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ERC-4337はNFT業界にどんなメリットをもたらすのか?

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はじめに

イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏が2015年に構想を発表して約8年が経過した今年3月、イーサリアム・ブロックチェーンに「ERC-4337(アカウントの抽象化)」が実装されました。

これにより、エンドユーザーは、NFT運用を始めるにあたって複雑な設定作業がネックとなる暗号資産ウォレット導入にくわえ、ウォレットの設定後も、秘密鍵(シードフレーズ)を紛失してしまうとウォレット内資金へのアクセスが実質不可能になるなど、使い勝手の悪さが目立っていました。

しかし、ERC-4337のアップデートにより、ウォレットの使い勝手が向上することで、エンドユーザーはNFT運用を始めるハードルが下がったことは間違いありません。その一方でNFT事業者は、新たなビジネスモデルを展開できる環境が整いつつあります。

この記事では、ERC-4337の実装がNFT業界に今後どのようなメリットをもたらすのかを解説します。

ERC-4337の概要

まず、ERC-4337のアップデートにより、どのような機能が新たに使えるようになったのか、以下にまとめます。

  • 紛失した秘密鍵の復元が可能
  • ウォレットのログイン時、生体認証による二段階認証が可能
  • ウォレットで自動売買が可能
  • 事業者がガス代負担を肩代わりできる

以下、一つずつ解説します。

紛失した秘密鍵の復元が可能

従来のウォレットでは、秘密鍵を紛失した場合、ウォレット資産を取り戻すことは実質不可能でした。しかしERC-4337の実装により、紛失した秘密鍵も復元可能になります。

ERC-4337では、暗号資産に使用される秘密鍵をスマートフォンのセキュリティモジュールに格納し、スマートフォンを従来のハードウェアウォレットのように使うことが可能になるとされています。

ユーザーは万が一スマートフォンを紛失した場合でも、信頼できる友人のグループや、商用サービスを通じて、ウォレットアカウントの復元機能を利用できます。

ウォレットのログイン時、生体認証による二段階認証が可能

ERC-4337の実装により、指紋やフェイススキャンといった、生体認証による二段階認証を用いたウォレットログインが可能に。これにより、ログイン時のパスワードを覚える手間や、パスワードの紛失リスクが低下します。

また、生体認証の利用は、トランザクションに署名する時でも可能となり、ウォレットの使い勝手が向上しました。

ウォレットで自動売買が可能

ERC-4337により、ウォレットで自動売買を行う機能が実装されています。これによりユーザーは、従来のメタマスクウォレットでのサブスクリプション設定や、ゲームでの支払い自動化など、プログラムベースの支払い手段が構築可能となりました。

事業者がガス代負担を肩代わりできる

ERC-4337では、スマートコントラクトで事業者がトランザクションのガス代(取引手数料)を肩代わりできる機能も追加されました。これにより、エンドユーザーはガス代を負担せずにNFTを購入することが可能です。

ERC-4337のメリット

イーサリアムの新しいアップデート「ERC-4337」は、エンドユーザー・事業者双方にとって以下のようなメリットをもたらします。

  • 利便性の向上
  • ウォレットセキュリティの強化
  • より多様なビジネスモデルを展開できる
  • ガス代の肩代わりでマーケティング施策を打てる

以下、一つずつ解説します。

利便性の向上

ERC-4337の実装により、ウォレットの管理や操作がより簡潔化され、ユーザビリティが大幅に向上しました。

ユーザーからすると、NFTを始めるにあたって必須であったウォレットの使い勝手が向上したことで、NFT運用を始めるハードルが下がりました。

ユーザーがNFT市場に参入しやすい環境が整ったことで、今後、NFT市場の市況によって大量の新規ユーザー流入が見込まれるでしょう。

NFT市場の人口が増加すると市場全体の取引高も増えるため、NFT事業者は今後、ERC-4337の実装による恩恵を受けられる可能性は充分あるといえます。

ウォレットセキュリティ強化

ERC-4337の導入により、シードフレーズを使わずに二段階認証(生体認証)で安全にウォレットを使用できるようになります。

セキュリティが向上したことで、エンドユーザーはこれまで以上に安心して事業者が提供するNFTプラットフォームを利用できるようになります。

より多様なビジネスモデルの展開

ERC-4337の実装により、ウォレットのサブスクリプション設定やゲームの支払い自動化、事業者がエンドユーザーのガス代を肩代わりするなど、従来のスマートコントラクトでは実現困難だった機能が実現可能になります。

