「NFTが趣味やレジャーなどの娯楽の分野にも広がるって本当?」
「イベントのチケットがNFT化されたらどんなことが起きるの?」
NFTと聞くと、暗号資産のようなものをイメージされる人が多いのではないでしょうか。またNFTに関する知識が少しありメタバース内で使用されている事を知っていても、NFTと趣味やレジャーなどの娯楽の分野とは結びつかない人が大半だと思います。
本記事では、NFTがメタバースやゲーム、投資対象としてだけではなく、さまざまな娯楽にNFTが取り入れられる動きがあることを紹介。具体的には、飲食店での会員限定のサービスや、電子書籍NFT、またイベントチケットのNFT化などを解説します。
また、コミュニティーツールであるDiscordが、なぜNFTの分野で活用されているかを紹介。アーティスト・クリエーター側とNFTホルダー(ファン)側の視点で、それぞれのメリットを解説します。
本記事を読むことで、趣味やレジャーなどの娯楽の分野にNFTがどのように活用されていくかや、NFTを組み合わせたどのような未来が広がっているか理解できますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
【NFT×飲食店】会員限定のサービスで満足感アップ♪
今後、飲食店が積極的にNFTを自分たちの商売に取り入れる動きが加速するでしょう。理由は、NFTを取り入れることが新たな顧客の獲得や、既存顧客の満足度向上に繋がるからです。
既に飲食店がNFTを発行したり、対象のNFTホルダーに優待サービスを提供したりなど、いくつかのサービス事例が出てきています。
具体例の1つとして、アメリカ・ニューヨークの「Flyfish Club(FFC)」を紹介します。
Flyfish Club(FFC)は、2023年の開業を予定しているシーフードレストランで、レストランの会員権をNFT化しています。2022年1月より約3,000点のNFTを発行。会員権には、2.5イーサと4.5イーサのものがあり、共にOpenSeaで購入可能です。
NFTを所有している人だけがFlyfish Club(FFC)を利用でき、NFT保有者限定の特別なサービスを享受できることがポイントです。例えば、4.5イーサの方の会員の人は、日本から毎日届く新鮮な海鮮を使用した「寿司おまかせコース」を頂くことができるとのこと。
また、このメンバーシップの権利であるNFTは、他のNFT同様に、転売したり一時的に貸し出すことも可能。
このように飲食店がNFTを発行するメリットは、NFTのメンバー限定のレストランとして特別なサービスを提供することで、NFT購入者に資産価値や特別感を付与できることです。新規顧客の獲得や既存顧客の満足度向上にも繋がるので、今後ますます一般化されることでしょう。
2つ目は日本の事例です。「Non-Fungible Ramen」プロジェクトは、究極の高級らーめんを提供することを目指す、株式会社ふく流JAPANによって運営されています。彼らは東京と大阪の店舗で、隔月で一品ずつ、数万円を超える価値のあるらーめんを提供しています。さらに、この特別な経験を一生の思い出として残すため、参加チケットや参加証明書としてNFTを発行しています。
このNFTは、通常の紙のチケットや証明書とは異なり、偽造や複製が不可能であり、世界中の他の人々がパブリックに確認することができます。さらに、メタデータ上の画像情報をPFP(SNSアイコンなど)として使用することも可能です。
さらに、高級らーめんの提供に加えて、「各店舗で1年間使用できる、トッピングやサイドメニューが無料になるチケット」もNFTとして販売されます。このNFTを手に入れれば、一年間にわたり、ふく流のおいしいトッピングやサイドメニューを存分に楽しむことができます。
日本の大阪府を拠点とするふく流JAPANの「Non-Fungible Ramen」プロジェクトは、食にこだわりを持つ人々にとっての夢のような体験を提供します。興味を持った人は、公式ウェブサイトをチェックしてみてください。
今後は上記2つのような飲食店単独の取り組みだけではなく、飲食店同士のコラボレーションも生まれるでしょう。昔ながらの商店街における飲食店同士の繋がりのような関係性が、NFTを通じて商店街という特定のエリアに縛られず、世界各国の飲食店の連携といった形で復刻の目を見ることになるかもしれません。
【NFT×電子書籍】電子書籍NFTの2次流通やレンタル事業への拡大
電子書籍が普及した昨今ではありますが、「本はやっぱり紙がいい!」という人も多いのではないでしょうか。
読みやすさや紙の手触りが好きという理由から紙の本はいまだに人気があります。また、紙の本であれば、読み終わった後にメルカリやブックオフなどに売ることも可能です。一方で電子書籍では紙の本のように容易に転売は不可能です。こういった読書後に売ることも考慮して紙の書籍を選ぶ人も一定数いるでしょう。
このような状況下において、電子書籍とNFTの組み合わせは、本の二次流通やレンタル事業に関する新たな可能性を提示します。電子書籍をNFTとした場合、読み終えた電子書籍を2時流通で販売するのはもちろん、第三者にレンタルすることもできます。
つまり紙の書籍は保管にスペースが必要、持ち運びが不便といったデメリットと、電子書籍は購入後に転売できないといったデメリットを共に解決するのがNFT電子書籍なのです。電子書籍を使用する権利をNFTとして保有できるため、Amazon(Kindleストア)やApple(Apple Books)のような電子書籍のサービス提供者の動向に依存せずに済みます。万が一サービス提供者がサービスを終了したとしても、NFT電子書籍はブロックチェーンに刻まれているので、無くなることはありません(価値が低下することはありますが)。ブロックチェーンを経由して電子書籍にアクセスできる限り、いつでも閲覧可能です。
将来的には、NFT電子書籍を専門とした二次市場の展開が進むことで、NFT版のブックオフのようなサービスや、仮想空間上に存在するNFT図書館が創設されるかもしれません。今後ますます電子書籍の利用者が増加し、NFT電子書籍の市場が更なる拡大を見せる可能性があります。
【NFT×イベント】DtoF (Direct to Fan)の世の中へ!
