況です。

その点、ブロックチェーンはマイナンバーカードの電子署名を使用した本人確認手続きと相性がよいとされるため、所有権移転などの申請から、行政側による申請内容の確認・登記までオンライン上でシームレスに行うことができるると期待されています。

他にもブロックチェーンを活用するメリットとして、法務局のデータベースにアクセスすることなく、簡単に登記情報を閲覧できるシステムを構築できるとされています。

ただし、登記情報をブロックチェーンで管理するためには、外部の本人確認システムの構築や、申請された登記内容にミスがないかをチェックできる体制を整えていく必要があるでしょう。

トレーサビリティ

農林水産物のトレーサビリティという観点でも、ブロックチェーンの活用が検討されています。

現状、販売されている野菜や魚介類などには産地が明記されているものの、購入者が本当にその地域で採れたものか判断するのは非常に難しいです。

しかし、ブロックチェーンに農林水産物の生産履歴を記録することで、そのトレーサビリティを第三者が検証できるようになります。また、一度記録したデータの改ざんはできないため、近年大きな問題となっている産地偽装を防止することができるでしょう。

想定される利用方法としては、ユーザーが生産物を購入する前にスマホでQRコードを読み取り、商品が生産された過程を確認できるようなシステムの開発が考えられます。

実際、2019年には宮崎県綾町でブロックチェーンにワインの生産過程を記録し、QRコードでその履歴を確認できるようにする実証実験が行われました。

生産物のトレーサビリティにブロックチェーンを活用することで、地域のブランド力の向上に寄与する可能性があると言えるでしょう。

公証

大学などの公共サービスにおいても、ブロックチェーンを活用しようとする動きが出てきています。中でも、卒業証書など書類の真正性を証明するために、ブロックチェーンの技術の利用が検討されています。

現在でも「本当にこの卒業証書が正しいものなのか?」ということを証明するためには、直接大学に問い合わせる以外に方法がありません。しかし、卒業証書のデータをハッシュ値にしてブロックチェーンに記録することで、もし書類に改ざんがあった場合でもすぐに不正を確認することができます。

近年、大学の経営悪化が大きな問題となっており、統廃合が進むことで卒業証書などの真正性を証明するのはさらに難しくなってくるでしょう。

しかし、データ管理にブロックチェーンを導入することで書類の真正性を簡単に検証できるため、経歴詐称などの問題を解決できる可能性があります。

ブロックチェーンを行政・公共サービスに活用する上での課題

最後に、行政・公共サービス×ブロックチェーンの今後の課題を解説していきます。

  • 本格的な実用化までにはまだ時間がかかる
  • 法整備面での課題が多い

本格的な実用化までにはまだ時間がかかる

行政・公共サービスでの活用が期待されているブロックチェーンですが、本格的な実用化までにはまだ時間がかかると考えられます。

実際、日本では行政でブロックチェーンを活用しようとする動きはまだ少なく、実施された実証実験の数もそこまで多くない状況です。

調査対象の自治体数は少ないですが、東京市町村自治調査会の調査によると、業務にブロックチェーンの導入を検討している自治体はほとんど存在していないことがわかります。

画像引用元:基礎自治体におけるブロックチェーン技術の活用に関する調査研究

画像引用元:基礎自治体におけるブロックチェーン技術の活用に関する調査研究

他にも、国家単位でのブロックチェーンの推進という点も関係してくると言えるでしょう。

日本でもWeb3.0を国の成長戦略の一つとしていますが、ドバイでは2018年からブロックチェーン登記制度を開始するなど、国家としてブロックチェーンの活用を推進する動きは他の国より消極的な印象が拭えません。

そういった環境を考えると、本格的に行政・公共サービスにブロックチェーンが導入されるにはまだ時間がかかると考えられます。

法整備面での課題が多い

行政・公共サービスへのブロックチェーン技術の導入までには、法律面でも解決すべき課題が多い状況です。

例えば活用が期待されている不動産登記ですが、現行の「不動産登記法の第十一条」では「登記は、登記官が登記簿に登記事項を記録することによって行う。」と定められています。

今後、ブロックチェーンに不動産登記情報を記録するためには、こういった法律を改正していかなければいけません。

大きな業務改善が期待されているブロックチェーンですが、法整備という面でもまだまだ課題が多いと言えるでしょう。

行政・公共サービスにおけるブロックチェーンの活用方法まとめ

今回は、行政・公共サービスにおけるブロックチェーンの活用方法について解説してきました。

ご紹介したように、ブロックチェーンは行政関連の業務において様々な活用方法が検討されています。特にデータの改ざん・不正防止や、スマートコントラクトによる業務効率の向上などが期待されています。

しかし、日本では行われている実証実験の数はまだ少なく、本格的な導入までには多くの課題を解決しなければいけないことは間違いないでしょう。

GM

gm

2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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