「ブロックチェーンが物流で活用できる」という話は聞いたことがあると思います。では、実際にどのWeb3プロジェクトで、どのようなビジネスに活用されているのかご存知でしょうか?
VeChainはIoTなどと連携し、物流において非常に効率的かつ透明性のあるトレーサビリティを実現させるWeb3プロジェクトです。
本記事ではVeChainの概要や特徴、具体的な実績を解説します。
この記事の構成
VeChain(VET)とは?
参照URL:https://www.vechain.org/
公式サイト | https://www.vechain.org/ |
FT/NFT | VET,VTHO,eNFT |
チェーン | VeChainThor |
開発/運営 | Vechain Foundation |
VeChain(VET)はブロックチェーン技術を活用して物流のトレーサビリティを向上させるWeb3プラットフォームです。独自のブロックチェーン「VeChainThor」を使用し、物流データを安全に記録、共有します。
VeChainを活用することで生産者と消費者は商品のトレーサビリティ情報へ平等にアクセスできるようになり、サプライチェーンの透明性が高まります。
VeChain(VET)の特徴は?
- PoA (Proof of Authority)
- Dual-Tokenシステム
- 実用性
PoA (Proof of Authority)
VeChainはPoAのコンセンサスアルゴリズムを採用しています。PoAでは特定の権威あるノード(オーソリティーマスターノード)がトランザクションの検証とブロックの生成を行います。ノードはVeChain Foundationによって厳格なKYC/AMLプロセスを経て選定されます。
関連記事:「コンセンサスアルゴリズムとは?ブロックチェーンの合意プロセスを解説」
Dual-Tokenシステム
VeChainはガバナンストークンであるVETと、ガス代に使用されるVTHOを使ったDual-Tokenシステムを採用しています。VETはガバナンス投票の他、ノードに参加する際も必要になります。VTHOはVETを保有しているユーザーに自動的に配布されます。
実用性
VeChainはサプライチェーンと商品管理に特化したブロックチェーンプラットフォームとして高い実用性を持っています。RFID※1、NFC※2、QRコードなどのIoTテクノロジーを統合し、リアルワールドのデータをブロックチェーンに記録します。製品の生産から消費までの過程を追跡し、サプライチェーンの効率化と信頼性を向上させています。
※1 RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)は無線通信で商品を自動識別・追跡する技術です。
※2 NFC(Near Field Communication:近距離無線通信)は近距離で非接触通信を可能にする技術です。スマホ支払いや交通系ICカードに利用されています。
創始者
VeChainの共同創設者はSunny Lu氏とJay Zhang氏の2人です。Sunny Lu氏はLouis Vuitton ChinaのCIOを務め、ブロックチェーン技術を利用したサプライチェーンとビジネスプロセスを革新するプロジェクトを推進しました。
Jay Zhang氏は財務とリスク管理のエキスパートであり、Deloitte社とPwC社でキャリアを積んでいます。Jay Zhang氏はVeChainのグローバル戦略、ガバナンス、および財務管理を指導しています。この2人のリーダーシップのもと、VeChainは多様な産業にブロックチェーンソリューションを提供しています。
パートナーシップ
VeChainはグローバルなパートナーシップを構築しています。DNV※3やPwC※4といった世界的な認証サービス会社やコンサルティング会社との連携は、VeChainの信頼性を高めました。
自動車業界ではBMW、テクノロジー分野ではMicrosoft、食品業界ではWalmartの子会社とパートナーシップを結んでいます。ファッション業界ではLVMHやH&Mと提携し、オーセンティックな製品トレーサビリティを実現しています。
※3 DNVは第三者認証、オイル&ガスのリスク管理、風力/電力送配電サービスの世界的企業です。
※4 PwCはM&Aや事業再生・再編を行う総合コンサルティング会社です。
VeChain(VET)のエコシステム
- ノード参加
- VIP-180
- VeChainThor Wallet
VeChainのエコシステムはノード参加者によるネットワークセキュリティとコンセンサス、VIP-180規格による多様なアセットの作成・管理、そしてVeChainThor Walletによるユーザーとブロックチェーンのインタラクションを実現します。
ノード参加
種類 | 条件 |
オーソリティマスターノード | VeChain FoundationのKYC/AML調査、推薦、投票。2,500万VET以上の保有 |
エコノミックノード | 100万VET以上保有 |
Xノード | 早期参加者特典(2018年3月受付終了) |
ノードはネットワークのセキュリティと分散化を保持し、トランザクションの検証とブロックの生成を行います。VeChainでは異なるタイプのノードが存在し、それぞれが異なる役割と報酬構造を持っています。
オーソリティマスターノードはネットワークのコンセンサスを達成するために、PoAのコンセンサスアルゴリズムに参加し、ネットワークの安定性とセキュリティを構築します。エコノミックノードは一定数のVETを保有し、プラットフォームの安定性をサポートします。
VIP-180
VIP-180はVeChainプラットフォーム上でトークンを作成するためのトークン規格です。スマートコントラクトを使用して実装され、トークンの発行、移転、およびバーンなどの基本的な機能を定義します。開発者はVIP-180で独自のデジタル資産を作成し、VeChainのエコシステム内で利用することが可能です。
