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DAppsとは?スマートコントラクトで最適化されるWeb3.0ビジネス

解説系記事

暗号資産の認知度が高まると共に「DApps(ダップス)」というワードに注目が集まっています。DAppsはweb3.0時代のアプリケーションです。ブロックチェーン技術によって透明性とセキュリティは保証され、様々なビジネスでの活用が期待されています。

本記事ではDAppsの概要、種類、DAppsの開発フェーズ、DAppsの可能性について解説します。Web3.0ビジネスを進める皆様にとって有益な情報となれば幸いです。

DAppsとは?

DApps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)はブロックチェーン上で動作するアプリケーションソフトです。スマートコントラクトを活用することで中央管理コストや不正操作リスクを回避します。アプリのデータとコードは分散型ネットワーク上に保存され、システムの透明性とセキュリティが保証されます。

DAppsの代表的な例はDEX(Decentralized Exchanges:分散型取引所)です。DEXを使用することで、銀行や第三者を介さずに直接金融取引が可能になります。さらに、DAppsは金融以外でもビジネス、教育分野、エンターテイメント分野などで多岐に渡る活用が期待されています。

DAppsの特徴

  • 分散化
  • 透明性
  • 効率性

分散化

DAppsは中央サーバーではなく、分散型ネットワーク上で動作します。従来のアプリケーションでは中央のサーバーが攻撃されると機能不全が起きる可能性があります。DAppsではネットワーク全体で攻撃箇所を分散させるため、機能不全リスクが大幅に減少します。

透明性

DAppsの全ての取引と操作はブロックチェーンネットワークの参加者に公開されます※1。データ改ざんも極めて困難であるため、不正操作のリスクを低減させます。DAppsを企業がソリューションサービスとして提供する場合、この透明性はユーザーとの信頼関係の強化につながります。

※1 一部プロセスがオフチェーン化されたDAppsもあります。

効率性

スマートコントラクトによる自動取引は人間の介入を必要としません。取引の承認や契約の履行などのプロセスは高速化され、コストとエラーを低減させます。DAppsは既存ビジネスを効率化させると共に、ユーザー利益を追求できる有力なソリューションです。

DAppsの種類

  • ファイナンス
  • マーケットプレイス
  • エンターテイメント
  • コミュニケーション
  • ガバナンス¥

ファイナンス

種類 ファイナンス
目的 中央管理者を介さない金融の実現
具体例 Uniswap,SushiSwap,PancakeSwap
利点 取引コストの削減、透明性の向上、セキュリティの強化

ファイナンス分野のDAppsで代表的なものはDEXです。DEXは中央集権的なシステムを介さずにユーザー間で直接的な資産の交換を可能にします。ユーザーは自由かつ安全に暗号資産取引を行うことができ、中央管理者によるルールに縛られることはありません。DEXは暗号資産取引の新しい標準を築き、Web3.0に高いユーザビリティを提供します。

マーケットプレイス

種類 マーケットプレイス
目的 NFT売買
具体例 OpenSea,Rarible,Magic Eden
利点 NFTトレードの利便性向上、NFT市場価格の評価

NFTマーケットプレイスはNFTの購入や販売を可能にするDAppsです。多くのマーケットプレイスはデジタルアセットのトークン化サービスも提供します。トークン化する際にスマートコントラクトの仕様をカスタマイズすることで、二次流通においてもクリエイターの利益を確保することができます。

エンターテイメント

種類 エンターテイメント
目的 娯楽の収益化と興行の効率化
具体例 Axie Infinity,CryptoKitties,Stepn,Audius
利点 クリエイターの収益向上、ユーザー体験の収益化

エンターテイメント系DAppsはゲーム、音楽、動画などのコンテンツを分散型プラットフォーム上で提供します。ゲームは特にBCG(Block Chain Game)と呼ばれ、ユーザーはゲームプレイで暗号資産を稼ぐことができます。音楽配信や動画共有DAppsなどもクリエイター/ユーザー双方にインセンティブを与えることから、Web3.0で大きな注目を集めています。

コミュニケーション

種類 コミュニケーション
目的 分散型ネットワーク上でのセキュアなコミュニケーション
具体例 Status,TwitFi
利点 エンドツーエンドの暗号化、システムの耐障害性