コンサートやセミナーのようなイベントチケットをNFT化する動きがあります。イベントチケットをあえてNFT化する理由として大きく以下3つの理由があります。
- チケットの転売履歴が残る
- ファンへ特別な価値やサービスを提供できる
- イベント終了後の半券がNFTとして価値を保有し続ける
順番に解説します。
チケットの転売履歴が残る
「チケットの転売履歴が残る」点は、既存のチケット販売時における課題であった転売屋を排除できる可能性があります。これまでは、人気のあるコンサートやライブのチケットは、転売屋により大量購入され、高値で転売されるケースが多くありました。しかし、イベントチケットをNFT化することで、転売が行われた場合、その情報がブロックチェーン上に記録されます。従って、頻繁にチケットNFTを売買しているウォレットを特定することができ、結果として転売屋を排除することができるでしょう。
ファンへ特別な価値やサービスを提供できる
2点目は、ファンへの特別な価値の提供です。元MITメディアラボの所長で、現在は千葉工業大学変革センター所長を務めている伊藤穣一氏が提唱する概念に、DtoF (Direct to Fan)があります。NFTチケットはこのDtoFの概念をまさに具現化したものといえます。どのようなものか具体的に説明します。
まず、チケットNFTの 保有枚数は、実際に参加したイベントの回数としてブロックチェーン上に記録されます。その情報を元に、例えば特定のアーティストが開催したイベントのNFTを一定枚数以上保有している人へ、特別な記念イベントやイベントグッズを提供することも可能です。NFTを通じてアーティストとファンの関係性がより身近に、また強くなることが期待されます。
イベント終了後の半券がNFTとして価値を保有し続ける
最後の、「イベント終了後の半券がNFTとして価値を保有し続ける」に関しては、映画の半券チケットをイメージするとよいかもしれません。一般的には、映画を鑑賞する際、入場時にチケットを提示し、座席番号が記載された半券が手元に残ります。
この半券で飲食店の割引やゲームセンターの無料メダルのような優待を受けられる仕組みが既にありますが、この仕組みをNFTにも応用するということです。
半券をNFT化することで、アーティストやイベント主催者は、NFTホルダーに対して感謝のメッセージやイベントグッズを提供するだけでなく、アーティストと直接会話できる特別な記念イベントへ招待するなど、NFTを通じてファンにとって特別な体験を提供することができます。一方でNFTホルダー側にとっても、半券を記念として保管するだけでなく、ファン同士のコミュニティーのツールなどとしての価値を享受することができます。
最後にNFTチケットを販売するプラットホームを紹介します。国内の主なプラットフォームは以下の3つです。
- TicketMe(チケミー)
- LAWSON TICKET NFT
- Hokusai Ticket
順番に紹介します。
TicketMe(チケミー)
1つ目のプラットフォームは、2022年9月にリリースされた、株式会社チケミーが運営する「TicketMe(チケミー)」です。TicketMeのミッションは、「NFTでしか実現できない熱狂と興奮を提供し続けること」です。TicketMeでは、顧客体験の向上や、参加券の役割を超えた使い方、そして二次流通の管理など、様々な可能性を秘めたNFTチケットを誰でも販売・購入できるようにしています。
販売者にとっての特徴として、TicketMeではNFTやブロックチェーンの知識や暗号資産ウォレットを持っていなくても、簡単にNFTチケットを販売することができます。また、販売したチケットの売上金は日本円で受け取ることができます。初回利用時の販売手数料も、チケット価格のわずか4.9%という業界最安水準で、お試し利用が可能です。
一方、購入者にとっての特徴としては、暗号資産ウォレットを持っていなくてもNFTチケットを利用できる点や、ウォレットとアカウントを独立して管理することで個人情報を保護できる点が挙げられます。また、NFTチケットを保有することで、イベントへの参加を証明することも可能です。
TicketMeは、NFTチケットの将来に向けた展開が期待されており、マイクロソフト社のスタートアップ企業向けプログラム「Microsoft for Startups」にも採択されています。これにより、彼らは事業拡大のサポートを受けることができます。
LAWSON TICKET NFT
