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ブロックチェーンを活用して製造業の改革を目指す「Final Chain」とは

解説系記事

製造業は、日本経済の成長を支えてきた重要な産業の一つですが、近年は「人手不足」「自動化の遅れ」などの課題を抱えています。従業員が減る中でも、従来のアナログな方法で膨大な事務作業をこなし、数十年間も現場がアップデートされていない会社も少なくありません。

日々のルーティン業務に労力を費やし、本来やるべき価値創造のための活動に時間を割けていないのが現状です。そうした中「Final Chain」というプラットフォームを持つ「Final Aim社」が、製造業全体を変えるために革新的な取り組みを行っています。

本記事では、Final Aim社やFinal Chainの概要、具体的な事例などを詳しく紹介していきます。

Final Chainとは?

引用:https://final-aim.com/#top

Final Chainとは、Final Aim社が運営するブロックチェーンプラットフォームのことです。歴史はまだ浅く、2021年11月にベータ版がリリースされました。Final Chainには、ライセンスの有効期限や契約に関することなど、さまざまな情報を書き込むことができます。

Final Aim社は「Web3 Technologies for Industrial Design(製造業のデザインためのWeb3.0テクノロジー)」を方針として掲げています。デザインという表現が使われていますが、ここでは設計から製造計画、販売戦略など、全体的な業務に関することと捉えていいでしょう。

近年DXを推進する動きがありますが、国内でのブロックチェーンを活用した事例はまだ少ないです。ブロックチェーンという新しい技術を、どのように業務へ活用するかの議論が行われている段階です。

Final Aim社にはすでに多くの実績があり、ブロックチェーンを活用したDX化を推進する第一人者となる可能性があります。製造業は未開拓の領域が多く残されている業界であり、今後の発展にも大いに期待できるでしょう。

Final Chainの特徴

引用:https://final-aim.com/#top

Final Chainには以下のような特徴があります。

  • デザインと製造業のためのプラットフォーム
  • 主に米国と日本で活動
  • 2019年12月の設立以降、世界中の企業との実績がある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

製造業のためのプラットフォーム

Final Aim社の方針「Web3 Technologies for Industrial Design(製造業のデザインためのWeb3.0テクノロジー)」にもあるように、Final Chainは製造業が抱える悩みを解決することに特化したブロックチェーンプラットフォームです。

Final Chainは、スマートコントラクトとトークン発行の機能、分散型ストレージのIPFSなどを実装しています。これらは契約の実行と後工程の管理、ライセンス有効期限の設定、処理履歴の記載など、さまざまな用途への活用が期待されています。

特に、契約に多くのリソースを割かねばならないことは、古くから製造業に携わる企業を悩ませてきました。Final Chainでは支払いや契約期限の管理などを自動化し、処理にかかる人件費を大幅に削減することができます。

主に米国と日本で活動

Final Aim社の拠点は、米国と日本の2つです。公式サイトでは、同社の経営に携わる2人の日本人共同経営者の名前や経歴を確認することができます。

日本を始め、米国、シンガポール、インドネシア、オランダなど、さまざまな国との実績があります。

2019年12月の設立以降、世界中の企業との実績がある

Final Aim社は2019年12月に設立され、2021年11月にベータ版のFinal Chainをリリースした比較的新しい会社ですが、すでに多くの実績があります。主な実績は以下の通りです。

  • プラスチックメーカー「Yasnli(インドネシア)」
  • 高い3Dプリンティング技術を持つ「Ultimaker(オランダ)」
  • ロボット工学のスタートアップ「OTSAW(シンガポール)」
  • 世界的なメーカーのソニー子会社「ソニー デザイン コンサルティング(日本)」
  • CADの大手企業「Autodesk(米国)」

3Dモデルの事業を主力としていた会社であり、デザインや設計に関する実績が多いです。Final Chainのリリースからは約1年半が経過し、今後は製造業に関する多くの実績が生まれることでしょう。

Final Chainを利用した事例

引用:https://final-aim.com/#top

Final Chainを利用した事例は、主に以下のものがあります。

  • ICカード型ウォレットの実証実験
  • 脱炭素領域におけるブロックチェーン活用の実証実験
  • リゾート地の写真をNFT化して位置情報を記録
  • 生産者とつながる限定ストア

ここで紹介する事例には、実証実験段階で実業務に採用されていないものも含まれます。それぞれ詳しく解説していきます。

ICカード型ウォレットの実証実験

2022年8月、ソニーデザインコンサルティング社とFinal Aim社は、Final Chainを活用したICカード型のハードウォレットの実証実験を開始しました。