コミュニケーション機能に特化したDAppsもあります。システムを分散型にすることで耐障害性やプライバシーを追求できます。コミュニケーションだけでなく、暗号資産のやり取りやコミュニティ活動に応じたインセンティブシステムを実装するプロジェクトもあります。TwitFiやDiscoFiなど特定のSNSと連動させたDAppsも話題となりました。

ガバナンス

種類 ガバナンス
目的 DAOの構築/運営管理
具体例 Aragon,DAOstack
利点 組織管理の透明性向上、組織運営決定の民主化支援

ガバナンス系DAppsはDAO※2を構築する際に使用されます。ブロックチェーン上で投票、提案、議論などのガバナンス機能を提供します。全てのプロセスがブロックチェーン上で記録されるため、組織管理の正当性が保証されます。ガバナンス系DAppsは新しい組織運営の形態を提案し、多様なステークホルダーの参加を促進します。

※2 DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)は意思決定プロセスを分散化し、民主化したweb3.0時代の組織体系です。

DAppsが広まった背景

2015年、DAppsの開発はイーサリアムの登場によって加速していきます。イーサリアムはスマートコントラクトでDAppsの開発を可能にした最初のプラットフォームです。

最初のDAppsの成功例として「Uniswap」(DEX)が挙げられます。UniswapはDeFiブームの火付け役です。Uniswapは2018年に登場し、スマートコントラクトによる自動化された流動性プールを実現しました。取引のスリッページとコストを大幅に削減し、DAppsの有効性を広く認知させます。

Uniswapの成功後、Curve FinanceやPancakeSwapなど様々なDEXがローンチされます。さらにファイナンス系以外でもマーケットプレイス系DApps、ゲームやコミュニケーション機能をもつDAppsなどが続々と開発/ローンチされました。

DAppsの開発

DAppsの開発プロセスはFront-endの開発、Back-endの開発、スマートコントラクトの開発という3つの主要フェーズから構成されます。それぞれの役割を理解することで、より効率的にDAppsの開発を進めることができます。

Front-endの開発

Front-endの開発フェーズではDAppsのユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)を設計/コーディングします。ユーザーと直接関係する視覚的な部分の作成です。この段階で優先されるのはDAppsのユーザビリティとビジュアルです。

コーディングは一般的なWeb開発ツール(HTML, CSS, JavaScript)で行います。作業の効率化のためにReactやVueなどのフレームワーク活用も有効です。ブロックチェーンとの連携にはWeb3.jsやEthers.jsなどのライブラリが必要になります。

このフェーズではWeb開発の基本的なスキルに加え、ブロックチェーンとの連携方法などの専門知識が求められます。

Back-endの開発

Back-endの開発ではサーバー側のシステム構築とデータ管理が行われます。ユーザーのリクエスト処理、データベースとの連携、外部APIとの通信などを実装していきます。

開発にはNode.js、Express、MongoDBなどのサーバー技術とデータベース管理プラットフォームが使用されます。ブロックチェーンとの連携でWeb3.jsなどのライブラリも必要です。

開発者/チームにはサーバー側のプログラミング、データベース管理、セキュリティ対策などが求められます。ブロックチェーンとの連携に関する知識も重要です。

スマートコントラクトの開発

スマートコントラクトの開発はDAppsの核心的な部分です。ブロックチェーン上で自動実行されるプログラムをコーディングします。

コーディングにはSolidityやVyperなどの言語が用いられます。TruffleやHardhatなどの開発フレームワークも作業の効率化に有効です。Ganacheなどのローカルブロックチェーン環境を活用し、ローンチ前にテストを行います。

開発者/チームにはブロックチェーンの基本原理の理解、セキュリティ対策などに加え、必要に応じてオラクル※3についての知識も求められます。

※3 オラクルについての関連記事:「分散型オラクルとは?外部リアルタイムデータとブロックチェーンの接続」

DAppsがもたらすビジネスの変革

DAppsはビジネスの変革を促進します。セキュリティの強化による信頼性の向上、コスト削減と効率化、サプライチェーン管理など、利点は多岐に渡ります。

セキュリティの強化

DAppsはその分散化と不変性によりアプリケーションサービスのセキュリティを強化します。従来の中央集権的なシステムではアプリを管理するサーバーが攻撃されると機能不全を起します。一方でDAppsはブロックチェーン上で動作し、データはネットワーク全体に分散しています。致命的な攻撃箇所がなくなり、セキュリティが大幅に強化されます。

