エコへの関心やブロックチェーンシステムの効率化に向け、PoSへの注目は高まっています。PoSにおいてトランザクションを検証し、新しいブロックを生成するなどの重要な役割を担っているのがバリデーターです。
本記事ではバリデーターの概要や役割、参加窓口やプロセスについて分かりやすく解説します。
この記事の構成
バリデーターとは?
バリデーターはブロックチェーンネットワークにおいてトランザクションの検証や新しいブロックの生成を行うノードの一種です。特にPoS(Proof of Stake)のコンセンサスメカニズムにおいて重要な役割を果たします。バリデーターに参加することで報酬を得られることも大きな魅力として注目されています。
デリゲーターやノードとは違う?
デリゲーターはトークンの委任を通じてネットワークを支えます。ノードはネットワーク全体の分散性とセキュリティを維持します。
もっとも大きなカテゴリーはノードです。次にバリデーター、デリゲーターの順序となります。
リソースに余裕があり、「ブロックチェーンにより大きな貢献を果たしたい」という方はノード参加を計画しましょう。「バリデーターになるには保有資産量が足りない」という方は、CEXやDEXが提供するデリゲーターを利用してみてはいかがでしょうか。
PoWとPoSへの理解
PoWとPoSを理解することでネットワークへの貢献プロセスを明らかにすることができます。また、PoWとPoSではブロック生成者への呼称が異なることも認識しておきましょう。
PoW(Proof of Work)
PoWはビットコインなどの多くの初期のブロックチェーンネットワークで採用されているコンセンサスアルゴリズムです。
新しいブロックの生成者はマイナーと呼ばれます。マイナーは複雑な数学的問題を競合他者より早く解くことで報酬を得ます。
PoWでは大量の計算能力(電力)を必要とするため、エネルギー効率が課題となっています。マイナーが消費する電力を問題視し、規制をする国もあります。
PoS(Proof of Stake)
PoSにおいて新しいブロックの生成者はバリデーターと呼ばれます。バリデーターはトークン保有量(ステーキング量)、保有期間などに基づいてランダムに選択されます。
PoSはPoWに比べてエネルギー効率が良く、スケーラビリティ(拡張性)も高いとされています。
Ethereumも2022年9月の大型アップデートでPoWからPoSへの移行を果たしています。
バリデーターの役割
- トランザクションの検証
- 新しいブロックの生成
- ネットワークの安全性の維持
- 合意形成(コンセンサス)
- ガバナンス参加
トランザクションの検証
バリデーターの主な役割はブロックチェーンネットワーク上で行われるトランザクションの検証です。署名の正当性を確認し、不正なトランザクション発生を未然に防ぎます。
新しいブロックの生成
バリデーターは新しいブロックを生成しネットワークに追加します。新たなトランザクションを公式に記録し、ブロックチェーンを拡張していきます。
ネットワークの安全性の維持
バリデーターはネットワーク上の異常な動きを検出し、対策を講じることが求められます。
不正なトランザクションや攻撃からネットワークを守るために重要なことです。
合意形成(コンセンサス)
バリデーターはネットワーク上で発生するトランザクションの順序や正当性についての合意形成にも関与します。新しいトランザクションがブロックチェーンの規則に従って行われているかを検証し、取引が正当である場合は情報をネットワーク全体に広めます。
ガバナンス参加
一般的にバリデーターは多くのネイティブトークンを保有することから、ブロックチェーンプロジェクトのガバナンスで果たす役割も大きくなります。ネットワークの将来的な方向性やアップデートについても影響を与えます。
バリデーターへの参加窓口
- 直接参加
- バリデータープールに参加
- CEXを通して参加
バリデーターに参加するためのエントリー窓口は大きく分けて3つあります。
直接参加
十分な知識とリソースを持っている場合、直接ブロックチェーンネットワークに参加してバリデーターになることができます。主なリソースはステーキング用のトークン、常時接続可能なインターネット環境、高性能PC、ソフトウェア管理能力などです。
バリデータープールに参加
バリデーターとして個人参加する場合、Ethereumでは32ETH(2023年7月時点で800万円以上)が必要になります。ステーキングできるトークンがない場合、DEXなどでバリデータープールに参加するという手段もあります。
それぞれのユーザーがETHをプールに差出し、共同でバリデーターを運営する形態です。報酬は参加者内で分配されます。
CEXを通して参加
