2022年末から始まった生成AIはすさまじい勢いで進化を遂げており、世界各国での議論も活発になってきています。
AIブームにすっかり影をひそめてしまったのがNFTや暗号資産といった、Web3関連のワードです。
そのような中、日本進出が決まったバイナンスがAIによる画像を生成し、そのままバイナンスNFTプラットフォームへ出品できるサービスを開始しました。
今回は、画像生成AIを頻繁に使用している筆者が、バイナンスの画像生成AIを実際に使いながらあらゆる角度から解説していきます。
この記事の構成
Bixelとは
仮想通貨大手取引所であるバイナンス(Binance)は、2023年7月27日、AI NFT ジェネレーターである「Bixel」のサービスを開始したことを発表しました。
バイナンスは既に2023年3月に、「Binance Bicasso」と言うAI生成サービスを開始していましたが、このサービスはこれまで2回だけの限定されたサービスとなっていました。
1回目は2023年3月1日に、ヨーロッパの一部ユーザーのみを対象に限定したベータテストを行い、数時間以内で10,000個のNFTがミントされるという実績を残します。
2回目は2023年3月29日に世界中の全てのユーザーを対象に展開しましたが、利用時間を12時間に限定し、更に100,000人のユーザーのみに使用が限定されたものとなりました。
このように、これまでは限定されたサービスでありましたが、Bixelは一定の条件を満たせば誰でも、いつでも利用することが可能なサービスとなって復活を果たしました。
他の画像生成AIと一線を画す最大の特徴は、AIで生成した画像をそのままNFTとしてミントし、マーケットプレイスへ出品できることです。
AIで画像生成し作品をNFTに出品するユーザーも多いですが、マーケットプレイスへ出品する手間が省けて非常に便利な機能と言えます。
画像生成AIサービスの紹介
画像生成サービスは現在では多くのサービスが登場していますが、3大サービスと呼ばれるものは以下のものになります。
- Adobe Firefly(アドビ・ファイヤーフライ)
- Midjourney(ミッドジャーニー)
- Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)
それぞれのサービスについての詳細は省きますが、無料で使用できるものもあればサブスクライブで利用するタイプもありますが、BixelのAIサービスはStable Diffusionの無料版を利用しています。
Bixelの利用条件
Bixelの利用にあたって以下の3つの条件を満たせば誰でもAIを生成してNFTを鋳造することができます。
- バイナンスへのログイン(アカウント登録が必須)
- NFTにおけるKYCの完了
- ミント手数料として、0.008BNB(2023年8月14時点で約1.92USドル:日本円で約278円)が必要
なお、NFTをミントせずAIによる画像生成のみであればアカウント登録のみで利用することが可能です。
ただし、バイナンスは11月に日本でのサービスを開始するにあたり、日本人が新たにグローバルユーザーとして登録することができなくなります。
従って、日本在住でグローバルユーザーではない方について、利用が可能な時期などについて現時点では不明となっております。
また、11月から日本での取引所サービス開始にあたり、Bixelのサービスが日本で利用できるようになるかどうかは現時点で不明です。
従って、今回の解説も場合によってはグローバルユーザーのみの方限定での説明になってしまう可能性がありますのであらかじめご了承ください。
Bixelの使用方法
ここから具体的な使用方法について解説していきます。
AIの画像生成は、先ほど紹介した3大サービスの他にも沢山のプラットフォームが誕生しており、そのいずれも驚くほどの勢いで進化し続けておりクオリティの高い画像を生成してくれます。
筆者もMidjourneyと呼ばれる画像生成AIを日常的に使用し、1月に200点程度の画像を生成しています。
それらの画像も紹介しながら、Bixelとの比較も行っていきたいと思います。
最初に注意事項だけお伝えします。
- 生成できるのは1日に10回のみです(翌日にリセットされます)
- 先述したように生成した画像をNFTとしてミントする場合はKYCと0.008BNBが必要になります。
Bixelの始め方
Bixelにアクセス
検索ではなくURLをコピーしてのアクセスをお勧めします。URL:https://www.binance.com/ja/nft/bixel
ログインを実施
