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SDGsに向けたブロックチェーンの活用法とは?活用事例や企業の取り組みを紹介

解説系記事

あらゆる企業が、SDGsへの取り組みを加速させています。このSDGsに対する取り組みの重要性は年々高まっており、企業が存続する上で不可欠な施策だと言えるでしょう。

そのような中で、ブロックチェーンのひとつの用途として、SDGs領域への展開が期待されています。すでにいくつもの事例が誕生しており、今後のSDGs施策を進める上で重要な役割を担おうとしています。とはいえ、ブロックチェーンを活用した場合、事業者はどのようなメリットを得られるのでしょうか。

そこでこの記事では、SDGsに向けたブロックチェーンの活用法について活用事例を交えながら紹介します。

ブロックチェーンをSDGsに活用するメリット

これまでのブロックチェーンにおける主な用途は、金融やゲームなどが中心でした。そのような中で、このブロックチェーン技術をSDGsの分野で活用しようとする試みが進んでいます。なぜならブロックチェーンが持つ特性は、SDGsとの相性が良いためです。そこでここでは、SDGsの領域にブロックチェーンを導入した場合のメリットを紹介します。

透明性の高さ

ブロックチェーンの利点は、情報の透明性を確保できる点です。

ブロックチェーン上でSDGsの活動を記録していけば、自社の実績について誰もが検証できます。このため、第三者機関に頼ることなく、自社の取り組みにおける公正性の証明が可能です。

SDGsに関する従来の企業活動では、企業側が自己申告で活動内容を発信しない限り、社会に情報を届ける術がありませんでした。加えて、公表した実績値の算出方法は、完全にブラックボックス化されています。このような状況であるため、一般の市民は企業側が開示した実績を盲目的に信じるしかありませんでした。

このような課題も、ブロックチェーンを導入すれば解消が可能です。ブロックチェーン上で自社のSDGs活動を展開すれば、公正なデータが対外的に自動で公表されます。よって、社外の人も実績の裏取りができるようになります。

このように「情報の透明性」という観点から、ブロックチェーンはSDGs活動に最適です。

信頼性の高さ

情報や記録の改ざんが困難な点も、ブロックチェーンの魅力です。特に、連続性のあるデータを正確に記録する際に、ブロックチェーンは適しています。

原材料の調達先や製造工程など、SDGsではサプライチェーン全体にも気を配らなければなりません。そのため製造業では、商品の流通過程を監視する目的で、複数の地域や組織をまたぐデータ管理を必要とします。このような国や組織をまたぐ局面でも、ブロックチェーンであれば改ざんできない形で情報を管理できます。

グローバル展開のしやすさ

ブロックチェーンは、国境を越えてグローバルに展開できる点も魅力です。

脱炭素や資源管理など、SDGsの取り組みでは国や地域の枠組みに関係なく、世界中の企業が登録しなければなりません。そのような中で、特定の管理者に依存しないブロックチェーンは有効な手段です。

またブロックチェーンを活用すれば、あらゆるデジタル資産をトークン化できます。つまり、CO2排出権や原産地証明などの権利もNFT化が可能です。これにより、ブロックチェーンを介して世界中の人々の間で権利の取引ができるようになります。

SDGsへブロックチェーンを用いた実例

SDGsでは、貧困問題から地球環境の保護まで幅広い課題が掲げられています。いずれの課題も地球規模で取り組まなければならないものであるため、ブロックチェーンとの相性は良好です。

ここでは、SDGsにおけるブロックチェーンの活用方法について、実例を交えながら紹介します。

脱炭素

二酸化炭素の可視化や排出権取引のプラットフォームとして、ブロックチェーンは有効です。

SDGsでは「気候変動に具体的な対策を」が掲げられており、CO2削減の目標が定められています。このCO2削減の課題は、業種を問わずあらゆる企業に関わる重要なテーマです。そこでNFTの技術を活用すれば、CO2排出量の可視化や排出権の取引がスムーズに実現できます。

このCO2削減量の可視化について、実際に取り組んでいる国内のスタートアップが、株式会社bajjiです。bajiiが提供するサービス「capture.x」は、企業のCO2削減に向けた取り組み実績を可視化できるアプリです。具体例としてcapture.xでは、太陽光パネルなどの設備がNFT化された上で、一般ユーザーへ販売されます。そして、このNFTを手にした一般のユーザーには、CO2削減量のスコアが反映されます。つまり、育成ゲームと同様の感覚でCO2削減に関心を持てる点が強みです。企業の取り組みと一般市民を結び付けられる点が、capture.xの魅力だと言えるでしょう。