一部のCEXはステーキングサービスを提供しています。ユーザーはCEXを通じてバリデーターになることができます。
CEXが顧客から委託されたコインを使用し、バリデーターとしての役割を果たします。報酬はCEXと顧客内で分配されます。
バリデーターへの参加条件
- ステーキング
- ソフトウェア実装とインターネット接続
- 信頼性とセキュリティ確保
バリデーターとして直接参加する場合の一般的な条件※1を解説します。
※1 バリデーターへの参加条件はブロックチェーンごとに異なります。事前にコンセンサスメカニズムや具体的な設定を確認する必要があります。
ステーキング
バリデーターになるためには一定量のネイティブトークンをステーキングする必要があります。ステーキングによりバリデーターはネットワークに対して責任を持つことになります。
ソフトウェア実装とインターネット接続
トランザクションの検証や新しいブロックの生成を行うために、安定したインターネット環境下でクライアントソフトウェアを稼働させ続けなければなりません。場合によっては高性能なコンピューターも必要になります。
信頼性とセキュリティ確保
バリデーターにはネットワークの信頼性とセキュリティを維持するために、不正行為を行わないことが求められます。不正行為を行った場合、ステーキングしたトークンが没収される可能性があります。
PoSでの検証プロセス
- ステーキング
- ブロックの生成
- ブロックの検証
- ブロックの追加
- 報酬の分配
ブロックチェーンのバリデーターがどのように検証プロセスを進めるかは、そのブロックチェーンが採用しているコンセンサスアルゴリズムによります。
ここではPoSを採用するブロックチェーンネットワークの一般的プロセスを説明します。
ステーキング
バリデーターはまず一定量のコインをステーキングすることでネットワークに参加します。直接参加する場合はステーキング量に制限がかけられている場合もあります。また、不正行為が認められた場合、バリデーターはステーキングしたコインを失う可能性があります。
ブロックの生成
バリデーターは新しいブロックを生成します。ブロックを生成する権利はステーキングしたトークン量や保有期間などに基づいて選ばれます。
ブロックの検証
新しいブロックが生成されたら、他のバリデーターがそのブロックを検証します。ブロックに含まれるトランザクションが正しいこと、ブロック生成者がルールを遵守していることなどを確認します。
ブロックの追加
ブロックの正当性が検証された後、バリデーターによってブロックチェーンに追加されます。
報酬の分配
ブロックを生成したバリデーターとそのブロックを検証したバリデーターに報酬が分配されます。報酬は通常、新たに発行されたトークンやトランザクション手数料から割り振られます。
バリデーターの報酬
- ステーキング量に応じて
- トークンの保有期間に応じて
- 信頼性に応じて
バリデーターが得られる報酬額はステーキングした暗号通貨の量に大きく依存します。ステーキングする暗号通貨の量が多ければ多いほど、報酬も高くなる可能性があります。
ステーキング量に応じて
バリデーターの報酬は主にステーキング(保有)量によって決定します。ネットワークに対する貢献度を反映する仕様です。
Ethereumにおけるバリデーターの上限ステーキング量は32ETHです。一方、Polygonなど上限を設けないプロジェクトもあります。
トークンの保有期間に応じて
トークンの保有期間に応じた報酬は長期間トークンを保有・ステーキングすることで、より多くの報酬を得られる仕組みです。ネットワークの安定性を高め、長期的な参加を奨励するためのインセンティブとなります。
具体的なケーススタディとしてはCreditcoin※2が挙げられます。Creditcoinは公開テストネットでインセンティブプログラムを採用しています。ユーザーはバリデーターまたはノミネーターとしてテストネットに参加し、長くプロジェクトに貢献することでより多くの報酬を得ます。
※2 Creditcoin(CTC)は分散型金融(DeFi)のエコシステムを拡大することを目指すブロックチェーンプラットフォームです。
信頼性に応じて
信頼性はバリデーターの報酬を決定する上で重要な要素です。例えば、Tezosではバリデーター※3は信頼性に応じて報酬を得ます。バリデーション※4をするためには信頼性を証明し続ける必要があります。
信頼性を損なう行為の代表的なものとして、不正なトランザクションの承認があります。この行為はスラッシングと呼ばれ、不正行為を行ったバリデーターのステーキングトークンは没収される可能性があります。
※3 Tezosプロジェクトではバリデーターをベーカーと呼びます。
※4 Tezosプロジェクトではバリデーションをベーキングと呼びます。