アカウントを持っていない方はGoogleなどでログインを試みてください。
言語選択で日本語表記に変更
画像生成の方法
TOP画面から「画像生成」をクリック
画像生成画面の説明
- 左側が画像を生成するエリア
- 右側が自分が生成した画像が表示されているエリア(既に筆者が生成した画像が表示されている)
画像生成方法について
大きく分けて2つあります。
- テキスト(AIではプロンプトと呼ぶ)で画像を生成させる
- 画像を元に新たな別の画像を生成させる
テキストで生成する方法
テキストはプロンプト(日本語で呪文)と呼ばれる、画像生成させたいイメージを文字にして指示する方法です。
プロンプトと言っても画像生成の場合はそれほど難しいことはなく、例えば「young girl」だけでも画像を生成してくれます。
更に「Woman drinking coffee on the streets of Paris(パリの街でコーヒーを飲んでいる女性)」のように、より詳細な文章として指示を与えると、それに基づいて画像を生成してくれます。
他にもカメラアングル、光の加減、背景、色、時代など、様々なプロンプトがあり、これらを組み合わせることにより、よりイメージに近い画像を生成することが可能になります。
なお、日本語でプロンプトで生成できるAIサービスもありますが、ほとんどは英語を使用します。
バイナンスのBixelも英語のみになりますので、DeepLなどの翻訳ソフトを使用してプロンプトを作成してください。
生成エリアの説明
- プロンプトエリア:先述した生成したい画像のイメージを、文字で入力するエリア
- スタイル:生成される画像のスタイルを選択
では実際にプロンプトを入力して画像を生成していきます。
最初は簡単に、young girlと指示してみます。
- プロンプト:「young girl」
- スタイル:デフォルト
プロンプトとスタイルを選択したら「生成」をクリック
画像が生成されました。
1回の生成につき4つの画像が数秒で生成されます。
背景などは具体的にプロンプトで指示されていない場合は、メインプロンプト(今回の場合は「young girl」)の生成画像に合わせてAI側で生成してくれます。
この中で気に入った画像にカーソルを合わせると下記のようなボタンが表示されます。
それぞれのボタンの説明は以下の通りです。
なお、画像をクリックすると下記のように拡大表示されます。
ここで「種類ボタン」をクリックしてこの画像のバリエーションを生成させてみます。
下記のように更に4つの画像が生成されました。
このように、とても簡単に画像を生成することができ、NFTの発行をしなくてもダウンロードして自分のパソコンやスマホに保存することが可能です。
なお、ここまで画像が8枚生成されていますが、実際に生成という作業は2回行っています。
先述したように、1日に生成できる回数は10回で、10枚ということではありません。
従ってここまでの生成回数は2回となっています。
この回数は下記のようにBixelで残回数として表示されているので都度確認しながら作業を進めるとよいでしょう。
画像を使用して生成させる方法
次に画像を使用して生成させる方法を紹介します。
これは、先ほどのプロンプトに、背景となるような画像をアップロードし、より自分の好みの画像を生成したい場合などに使用します。
あくまでもプロンプトと画像のセットでの生成になるので画像のみでは生成はできません。
また、このサービスはオプションとなっているためなのか、画像が反映されているような結果がでません。
試しにやってみたものを紹介します。
プロンプト入力画面の下にある、「ポートレートをアップロード」をクリックするとアップロードエリアが表示されるので自分の画像をアップロードします。
では実際に生成してみます。
プロンプトに「美しいイタリアの女性」とし、筆者が別の画像生成AIで生成したインテリアの画像をアップロードして、スタイルを「実写風」にして生成してみます。
生成ボタンをクリックします。
綺麗な女性の画像が生成されましたが、アップロードしたインテリアは全く反映されていません。
原因は不明ですが、もう少し進化を待った方が良さそうです。
NFTのミント
NFTへミントする方法もとても簡単ですが、筆者はバイナンスジャパンの関係で全額を出金してしまったのでミントできませんすることができないため、一部バイナンスの公式サイトの画像を使用し説明します。
例えば上記のイタリア人女性の画像をミントする場合。
ミントしたい画像の「発行」をクリック。
