「気になるDEXの週間取引ボリュームはどのくらいだろう…」
「人気のBCGトークンだけど、一部のユーザーが大量保有していないか不安…」
「特定のNFTの保有者数を知りたい」
Duneは様々なブロックチェーンを解析し、FT/NFTの動向を可視化します。Web3プロジェクトに対するリスク評価でも有効に使うことができます。
本記事ではDuneの概要や使い方、具体的なユーザー層、使用上の注意点を解説します。Web3プロジェクトを評価するソリューションをお探しの方々に向けて、お役に立てる情報となれば幸いです。
この記事の構成
Dune(旧Dune Analytics)とは?
Dune(旧Dune Analytics)は、Fredrik HagaとMats Olsenによって2018年にローンチされたブロックチェーンデータ分析ツールです。SQLを使い、リアルタイムでブロックチェーンデータを分析、可視化します。作成されたカスタムチャートやダッシュボードはコミュニティで共有することも可能です。
SQLへの理解
参照画像URL:https://dune.com/home
SQL(Structured Query Language)はデータを操作・取得するための言語です。プログラミング言語とは異なり、データを問い合わせるための専用の言語になります。
基本的な操作にはデータの選択(SELECT)、挿入(INSERT)、更新(UPDATE)、削除(DELETE)などがあります。
RDBMS※1が決まっていれば、Dune以外でもSQLを用いて簡単な命令でデータ分析をすぐに始めることができます。
※1 RDBMS(Relational DataBase Management System)は関連するデータをテーブル形式で保存・管理するシステムです。Oracle Databaseなどが有名です。
対応ブロックチェーン
EVM Chains | Non-EVM Chains |
Ethereum Mainnet
Gnosis (previously xDai) Polygon (POS) Optimism Optimism Stack Rollups (Base) BNB (Binance Smart Chain) Arbitrum Avalanche (c-chain) Goerli (Ethereum) Fantom |
Bitcoin
Solana |
参照URL:https://dune.com/docs/data-tables/#community
EVM ChainsはEthereum Virtual Machine (EVM) 互換のブロックチェーンネットワークです。DuneではL2チェーンの解析もすることができます。BitcoinやSolanaといった人気メジャーチェーンもデータ分析可能です。
無料版と有料版
参照URL:https://dune.com/pricing
Duneでデータ分析をする際にクレジットが消費されます※2。個人で使用する場合は無料プランでも十分にデータ分析を進めることができます。事業や研究などで解析量が多くなる場合は有料プランを選択しましょう。CSVダウンロード数の制限なども有料版でアップします。
※2 クレジットを消費せずにクエリ作成も可能です。
Duneを利用するユーザー
- 投資家とトレーダー
- DeFiプロジェクトの開発者
- 研究者とアナリスト
- 規制当局と法執行機関
- 企業とコンサルタント
- 教育機関
- ジャーナリストとメディア
- リスク管理専門家
Duneはブロックチェーン上のトランザクション、スマートコントラクトなどを詳細に分析します。Web3時代においてビジネス、教育、ガバナンスに関わる様々なニーズに対応します。ここではDuneの具体的な顧客層を解説します。
投資家とトレーダー
投資家とトレーダーはブロックチェーン上のDeFiプロジェクトやトークンの動向を分析するためにDuneを使います。特定の時間軸でブロックチェーンの履歴を掌握することができ、トレンドやリスク分析に役立ちます。
DeFiプロジェクトの開発者
DeFiプロジェクトの開発者はユーザー行動やDAppsの機能を分析するためにDuneを使用します。競合するDEXをまとめて比較することで、新しいキャンペーンなどのアイデアを案出することもあります。
研究者とアナリスト