ソニーデザインコンサルティング社の親会社であるソニーは、交通マネーにも採用されている非接触ICカード技術方式「FeliCa(フェリカ)」を開発した会社です。FeliCaには、厳重なセキュリティのもとで高速で通信でき何度もデータを書き換えられるメリットがある一方で、用途が決済領域に限られスケールしづらいという課題もありました。

ソニーデザインコンサルティング社は、Final Chainを活用することで、個人情報管理や相互認証、暗号通信技術が可能なハードウェアウォレットの開発を目指しています。

すでに多くの人がSuicaを持っているように、ソニーが持つFeliCaの技術方式は暮らしに広く普及しています。今後FeliCaにFinal Chainが持つ技術が採用され実装された際には、大きなインパクトを残すことでしょう。

リゾート地の写真をNFT化して位置情報を記録

2023年1月、一般社団法人白馬村観光局と新東通信社は、Final Aim社とPOC(概念実証)を行うことを発表しました。POCとは、新たなアイデアの実現可能性や、取り組みによって得られる効果を実測していくことです。

長野県にある白馬村は、持続可能な観光地作りを行っており、ブロックチェーン技術を活用し、資源を最大限活かしていくことを目標に掲げている地域です。今回の取り組みでは、専用のウェブサイトに白馬村の写真を掲載し、画像に付帯する位置や時間の情報がブロックチェーンに記載されます。写真を掲載した人にはNFTの証明書が発行されます。このプロジェクトでは、気候変動による雪不足に悩まされている白馬村の自然の景色をブロックチェーンに記録することが狙いとなっています。

白馬村にとってブロックチェーン、Web3.0技術を活用した初めての取り組みであり、得られた知見をもとに、環境への負荷が少ない観光や宿泊体験などに役立てていく予定です。

脱炭素領域におけるブロックチェーン活用の実証実験

2023年2月、オリエントシステム社とFinal Aim社はFinal Chainを活用し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っていくことを発表しました。

オリエントシステム社は、LEDや機械に使用するハーネス事業を展開する製造業の会社です。この取り組みでは、Final Chainでカーボンフットプリント(原材料調達から製造、廃棄までの二酸化炭素排出量)を可視化し、削減効果を測れるようにすることで、環境に配慮した持続可能な経営を目指していきます。

また、デザインから量産に関する契約の自動化、商社機能の効率化など、他の業務への展開も期待されています。オリエントシステム社が製造業でブロックチェーンを用いて変革を行った代表的な会社となるか、今後の動きに注目していきましょう。

生産者とつながる限定ストア

2023年2月、パナソニック社とSOLIT!社は「共感からはじまる未来の購入体験」をテーマにしたポップアップストアを、下北沢に3月3日〜5日までの3日間限定で開店しました。ポップアップストアとは、期間限定で開設されるお店のことです。

このお店は「無意識の偏見」を取り除くことを目的とするRMP(Removing Microaggression Products)プロジェクトの第一弾として設立されました。無意識の偏見とは、着ている服によってその人をカテゴライズする、持っているアイテムによってその人の収入を判断するなど、自分自身が普段意識しないところにある見方や偏見のことです。

人は普段から目につきやすい服についての偏見を持ちやすいといわれています。例えば、服を購入する際に「生産国や地域」「企業ブランド」で良し悪しを判断することが少なくありません。また、大量生産・大量廃棄もファッション業界の抱える課題の一つでもあります。

今回開設したお店は、アパレルデザインや生産を手がけるSOLIT!社により、シンプルなデザインのシャツが限定100枚販売されました。このシャツは無意識の偏見を排除するために、生産者の方々の想いを知り、共感することで購入を決めるような仕組みを導入しています。

この仕組みは、Final Aim社が提供するブロックチェーンを用いて構築が行われました。購入者は企業色を排除されたコミュニティの中で、生産者と直接つながることができます。

こうした取り組みが増えることで、製造や生産に携わる人がフォーカスされるようになり、世間の無意識の偏見を取り除くきっかけとなることを狙いとしています。

まとめ

近年、SDGsやDX化を実現するための一つのツールとして、ブロックチェーンが注目を集めています。製造業では昔の方法を踏襲している会社も多く、新しい技術によって大きな変革が起こる可能性を秘めています。

Final Chainを運営するFinal Aim社は世界各国の大手企業と実績のある会社です。現在は製造業に限らずあらゆる業界での実証実験を行っており、今後も新しい取り組みが発表されていくことでしょう。

Final Aim社の取り組みは公式サイトでアップロードされています。気になる方は、定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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