他にも、株式会社IHIと富士通株式会社は共同で、ブロックチェーンを用いたカーボンフットプリント技術の開発に取り組んでいます。この技術では、商品の原料調達から生産、流通までの工程で生じるCO2を全て記録できます。これにより、商品やサービスが排出するCO2について、より正確な数値化が可能です。

これらの事例のように、ブロックチェーンによってCO2排出量の「見える化」が実現されています。

金融インフラ

SDGsでは「貧困をなくそう」が掲げられており、格差の解消が重要なテーマとなっています。そのような中で、ブロックチェーンを用いれば、世界中の人々に対して金融インフラの提供が可能です。

開発途上国では、銀行口座を保有できない人々も存在します。このような人は、財産の貯蓄ができません。そこで、暗号資産ウォレットを通じて金融インフラを提供するアイデアが考えられています。

暗号資産ウォレットは、スマートフォン1台あれば誰でも所有できます。加えて、利用者が住む地域の情勢にも左右されません。銀行の支店やATMを必要としないため、インフラの整備が遅れたエリアでもサービス展開が可能です。

実際に国内でも、PassPay株式会社が暗号資産ウォレットの普及に向けて活動しています。このPassPayは、暗号資産ウォレットやステーブルコインの開発に取り組む日本のスタートアップです。暗号資産ウォレットを通じて、世界中の人々への金融インフラの提供を目指しています。

このようにブロックチェーンは、貧困問題の解決手段として機能します。

寄付

SDGsの目標を達成するために、さまざまな機関が寄付や支援金を募っています。この寄付金の募集や分配にも、ブロックチェーンの活用が期待されています。

ブロックチェーンの強みは、全ての送金記録を公開できる点です。そのため、集められた資金が適正な用途に充てられているか否かについて、第三者が判断できます。従来の募金活動では、資金の行方が不透明でした。また、主催団体による中抜きの懸念も指摘されてきました。これに対してブロックチェーンを活用すれば、誰もが納得する形で寄付を募ることができます。

加えて、世界中から資金を集められる点も魅力です。国境を越えて寄付やチャリティを募る際に、ブロックチェーンは送金プラットフォームとして適しています。具体例としてロシアとウクライナの紛争では、ウクライナに対して2022年6月時点で180億円を超える資金が世界中から寄せられています。このように、世界中から寄付を募る場合にブロックチェーンは最適です。

実際にブロックチェーンを活用して寄付を集められるプラットフォームも存在します。それが、Endaomentです。このEndaomentでは、暗号資産を介してさまざまな社会課題への支援ができます。運営にかかる諸経費や送金手数料が低コストであるため、慈善団体に対してより多くの資金を送り届けられます。

資源管理

SDGsの「つくる責任 つかう責任」では、天然資源の適正な管理が求められています。この資源管理の課題にも、ブロックチェーンは効果を発揮します。

電子機器や食品におけるサプライチェーンは、非常に複雑です。さまざまな国や事業者を経由して消費者の手元に届くため、それらの実態がなかなか把握できません。

例えば工業分野では、「コンフリクトミネラル(紛争鉱物)」の問題があります。このコンフリクトミネラルとは、紛争地域で採掘できる鉱物資源です。各国がコンフリクトミネラルを原料として調達すると武装勢力に資金が流れてしまうため、大きな問題となっています。他にも食品業界の場合では、原材料がフェアトレードの対象品であるか否かが重要な観点になっています。

このようなSDGsの課題をクリアするには、原料調達から生産、物流まで全ての工程を追跡しなければなりません。そこで、取引内容を正確に記録できるブロックチェーンが役に立ちます。

ブロックチェーンであれば、国や事業者を越えたデータ管理も簡単です。加えて、改ざんが不可能であるため、原材料のトレーサビリティにも適しています。実例としてSBIトレーサビリティ株式会社では、サプライチェーン管理を目的としたサービス「SHIMENAWA」を展開しました。

SDGs分野におけるブロックチェーン活用法のまとめ

この記事では、SDGsに向けたブロックチェーンの活用法について紹介しました。これまでのブロックチェーン業界では、金融やNFT向けの用途の大半を占めていました。ただ近年では、SDGs領域への応用にも期待が集まるようになっています。その結果として、さまざまな組織が研究・開発に力を入れ始めました。実際に、「5ireChain」のようなSDGs専用のブロックチェーンも登場しています。

SDGsの活動を推進する際に、ブロックチェーンは大きな効果を発揮するかもしれません。ぜひ今回の記事を参考にして、自社のSDGsの取り組みへのブロックチェーン導入を検討してみてください。

段巴亜

dan

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