ブロックチェーン技術と暗号資産の研究者はDuneを使って市場の動向、ユーザー行動、ネットワークの健全性などを分析します。ブロックチェーン自体の正当性や有用性を評価するデータソリューションとしてDuneを活用します。アナリストはDeFiトレンドを視覚的に掌握し、評価分析に役立てます。
規制当局と法執行機関
ブロックチェーンデータ自体が巨大なOSINT※3です。Duneはチェーン履歴を細部まで追跡できることから、規制当局や法執行機関によって不正行為の検出に使われます。特に暗号資産を用いた不正送金や国際詐欺などに対応するソリューションツールとしてDuneは有効です。
※3 OSINT(Open-Source Intelligence)は合法的に入手できる公開情報です。捜査機関、情報機関などが積極的に収集します。
企業とコンサルタント
企業戦略の策定や市場参入の判断を下すために、企業やコンサルタントはDuneの分析機能を利用します。Web3プロジェクトではガバナンス機能も公開されるので、プロジェクトを買収する際にも運営状況を視覚的に把握できます。
教育機関
Duneは無料で利用できることから、ブロックチェーンやSQLのエントリー教育に活用できます。各チェーンを比較分析する際にも使えることから、チェーン評価/論評にも役立てることができます。
ジャーナリストとメディア
ブロックチェーン関連の記事に必要なデータを得るためにDuneは役に立ちます。ブロックチェーンから一次情報の獲得が可能です。ブロックチェーンデータはリアルタイム情報なので、ジャーナリストやメディア関係者は最新のスクープが狙えます。
リスク管理専門家
ブロックチェーン上のリスクを評価し、リスク管理戦略を策定するためにDuneは活用できます。例えば、スマートコントラクトの脆弱性や異常なトランザクションパターンを検出するためのクエリを実行します。ネットワークの過負荷やガス代の変動も分析可能です。
Duneの使い方
- 使用準備(アカウント作成)
- クエリ検索
- クエリ作成
- クエリのカスタマイズ
- チャート機能の活用
- ダッシュボードの最適化
Duneは誰でも無料で使用することができます。クエリを作成する時点でSQLの知識も必要ですが、他のユーザーが作成したクエリを使わせてもらうこともできます。その場合は特にSQLを入力する必要はありません。
実際に使ってみればユーザービリティがすぐに分かると思います。下記プロセスをたどってDuneでブロックチェーン分析をしてみましょう。
使用準備(アカウント作成)
参照画像URL:https://dune.com/
Dune公式サイトでアカウントを作成します。メールアドレスとパスワードを設定することで、すぐにアカウント開設は完了します。また、メタマスクでもアカウントを作ることができます。どちらの方法を選ぶかは任意です。
Dune公式サイトURL:https://dune.com/
クエリ検索
参照画像URL:https://dune.com/
アカウント作成ができたらクエリを検索してみましょう。他のユーザーがSQLでアウトプットしたものが参照できます。数が多いので、検索フォームには具体的なWeb3プロジェクト名やFT/NFT名を入れてフィルタリングしましょう。
上記参照画像では検索フォームに「OpenSea」と入力し、ダッシュボード枠から人気のものを選択しています。
ダッシュボードはクエリをまとめたものです。暗号資産の日時統計や月間統計、もしくは特定のNFTシリーズの動向をまとめて表示させることができます。
クエリ作成
参照画像URL:https://dune.com/
他のユーザーによって作成されたクエリはとても役に立ちます。しかし、さらに詳細な分析ニーズのある研究者やジャーナリスト、リスク評価の専門家にとっては十分な統計情報ではないかも知れません。そこでクエリ自体を作成して独自のデータ分析を進めていきます。
このプロセスを進めるにはSQLに関する知識と技術が必要です。まずはSELECTコードを理解しましょう。特定のブロックチェーンデータの範囲を決める際に必須になります。初心者の方はSQL解説サイトなどを参照しながら試していきましょう。
クエリのカスタマイズ
自分で作成したクエリ、他のユーザーが作成したクエリはカスタマイズが可能です。セレクトの範囲を調整するだけでパーソナライズされたブロックチェーン分析ができるようになります。
カスタマイズは他のユーザーのものをクリエイトスペースに張り付けて、SQLを書き換えていきます。上手くいった場合はセーブしておきましょう。右上の「Fork」をクリックすることでカスタマイズ画面に移行することもできます。
