暗号資産(仮想通貨)の中で最も有名な銘柄がBitcoin(BTC|ビットコイン)です。
暗号資産のことをまったく知らない人でも、Bitcoinの名前だけは聞いたことがあるという人は少なくないでしょう。
暗号資産の価格追跡サイトCoinMarketCapにおけるBitcoinの時価総額は世界第1位であり、数ある暗号資産の中でもその地位は揺るぎないものになっています。
その一方で、Bitcoinが持つ機能や評価されている点について詳しく理解している人は決して多くありません。
この記事ではBitcoinの基本的な特徴に触れつつ、Bitcoinや他の暗号資産を活用したビジネスを作りたい方に向けて、「事業への応用」という観点から見たBitcoinの利点について解説します。
この記事の構成
BitcoinとBTCの違い
詳細な解説に入る前に、BitcoinおよびBTCの表記が持つ意味について確認しておきます。
暗号資産に関する会話の中では「ビットコイン」と呼ぶことがほとんどですが、厳密にはBitcoinとBTCが指し示すものは異なります。
本記事でもこの2者の表記を使い分けるため、まずはその違いを説明しておきましょう。
Bitcoinについて
Bitcoinは、ビットコインという暗号資産そのものや、ビットコインのネットワーク、技術、プロトコルなどを指す際に使用される表記です。
例えば「Bitcoinは世界で最初の暗号資産である」や「Bitcoinのブロックチェーン技術」のように使われます。
BTCについて
BTCは、ビットコインの通貨単位や取引における通貨記号として使用される表記です。
ビットコイン建ての金額を表示する際や取引所での取引ペア表示に使われます。
例えば「1 BTC」や「BTC/USD」のように用いられます。
まとめると、「Bitcoin」は暗号資産そのものやその技術を指すのに対して、「BTC」は通貨単位や取引記号として使用されます。
この両者は文脈に応じて使い分けられることが一般的であり、本記事でもこの2つの用語は区別して用いることとします。
Bitcoinの誕生〜現在までの歴史
Bitcoinは世界で初めて誕生した暗号資産です。
2008年のホワイトペーパー公開、翌2009年に最初のブロックが生成されたところからその歴史が始まります。
創設者
Bitcoinは、サトシ・ナカモトという名の個人または数名のグループの手により、2008年10月31日にホワイトペーパーが公開されました。
その翌年、2009年1月3日にジェネシスブロックとして知られるBitcoinネットワーク上の最初のブロックをマイニングし、世界初の暗号資産がローンチされることになります。
なお、サトシ・ナカモトという日本人風の名前が用いられていますが、そもそも個人かグループかも判別されていないことからわかる通り、サトシ・ナカモトの正体については国籍や性別さえも明らかになっていません。
運営チーム
Bitcoinには、一般的な企業や組織で見られる運営チームは存在しません。
その代わり、現在のBitcoinの開発と維持には世界中の開発者、技術者、研究者から成るコミュニティが貢献しています。
Bitcoinのマイニングや取引を行うためのオープンソースプログラムであるBitcoin Coreは誰でも利用できるようになっており、コードの改善やバグ修正などの提案も可能です。
つまり、Bitcoinには特定の運営チームではなくオープンで分散型の開発コミュニティが存在しており、それぞれが共同でビットコインの開発・維持に貢献しています。
出資者
今では様々なブロックチェーンのプロジェクトが開発されており、時にはベンチャーキャピタル(VC)と呼ばれる投資会社がそれらのプロジェクトに巨額の資金を提供することがあります。
「資金力のあるVCから資金提供を受けた」という事実がそのままプロジェクトの価値向上につながることもあります。
一方、Bitcoinは一般的な企業やプロジェクトとは異なる構造を持っており、従来の意味での「出資者」は存在しません。
出資者が存在しない代わりに、開発者コミュニティ、マイナー、ユーザーなどの関係者によってBitcoinの発展は支えられています。
ただし、Bitcoinのエコシステムやインフラストラクチャーをサポートする企業やプロジェクト(暗号資産ウォレット開発者や取引所など)には、従来の意味の出資者が存在することはあります。
Bitcoinの目的
Bitcoinのホワイトペーパーの冒頭に、Bitcoinの目的がわかりやすく書かれています。
オリジナルの英語版、及び日本語翻訳版に書かれている内容は以下の通りです。
Commerce on the Internet has come to rely almost exclusively on financial institutions serving as trusted third parties to process electronic payments.