さらに、ブロックチェーンの不変性によってデータの保存機能が強化されます。一度記録されたデータは後から改ざんされることはありません。アプリの透明性と信頼性も向上します。

コスト削減と効率化

従来のシステムではアプリ動作の実行などで中央管理コストが発生していました。DAppsではスマートコントラクトを用いて中央管理プロセスを自動化します。人件費削減はもちろん、人手によるエラーや遅延も削減されます。

既存ビジネスにもDAppsは導入できます。DXにより業務コスト削減と効率化を目指す企業にもDAppsは有効です。DAppsを活用し、業務プロセスの改善につなげていきましょう。

サプライチェーン管理

ブロックチェーンとスマートコントラクトの透明性、追跡可能性、自動化はサプライチェーン管理にも変革をもたらします。DAppsはサプライチェーンの各場面で生成されるデータをブロックチェーンに記録します。流通物品の正確な追跡と検証を可能にし、偽造や誤情報のリスクを減らします。

サプライチェーンにおける契約や支払いプロセスの自動化も可能です。人的エラーも予防でき、効率的なサプライチェーン管理が実現します。

金融サービスへのアクセスビリティ

従来の金融システムにアクセスするには銀行や金融機関のアカウントが必要です。アカウント作成に必要なIDを所持しない、所持できない理由がある方々は金融サービスを容易に利用することができません。DAppsはインターネット環境と端末があれば誰でもアクセスできるオープンな金融サービスを提供します。

DAppsは金融サービスの民主化を促進し、全世界の人々に低コストでボーダレスな取引を可能にします。

DAOとDIDによる管理

DAppsは組織の民主的な運営と個人のデータ主権を実現し、ビジネスの管理体系を根本から変革します。DAppsはDAOとDID※4の実装によって組織運営を革新します。

DAOはスマートコントラクトで統治ルールと運営プロセスを自動化した分散型自律組織です。中央集権的な管理者を必要としません。組織活動はブロックチェーンに記録されることからガバナンスの透明性が向上し、不正な運営を防ぐことができます。

DIDは個人の識別情報をブロックチェーン上に保存し、個人が自分の情報を管理・共有することを可能にします。DIDはW3C※5が推進するWeb技術の標準化の一環として構想/設計されました。Web3.0時代のプライバシー保護とセキュリティ強化を実現する上で重要な技術です。

※4 DID(Decentralized Identifier:分散型識別)
※5 W3C(World Wide Web Consortium)はWeb技術の標準化を進める非営利団体です。

DAppsの可能性

DAppsの活用はビジネスの枠組みを超え、様々な社会シーンに広がっていきます。すでにエンターテイメントや教育、環境分野でDAppsを用いたWeb3.0プロジェクトが進行中です。ここではDAppsの可能性を解説していきます。

エンターテイメント分野

DAppsのエンターテイメント分野での活用はすでに進んでいます。BCGではプレイヤーがゲーム内アイテムをNFTとして所有し、取引することが可能です。

今後はゲーム以外でも映画やアクティビティなど様々なエンターテイメントコンテンツにDAppsが活用されていきます。DAppsはユーザーとクリエイターの間の新しい経済的関係を構築していきます。

教育分野

DAppsの教育分野での活用はL2E(Learn to Earn)プロジェクトなどで既に進んでいます。L2Eは学んだ成果に応じてインセンティブが得られるエコシステムです。英語学習のDAppsが有名ですが、BCGなどがプロモーションとしてL2Eを実装する場合もあります。

さらにブロックチェーン上に学習履歴や資格を記録することで、学歴の正当性と透明性が保証されます。これからも教育分野でのDAppsの進化が注目されます。

医療分野

患者の医療データをブロックチェーン上に安全に保存し、患者自身がデータへのアクセス権を管理するDAppsが開発されています。MedRec※6やPatientory※7などは自分の健康情報を必要な医療関係者とだけ共有し、プライバシーを保護することができます。

DAppsを用いた医薬品のサプライチェーン管理では製造から配送、販売に至るまでのプロセスを追跡することが可能になります。ブロックチェーン技術によって偽造薬/不正取得薬の流通を防ぎ、エンドユーザーの安全性を高めます。

