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2023年3月に行われるイーサリアムのアップデート「シャンハイ」とは?

解説系記事

イーサリアムは、今年3月にアップデートを予定しています。アップデートは暗号資産(仮想通貨)の将来に影響を与える大きなイベントであり、イーサリアムホルダーの注目を集めています。

本記事では、アップデート「シャンハイ」の概要と具体的な変更点、今後のイーサリアムの展望などをまとめました。現在イーサリアムを持っている人、これから投資を考えている人には特におすすめなので、ぜひチェックしてみてください。

イーサリアムのアップデート「シャンハイ」の概要

イーサリアムでは、アップデートを頻繁に行っています。有名なアップデートには2022年に実施された「マージ(Merge)」や、2023年中に予定する「サージ(Surge)」がありますが、今回の「シャンハイ」はこの2つよりは規模が小さいものです。

シャンハイは、次の大規模アップデートサージの前段階として行われます。つまり、大規模アップデートのための中規模アップデートの位置付けと考えていいでしょう。今回のアップデートでは、ステーキングされたイーサリアムが引き出し可能になり、ガス代の一部が削減される予定です。

今まで行われてきた中規模以下のアップデートは、一部の人のみが把握していることで、大きく話題になることはありませんでした。しかし、シャンハイではステーキングしているイーサリアムの引き出しができるようになることで、市場でさまざまな変化があると予想されています。

イーサリアムの運営は、シャンハイを2023年3月中に実施することを発表していますが、具体的な日付までは公表していません。2月には、シャンハイのテストネット上でいくつかのバグが発見されたことで、やや遅れが出ていると予想できます。

本日3月14日時点で完了していないことから、3月下旬頃に行われると考えられます。

次からは、シャンハイの具体的な変更点を見ていきましょう。

参考記事:イーサリアムの「マージ(Merge)」とは?アップデート内容や価格への影響を解説

h2:「シャンハイ」での変更点

イーサリアムの運営は、シャンハイの具体的な変更点について以下のように説明しています。

  • EIP-3651:開発者が使うソフトウェア「COINBASE」アドレスに低いガス代でアクセス可能に
  • EIP-3855:開発者のガス代を下げるコード「Push0」を作成
  • EIP-3860:スマートコントラクトの開発者が使うコード「initcode」と開発者向けのガス代に上限を設定
  • EIP-4895:ステーキングの出金機能を導入
  • EIP-6049:コード「SELFDESTRUCT」を開発者に通知する仕組み

簡単に言い換えると、以下のようになります。

  • ステーキングされている分のロックが解除される
  • 開発者のガス代削減

ステーキング分の引き出しに加え、一部のガス代も削減が予定されています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

ステーキングされている分のロックが解除される

イーサリアムは、2022年9月の大規模アップデート「マージ(Merge)」で「PoW→PoS」に完全移行しましたが、実はその前から一部でステーキングが始まっていました。

2020年12月からはBeacon Chainが導入され、一部のイーサリアムホルダーによってステーキングが行われていました。ただ、これには引き出し機能が備わっていなかったため、現時点で2年以上ロックされている状態になっています。

今回のシャンハイでは、この分の引き出しができるようになる予定です。

現在ステーキングされているのは、イーサリアムの供給量の約13%超にあたる約1,650万ETH(約3兆8,000億円相当)とされています。すでに長期間ステーキングしていることから、シャンハイ後には引き出し希望者が殺到し、利益確定の売り圧力が高まると予想する声が多いです。

一方で、ステーキングされているイーサリアムの平均取得単価は約2,400ドル(約32万5千円)、さらには長年のホルダーであることから、シャンハイ後に売る人は限定的という見方もあります。むしろ、きちんと報酬が支払われたことで安心感を与え、イーサリアムに興味を持つ人が増える、とも予想されています。

傾向として、個人投資家は下落予想、取引所や機関投資家は影響は小さいため横ばいもしくは上昇するという意見が強いです。現時点では2極化しており判断しづらい状況のため、今回のアップデートを利用したトレードには向いていないかもしれません。

シャンハイ後には多くの人が引き出しを希望すると予想されており、一時不安定な状態になると考えられています。そのためイーサリアム側は「部分引き出し」と「全部出金」の2種類の方法を用意し、準備時間を設けています。

それぞれどのような方法か、次の見出しで詳しく見ていきましょう。

部分引き出し

部分引き出しとは、ステーキングで預けて獲得した報酬分だけを引き出すことです。

出金のリクエストには「出金キュー」と「撤退キュー」が存在しますが、部分出金の場合は出金キューだけが適用されます。出金にかかる時間は平均「4.5日間」とされており、全部出金よりかは短い時間で済みます。

全部出金

全部出金とは、ロットである32ETHと獲得した報酬分両方を引き出すことです。イーサリアムのステーキングには最低ロットが設けられており、現時点で端数の引き出しには対応していません。

