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【2023年度税制改正】NFTや暗号資産への影響を総括!

解説系記事

「暗号資産の利益にかかる税金は雑所得だけど、2023年の税制改正で分離課税になったの?」
「2023年度税制改正の暗号資産への影響を教えて!」

本記事を読むことでこのような疑問が解決します。暗号資産を売買されている人で、株のように暗号資産が分離課税だったら良いのに!と考える人も多いのではないでしょうか。またFXのようにいつかは分離課税になるのでは?と期待している人も多いでしょう。

本記事では、2023年度税制改正の暗号資産関連の概要、改正に至った経緯を紹介。さらにNFTに関する紛らわしい税務上の取り扱いをQ&A形式で詳しく解説します。さらに2023年税制改正を踏まえた今後の展望も徹底解説しますので、暗号資産に関する知識を拡充できます。

税理士監修の本記事が、今後の暗号資産との向き合い方の指針となること間違いありませんので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事の構成

2023年度税制改正(暗号資産関連)の概要

まず結論として、個人として最も関心が高いと思われる分離課税への税制変更に関しては2023年度は見送られました。2023年度の税制改正では、主に法人関連の暗号資産に関する税制が変更されました。具体的には、自己発行した一定の暗号資産は、期末時価評価課税の対象から除外されることになりました。これは、2022年12月23日に閣議決定された令和5年度税制改正の大綱に記載されています。国税庁の「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて(情報)」にも詳細記載していますので、参考にしてください。

具体的には、法人が持つ暗号資産のうち、以下の要件を満たすものは期末時価評価課税の対象から除外されます。

  • 自己が発行し、その発行の時から継続して保有しているもの。
  • その暗号資産の発行の時から継続して、他の者に移転することができないようにする技術的措置がとられているもの、または一定の要件を満たす信託財産としているもの。

また、自己が発行した暗号資産については、その取得価額を発行に要した費用の額となります。暗号資産交換業者以外の者から借り入れた暗号資産を譲渡した場合には、同じ種類の暗号資産を買い戻さないと、その損益相当額を計上します。

今回の改正は、法人にとっては暗号資産に対する税制上の不確定性を軽減し、税負担が軽減されるだけでなく、取引を円滑に進めるための一助となるものとして期待されています。しかし、暗号資産市場の変動は激しく、今後も税制上の見直しが必要とされることが予想されるでしょう。

2023年度税制改正(暗号資産関連)の経緯

自己発行した一定の暗号資産は、期末時価評価課税の対象から除外されたのはなぜでしょうか。かんたんに説明すると、「内国法人が所有する暗号資産について、税金の問題がある」と考えられているからです。内国法人とは、「日本国内に本店や主たる事務所を有する法人」、つまり国内で設立された企業のこと。このような企業が所有する暗号資産について、期末になるとその時の市場価値で評価されます。そして、その評価損益には税金がかかるのです。

しかし、こうした取り扱いは、小さな企業が所有する暗号資産についても同じように課税されるため、経営が厳しくなってしまう場合があります。そのため、ブロックチェーン関連の企業が日本国内で起業や事業開発をすることが難しくなり、海外に流出することが増えているといった状況が問題視されているのです。

上記前提を踏まえ、2023年度税制改正(暗号資産関連)の経緯を2022年に議論された内容を踏まえ確認してみましょう。

・1月には、自由民主党デジタル社会推進本部にNFT政策検討プロジェクトチームが設置され、web3やNFTについて議論が行われました。そして、3月には「NFTホワイトペーパー(案)」が公表され、暗号資産やNFTに関する規制や税制についての問題点が指摘されました。

・6月には、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(通称:骨太方針)が閣議決定され、ブロックチェーンやNFTについての記述や暗号資産審査基準の緩和などが記載されました。また、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)や日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、年初からの税制改正要望についての議論を経て、8月に金融庁・経済産業省に対して要望を提出しました。これに対して、金融庁や経済産業省から財務省(主税局)に対して2023年度税制改正要望が提出され、期末時価評価課税の見直しが盛り込まれました。さらに、日本ブロックチェーン協会(JBA)や新経済連盟からも税制改正要望が公表され、日本経済団体連合会や日本商工会議所、経済同友会からも暗号資産税制の見直しに言及されました。