チャート機能の活用
参照画像URL:https://dune.com/
取得データの可視化、チャート化こそDuneを代表するユーザービリティです。既存クエリの場合はタブでチャートを切り替えます。作成クエリの場合はNew Visualizationから様々なチャートを選択表示させることができます。
視覚化されたブロックチェーン情報は非常に分かりやすく、分析プロセスにおいて役立ちます。
ダッシュボードの最適化
参照画像URL:https://dune.com/
ダッシュボードはユーザーにパーソナライズされたクエリ収集画面です。ダッシュボード自体も共有可能です。例えばOpenSeaのクエリをまとめたダッシュボード、NFTプロジェクトに特化したダッシュボードなどが公開されています。
頻繁に使用するクエリをまとめてダッシュボードを最適化しましょう。
Duneを効果的に活用するポイント
- 分析目的の明確化
- コミュニティの活用
- ブロックチェーンの知識
- データ視覚化のスキル
- 有料版の活用
Duneをより効果的に活用するポイントをまとめて解説します。
分析目的の明確化
分析の目的と目標を明確に定義することで、必要なデータと分析手法を最適化していきます。Web3プロジェクトを効率的に分析するために重要なポイントです。
「Duneを利用するユーザー」で解説した通り、様々な立場の方がそれぞれのニーズでDuneを使用します。マーケティングであればKPIの設定、リスク管理の専門家であればガバナンストークンの保有比率評価など、具体的な分析目的を明らかにしていきましょう。
コミュニティの活用
DuneはDiscordで3万人以上、X(旧Twitter)で12万人以上にフォローされています。具体的なクエリの問題点や活用ポイントなどはコミュニティですぐに共有されます。Duneのコミュニティを活用して分析活動を有利に進めましょう。
このような技術的なコミュニティのマナーとして、質問する前にピン留や過去のソリューションなどを参照します。大抵の問題はWebやSNSのスレッドにまとめられています。
ブロックチェーンの知識
Duneを活用する上でブロックチェーンの知識は重要です。トランザクション、スマートコントラクト、ガス代などの基本的な概念について理解を深めていきましょう。
スマートコントラクトの動作やトークンの流通メカニズムを理解することで、Duneのクエリをより具体的かつ効果的に設計できます。DeFiやNFTなどに関する知識も分析の幅を広げてくれます。Web3市場のトレンドやユーザーの行動、リスク要因などがより詳細に分析できるようになります。
データ視覚化のスキル
データの数値やテキストだけではトレンドのイメージアップが難しい場合があります。データを視覚化することで、複雑な情報も直感的に理解しやすくなります。
時系列データをラインチャートで表現することで、市場の動向や変動を一目で把握することができます。比率チャートは特定のFTやNFTを大量に保有しているユーザーを分かりやすく表示させます。
データ分析の目的に合わせて適切なチャートを選択し、ビジネスや捜査チーム内での情報共有を円滑にします。
有料版の活用
分析に関わるチームの規模やサンプリング量に応じて有料版も活用しましょう。特に大容量のブロックチェーンデータを扱う場合に無料版ではパフォーマンスが落ちます。また、分析データのアウトプットも無料版は制限がかかります。
ビジネスでブロックチェーン分析を進める方、より多くのプライベートダッシュボードやクエリを使用したい方は有料版が最適なソリューションです。
Duneの注意点
- 収集データの範囲
- 更新頻度
- コミュニティの信頼性
- カスタマイズの制約
Duneを使用する上で注意すべき点をまとめて解説します。Duneは無料で多くの機能を利用できて便利ですが、使用上の制限がいくつかあります。詳しく見ていきましょう。
収集データの範囲
Duneはイーサリアムベースのデータ分析に特化しています。BTCやSolanaの分析も可能ですが、全ての既存チェーンに対応しているわけではありません。Duneで取扱いのないチェーンデータを分析する際には、他のツールやプラットフォームの利用を検討しましょう。
更新頻度