「完全な P2P 電子通貨の実現により、金融機関の介在無しに、利用者同士の直接的なオ
ンライン決済が可能となるだろう」
この1文についてより詳しく解説します。
Bitcoinの目的は、銀行や政府の管理を受けることなく安全かつ迅速なピア・ツー・ピア(P2P)の金融取引を実現することです。
ピア・ツー・ピアとは、ネットワークの参加者(ピア:peer)間で直接データなどをやりとりする方法を指します。
既存の電子商取引システムにおいて、私たちは銀行やクレジットカード会社などの「中央集権的な管理者」を介さずに資産の受け渡しや決済を行うことは出来ません。
つまり、私たちが普段利用している資産管理や決済の仕組みはピア・ツー・ピアではなく、特定の管理者に依存した状態になってしまっています。
この管理者の存在のおかげで安全な電子商取引が可能になる一方で、時には彼らの恣意的な判断で私たち個人の金融資産が凍結されるといったリスクもあります。
ところがBitcoinのネットワークを用いると、銀行などの管理者に依存しないピア・ツー・ピアの取引が実現できます。
例えば、日本にいるAさんからブラジルにいるBさんに資金を送るケースを考えます。
従来の金融システムでは、送金が完了するまでに以下のような工程が存在します。
- Aさんが日本の銀行にお金を預ける
- 日本の銀行がブラジルの銀行に送金する
- Bさんがブラジルの銀行からお金を引き出す
つまり従来の仕組みでは、銀行という存在を抜きに個人間で送金をすることはできませんでした。
ところがBitcoinのネットワークを用いることで、上記の例ではAさんからBさんへの直接送金が実現します。
このように、管理者である金融機関に依存せず個人間で直接的なオンラインの送金や決済を実現することがBitcoinの主たる目的であり、存在意義そのものであると言えます。
Bitcoinの技術的特徴
ここからはBitcoinの技術的な特徴について解説します。
本記事は純粋な技術の解説ではなく、Bitcoinをビジネスに活用したい方に役立つ内容を重視しているため、ここでは「事業開発においてBitcoinの特徴がどのような役割を果たすか」という視点に立って解説します。
独自のブロックチェーンを持つ暗号資産である
Bitcoinは独自のブロックチェーンを持つ暗号資産です。
暗号資産の価格追跡サイトCoinMarketCapでは、各暗号資産は「コイン」と「トークン」の2種に大別されています。
それぞれの特徴を簡単にまとめると、コインは独自のブロックチェーンを持つ暗号資産であるのに対し、トークンは既存のブロックチェーン上で作成された暗号資産だと言えます。
代表的なコインにはBTC、ETH、XRPなどがあります。一方、代表的なトークンにはUSDT、USDCなどがあります。
上で挙げたUSDTやUSDCは既存のブロックチェーンであるEthereumなどの規格を用いて運用されているトークンであり、いわばEthereumのブロックチェーンを「間借り」している通貨だと言えます。
これに対し、Bitcoinは独自のブロックチェーンを持っているため、通貨としての信頼度が高いと言えます。
セキュリティが高い
Bitcoinはセキュリティが高いブロックチェーンです。
暗号資産の世界は、常にハッキングやスキャム(詐欺行為)の被害にあう可能性と隣合わせにあります。
しかし、Bitcoinのブロックチェーン自体がハッキングなどの被害にあったことは過去に一度もありません。
このセキュリティの高さの一因となっているのが、PoW(Proof of Work)と呼ばれるコンセンサス・アルゴリズムにあります。
コンセンサス・アルゴリズムとは、ブロックチェーン上での取引を検証する方法の総称であり、PoWやPoS、DPoS、PoAなど複数の種類があります。
Bitcoinが採用しているPoWは、取引の検証プロセスに大量のエネルギーと高度な計算能力を必要とするため、環境にやさしくないとして問題視されることもあります。
一方、悪意を持った攻撃者がBitcoinを乗っ取ろうとした場合には、必要なエネルギー量の多さと求められる計算能力の高さが障壁となり、容易には被害を受けにくいという側面があります。
暗号資産をビジネスに活用する際には、当然ながらセキュリティは重要な要素になってきます。
その点において、Bitcoinは他の暗号資産よりも優れた特性を持っていると言えるでしょう。
長期目線での通貨の価値は安定している
Bitcoinは、数ある暗号資産の中では「長期目線」で見ると価値が安定していると言えます。
投資対象としては株式や外国為替などに比べても価格変動が非常に激しいため、「価値は安定している」と言われても違和感がある方もいるでしょう。
