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NFTのロイヤリティ収入以外で、事業者はどうやってマネタイズする?現状の課題と今後について解説

解説系記事

NFTプロジェクトを収益化する上で欠かせない要素だったのがクリエイター報酬(ロイヤリティ)です。それが、今後無くなっていく方向に動いています。

現在、ロイヤリティは無くなっていく方向に向かっているため、運営者は新たな収益化の手法を模索する必要があります。

そのようななか、NFTプロジェクトの運営者は今後、いかにして収益を上げていけばよいのでしょうか。本記事では、運営者がNFTプロジェクトを収益化するための具体的な施策例を提示します。

NFTロイヤリティをめぐる論争

NFTのロイヤリティは、売却価格の一部が自動的に発行主に還元される仕組みを指します。これまでのデジタルアートと異なり、二次流通における売却益の一部が発行主に入るロイヤリティは、NFTならではの収益方法として注目されてきました。

しかし2022年後半から、ロイヤリティをめぐって大きな変化が起きています。以下、NFTのロイヤリティをめぐる変化について、時系列でまとめます。

Sudoswapの登場

2022年7月にローンチした分散型NFTマーケットプレイス「Sudoswap(スドスワップ)」pは、ロイヤリティを廃止し、プラットフォーム手数料も当時で業界最安値となる0.5%に設定しました。これがロイヤリティ論争の発端とされています。

Sudoswapは、ローンチ初月の取引量が13億円(当時レートで1千万ドル)を達成、2022年8月第3週には週次取引高の市場シェア率が5.6%を記録するなど、一躍、有名NFTマーケットプレイスとなりました。

ロイヤリティの任意支払い、インセンティブ配布が普及

翌月の2022年8月下旬には、大手NFTマーケットプレイス「X2Y2」が「ロイヤリティをすべて購入者の任意とし、チップ制にする」と発表し、NFTの購入者にロイヤリティの支払い有無を選択させる「フレキシブルロイヤリティ(Flexible Royalty)」という仕組みを導入しました。

これにより、ほとんどのケースでロイヤリティ支払いが拒否される事態となりました。通常、ロイヤリティは売り手の売却益から差し引かれますが、ロイヤリティ支払いを拒否することで、ユーザーはより多くの売却益を手にすることができるようになりました。そのいっぽうで、作成者はロイヤリティを売却益から受け取ることができなくなったのです。

さらにX2Y2は、取引インセンティブとして、取引量の多いトレーダーへ独自トークン「X2Y2」をエアドロップする計画を発表しました。これによりX2Y2を利用するユーザーは急増し、一時期ではありますが、NFT市場の総取引高に占めるマーケットシェアが10%を超えるなど、大きな影響力を持っていました。
X2Y2が先駆けとなったロイヤリティの任意支払い制は、その後LooksRare(ルックスレア)MagicEden(マジックエデン)といった競合マーケットプレイスも続々と採用し、いずれにおいても購入者側がロイヤリティ支払いを拒否するケースが急増していきました。

新興NFTマーケットプレイスBlurの台頭

新興NFTマーケットプレイス「Blur(ブラー)」は2022年10月にローンチを迎えて以来、ロイヤリティゼロを強みとし、NFTを大量に売買するプロトレーダーたちを中心にマーケットシェアを伸ばしました(23年1月2日からロイヤリティ0.5%に引き上げを決定)。

さらに2022年12月、Blurは独自トークン「BLUR」の大型エアドロップ計画を発表しました。取引量の多寡に応じてBLURトークンがエアドロップされることが発表されたため、より多くのエアドロップ報酬を狙って転売行為を行うトレーダーが急増しました。

業界最大手のOpenSeaの対応

これまで業界最大手の地位を守ってきたOpenSea(オープンシー)は、競合マーケットプレイスの台頭により市場シェアを奪われていきました。

2022年11月時点では明確にクリエイターファーストの姿勢を示し、ロイヤリティを強制する新コントラクト「Operator Filter Registry」を発表するなど、OpenSeaは「ロイヤリティ最大10%」という既存の仕組みを死守してきました。