全部出金の場合は「出金キュー」と「撤退キュー」の両方が適用されます。まずは撤退キューが出され1日〜1ヶ月以上の待機時間を要し、その後出金キューが出され部分引き出しと同様の形で処理されることとなります。

シャンハイ後に出金キュー、撤退キュー両方が殺到することを考えると、しばらくは1ヶ月以上の日にちがかかると考えておいた方がいいでしょう。取引所経由でステーキングしている人も全部出金の対象になるので、実際に報酬を受け取れるまでは時間がかかると想定しておいた方が良さそうです。

開発者のガス代削減

今回のシャンハイアップデートでは、ガス代の削減も行われる予定です。

  • 開発者が使うソフトウェア「COINBASE」アドレスに低いガス代でアクセス可能に
  • 開発者のガス代を下げるコード「Push0」を作成
  • スマートコントラクトの開発者が使うコード「initcode」と開発者向けのガス代に上限を設定
  • コード「SELFDESTRUCT」を開発者に通知する仕組み

いずれも、開発者やステーキング時のガス代削減に関するものです。以前より指摘されている、送金時のガス代や取引の遅延などのスケーラビリティ問題の解決に直接的にはつながりません。

2022年12月の段階では、シャンハイで「EIP-4844:プロトダンクシャーディングの実装」を行い、取引処理の能力を向上させることを予定していましたが、開発途中でバグが発生し断念しています。EIP-4844については、2023年の第3四半期に実装されることになりそうです。

シャンハイは次の大規模アップデート「サージ(Surge)」の前準備として行うものであり、ガス代に関しては最小限に留める結果となりました。今回は、ステーキングの引き出しを最優先した形です。一般ユーザーとしては、サージでの大幅な利便性向上に期待したいところです。

「シャンハイ」後のイーサリアムの展望

次に、シャンハイが行われた後にどのようなことが起こるかを解説していきます。

  • 次回の大規模アップデート「サージ(Surge)」への影響
  • 大規模アップデート前の特徴的な値動き

それぞれ詳しく見ていきましょう。

次回の大規模アップデート「サージ(Surge)」への影響

「サージ(Surge)」は2023年中に行われる予定となっています。3月14日時点で日程が明らかになっておらず、前工程となるシャンハイが完了していないことから、実施は2023年後半になることでしょう。

サージでは「シャーディング」と呼ばれる、データを分割して負荷を分散する技術を導入する予定です。これにより、セキュリティを維持しつつ取引の高速処理が実現し、DeFiやNFT取引時の手数料の大幅な削減が期待されています。

シャンハイのアップデートは主にステーキング機能の実装と開発者のガス代削減に関するものですが、サージでは一般ユーザー向けの機能が主となります。イーサリアムの値動きや将来性へのインパクトはサージの方が大きくなるでしょう。

毎回アップデートの前後には、不具合やバグが起こることが多いです。また、システムの脆弱性を突かれたハッキングも考えられるため、しばらくは動きを見守る必要があります。

今回のシャンハイが予定通りに滞りなく行われ、サージへとつなげることができるか、注意深く見守っていきましょう。

参考記事:イーサリアムの「マージ(Merge)」とは?アップデート内容や価格への影響を解説

大規模アップデート前の特徴的な値動き

イーサリアムは「大規模アップデート前に高騰し、その後は一服し下落もしくは揉み合いが続く」といった特徴があります。

以下は、2022年にマージが行われた際の日足チャートです。

前回はマージの3ヶ月前に底をつけてから約2ヶ月間上昇、その後は徐々に下落するといった特徴が見られました。

2023年3月14日時点の日足チャートは以下の通りです。

2023年初めから強気の上昇をしており、ちょうど今はマージが行われた時と同じくらいの「1,600ドル〜1,700ドル」で推移しています。

現時点ではサージの日程が公開されていないため、トレードの戦略は立てづらい状況ですが、今までの傾向を頭に入れておくと利益を狙えるかもしれません。今後の発表に注目していきましょう。

まとめ

今回のアップデート「シャンハイ」は、次回の大規模アップデート「サージ(Surge)」の前準備として行われます。今まで大規模アップデート以外のアップデートが話題になることは少なかったですが、今回長期間ステーキングしていた分が引き出せるようになり、値動きに影響を与える可能性が大きいため、多くの暗号資産関係者の注目を集めています。

シャンハイ後にイーサリアムの価格が上昇するか下落するか、各所で判断が分かれている状況です。アップデートを利用したトレードを行う場合は、大規模アップデートのサージを狙った方が勝率は高いかもしれません。

シャンハイは3月中に行われることになっていますが、3月14日現在まだ具体的な日程が発表されていません。続報に注目していきましょう。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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