バリデーターとして参加できるWeb3.0プロジェクト
- Ethereum
- Solana
- Cardano
- Avalanche
- Polygon (MATIC)
- Cosmos (ATOM)
- Polkadot
- Algorand
Ethereum
公式サイト参照:https://ethereum.org/ja/
Ethereumはスマートコントラクトを実行するための分散型プラットフォームです。大型アップデートでPoWからPoSへ移行しています。バリデーターに参加するために、ユーザーは一律32ETH※5をステーキングする必要があります。
※5 2023年7月にEthereumバリデーター参加条件としてステーキング量は一律32ETHです。一方で、ステーキングできる最大量を2,048ETHまで引き上げる案も議論されています。
Solana
公式サイト参照:https://solana.com/ja
Solanaは高速のブロックチェーンプラットフォームです。PoH※6とPoSのハイブリッドモデルを採用しています。バリデーターとして参加するためにはSOLのステーキング、高性能のハードウェアと安定したインターネット接続が必要です。最低ステーキング量については設定されていませんが、投票に関わるには別途コストがかかります。
※6 PoH(Proof of History)は各トランザクションが発生した時間を証明します。トランザクションの時間スタンプを生成/活用することで、スケーラビリティと効率性の向上を目指します。
Cardano
公式サイト参照:https://cardano.org/
Cardanoは拡張性に優れたブロックチェーンプラットフォームです。Ouroborosという独自のPoSアルゴリズムを使用しています。バリデーター※7はランダムに選ばれ、5.5ADA以上をステーキングすることで選出されます。
※7 Cardanoプロジェクトではバリデーターをスロットリーダーと呼びます。
Avalanche
公式サイト参照:https://www.avax.network/
Avalancheは高い決済処理能力、Ethereumとの互換性を持つ次世代ブロックチェーンです。PoSアルゴリズムにはAvalanche Consensus Protocolを採用しています。バリデーターとして参加するためには2,000AVAX以上をステーキングする必要があります。
Polygon (MATIC)
公式サイト参照:https://polygon.technology/
PolygonはEthereumと互換性のあるスケーリングソリューションです。PoSチェーンとPlasmaチェーンを提供します。バリデーターとして参加するためには1MATIC※8以上をステーキングする必要があります。
※8 バリデーター参加に1MATIC、ステーキングには別途1MATICから参加可能です。
Cosmos (ATOM)
公式サイト参照:https://cosmos.network/
Cosmosは異なるブロックチェーンを相互に接続できるブロックチェーンプラットフォームです。Tendermint BFTというPoSアルゴリズムを採用しています。最低1ATOMをステーキングすることでバリデーターに参加できます。
Polkadot
公式サイト参照:https://polkadot.network/
Polkadotは複数のブロックチェーンを相互に接続し、一緒に動作させることを可能にするネットワークです。異なるブロックチェーン間でのデータとアセットの転送をすることができます。405DOT※9をステーキングすることでバリデーター参加が可能です。
※9 この情報は2023年7月時点のものです。Polkadotバリデーターへ参加するための最低ステーキング量は変動します。最新の情報は公式サイトを参照して下さい。
Algorand
公式サイト参照:https://algorand.com/
Algorandはスケーラビリティとセキュリティを兼ね備えた公開型のブロックチェーンプラットフォームです。Pure Proof-of-Stake (PPoS)という独自のコンセンサスアルゴリズムを採用しています。1ALGOをステーキングすることでバリデーターに参加できます。
まとめ
バリデーターはPoSを成立させるために重要な役割を果たします。ブロックチェーンの正当性を証明することでトークン報酬が獲得できるというのも大きな魅力です。一定のリソースを割り振れる方であれば、誰でも参加ができます。
本記事ではバリデーターの概要や役割、参加窓口やプロセスについて解説しました。バリデーター参加に興味がある方、PoSのインセンティブについて理解を深めようとしている方々に向けて有益な情報となれば幸いです。