しかしBlur人気によるマーケットシェアの減少を避けられなかったOpenSeaは、2023年2月18日、ロイヤリティの料金体系について大幅な方針転換を発表しました。

具体的には、OpenSeaが22年11月に提供を開始した新コントラクト「Operator Filter Registry」を使用しないプロジェクト(22年11月以前にリリースされたすべてのプロジェクトが該当)のロイヤリティが最低0.5%の任意支払い制に強制移行。

これにより、最大10%のロイヤリティを設定していたNFTプロジェクトの場合ですと、ロイヤリティ収入は0.5%へ激減し、実質20分の1となりました。

また、ロイヤリティを強制する新コントラクト「Operator Filter Registry」を実装した最近のNFTプロジェクトについても、既存の「ロイヤリティ最大10%」という既存の仕組みがこのまま維持されるのか、不透明な状況となっています。

問題提起

現在、BlurのマーケットシェアはNFT市場全体の取引高のうち約8割を占め、Blurの一強状態はしばらく続く見込みです。Blurは独自トークン「BLUR」の大型エアドロップ第2弾の計画を発表し、引き続きエアドロップ報酬狙いのトレーダーによる取引が、活発に行われているためです。

「BLUR」トークンの大型エアドロップは、もらえるトークン報酬が高額であったため、多くのトレーダーが参入しました。トレーダーたちは約定がよりスムーズになるように、低価格での出品を繰り返し、多くのNFTプロジェクトではフロア価格が下落しました。

さらに、一部ホルダーが低価格での出品増加に不安を覚え、狼狽売りをするという悪循環も発生していました。
こうした悪循環は、NFTの発行主やホルダーにとって不利益なものであり、BLURトークンのエアドロップをもらえるトレーダーだけが得をする状態となりました。フロア価格の下落はコレクション時価総額の縮小につながるため、運営者としては避けたい事象なのです。

今回のロイヤリティをめぐる市場の変化で明らかとなったのは、NFTマーケットプレイスのロイヤリティ収入に期待することが、そもそも他者のプラットフォームで稼ぐという状況であり、不安定そのものであったということです。

さらにフロア価格の下落を招くような短期的な売買を大量に繰り返すトレーダーの影響を抑えるため、NFTプロジェクトの運営者は「誰にNFTを売るのか」というフィルタリングを初期段階から行う必要性があることも明らかとなりました。

NFT市場の人口は微増傾向にありますが、大量の新規ユーザー参入もすぐには見込めない状況です。では、NFTプロジェクトをこの状況下でローンチし収益化するには、どういった戦略が必要となるのでしょうか?

既存プラットフォームに依存しないNFT事業戦略

既存プラットフォームのロイヤリティに依存しないNFTのマーケティング戦略について提案をする前に、購入者、発行主、運営者のそれぞれの立場から、ロイヤリティについてどのような理解を持つことが望ましいのか、整理します。

購入者の立場から考えると、ロイヤリティとはNFTの売却益から差し引かれる手数料となります。しかしその手数料は、NFTの発行主であるアーティストの収入となり、活動支援になることをよく理解する必要があります。

NFT発行主の立場から考えると、OpenSeaをはじめとした既存プラットフォームでは今後、ロイヤリティ収入を期待することは難しいと思われます。

よって運営者は、購入者が使ってくれるような、かつロイヤリティを設定した自社プラットフォームを用意するなど、継続的なビジネスモデルを構築することが求められます。

以上のように、ロイヤリティに関しては各ステークホルダーが損得のバランスを取り、お互いの立場を理解したうえで支持し合えるビジネスモデルを構築することが必要となります。

