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終活×ブロックチェーンの事例を紹介

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少子高齢化が進む日本では、ここ数年の間で「終活」という言葉が一般的に使われるようになりました。50代〜70代で必要性を感じている人は75%以上いるとされており、後の家族の負担やトラブルを避けるため、生前の元気なうちから遺産相続や財産整理などに取り組む重要性が高まっています。

本記事では、終活に関連するブロックチェーンの事例を詳しくまとめました。

終活とは

終活は、生前から自分の死に向き合う書籍が多く発売された2009年頃から普及し始めた言葉です。元気なうちに遺産相続や財産整理、資産の生前贈与などを済ませる、などの公的手続きの面が注目されがちですが、実は身の負担を減らして残された人生を充実させる、気持ちを整理する、といったポジティブな活動でもあります。

終活を行う理由は「残された家族に迷惑をかけたくない」といった理由がもっとも多く、次いで「寝たきりになった時に備える」に続きます。元気なうちにやるべきことを済ませておきたい、と考えている人が多いようです。

2023年現在の日本の高齢化(65歳以上)割合は29.1%であり、2040年には35%、2060年には40%を超えて超高齢化社会が到来すると予想されています。終活市場の規模は現在で50兆円、2040年には70兆円に達し、ニーズは高まる一方です。

近年ブロックチェーンの技術はさまざまな業界に用いられており、終活に関連するサービスも多くリリースされています。情報を保存でき書き換えが困難というブロックチェーンの特徴は、生前の記録を残す上で親和性が高いです。

次からは、終活にブロックチェーンを用いた事例を紹介していきます。

終活×ブロックチェーンの事例

ここでは、終活に関連したブロックチェーンの事例を4つピックアップしました。

  • ブロックチェーンを活用した「終活ノート」のデジタル化
  • オンライン相続支援サービス「サラス」
  • BC+(DNCWARE Blockchain+)
  • Etherisc

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ブロックチェーンを活用した「終活ノート」のデジタル化

終活ノートとは、自分の本籍地や家系図、運転免許証番号、健康保険証番号などの個人情報や財産・資産、葬儀や相続、遺言など、自分の身の回りのあらゆる内容を記したもので、エンディングノートと呼ばれることもあります。

遺言書とも似ていますが、終活ノートは全く異なるものです。それぞれ以下の特徴があります。

◆終活ノートの特徴

  • 法的拘束力はない
  • 病気、介護など生きている間のこと、死後のこと両方を書ける
  • 証人の立ち会い不要で、紙やデジタルなど形式に決まりはない

◆遺言書の特徴

  • 法的拘束力がある
  • 相続人や財産の配分など死後のことだけを書ける
  • 自筆と押印、承認が必要など形式に決まりがある

終活ノートは遺言書よりもカジュアルで自由に書くことができ、形式も問われません。将来的に訪れる可能性がある不慮の事態に備えて、さまざまな内容を残せます。

ブロックチェーンを活用した「終活ノート」のデジタル化の仕組み

ブロックチェーンを活用した終活ノートは、金融機関や小売業、ECサイトのシステム開発を行うアイティフォー社と、ブロックチェーン事業を展開するchaintope社が提供しています。

ユーザーが記した終活ノートは、改ざんが困難なブロックチェーン上に保存され、いつどこからでもアクセスできるようになります。また記載した項目ごとに受取人を定めて、即時、死亡、認知症の認定時、など指定されたタイミングで閲覧できるよう設定することも可能です。

終活ノートを知っている、聞いたことがある人は77%いる一方で、すでに作成済みの人は3%に留まります。アイティフォー社とchaintope社の2社は、デジタルの強みを活かして新しい社会基盤を作ることを目指しています。

ブロックチェーンを活用した「終活ノート」のデジタル化の事例

2023年5月、熊本県が募集した令和5年度DX実証事業で、ブロックチェーンを活用した終活ノートは先端枠に採択されました。この採択により、熊本県バックアップの元で県内のDX化を進める企業や団体に対して推進されます。

採択が決まってから時間が経っていないこともあり、公開された事例についてはインターネット上で確認できませんでした。

一般的に終活ノートは、終活を考える50〜60代以降の人が書くことが多いです。そのため、デジタルに慣れていない人が大半を占めると考えられます。興味を持つ人は7割以上いる一方で作成済みの人は3%程度という事実を踏まえ、デジタルを苦手とする人の抵抗感を和らげ、いかに利用のハードルを下げて展開するかがポイントになるでしょう。

オンライン相続支援サービス「サラス」

オンライン相続支援サービスのサラスは、ブロックチェーン技術を用いてスポーツ、相続、業務効率化の事業を展開するSAMURAI Security社が提供するサービスです。

サラスは「相続をもっとかんたんに」をテーマにしています。相続のために何をすれば良いか、準備すべきものは何かなどの初歩的な質問に対しても、専属AIコンシェルジュが適切に返答をしてくれます。

さらに、明細の写真を撮るだけで財産管理ができる、トラブルを防止するオンライン契約など、相続に関するあらゆるサービスを備えています。

2022年8月には、スマートフォンのNFC(近距離無線通信技術)を利用したカードである「Its-Ca(イツカ)」の導入を開始しました。このカードによって、ユーザーはスマートフォンをかざすだけでサラスへの登録が完了し、サービスの利用を始められます。