発行画面でNFTの名称や説明など、必須項目の全てを記入し、規約同意にチェックをいれたら「支払と発行」をクリックして完了です。
ミントされたNFTはバイナンスNFT内のMy NFTの中に保存され、アバターとして設定するとプロフィール画面に使用するなどが可能です。
マーケットプレイスに出品するには下記のようにTradeボタンをクリックし、価格などを設定し、出品完了となります。
複雑なプロンプトに挑戦
先ほどは「Youg girl」や「Beautiful Italian woman」という簡単なプロンプトでしか生成しませんでした。
もう少し複雑なプロンプトを指示するとどういう画像が生成されるか、試してみたいと思います。
コーヒーを飲む女性
- プロンプト:Woman drinking coffee on the streets of Paris(パリの街でコーヒーを飲んでいる女性)
- スタイル:実写風
一番左の画像が良い感じです。
チビアニメ
- プロンプト:chibi anime,Samurai drinking coffee in a Tokyo office district,3d,unreal engine(チビアニメ風の侍が東京のオフィス街でコーヒーを飲んでいる3dの画像)
- スタイル:実写風
左から2番目がまともですが、全体的にあまり複雑なプロンプトは苦手なようです。
バイナンススタイル
- プロンプト:Children wearing clothing with the Binance logo printed on it(バイナンスのロゴがプリントされた衣服を来た子どもたち)
- スタイル:バイナンス
「バイナンス」というスタイルを使用してみましたが、バイナンスのロゴに近いデザインが反映されています。
これはバイナンスオリジナルの仕様となっているようです。
他のAI生成サービスとの比較
Bixelで実写風に生成したイタリア人女性はある程度いい感じで生成されていますが、全体的にはまだ劣っていると言えます。
参考に筆者が普段使用しているMidjourneyで、「Young girl」と「Beautiful Italian woman」だけで生成したものを紹介します。
Young girl
Beautiful Italian woman
このような感じです。
バイナンスのロゴを使用
バイナンスのロゴをMidjourneyに読み込ませて女性の画像を生成してみました。
AIは文字や抽象的なロゴなどを読み取って画像として生成するのは苦手としていますが、この作品はバイナンスのゴールドの色目をかなり綺麗に表現してくれています。
今後に期待
元の技術となっているStable Diffusionも現在はかなりグレードが上がっており、Midjourneyに劣らずかなり綺麗な画像を生成します。
おそらくBixelではStable Diffusionの初期のバージョンを使用していると思われるので、生成される完成度が少し低いと予想されます。
今後、BixelでもアップグレードしたStable Diffusionを採用し、完成度の高い画像生成ができることを期待したいです。
著作権について
バイナンスでは、Bixelで発生する著作権について明確な記述がありませんが、画像生成における規約は採用しているStable Diffusionに準拠するとあります。
Stable Diffusionでは著作権について下記のように説明しています。
「Stable Diffusion Onlineを通じて作成されたイメージは完全にオープンソースであり、明示的にCC0 1.0 Universal Public Domain Dedicationに該当します」
引用元:https://stablediffusionweb.com/
つまり、生成された画像はStable Diffusionでは一切の著作権を放棄しており、パブリックドメインとなっているので、二次創作などについていかなる利用も可能である。
という事になります。
従って、著作権放棄した画像であるためバイナンスNFTに出品することも一切問題は生じないと言えるでしょう。
ただし、出品者にも著作権は付与されないのでNFTが購入された場合、購入者により二次創作なども自由に行えることになるのであらかじめ認識しておく必要があります。
まとめ
バイナンスが日本進出のタイミングと重なった為、Bixelの説明のタイミングが難しくなってしまいましたが、今から触っておくことをお勧めします。
また、今後Bixelの完成度が高くなっていくことをきっかけに、Web3におけるブロックチェーンやNFTとAIのコラボレーションの進化に繋がることに期待したいと思います。