・11月には、第490回企業会計基準委員会での議論により、暗号資産の発行者が自己に割り当てた暗号資産については、第三者との取引が生じるまでは時価では評価されないという議事概要が公表されました。JCBAでは、自由民主党のweb3プロジェクトチームの会合や予算・税制等に関する政策懇談会に出席し、要望内容を説明し意見を述べたほか、日本ブロックチェーン協会や新経済連盟と協力して関係議員に個別に説明しました。また、デジタル社会推進本部web3PTから「web3関連税制に関する緊急提言」が示されました。

以上のように、2022年は税制改正に向けた様々な動きがありました。その中でも特に注目すべきは、暗号資産に関する規制や税制の見直しが多く議論されたことでしょう。自由民主党デジタル社会推進本部に設置されたNFT政策検討プロジェクトチームにおいては、web3やNFTについての議論が精力的に行われ、3月には「NFTホワイトペーパー(案)」が公表されました。その中で、暗号資産やNFTに関する規制や税制についても問題点が指摘されています。また、日本暗号資産ビジネス協会や日本暗号資産取引業協会などの団体からも、税制改正に関する要望が提出されたことは特筆すべき内容です。

そして、年末には与党の税制改正大綱が決定されました。自民党税制調査会での議論を経て、12月16日に令和5年度税制改正大綱が決定され、12月23日に政府において令和5年度税制改正の大綱が閣議決定されたのです。前段の概要部でも述べた通り、暗号資産に係る期末時価評価課税の見直しが盛り込まれたことに加え、暗号資産の発行者が発行時に自己に割り当てた暗号資産についても、第三者との取引が生じるまでは時価評価されないとする議事概要が公表されました。

【Q&A】NFTに関する税務上の取扱いを徹底解説 !

ここまで、2023年度税制改正におけるNFTや暗号資産への影響を説明しましたが、イマイチぴんとこない、という人もいるのではないでしょうか。ここではQ&A形式で具体的にNFTに関する税務上の取扱いを解説します。

具体的には、下記の15つです。

  1. NFTを組成して第三者に譲渡した場合(一次流通)
  2. NFTを組成して知人に贈与した場合(一次流通)
  3. 非居住者がNFTを組成して、日本のマーケットプレイスで譲渡した場合(一次流通)
  4. 購入したNFTを第三者に転売した場合(二次流通)
  5. 第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合
  6. 役務提供の対価として取引先が発行するトークンを取得した場合
  7. 商品の購入の際に購入先が発行するトークンを取得した場合
  8. ブロックチェーンゲームの報酬としてゲーム内通貨を取得した場合【相続税・贈与税関係】
  9. NFTを贈与又は相続により取得した場合【源泉所得税関係】
  10. NFT取引に係る源泉所得税の取扱い【消費税関係】
  11. NFT取引に係る消費税の取扱い①(デジタルアートの制作者)
  12. NFT取引に係る消費税の取扱い②(デジタルアートに係るNFTの転売者)
  13. 財産債務調書への記載の要否
  14. 財産債務調書へのNFTの価額の記載方法
  15. 国外財産調書への記載の要否

順番に徹底解説します。

1. NFTを組成して第三者に譲渡した場合(一次流通)

質問:私はデジタルアートを作って、それに紐づけたNFTをマーケットプレイスで販売しました。買った人はそのデジタルアートを見ることができます。この場合、所得税はどうなりますか?

回答:デジタルアートを制作し、それに紐づけたNFTを譲渡したことによって得た利益は、所得税の課税対象になります。

解説:所得税法では、新たに収入などの形で経済的価値を得た場合、それは所得として課税されます。質問の取引は、「デジタルアートの閲覧に関する権利」の設定に関するもので、この取引から生じた収入は、雑所得(または事業所得)に分類されます。
この場合の雑所得の金額は、以下の式で計算されます。

【式】雑所得の金額 = NFTの譲渡収入 – NFTに係る必要経費

(注1)NFTの譲渡収入をトークンとして受け取った場合、そのトークンの時価が譲渡収入となります。ただし、トークンが暗号資産などの財産的価値を持たない場合は、譲渡したNFTの市場価額をトークンの時価として扱うことができます。
(注2)NFTに係る必要経費とは、譲渡収入を得るために必要な売上原価や販売費用、一般管理費などを指します。ただし、デジタルアートの制作費は含まれません。
(注3)雑所得が赤字(損失)の場合は、他の所得との損益通算はできませんが、雑所得内での損益通算は可能です。

2. NFTを組成して知人に贈与した場合(一次流通)

質問:私はデジタルアートを作り、それに関連したNFTを友人に無料で贈りました。その友人はそのデジタルアートを見ることができます。この場合、所得税の扱いはどうなりますか?