しかし、これには理由があります。
その1つが、Bitcoinには「発行量に上限がある」という点です。
Bitcoinは総発行枚数が約2,100万BTCとあらかじめ決められており、今後2140年頃までに段階的に発行が進んで行きます。
また、その発行に際しても「半減期」という概念があり、およそ4年ごとに新規発行量を半分に減らす仕組みになっています。
発行数に上限があること、および発行ペースが抑制されることは、すなわちインフレの抑制につながります。
短期的な価格の変動はあるものの、長期目線ではBitcoinはインフレの懸念が極めて低く設計されており、その価値は安定して推移することが予測されます。
この点は、ビジネスに用いるにあたって1つの安心材料であると言えるでしょう。
Bitcoinが有望銘柄とされる理由
次に、Bitcoinが有望銘柄とされる理由について、技術的な特徴以外の視点から解説します。
世界初の暗号資産であり、市場をリードする銘柄である
1点目は、Bitcoinは世界初の暗号資産であり、今なお市場をリードする銘柄である点です。
現在、暗号資産を用いたプロジェクトは数え切れないほど存在し、その機能や目的は非常に多岐にわたります。
ところが、価格変動の傾向としてはどの通貨もおおむねBitcoinの価格推移に連動しています。
その理由は、
- Bitcoinは時価総額が最も大きいため、市場全体のセンチメントを左右しやすい
- Bitcoinとペアで取引される通貨が多いため、価格連動が起きやすい
- 投資家の多くがBitcoinの価格変化を参考に取引している
というように、様々なものがあります。
いずれにせよ、Bitcoinが暗号資産市場において支配的な力を持つ銘柄であることは間違いありません。
他のチェーンが真似できない規模になっている
2点目が、他のチェーン(通貨)が真似できない規模になっている点です。
CoinMarketCapによると、2023年3月現在のBitcoinの時価総額は約5,350億ドル(約70兆円)で世界第1位であり、2位であるEthereumの約2,160億ドル(約28兆円)と比較しても圧倒的な規模になっています。
また、Bitcoinのブロックチェーン上で取引の検証を行うマイナーも世界中に分散して存在しており、その規模は他のブロックチェーンではもはや追いつけないものになっています。
他のブロックチェーンがBitcoinに代わって市場をリードする銘柄になることは、Bitcoinの歴史の長さや規模の大きさから考えてもほぼ起こり得ないと言えるでしょう。
Bitcoinを法定通貨として認めている国がある
3点目が、Bitcoinを正式に国の法定通貨として認めている国があることです。
世界には、政情不安定などの理由により自国通貨の価値が安定しない国があります。
そのような国では、自国独自の通貨よりも世界中のユーザーやマイナーの手で運用されているBitcoinの方が通貨として信頼できるという理由から、Bitcoinを法定通貨として定めているケースがあります。
世界で初めてBitcoinを法定通貨としたのは中米のエルサルバドル。正式に法定通貨となったのは2021年9月です。
その後、2022年4月には中央アフリカ共和国でも、Bitcoinの法定通貨化は議会の承認を得ています。
このように、国家が正式にBitcoinを法定通貨として認めている事例があることは、Bitcoinの価値や信用度の高さの裏付けであると言えます。
Bitcoinの時価総額推移
次に、市場におけるBitcoinの立ち位置を数量的な面から把握していきましょう。
流通量と発行上限数
すでに述べた通り、Bitcoinには発行上限数があります。
Bitcoinの発行上限数は約2,100万BTCで、2140年にかけて順次新しいBitcoinが発行されています。
2023年3月末時点では、発行上限数のおよそ92%にあたる約1,932万BTCが発行済みとして市場に流通しています。
リアルタイムチャート
以下のグラフは、Bitcoinのリアルタイムの価格推移を示したチャートです。
引用元:CoinMarketCap
暗号資産市場全体としては、DeFi(分散型金融)の人気が高まった2020年、NFT(非代替性トークン)が人気を呼んだ2021年を経て価格が上昇しており、Bitcoinも2021年11月に過去最高値である1BTC=約760万円を記録しています。
その後、市場の冷え込みと共に価格は下落し、現在は1BTC=約350万円程度で推移しています。
単体時価総額推移グラフ
Bitcoinの時価総額も、価格推移のチャートとほぼ同じ形状をしています。
引用元:CoinMarketCap