※6 MedRecはMIT Media Labが開発したイーサリアムベースの電子健康記録システムです。
※7 Patientoryはイーサリアムベースのヘルスケアデータ管理プラットフォームです。

社会支援分野

寄付の透明性を確保するためのDAppsが開発されています。Giveth※8は寄付金がどのように使用されたかをリアルタイムで追跡することができます。Braveブラウザ※9はBATを使用してWebサイト運営者に寄付を行うことができます。

既存の社会福祉分野でも、DAppsの導入でサービスの質と効率の改善が期待できます。スマートコントラクトによって福祉サービスのスケジューリングや報酬支払いの自動化などが可能になります

※8 Givethは分散型寄付プラットフォームです。
※9 Braveは広告ブロック機能や高速なサイト表示、プライバシー保護機能が強化されたオープンソースのWebブラウザです。

環境分野

環境分野でDAppsはサステナブルな未来を築く手段となります。プラスチックのリサイクルを促進するためのトークン報酬システムや、カーボンクレジットの取引プラットフォームなどが開発されています。

Energy Web※10はエネルギー市場の透明性を向上させます。The Carbon Blockchain※11は農業や工業分野のカーボンクレジットソリューションを提供します。DAppsは個人や企業のエコロジー貢献をより具体的に可視化していくでしょう。

※10 Energy Webはエネルギー市場の透明性や効率性を高めるためのソリューションを提供しています。
※11 The Carbon BlockchainはカーボンクレジットソリューションにDAppsを活用するプロジェクトです。2023年中にローンチ予定です。

技術的な課題と解決策

  • スケーラビリティ
  • プライバシー
  • オラクル接続

DAppsのユーザビリティを追求する上でいくつかの技術的な課題があります。しかし、それらの課題はイノベーティブな技術によって解決されつつあります。詳しく見ていきましょう。

スケーラビリティ

スケーラビリティはトランザクション処理能力の課題です。ブロックチェーンでは処理できるトランザクション数が限られています。大量のユーザーがDAppsにアクセスするとネットワークが混雑し、ガス代も高騰します。

解決策としてL2※12が注目されています。L2はメインブロックチェーンの上に別の層を構築し、トランザクションをオフチェーンで処理する技術です。L2技術によってDAppsはよりローコストで便利なサービスを提供できるようになります。

※12 L2(Layer2)に関する詳細記事:「L2スケーリングへの移行とは?イーサリアムのネットワーク負荷対策を解説」

プライバシー

DAppsのプライバシー保護※13はブロックチェーンの透明性という特性からくる課題です。トランザクションが公開されるため、個人情報の保護が難しくなります。

この課題に対する解決策としてゼロ知識証明(ZKP)などの先端暗号技術が注目されています。ZKPをDAppsに活用することで、ユーザープライバシーを保護しながら必要な情報の検証と共有が可能になります。

※13 プライバシーに関する詳細記事:「プライバシーの移行?イーサリアムの個人情報保護対策を解説」

オラクル接続

ブロックチェーンは従来の中央集権型APIとの直接的な連携が困難です。解決策としてオラクルと呼ばれる技術が注目されています。オラクルはブロックチェーンと外部データソースの橋渡し役を果たし、DAppsがリアルタイムの市場データや天候情報などを取得することを可能にします。

オラクルによってDAppsは従来のWebアプリケーションと同様の機能性を持ちながら、ブロックチェーンの透明性とセキュリティを享受することができます。

まとめ

DAppsはビジネス分野だけでなく、教育や環境分野でも様々な可能性が期待されています。DAppsへの理解を深め、実際に使用してみることでWeb3.0時代への備えとなります。

本記事ではDAppsの概要、種類、DAppsの開発フェーズ、DAppsの可能性について解説させて頂きました。Web3.0時代に備えるビジネスパーソンの方々に向けて有益な情報となれば幸いです。

AMEHARE

AMEHARE

ITの最新トレンドを発信しはじめて十余年。Web2から3の時代の変革もいち早く察知し、2012年ごろから仮想通貨に注目をし始める。次世代の文化やテクノロジーを情報を掴みつつ、NFT・メタバース・DAOなどの領域であらゆる情報を発信中。
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