回答:デジタルアートを作り、それに関連したNFTを友人に贈っても、所得税はかかりません。

解説:所得税法では、所得とは新たに経済的価値を受け取ることを指します。今回の場合、友人は新たに経済的価値を受け取っていないため、所得税の課税対象となりません。
(注)ただし、NFTの贈与を受けた場合の贈与税については、問9を参照してください。

参考:法人税の扱い
企業がデジタルアートを制作し、それに関連したNFTを贈与した場合、法人税の課税対象となります。この場合、法人の所得金額の計算において、当該事業年度の益金額に、そのNFTの贈与時の時価を加算する必要があります。
また、その贈与は法人税法上の寄付となるため、寄付金額となるそのNFTの贈与時の時価の一定の金額を超える部分は、法人の所得金額計算において損金として計上されません。

3.非居住者がNFTを組成して、日本のマーケットプレイスで譲渡した場合(一次流通)

質問:私は、アメリカに住んでいる日本人です。最近、デジタルアートを制作し、それを紐づけたNFTを日本のオンラインショップを通じて他人に有償で譲渡しました。これにより、その人はデジタルアートを見ることができます。この場合、所得税はどうなるのでしょうか?

回答:アメリカに住む人が日本のオンラインショップでNFTを売ったとしても、通常、日本の所得税の対象とはなりません。

解説:日本の所得税は、日本に住む人は、世界中で得た所得が対象になりますが、日本に住んでいない人(非居住者)は、日本で発生した所得(国内源泉所得)が対象になります。この取引は、「デジタルアートの閲覧に関する権利」に関する取引であり、この取引から生じた所得は、通常、国内源泉所得に該当せず、所得税の課税対象とはなりません。

4. 購入したNFTを第三者に転売した場合(二次流通)

質問:デジタルアートの作成者からデジタルアートを紐づけたNFTを買って、デジタルアートを見ることができました。最近、マーケットプレイスでそのNFTを有料で第三者に転売しました。これにより、私が持っていた「デジタルアートを閲覧する権利」が、第三者に移行しました。この場合、所得税の扱いを教えてください。

回答:デジタルアートを紐づけたNFTを転売したことで得た利益は、所得税の課税対象となります。

解説:所得税法では、所得とは収入などの形で新たに経済的価値を取得することを意味しています。この質問の場合、新たに経済的価値を収入などの形で得たため、所得税が課税されます。この取引は、「デジタルアートの閲覧権利」を転売することになるので、この取引から得られた所得は、譲渡所得として分類されます。注目すべき点として、そのNFTが在庫資産、あるいは継続的に取引される目的で売買される資産である場合、譲渡所得は事業所得または雑所得として分類されます。この場合の譲渡所得の金額は、次の式で計算されます。

【式】
譲渡所得の金額 = NFTの転売収入 – NFTの取得費用 – NFTの譲渡費用 – 特別控除額

注:NFTの転売収入がトークンなどの暗号資産で受け取られた場合は、そのトークンの時価が転売収入となります。ただし、そのトークンが財産的価値を有する資産と交換できない場合など、時価の算定が困難な場合には、転売したNFTの市場価額(市場価額がない場合には、NFTの取得費用等)をトークンの時価として扱っても問題ありません。
注:NFTの取得費用とは、そのNFTの購入代金と、購入にかかった費用の合計です。
注:NFTの譲渡費用とは、転売にかかった費用のことです。

5. 第三者の不正アクセスにより購入したNFTが消失した場合

質問:私はデジタルアートの制作者からNFTを購入し、そのデジタルアートを見ることができましたが、第三者の不正アクセスによりNFTが消失しました。この場合、所得税の取り扱いについて教えてください。

回答:第三者の不正アクセスによって購入したNFTが消失した場合、次のように所得税の取り扱いがあります。

  • NFTが生活に通常必要でない資産や事業用資産でなく、かつ、その消失が盗難に該当する場合、雑損控除の対象となります。
  • NFTが事業用資産である場合、その損失は事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入することができます。

