NFT(Non-Fungible Token)と聞くと、主にデジタルアートなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、NFTをビジネス面などで活用する動きも活発化しており、その用途は日々拡大しています。
2023年10月13日には、北海道が「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」というプロジェクトを開始し、世界遺産とNFTを組み合わせた取り組みを行っています。この記事では、「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」の詳細や、観光面などでのメリットについて詳しくご紹介していきます。
NFTを活用した観光誘致や、地方創生に関心がある自治体職員の方などは、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
北海道が実施する「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」とは?
画像引用元:縄文 × NFTデジタルスタンプラリーを開催します。 | 北の縄文ポータルサイト
2023年10月13日、北海道は「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」というプロジェクトを開始しました。今回のプロジェクトは「NFT(デジタル画像)を活用した周遊促進事業委託業務」という北海道の委託事業となっており、TOPPAN株式会社と共同で実施しています。
プロジェクトの内容としては、北海道に点在する「北海道・北東北の縄文遺跡群」という世界遺産を周遊しながら、NFTを獲得できるデジタルスタンプラリーとなっています。世界遺産とNFTを組み合わせて新しい可能性を探る、観光誘致プロジェクトだといえるでしょう。
道内にある全7ヵ所の遺産に訪れることで、それぞれデザインが異なる「訪問記念NFT」を入手できます。また、7種類全てのNFTを集めると、「制覇記念NFT」を獲得できるというユニークな仕組みが採用されています。
すでにプロジェクトは開始されており、開催期間は2023年10月13日〜2024年1月31日までとなっています。
「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」のプロジェクトの詳細
ここでは、「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」のプロジェクトをより詳細にご紹介していきます。NFTを獲得する方法や、NFTの特典(ユーティリティ)などについて、詳しく確認していきましょう。
- NFTを獲得できる7つのスポット
- 事前のアプリダウンロードなどは不要
- SNSハッシュタグキャンペーンも実施中
- NFT保有者は協賛店舗・施設で優遇を受けられる
NFTを獲得できる7つのスポット
「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、北海道内の7つの場所に点在しています。NFTを獲得できる各スポットの詳細は、以下の通りです。
画像引用元:縄文世界遺産 × NFT デジタルスタンプラリー
- 垣ノ島遺跡:函館市縄文文化交流センター、垣ノ島遺跡入り口
- 大船遺跡:大船遺跡管理棟
- 鷲ノ木遺跡:森町遺跡発掘調査事務所展示室
- 高砂貝塚:入江・高砂貝塚館
- 入江貝塚:貝層露出展示施設
- 北黄金貝塚:北黄金貝塚情報センター
- キウス周堤墓群:キウス周堤墓群案内所、千歳市埋蔵文化財センター
上記の7つのスポットに訪れることで、それぞれデザインが異なる「訪問記念NFT」を獲得することが可能です。また、全7種類のNFTをコンプリートすると「制覇記念NFT」も入手できます。
それぞれのNFTを獲得するためには、現地の遺跡を訪れる必要があるため、観光誘致が促進される仕組みとなっています。NFTの発行枚数はあらかじめ決まっており、「訪問記念NFT」は限定1,000個、「制覇記念NFT」は限定500個が発行されます。
また、NFTのデザインは、札幌を拠点にグラフィックデザインやオブジェ、インテリアなどのデザインを手がける「Wabisabi(ワビサビ)」というデザインコンビによって作成されています。
事前のアプリダウンロードなどは不要
今回、NFTを獲得するために、事前にアプリなどをダウンロードする必要はありません。
各スポットにはQRコードが設置されており、それをスマホなどで読み取るだけでNFTを獲得できます。また、獲得したNFTは、いつでもスマホ上で確認することが可能です。
MetaMask(メタマスク)などのweb3.0ウォレットは一切必要なく、暗号資産(仮想通貨)の知識がない方でも、問題なくNFTを入手できるでしょう。多くの方にプロジェクトに参加してもらえるよう、ユーザービリティにも配慮されているといえます。
なお、本プロジェクトでは、NFTの発行は「ProofX」、NFTウォレットは「UPBOND Wallet」が採用されています。
SNSハッシュタグキャンペーンも実施中
画像引用元:縄文世界遺産 × NFT デジタルスタンプラリー
本プロジェクトの実施に際し、「SNSハッシュタグキャンペーン」も開催しています。具体的には、以下のプロセスを踏むことで、抽選で10名に限定NFTがプレゼントされます。