2つ目のプラットフォームは、2022年12月にリリースされた株式会社ローソンエンタテインメントが運営する「LAWSON TICKET NFT」です。LAWSON TICKET NFTは、SBINFT株式会社との協力により展開されているNFTマーケットプレイスであり、ローソンチケットが提供するコンサートやスポーツ、演劇などのイベントチケットをNFTとして販売しています。このサービスでは、ブロックチェーン技術を活用し、チケットをデジタルウォレットに保管できる記念チケットNFTを提供しています。
また、LAWSON TICKET NFTには、イベント主催者が会場内でリアルタイムにNFTを配布するニーズに応えるため、QRコードを通じて画像や動画のNFTを簡単に配布および取得する機能が導入されています。
イベント会場に来場したお客様は、会場内のNFT受取用QRコードを読み取り、自分のデジタルウォレットに接続することで、「LAWSON TICKET NFT」のNFTを受け取ることができます。これにより、例えば、コンサートやイベント会場、レジャー施設、スポーツ会場などで無料の会場限定NFTを配布したり、有料のNFTを販売したり、QRコードをCDやDVDに同梱して配布したりと、さまざまな催しが可能です。
さらに、本機能を使用した取り組みとして、ローソントラベルが企画する「NFT特典付きローソントラベル鉄道ツアー」で限定NFTの配布が実施されました。ツアー参加者は、現地で提供されるQRコードにアクセスすることで、簡単に「お客様だけのシリアルNO.入りNFTツアー参加乗車証」を受け取ることができ、満足度も非常に高かったとのことです。
ローソンエンタテインメントは、「みんなと暮らすマチ」を幸せにするという企業理念を掲げ、顧客に支持されるサービスの拡充に取り組んでいくとしています。今後もさまざまな展開が期待されます。
Hokusai Ticket
3つ目のプラットフォームは、2022年8月にリリースされたモノバンドル株式会社が運営する「Hokusai Ticket」です。「Hokusai Ticket」のサービスは、NFTチケットを利用する際の大きなハードルである「暗号資産の準備」と「暗号資産ウォレットの準備」を不要にし、スムーズなNFT購買体験を実現することを目指しています。
Hokusai Ticketを使用するチケットの発行者は、日本円の支払いだけでNFTチケットの発行、販売、二次流通を行うことができます。さらに、使用するブロックチェーンを6種類の中から選択することも可能です。さまざまなカスタマイズ機能も提供されており、SNSでのログイン機能、クレジットカード決済、二次流通の範囲限定、発行管理画面の作成・運用、CRM連携などが利用できます。
これらのカスタマイズ機能を組み合わせることで、購入のハードルを下げることができます。さらに、CRM連携によって既存のビジネスフォーマットとNFTチケットの活用を結びつけることも可能です。
Hokusai Ticketは、NFTチケットの利用を簡単かつ柔軟にすることで、さまざまな業界での活用を促進しています。このサービスを活用することで、エンタープライズ向けのNFTチケットの導入がより魅力的になるでしょう。
【NFT×Discord】NFTコンテンツを介した新しいコミュニティーを紹介
イベントチケットNFTなどのNFTコンテンツの新たな特徴・活用方法として、アーティストやクリエーターを応援するオンライン上のコミュニティーの存在があります。NFTホルダーの間では、Discordを介して交流することが多く、アーティストやクリエーター、または個々の作品に対してDiscordコミュニティーが形成され、ホルダーがそのDiscordコミュニティーで情報交換したりと交流を図る動きがあります。
Discordコミュニティーのメリットは大きくは下記の4つです。
- 運営とのやりとり
- ギブアウェイ・エアドロップ
- 限定チャンネル
- メンバー交流
順番に解説します。
運営とのやりとり
Discordを通じて運営と直接コミュニケーションを取ることができます。プロジェクトの目標や進捗状況報告、質問コーナー(AMA)、ミント情報などが発信されます。これにより、NFTホルダーはいち早く最新情報を入手でき、プロジェクトに対して積極的に参加することができます。
ギブアウェイ・エアドロップ
Discordメンバー向けには、プレゼント企画が定期的に行われます。これはNFTホルダーにとっての大きな魅力です。ギブアウェイやエアドロップに参加することで、限定アイテムや報酬を手に入れるチャンスがあります。特別な特典やボーナスを獲得できる可能性もあります。
限定チャンネル