解説:雑損控除は、所得税法上、災害や盗難、横領によって資産(ただし、生活に通常必要な資産や棚卸資産は除く)に損失が生じた場合、その損失を雑損控除の対象とします。したがって、第三者の不正アクセスが盗難に該当し、かつ、NFTが生活に通常必要でない資産や事業用資産でない場合、その消失に伴う損失は、雑損控除の対象となります。必要経費とは、所得税法上、事業用資産等の損失について、その損失額を事業所得又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入できることをいいます。NFTが事業用資産である場合、その消失に伴う損失は必要経費として算入できます。

6. 役務提供の対価として取引先が発行するトークンを取得した場合

質問:私は、取引先の法人から発行されたトークンを対価として受け取りました。このトークンは、取引先の商品を購入する際に利用できます。この場合、所得税の扱いについて教えてください。

回答:役務提供の対価として、取引先の法人から発行されたトークンを受け取った場合、それは所得として課税されます。

解説:所得税法においては、所得とは新たに取得した経済的な価値を指します。今回の場合、トークンを受け取ることで新たに経済的な価値を得たため、所得税の対象となります。役務提供による所得区分は、請負契約や雇用契約などによって異なります。

役務提供の対価に係る所得区分は、次の2通りです。

  1. 請負契約その他これに類する契約の場合: 事業所得又は雑所得に区分
  2. 雇用契約その他これに類する契約の場合: 給与所得に区分

また、トークンの価値は時価に基づいて評価されますが、トークンが暗号資産などの財産的価値を持たない場合は、契約に従って決められた価値を利用することもできます。

7. 商品の購入の際に購入先が発行するトークンを取得した場合

質問:私は、商品を購入する際に、販売先の法人が発行するトークンを無料で手に入れました。このトークンは、購入先の商品を購入する際に使用できます。この場合、所得税の扱いを教えてください。

回答:商品を購入する際に無料で取得したトークンによる経済的利益は、所得税の課税対象となります。

解説:所得税法では、新たに収入等の形で経済的価値を取得した場合に所得とみなされます。この問題では、商品を購入するためにトークンを無料で手に入れたことが経済的利益として扱われます。また、トークンを無料で入手した場合は、法人からの贈与とみなされ、一時所得に区分されます。トークンの時価は、暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できないなどの理由により、算定が困難であれば0円として扱うことができます。

8. ブロックチェーンゲームの報酬としてゲーム内通貨を取得した場合【相続税・贈与税関係】

質問:私はブロックチェーンゲームで報酬としてゲーム内通貨(トークン)を受け取りました。この場合、所得税の扱いはどうなるでしょうか?

回答:原則として、ブロックチェーンゲームで得た報酬は所得税の課税対象となります。

解説:収入等の形で新たに経済的価値を取得したと認められることから、所得税の課税対象となります。ただし、ゲーム内通貨(トークン)がゲーム内でしか使用できない場合には、所得税はかかりません。ブロックチェーンゲームの報酬は雑所得に区分され、雑所得の金額は、以下の算式で計算されます。

雑所得の金額=ブロックチェーンゲームの収入金額-ブロックチェーンゲームの必要経費

ブロックチェーンゲームの収入金額は、ゲーム内通貨(トークン)の総額となります。ゲーム内通貨(トークン)の評価は、取得の都度行われます。ただし、ゲーム内通貨(トークン)ベースで増減額を管理し、月末又は年末に一括で評価することもできます。ゲーム内通貨(トークン)の時価の算定が困難な場合には、時価を0円として差し支えありません。ブロックチェーンゲームの必要経費は、ブロックチェーンゲームの報酬を得るために使用したゲーム内通貨(トークン)の取得価額の総額となります。簡便法で雑所得の金額を計算する場合は、その年の12月31日に所有するゲーム内通貨(トークン)の総額から、その年に使用したゲーム内通貨(トークン)の取得価額を引いた金額が雑所得となります。

9. NFTを贈与又は相続により取得した場合【源泉所得税関係】

質問:NFTを贈与または相続によって取得した場合、贈与税または相続税の扱いについて教えてください。

回答:個人から経済的価値のあるNFTを贈与、相続、または遺贈によって取得した場合は、その内容、性質、取引実態などを考慮して、その価額を個別に評価し、贈与税または相続税が課せられます。