- 世界遺産 「北海道・北東北の縄文遺跡群」の公式Twitter(@jomonjapan)、公式Instagram(jomon_japan)をフォロー
- 訪れた遺跡の写真などと一緒に「#縄Nラリー」のハッシュタグを付けてSNSに投稿
- 当選者には公式アカウントからDMで当選通知が届く
上記の通り、限定NFTを抽選で配布することで、ユーザーの満足度をさらに高める施策を行っていると考えられます。また、SNSで縄文遺跡に関する投稿を行うことが参加条件であるため、参加したユーザーによって情報が拡散され、さらなる認知度を高める効果があるといえるでしょう。
NFT保有者は協賛店舗・施設で優遇を受けられる
画像引用元:縄文世界遺産 × NFT デジタルスタンプラリー
それぞれの遺跡で獲得したNFTは、ユーティリティのないデジタルアートとして機能するわけではありません。本プロジェクトに協賛している店舗・施設でNFTを提示すると、ユーザーは様々な特典を得られます。
「NFT初獲得特典」「NFT全制覇特典」の2種類に分かれており、店舗・施設によって特典は異なります。具体的には、以下のような特典(ユーティリティ)が提供されています。
- 日帰り温泉の入浴料の割引
- ビールやドリンクの無料プレゼント
- ミネラルウォーター1本の無料プレゼント
- ホテル宿泊時の館内利用券のプレゼント
- 飲食料金10%オフ
- 宿泊無料券2名分の無料プレゼント
上記のような特典を用意することで、地域にある店舗や施設の利用を促進し、地域活性化につなげる狙いがあると考えられるでしょう。
「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」のメリットを考察
北海道とTOPPAN株式会社が共同で実施する「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」ですが、事業効率的な側面や、観光誘致を促進するメリットがあると考えられます。
以下の4つの項目に沿って、順番にメリットを確認していきましょう。
- スタンプラリーにNFTを活用して業務を効率化
- 地域の活性化や認知拡大が期待できる
- ユーザー情報を収集して情報発信・集客施策に役立てられる
- 他の世界遺産・観光地での横展開が可能
スタンプラリーにNFTを活用して業務を効率化
今回のプロジェクトは、NFTの技術を活用したデジタルのスタンプラリーとなっています。NFTを活用することで、従来の紙(ペーパー)を使ったスタンプラリーよりも、業務を効率化できるメリットがあります。
具体的には、以下のようなメリットが挙げられるでしょう。
- 用紙の印刷やスタンプ台の設置などが必要なく、運営側の負担を軽減
- スタンプ台などの各所に人員を置いておく必要がない
- スタンプ台で待つ人の列ができにくいので、ユーザーの離脱を防止
実際、各スポットに設置されているQRコードをユーザー自身が読み取り、自由にNFTを受け取れる形を採用しています。運営の業務負担を軽減した上で、今回のスタンプラリーが行われていることがわかります。
地域の活性化や認知拡大が期待できる
NFTを活用したスタンプラリーを行うことで、地域の活性化や認知拡大が期待できるでしょう。
今回のスタンプラリーでは、実際に現地に訪れないとNFTを獲得できません。そのため、プロジェクトにユーザーが参加することで、必然的に地域経済の活性化に寄与する仕組みとなっています。
また、NFTに特典(ユーティリティ)を設定することで、地域にある店舗・施設の利用が促進され、地方創生につながるメリットもあるでしょう。NFTという新しい技術を使っているため、業界内外で注目を集め、認知が拡大する可能性もあります。
ユーザー情報を収集して情報発信・集客施策に役立てられる
今回のデジタルスタンプラリーでは、ユーザー属性やNFTスタンプの収集経路といった情報を取得するとしています。
これらの情報を取得して分析することで、観光客に対して、より効果的な情報発信を行うことが可能となります。また、最適な集客施策の立案につなげることもでき、地域の活性化につなげられる可能性があるでしょう。
他の世界遺産・観光地での横展開が可能
「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」は、他の世界遺産や観光地でも実施可能な、再現性のあるNFTの活用方法だといえます。
「北海道・北東北の縄文遺跡群」に限らず、複数の遺跡やスポットによって構成されている世界遺産はめずらしくありません。また、世界遺産に限らずとも、複数の観光名所を売りにして、観光客を誘致している地域も多くあるでしょう。
こういった観光資源を持つ地域であれば、今回のようなNFTを活用したスタンプラリーは地域の活性化、観光誘致のために有効な施策になる可能性があります。
北海道が実施している「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」まとめ
今回の記事では、北海道とTOPPAN株式会社が共同で実施する「縄文×NFT デジタルスタンプラリー」について解説してきました。ご紹介したように、NFTとスタンプラリーを組み合わせることで、観光客の誘致を目指すプロジェクトとなっています。
また、獲得したNFTには周辺の店舗で利用できる特典が付与されているなど、ユーザーの満足度を高める施策も行われています。そこまで目新しいNFTの使い方ではないかもしれませんが、他の世界遺産や観光地でも展開できる、再現性の高い活用方法だといえるでしょう。