自社独自のNFTプラットフォームを構築

前述した通り、まず自社独自のNFTプラットフォームを構築し、そこでロイヤリティを徴収することが有効な施策となりえます。

ただし自社独自のNFTプラットフォームを構築する場合は、利用するユーザーに対し何らかのインセンティブを付与するなど、ユーザーが使いたくなると思える設計が必要不可欠となります。

プロジェクト内でNFTを追加リリース

次に、プロジェクト内でNFTを追加リリースすることも有効な施策となりえます。プロジェクトからローンチする派生的なNFTを、プロジェクト独自のNFTプラットフォームの利用頻度に応じてエアドロップする、あるいは利用したユーザーのなかから抽選で毎月数名にエアドロップする、といった設計にするとユーザー離れを防げる可能性が高いと思われます。

しかし一方で、次々と新しいNFTが登場するとユーザーが混乱し、本家となるNFTコレクションの価値を毀損しうるというデメリットもあります。

解決策として、例えば国内NFTコレクション「LLAC」のように、一定量のNFTを運営側で保有し、必要に応じて市場に出して資金調達をする、という方法が有効となることでしょう。

その場合、コレクションの価値が下落しないよう、需要と供給のバランスを見極めて市場に出す枚数を調節することが必要不可欠となります。

コンテンツビジネスを充実

アニメ化やゲーム化といったコンテンツビジネスを充実させる、という施策も有効となります。

例えば帝国データバンクが2022年8月に公開した最新版の「アニメ制作業界」動向調査によると、アニメ制作市場は新型コロナウイルス感染症が流行する以前の2019年まで、右肩上がりの成長をしていました。

調査によると、コロナ禍の影響により2020年から2021年にかけて、市場規模は大きく減少しましたが、世界経済がコロナ禍から回復するにつれ、アニメ制作市場も回復するだろうと予測しています。

アニメ化やゲーム化といったコンテンツビジネスには大きな初期投資が必要となるというリスクがありますが、成功すれば安定した現金収入を得ることができます。
また、地方自治体と提携してふるさと納税の返礼品としてNFTを発行するなど、プロジェクトのブランド力があれば、様々な方法で収益化を狙うことが可能となります。

NFT以外の事業を充実

最後に、NFT以外の事業を充実させるという施策も長期的にNFTプロジェクトを運営していくうえで有効な施策となります。この点について、前述した国内NFTコレクション「LLAC」の事業戦略が好例となります。

LLACはファウンダーの村上周平氏が21年に開始したオンラインスクール「フリーランスの学校」が運営母体で、もともと「フリーランスの学校」単体で安定した収益を上げていました。さらにLLACはローンチ前からNFTの啓蒙活動とLLACのブランディング向上を目的としたセミナー事業や、LLACのグッズを制作・販売するEC事業も展開し、成功を収めていました。

LLACのように、NFTとシナジーのある他事業を充実させることで、NFT市場の変動に左右されない、より長期的な事業展開が可能となります。

NFTプロジェクト収益化に関する今後の展望まとめ

本記事では、これまでNFTプロジェクトを収益化する上で欠かせない要素だったロイヤリティが無くなる方向に向かっている今、運営者が収益化するために必要な施策について、具体例を提示してきました。

  • 自社独自のNFTプラットフォームを構築する
  • プロジェクト内でNFTを追加リリースする
  • コンテンツビジネスを充実させる
  • NFT以外の事業を充実させる

NFT業界は、既存NFTプラットフォームの方針変更や相場の乱高下といった、運営者がコントロールできない外部要因による影響を受けることが多々あります。そのためNFTを発行して既存プラットフォームのロイヤリティに期待するだけではない、多角的な収益方法を設計し、実行することが重要となります。

AMEHARE

AMEHARE

ITの最新トレンドを発信しはじめて十余年。Web2から3の時代の変革もいち早く察知し、2012年ごろから仮想通貨に注目をし始める。次世代の文化やテクノロジーを情報を掴みつつ、NFT・メタバース・DAOなどの領域であらゆる情報を発信中。
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