解説:相続税法によると、個人が金銭に換算できる経済的価値のある財産を贈与、相続、または遺贈によって取得した場合は、贈与税または相続税の課税対象になります。ただし、NFTの評価方法については、評価通達に定めがないため、評価通達5に基づき、評価通達に定める評価方法に従って評価することになります。例えば、評価通達135に準じて、NFTの内容、性質、取引実態などを考慮し、売買実例価格や専門家の意見価格などを参考にして評価します。また、市場取引価格が存在するNFTについては、課税時期における市場取引価格によって評価することができます。

10. NFT取引に係る源泉所得税の取扱い【消費税関係】

質問: 給与所得者(日本で事業等の業務を行っておらず、給与の支払もしていない個人)が、マーケットプレイスを介して、デジタルアートの制作者からNFTに関連するデジタルアートを購入し、購入代金を支払いました。私は、制作者から著作権を譲渡されておらず、デジタルアートをSNSアイコンとして使用することに関する著作権法第21条の複製権および同法第23条の公衆送信権を含む利用許諾を受けました。この場合、私は、著作権使用料として、源泉徴収する必要がありますか。

(注)マーケットプレイスの利用規約により、デジタルアートの著作権は制作者に帰属することになっており、著作権の利用許諾は制作者によってのみ行われます。また、SNSアイコンへの使用対価は購入代金の内訳に含まれていません。

回答:所得税を源泉徴収する必要はありません。

解説:居住者が国内で著作権使用料を支払う場合、所得税が源泉徴収されます。ただし、給与所得者(日本で事業等の業務を行っておらず、給与の支払もしていない個人)が支払う場合は、源泉徴収は不要です。また、非居住者や外国法人が国内で業務に関連する著作権使用料や著作権譲渡対価を支払う場合、通常は源泉徴収が必要ですが、租税条約によっては必要ない場合もあります。

NFTを購入してデジタルアートをSNSのアイコンに使用する場合、複製権や公衆送信権などの利用許諾に対する対価は著作権使用料に該当し、通常は所得税が源泉徴収されます。ただし、質問の場合、購入代金を支払ったのは給与所得者(日本で事業等の業務を行っておらず、給与の支払もしていない個人)であるため、著作権使用料として源泉徴収する必要はありません。

注釈として、NFTの購入代金を給与所得者以外が支払う場合でも、デジタルアートをSNSのアイコンに使用する対価が購入代金内で区分されていない場合、その対価を特定することが困難である場合や、使用許諾の範囲が限定的でその対価が極めて少額である場合は、著作権使用料として源泉徴収する必要はないとされています。

11. NFT取引に係る消費税の取扱い①(デジタルアートの制作者)

質問:私はデジタルアート(著作物)の制作を行っている個人事業者ですが、制作したデジタルアートを紐づけたNFTをマーケットプレイスを通じて日本の消費者に有償で譲渡しました。これにより、私はNFTの譲渡を受けた日本の消費者に対して、当該デジタルアートの利用を許諾することとなります。この場合の消費税の取扱いを教えて下さい。

回答:取引はデジタルアートの制作者による電気通信利用役務の提供となります。したがって、消費税はデジタルアートの制作者に課されます。

解説:質問者は個人事業者としてデジタルアートを制作し、それを日本の消費者に有料で譲渡するためにNFTを使用しました。この取引により、消費者はデジタルアートを使用する権利を得ます。質問者はこの取引において電気通信利用役務を提供しており、そのために消費税が課せられます。

消費税法では、事業者が事業として対価を得て行う「資産の譲渡」、資産の貸し出し、および「役務の提供」に対して消費税が課せられます。この取引は事業者が対価を得て、電気通信回線を介して著作物の利用を許可する取引であり、「電気通信利用役務の提供」として課税されます。

また、役務提供が国内で行われたかどうかの判断は、利用者の住所が国内かどうかによって決定されます。このため、この取引は国内で行われたものとみなされ、質問者に消費税が課せられます。

なお、この取引において取引相手は日本の消費者であり、相手が事業者であるとは限らないため、質問者が海外事業者であっても、「事業者向け電気通信利用役務の提供」には該当せず、リバースチャージ方式の対象にはなりません。また、利用者が国外にいる場合は消費税の対象外となります。