これにより、事業者はより多様なビジネスモデルを展開できるようになるでしょう。

効果的なマーケティング施策を打てる

ERC-4337では、NFTプロジェクトの事業者がユーザーのガス代を肩代わりできます。

NFT事業者はユーザーのガス代を一部または全部負担するキャンペーンを実施する等、効果的なマーケティング施策を行うことができるでしょう。

NFTを活用した事業例

NFTを活用した事業例として、以下、いくつか事例をまとめます。

  • NFTコレクション
  • 会員制ビジネス×NFT
  • サブスクリプション事業×NFT

一つずつ、解説していきます。

NFTコレクション

自社商品に関連するNFTコレクションを展開するケースです。現在、最も多くの企業が採用している方法だといえるでしょう。

しかし、このようなかたちで販売されたNFTコレクションは、NFTブームにあわせて発行されただけのものが多いのが現状です。

特にユーティリティはなく、デジタルアートとしての役割しか持たないものも多いため、ユーザーへの価値提供という面ではあまり意味がない活用方法ともいえます。

ただし、「商品を購入すると特別なNFTがもらえる」「該当するNFTを持っていると割引購入が可能」といったように、新しいユーザー体験の提供を目的として、NFTを発行する事業者もなかには存在しています。

会員制ビジネス×NFT

ブロックチェーン技術を用いたNFTは、デジタルデータの所有権を明確にできる技術です。

そのため会員制ビジネスにおいて会員権をNFTとして発行すると、購入歴から保有期間まで記録され、改ざんが非常に困難という特徴を持っていることから、会員権を偽造される心配もありません。

このように、NFTと会員権は好相性であることは明らかであり、実際に以下のような業種でNFT会員権が活用されはじめています。

  • ファンクラブ
  • オンラインサロン・コミュニティ
  • 飲食業界
  • ゴルフ業界
  • ホテル業界

NFT会員権が従来の会員権と大きく違うのは、途中で不要になった場合は第三者に売却することが可能という点です。

サブスクリプション事業×NFT

ERC-4337により、ウォレットの自動支払い設定が可能となったことで、サブスクリプション事業におけるNFTの活用事例は今後増えていくことが見込まれています。

デジタルデータの独自性や希少性を活かし、サブスクリプションによる定期的な支払いを通じてサービスやコンテンツを提供するビジネスモデルが有効であると考えられます。

例えば、音楽サブスクリプション大手のSpotifyは2月、NFT機能の実験開始を発表。この実験では、特定のNFTの所有者だけにプレイリストへのアクセス権を与える機能をテストしました。

今後は音楽配信とNFTを掛け合わせた新しいサブスクリプションモデルが確立されることが予測されます。

まとめ

ERC-4337はNFTの普及に大きく貢献する可能性があります。ウォレットの利便性やセキュリティが高まることで、エンドユーザーは容易にNFTの売買や保管ができるようになったためです。

なおERC-4337で実装された新機能は、イーサリアム・ブロックチェーン以外にも、ポリゴン、オプティミズム、アービトラム、BNBスマートチェーン、アバランチなど、EVM(イーサリアム仮想マシン)互換の他ブロックチェーンでも利用できます。

ERC-4337のアップグレードは、NFT市場にとってゲームチェンジャーとなり得る可能性があります。

AMEHARE

AMEHARE

ITの最新トレンドを発信しはじめて十余年。Web2から3の時代の変革もいち早く察知し、2012年ごろから仮想通貨に注目をし始める。次世代の文化やテクノロジーを情報を掴みつつ、NFT・メタバース・DAOなどの領域であらゆる情報を発信中。
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