VeChainThor Wallet
VeChainThor WalletはVeChainブロックチェーン上のVETとVIP-180トークンを安全に保管、管理するためのアプリケーションです。VeChainThor Walletはユーザーがプライベートキーをコントロールできるノンカストディアルウォレット※5であり、セキュリティと利便性を兼ね備えています。
VeChainThor Walletはトークンの送受信、VTHOの収益のクレーム、投票など、様々な機能を提供します。ユーザーはVeChainThor Walletを通じて、VeChainブロックチェーン上で実行されるICOやトークンセールに参加することも可能です。
※5 ユーザー自身が秘密鍵を管理するウォレットです。
VeChain(VET)の実績
- Gui’anとの協力関係
- Enterprise NFT(eNFT)
- 世界初の5つ星ブロックチェーンサービス認証
Gui’anとの協力関係
VeChainプロジェクトは中国のGui’an New Area(経済特区)と協力関係にあります。Gui’anは中国中央政府に直接管理され、国の優遇政策を受けています。
VeChainはブロックチェーンSmart-Townの設計・構築、スマート農業プロジェクト、ブロックチェーンを利用したワイン取引所の設立など、多岐にわたるプロジェクトをGui’anで展開しています。
Enterprise NFT(eNFT)
2021年7月、イタリア北中部にあるサンマリノ共和国はVeChainのブロックチェーン技術を活用して、NFTベースのワクチン接種パスポート「サンマリノ・デジタルCOVID証明書」を作成しました。
証明書は2つのQRコードを含みます。一方のQRコードがEU基準にリンクし、もう一方がブロックチェーンベースのeNFT証明書を検証できるアプリにリンクします。NFTの使用により情報の信頼性が向上し、偽造リスクが軽減されました。
2021年1月にもVeChainはキプロスの病院でワクチン接種をブロックチェーンで記録する取り組みを実施しています。
世界初の5つ星ブロックチェーンサービス認証
VeChainはTUV Saarland※6から世界初の5つ星ブロックチェーンサービスプロバイダーとして認証を受け、その技術とサービスが高く評価されました。TUV Saarlandの認証はVeChainのブロックチェーン技術が業界標準を満たし、BtoBドメインでのアプリケーションとしての実用性を持つことを証明します。
※6 TUV Saarlandはドイツの認証機関です。
VeChain(VET)の可能性
- IoTでの真贋鑑定・商品追跡
- VeVidによるKYCの一元管理
- VeVoteを利用した投票システム
IoTでの真贋鑑定・商品追跡
VeChainはIoTテクノロジーとブロックチェーンを組み合わせ、IDが割り当てられた商品をリアルタイムで追跡します。VeChainの仕組みはRFIDタグやQRコードを使用して、商品にデジタルIDを埋め込むことから始まります。ID追跡情報はVeChainThorに記録され、dAppsを通じて共有されます。消費者は商品のオリジナリティを確認でき、企業は偽造を防ぎ、サプライチェーンの効率化を図ることができます。
VeVidによるKYCの一元管理
VeVid(VeChain Verified ID)はVeChainThorブロックチェーン上で動作するKYC(Know Your Customer)ソリューションです。一度VeVidでKYCプロセスを完了すると、情報はブロックチェーン上で安全に保存され、VeChainのネットワーク内でIDとして利用できます。企業はVeVidを用いて顧客情報を一元的に管理し、セキュリティを強化することが可能です。
VeVoteを利用した投票システム
VeVoteはVeChainのオーソリティノードの選出を目的として開発されたブロックチェーンベースの投票プラットフォームです。このシステムの応用範囲は政府や企業の意思決定プロセスにも拡がっています(Gui’anの事例)。投票プロセスと結果はブロックチェーン上で誰でも確認することができます。
VeChain(VET)の取引方法
- 国内取引所でアカウント作成と暗号資産購入
- 海外取引所でアカウント作成と入金
- 海外取引所でVETを購入
VeChain(VET)の購入方法をステップバイステップで解説します。取引の際はセキュリティと手数料に十分に注意し、安全な取引を心がけましょう。なお、2023年10月時点で日本国内ではVEXは購入できません。
関連記事:「ホワイトリストとグリーンリストの違いは?暗号資産の評価基準を解説」
1.国内取引所でアカウント作成と暗号資産購入
国内の暗号資産取引所(例: bitFlyerなど)でアカウントを作成します。アカウント作成後に日本円を入金し、任意の銘柄を購入します。
2.海外取引所でアカウント作成と入金
VETを取り扱う海外取引所(例: Binance、 KuCoinなど)でアカウントを作成します。次に、国内取引所で購入した暗号資産を海外取引所に送金します。全額を送金する前に少額でテストを行うことをお勧めします。
3.海外取引所でVETを購入
海外取引所で任意の暗号資産をVEXに交換します。送金や取引の際は、手数料やレートを確認してください。
まとめ
BMWやMicrosoftなど世界的企業との連携、中国経済特区でのエコシステム参加など、VeChainはWeb3プロジェクトとして着実に実績を重ねています。RFIDやNFCといった既存通信インフラを活用することで、物流でのトレーサビリティを加速度的に進化させる可能性があります。
以上、VeChain(VET)の概要や特徴、具体的な実績を解説させて頂きました。Web3における物流や商品管理の具体的なソリューションとしてVeChainへの理解を進めて頂ければ幸いでございます。