12. NFT取引に係る消費税の取扱い②(デジタルアートに係るNFTの転売者)

質問:マーケットプレイスを通じてデジタルアートの制作者から、著作物が紐づけられたNFTを購入し、同じマーケットプレイスを通じて有償で他者に譲渡しました。取引は当初、質問者が当該デジタルアートの利用許諾を受けたことに由来し、NFTの譲渡により質問者は当該利用許諾に係る権利を他者に譲渡しました。ただし、マーケットプレイスの利用規約では、当該デジタルアートに係る著作権は制作者に帰属し、著作物自体の利用の許諾は制作者のみが行うことができること、NFTの譲渡により著作物の利用権のみが移転することになっています。この場合、消費税の取扱いについて教えてください。

回答:国内の事業者が事業として対価を得て行うものであれば、当該国内の事業者に消費税が課されます。

解説: この取引は、当初、当該デジタルアートの利用の許諾を受けた質問者が、当該利用の許諾に係る権利(著作権法第63条第3項の利用権)を他者に譲渡するものであり、国内の事業者が対価を得て行う場合には、当該国内の事業者に消費税が課されます。なお、マーケットプレイスでの利用規約において、当該デジタルアートに係る著作権は制作者に帰属し、著作物自体の利用の許諾は制作者のみが行うことができること、NFTの譲渡により著作物の利用権のみが移転することが明示されています。このため、質問者が著作権自体を譲渡するものではなく、また、著作権の利用許諾を行うものでもないと判断されます。なお、譲渡される資産の所在場所が明らかでないため、本取引が国内で行われたものかどうかの判定(内外判定)は、譲渡を行う者の当該譲渡に係る事務所等の所在地が国内かどうかで行われます。

13. 財産債務調書への記載の要否

質問:私は国内外のマーケットプレイスで購入したNFTを保有しています。これらのNFTは財産債務調書に記載する必要があるでしょうか。

回答:もし保有しているNFTが、12月31日時点で暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、財産債務調書に記載する必要があります。

解説:財産債務調書には、NFTの種類別(アート、音楽、スポーツ、ゲーム等)、用途別及び所在別に記載してください。ただし、財産債務調書合計表においては、「財産の区分」欄の中の「その他の財産(上記以外)」欄に記載します。NFTの所在については、国外送金等調書規則第12条第3項第6号及び第15条第2項の規定により、その財産を有する方の住所(住所を有しない方にあっては、居所)の所在となります。NFTを購入したマーケットプレイスの所在が国内か国外かにかかわらず、財産債務調書に記載する必要があります。

14. 財産債務調書へのNFTの価額の記載方法

質問:NFTの価格をどうやって記載すればいいですか?

回答:NFTの価格は、財産債務調書に記載する場合、その年の12月31日時点での「時価」または「見積価額」を使用して記載する必要があります。

解説:財産債務調書に載せる財産の価格は、その年の12月31日時点での「時価」またはそれに準じる「見積価額」によって算出することになっています。NFTに関しては、その年の12月31日時点での市場取引価格が存在する場合、その価格を使用することもできます。ただし、市場取引価格が存在しない場合、以下の方法で見積価額を算出することができます。

  1. その年の12月31日時点での売買実例価格のうち、適正と認められるもの。
  2. 売買実例価格がない場合、その年の翌年1月1日から財産債務調書提出期限までにNFTを譲渡した場合の譲渡価格。
  3. 上記の方法で算出できない場合は、取得価格を使用します。

15. 国外財産調書への記載の要否

質問:国外のマーケットプレイスで購入したNFTを持っています。このNFTは国外財産調書に記載する必要がありますか?

回答:いいえ、国外財産調書には記載する必要はありません。

解説:NFTは「国外にある財産」とはみなされませんので、国外財産調書には記載する必要はありません。財産債務調書に記載する必要があります。詳しくは質問13を参照してください。なお、国外送金等調書規則第12条第3項第6号の規定により、財産を有する者の住所(住所を有しない場合には、居所)の所在によって、「国外にある」と判定されます。また、国外財産調書は、居住者が提出することとされています。

今後の展望【今後の暗号資産の税制はどう変わる?】

まず、2023年度税制改正については、法律案の内容はまだ明らかになっていませんが、国会に法律案が提出され、3月末には下位法令も公布される予定です。下位法令は法律よりも具体的な実務に影響する部分が多く定められるため、業界として税制当局に対して具体的な情報の提供を行っていく必要があります。