更新頻度の低いクエリやダッシュボードでは古いデータを呼び出す可能性があります。チャートも最新のものが表示できない場合もあります。特にトレード分析などでDuneを使用する場合は、データのタイムラグをしっかり検証しましょう。
コミュニティの信頼性
Duneのコミュニティでは多くのユーザーがクエリやダッシュボードを公開しています。とても使いやすく便利なものが多いですが、その正確性や信頼性を確認することが必要です。特にビジネスなどで分析結果をレポートする場合は、自身でデータの妥当性を検証することが重要です。
カスタマイズの制約
特定の高度な分析やカスタマイズが必要な場合、Duneの機能だけでは不十分な場合があります。その際はDuneのデータをエクスポートして、他のツールやプログラミング言語で分析を進めましょう。
他のブロックチェーン分析ツール
- Chainalysis
- Glassnode
- Nansen
- IntoTheBlock
- Elliptic
- CoinMetrics
ブロックチェーン分析へのニーズは様々な分野で高まっており、Duneの他にも多くの有力なソリューションツールが存在します。ここではDune以外のブロックチェーン分析ツールを解説します。分析計画に合わせて、Duneとの併用を検討しましょう。
Chainalysis
参照画像URL:https://www.chainalysis.com/ja/
Chainalysisは複数のトークンやチェーンを横断する資金追跡機能に強みを持ちます。ブロックチェーンの安全性やコンプライアンスを確保する必要がある組織(政府や金融機関)に使用されています。日本語表示のHPも準備されています。
Glassnode
参照画像URL:https://glassnode.com/
Glassnodeはオンチェーンデータと市場インテリジェンスに焦点を当てた分析プラットフォームです。主に投資家に使用されます。データ分析だけでなく、専門家チームによるタイムリーな評価や研究情報も提供しています。ユーザーはGlassnodeで暗号資産のトレンドを獲得し、投資戦略に反映させます。
Nansen
参照画像URL:https://www.nansen.ai/
Nansenは特に投資家や金融機関のニーズに対応したブロックチェーン分析ツールです。投資判断をサポートするための分析サービスとインテリジェンスを提供します。様々なオンチェーンデータをダッシュボードで容易に探索でき、DeFiやNFT、DAOなどをタイムリーに分析します。
IntoTheBlock
参照画像URL:https://www.intotheblock.com/
IntoTheBlockはAI技術を使ったブロックチェーンデータの分析ソリューションを提供します。IntoTheBlockは900銘柄以上の暗号資産、DeFiプロトコル、各種NFTの分析が可能です。多くの暗号資産銘柄や市場データに基づくトレード情報を求めるユーザーに利用されています。
Elliptic
参照画像URL:https://www.elliptic.co/ja/
Ellipticはブロックチェーンのリスク管理とコンプライアンスにフォーカスした分析サービスを提供します。主なソリューションとしてウォレットのリスク評価(Elliptic Lens)、取引のリスクモニタリング(Elliptic Navigator)、暗号資産サービスプロバイダーのリスク評価(Elliptic Discovery)、そして暗号資産の取引調査(Elliptic Forensics)があります。
CoinMetrics
参照画像URL:https://coinmetrics.io/
CoinMetricsはブロックチェーンと暗号資産銘柄のデータ分析をします。主要なサービスはネットワークデータの分析ですが、ブロックチェーンネットワークのリスク管理ツール(CM FARUM™)も提供しています。
まとめ
Duneを用いれば、簡単なSQL入力だけで様々なブロックチェーンデータの分析が可能になります。Web3プロジェクトに特化した既存クエリやダッシュボードもすぐに利用できます。分析の用途は投資やプロジェクト評価から、暗号資産追跡や特定FTの保有比率評価まで多岐に渡ります。Duneを活用してWeb3への理解をさらに深めていきましょう。
本記事ではDuneの概要や使い方、具体的なユーザー層、使用上の注意点を解説しました。Web3プロジェクトを評価するソリューションをお探しの方々に向けて、お役に立てる情報となれば幸いです。