Discordでは、NFTホルダーのみがアクセスできる限定チャンネルがあります。ここでは、限定情報や特別なコンテンツが提供されます。NFTホルダーであることによって、独占的な情報にアクセスできるため、NFTホルダーは特別感を味わいながら、他のメンバーよりも優位に情報を得ることができます。
メンバー交流
Discordはメンバー同士が交流するための理想的なプラットフォームです。NFTホルダーは自由にチャットできるだけでなく、ゲームやイベントの開催、ボイスチャットなども楽しむことができます。これにより、共通の趣味や関心事を持つ人々と繋がり、コミュニティの一員としての経験を豊かにすることができます。
このように、NFTホルダー自身が、Discordコミュニティーを通じて保有するNFTコンテンツの情報発信・共有をすることで、NFTコンテンツの価値が高まりコミュニティー全体が盛り上がるような仕組みは、現状非常に効果的に働いています。理由としては、NFTコンテンツを保有しているメリットや特別感を最大限に活かしたいNFTホルダーやコミュニティー全体の意識に強く訴求するからでしょう。
一方で、Discordを活用することによる、アーティストやクリエーター側のメリットは以下の3点です。
- 直接的な収益化の機会の創出
- ファンとのエンゲージメントの向上
- ブランディングとプロモーションの機会の創出
順番に解説します。
直接的な収益化の機会の創出
Discordコミュニティーを通じて、アーティストやクリエーターは直接的な収益化の機会を獲得できます。NFTの販売やオークションを開催することで、ファンやコレクターとNFTコンテンツを売買できるからです。これにより、独自のコンテンツや限定アイテムを提供することで収益を上げることができ、創造的な活動をより持続可能なビジネスモデルに結び付けることができます。
ファンとのエンゲージメントの向上
Discordコミュニティーは、アーティストやクリエーターとそのファンとの密なつながりを築くための理想的なプラットフォームです。コミュニティーメンバーは、直接的なコミュニケーションチャンネルを通じてアーティストと交流し、作品に対するフィードバックやアイデアを提供することができます。これにより、アーティストやクリエーターは、自身のファンとより深い関係を築き、ファンを継続的に魅了するコンテンツやイベントを提供することができます。
ブランディングとプロモーションの機会の創出
Discordコミュニティーは、アーティストやクリエーターのブランディングとプロモーションの機会を提供します。コミュニティー内で独自のスタイルやアイデンティティを構築し、ファンとの結びつきを強化することで、アーティストの知名度や影響力を向上させることができます。また、限定的なコンテンツやプレビュー、デモンストレーションなどを提供することで、ファンを熱狂させ、新しい作品やプロジェクトのローンチを成功させることができます。
また、NFTの販売や取引はメディアの注目を集めることがあります。アーティストやクリエーターはNFTの制作や販売に関するストーリーを作り出し、それをプロモーションやブランディングに活用することができます。NFTの一意性や新しさにより、メディアやファンの関心を引きつけ、自身や自身の作品を広く認知させることができます。
このように、Discordコミュニティーはアーティストやクリエーターにとって、直接的な収益化の機会を提供するだけでなく、ファンとのエンゲージメントを向上させ、ブランディングやプロモーションの機会を創出する貴重なツールです。これにより、アーティストはより多くの人々に自身の作品を発信し、熱心なコミュニティーを築くことができます。
まとめ
本記事では、NFTがメタバースやゲーム、投資対象としてだけではなく、飲食店での会員限定のサービスや、電子書籍NFT、またイベントチケットNFTなどの分野で広がっていることを解説しました。さらに、コミュニティーツールであるDiscordが、なぜNFTの分野で活用されているかを、アーティスト・クリエーター側とNFTホルダー(ファン)側の両方の視点でメリットを解説しましたので、理解が深まったのではないでしょうか。
NFTの普及により、娯楽分野においてさらに新しいビジネスが創出される可能性を秘めています。今後、娯楽業界はよりエキサイティングで革新的な体験が提供されることも期待できるでしょう。NFTはまだまだこれからの分野ではありますが、日常のさまざまな分野に組み込まれていく可能性があります。日々NFTに関して些細なことでも見逃したり聞き逃したりしないように、常にアンテナを張って情報感度を高め、情報収集することをおすすめします。