最高値を記録した2021年11月頃のBitcoinの時価総額は約140兆円、そして現在は価格自体の下落もあり、約70兆円で推移しています。
他の上位銘柄との時価総額比較
次に、Bitcoinと他の時価総額上位銘柄を比較してみましょう。
時価総額推移グラフ
以下のグラフは、2022年末時点の時価総額TOP10銘柄に関して、2013年から2022年までの10年間の時価総額推移を表したものです。データ取得のタイミングは各年の年末になっています。
なお、TOP10に入っていない年度についてはデータなし(=数値上は0)としています。
引用元:CoinMarketCapよりデータを取得し作成
このグラフから、2022年時点における他の上位銘柄と比較しても、Bitcoinの時価総額がいかに大きなものかお分かりいただけるでしょう。
時価総額順位推移一覧表
次の表は、2013年から2022年までの10年間において、各年の時価総額TOP10の銘柄を表したものです。
Bitcoinは薄いオレンジで、そして比較のためにEthereumは灰色で示しています。
引用元:CoinMarketCapよりデータを取得し作成
この表から、現在時価総額2位のEthereumも含めてTOP10の銘柄は頻繁に入れ替わっているにもかかわらず、首位のBitcoinは1度もその座を明け渡していないことが読み取れます。
本記事ですでに解説してきた通り、Bitcoinの技術的な特徴や有望とされる理由がユーザーや投資家から評価され、常に時価総額トップに位置し続けてきたことがお分かりいただけるでしょう。
BTCを取扱っている暗号資産取引所
世界で最も有名であり、時価総額もトップであるBTCは、国内外を問わずあらゆる暗号資産取引所で売買が可能です。
あまりに数が多いため、ここでは代表的な取引所についてのみ言及します。
BTCの取扱いがある国内取引所の例
基本的にほぼすべての暗号資産取引所において、BTCは売買可能であると考えて差し支えありません。
代表的な国内の暗号資産取引所には以下のようなものがあります。
- Coincheck
- bitFlyer
- bitbank
- DMM Bitcoin
- GMOコイン
その他にも多数の暗号資産取引所がありますが、BTCの扱いがない取引所を探す方が難しいと言ってもよいくらい、ほぼすべての取引所でBTCは取り扱われています。
BTCの取扱いがある海外取引所の例
海外取引所も同様に、ほとんどの取引所でBTCの取扱いがあります。具体的には以下のような取引所があります。
- Binance
- Coinbase
- KuCoin
- Kraken
- Bitfinex
- Bitstamp
ただし、これらの取引所の中のいくつかは日本事業からの撤退などにより、日本国内から利用できなくなったり、新規ユーザーの登録ができなくなったりしています。
利用を検討される際はご自身で最新の情報を調べた上で利用してください。
BTCの取得・購入および保管方法
BTCは基本的に上記で紹介した暗号資産取引所で取得・購入が可能です。
また、昨今は特定のサービスを利用することでBTCが付与されるといった類のサービスがあります。
具体的な事例として、利用するだけでBTCが貯まる「bitFlyerクレカ」などがあります。
また、取得・購入したBTCの保管方法には以下のようなものがあります。
- 購入した取引所の口座でそのまま保管する
- メタマスクなどのソフトウェアウォレットで保管する
- 物理的な形を持つハードウェアウォレットで保管する
暗号資産を保管する時は、ハッキングや詐欺にあうリスクを極力減らすことを考えなければなりません。
そして上記の保管方法は、それぞれ以下のようなリスクがあります。
- 取引所の口座:取引所自体がハッキング等の被害にあう可能性がある
- ソフトウェアウォレット:資産を管理する秘密鍵を盗まれる可能性がある
- ハードウェアウォレット:デバイス自体を紛失する可能性がある
いずれの場合も、資産を失ってしまうリスクを完全にゼロにするのは困難です。
状況に応じて管理手法を使い分け、リスクを最小限に抑えるようにしましょう。
Bitcoin(BTC)の今後の展望まとめ
本記事ではBitcoinの基本的な特徴に触れた上で、事業に活用する視点から見た時にBitcoinがどのような利点を有するかなどを解説しました。
誕生から現在に至るまで時価総額でも常にトップを維持しているBitcoin。その事実は、Bitcoinに対するユーザーや投資家の信頼がそのまま現れていると言っても過言ではありません。
サトシ・ナカモトが描いた「中央集権的な管理者に依存しないピア・ツー・ピアの金融取引」というBitcoinの特徴を最大限に生かしたビジネスを作り出すために、本記事の内容が役に立てば幸いです。