次に、2024年度税制改正以降に向けた要望として、以下の2つが挙げらます。

  1. 発行者以外の法人が保有する暗号資産の期末時価評価課税について、短期売買目的でないものは対象から除くこと
  2. 個人が保有する暗号資産に対する課税については、暗号資産の取引により生じた損益は20%の税率による申告分離課税の対象とし、暗号資産にかかる損失の所得金額からの繰越控除できるようにすること

上記2点は、2022年12月に自民党デジタル社会推進本部web3PTにより公表された「web3政策に関する緊急提言」でも提言されています。特に2の分離課税の導入は、個人投資家にとっても注目の的となるポイントです。現在、暗号資産投資による利益には総合課税が課せられ、最大55%の税率がかかります。しかし、申告分離課税が適用されれば、一定税率で20%まで税率が引き下げられます。これによって、暗号資産取引に参入するハードルが下がり、利用者の増加が期待できます。

また、税制改正によって3年間の繰越控除が導入されることが求められています。これにより、赤字を3年間にわたって繰り越せるようになり、税負担の軽減が可能になります。ほかの金融商品で得た利益と損失の相殺もできるようになり、他の投資対象より税制面で不利な現状が大きく変わることになります。

さらに、税申告がしやすい制度に変更されることで、正しく申告する人が増えることが期待されます。現在、暗号資産の税制にはさまざまな問題点があり、利用者が積極的に申告することが難しい状況にあります。しかし、税率が一律であり、前年度の損失繰越ができない、他の金融商品の税制度に比べて公平性が保たれていない、海外の税制度に比べて後れをとっているなどの問題が改善されれば、確定申告を適正かつ積極的に実施する人が増加する可能性があります。そして、課税を避けるためにやむを得ず暗号資産を長期保有している人が、活発な取引を再開するきっかけになるかもしれません。

最後に、日本においても2024年度税制改正において「Crypto Asset Reporting Framework(暗号資産に係る報告枠組み)」が制定されると考えられており、各国の税務当局が自国の暗号資産取引業者に非居住者の暗号資産取引に係る情報を報告させ、その情報を非居住者が居住する国の税務当局に提供するという国際的な税務情報の交換の仕組みが導入される予定です。暗号資産業界もこの取り組みに協力し、適切な税金を納付することが求められます。

暗号資産取引で節税できる?【税金の払い過ぎに注意!】

暗号資産で利益を得た場合、所得金額に応じた税率がかかります。所得税と住民税の負担はかなり大きくなるので、節税意識をもって対策することが重要です。本章では、2023年度税制改正で暗号資産は分離課税に変更されなかったことに伴い、どのように税に対して取り組むべきかという視点を踏まえ、暗号資産の節税方法について紹介します。

まずは、法人化することです。法人になることで、暗号資産にかかる経費を計上することができます。また、年間20万円以上の利益を確定しないこともポイントです。さらに、利確しないでガチホし続けることも1つの節税方法です。重い課税を避けるため、利確をせずにガチホを続けることで、税金を支払う金額を減らすことができます。ただし、ガチホをする場合は倒産やハッキングなどのリスクを減らせる大手取引所が向いています。

最後に、節税の正しい知識を身につけ、できるだけ損をしないように暗号資産を運用しましょう。暗号資産の節税対策には、いろいろな方法がありますが、適切な方法を選ぶことで、税金を払いすぎることを回避し、節税効果を高めることができます。

まとめ

本記事では、2023年度税制改正の暗号資産関連の概要、改正に至った経緯を紹介しました。さらにNFTに関する紛らわしい税務上の取り扱いをQ&A形式で詳しく解説したので、より身近かつ具体的にイメージできたのではないでしょうか。

暗号資産を持っている人も、今後暗号資産の購入を検討されている人も、現状の税制度や今後の動向をしっかりと理解した上で、取引することをおすすめします。

Masa

masa

保険や投資などの金融分野、Web3.0、メタバース、暗号資産、NFT、DeFi、DAO、保険、投資などの分野に精通しています。株や暗号資産取引の豊富な経験に加え、保険業界でのITコンサルの勤務経験、AFP(ファイナンシャルプランナー2級)の資格も保有。知識や業務経験を元に信憑性のある記事を執筆する。
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