SAMURAI Security社は相続の書類をデジタル化して、登記、保管、移転の手順をすべてこなせるプラットフォームを目指しています。

オンライン相続支援サービス「サラス」の仕組み

サラスはAIとブロックチェーン技術を用いたサービスです。サラスのブロックチェーンは次に紹介する東芝デジタルソリューションズ社が提供するBC+を使用しています。

ブロックチェーンはサラスの基盤となる技術であり、主には遺言管理やユーザーの正当性を判定しアクセスの許可、拒否を判断する認証系を担っています。

また、法的効力のある電子実印の発行や、資産継承のための契約書の作成にもブロックチェーン技術が導入されています。サラスはブロックチェーンとAIを融合し、従来のシステムを超えたサービスになることを目的としています。

オンライン相続支援サービス「サラス」の事例

サラスは個人向けのサービスの他にも「サラスPRO」という法人向けのプランも用意しています。サラスPROを導入した法人は、サラスを自社の相続事業の営業や実務の効率アップに役立てられます。

2022年12月時点では15社で導入が完了し、サラスPROを通じてサラスの登録者も増えているようです。登録者は年々増加を見込んでおり、2024年に2.1万人、2027年3月には62万人を計画しています。

BC+(DNCWARE Blockchain+)

BC+とは、東芝デジタルソリューションズ社が開発した、プライベート型のブロックチェーンです。ブロックチェーンには3種類(プライベート型、コンソーシアム型、パブリック型)あり、プライベート型は単体の企業が管理していて中央集権的な側面がある一方で、仕様変更が容易で取引スピードも早いというメリットがあります。

プライベート型のブロックチェーンは、外部に見られたくない企業間の取引内容など、主に閲覧を制限したい場合に用いられます。BC+は、自治体や相続、物流の業界での導入が進んでいて、特別なプログラミング言語は習得不要で開発が可能です。

BC+の仕組み

BC+は、ブロックチェーンを活用したビジネスを展開したい企業向けのサービスとなっています。Bまた、スマートコントラクトを実装しており、高いカスタマイズ性を持つブロックチェーンです。

導入したユーザーは、Webブラウザからトランザクションの総数と履歴、ユーザー情報の確認、スマートコントラクトの開発と管理などができます。専門的な知識を必要としない簡単な手順で導入できる仕様となっており、企業のDXを推進するブロックチェーンとしてさまざまな業界への展開が期待されています。

BC+の事例

BC+の開発元である、東芝デジタルソリューションズ社の公式サイトでは、以下3つの事例を紹介しています。

①自治体DX:契約事務の電子化への活用
②相続DX:本人性の確認への活用
③物流DX:モノのトレースへの活用

「①自治体DX:契約事務の電子化への活用」は、従来は効率化が難しかった分野であった契約業務のデジタル化にBC+を用いています。まだ実証実験の段階ですが、自治体の入札に関する一連の業務(業者登録から入札、契約、遂行、納品)を電子化して、DX化を推進しています。

「②相続DX:本人性の確認への活用」は、本記事でも紹介したサラスの内容と同様です。サラスは電子契約が可能な認証局の仕組み「KAMS」をBC+上に構築しており、ブロックチェーンの分散認証の技術を使用して、悪意のあるユーザーの不正利用を防止します。

「③物流DX:モノのトレースへの活用」は、ZEROBILLBANK JAPAN社が提供する物流管理サービス「Trace Ledger」での事例です。同社はQRコードを用いて、いつ、どこで、誰が、どのように、を記録することで、検品書と納品書のペーパーレス化や、紛失時の物流保険の証明への活用を予定しています。

Etherisc

Etheriscとはドイツに本社を構える保険会社であり、分散型保険のプラットフォームでもあります。2016年に設立され、暗号資産業界での歴史は比較的古い存在です。プラットフォームはイーサリアムのブロックチェーン上に構築されています。

Etheriscのブロックチェーンは、誰でも参加、取引履歴の閲覧ができる透明性の高いパブリック型です。コインテレグラフやコインデスクなどの暗号資産メディアや、フォーブスといった経済雑誌にも取り上げられており、実績と信頼性のあるプラットフォームとして知られています。

Etheriscの仕組み

Etheriscの保険はコミュニティによって構築され、支払いはすべてブロックチェーン上で自動で行われます。そのため、保険商品の考案や事務作業などに発生する人件費を省き、保険料への還元が可能です。

また、ブロックチェーンはスマートコントラクトの機能も実装しています。保険料の支払いは、旅行遅延保険はフライトの欠航または遅延のデータ、作物保険は洪水または干ばつのイベントによって収集されたデータ、といったようにトリガーとなる条件が決められていて、自動で実行されます。

Etheriscの事例

現在公式サイトでは「USDCデペッグ保険」「旅行遅延保険」「作物保険」の3種類の事例を確認できます。USDCデペッグ保険は、ステーブルコインのUSDコイン(USDC)のペッグが外れ0.995ドルになり、24時間以内に0.999ドルに戻らなかった場合にトリガーする保険です。この保険では、保護している金額の最大20%が支払われます。

旅行遅延保険は航空機が45分以上遅れた場合に、作物保険は間伐やハリケーンなど自然災害が発生した場合に対象となる保険です。

上記3つの事例以外にも、Chainlinkと提携してアフリカ向けに小規模農家を気候変動リスクから守る保険などを特定の顧客限定で提供しています。

終活市場の今後

少子高齢化に伴い、今後終活に取り組む人が増えてくるでしょう。

近年は高齢者もスマートフォンを使うようになり、Webの検索履歴やテキスト、画像、音声などのプライベートなデータが、機種に保存されたままになっていることも少なくありません。そうしたデータを家族が確認することによって、死後に尊厳が損なわれるケースも報告されているようです。

どの年代にとってもインターネットは生活から切り離せないものとなっており、今後はよりデジタルにフォーカスした終活が注目されると考えられます。

まとめ

プライバシーの管理と情報の保存を必要とする終活と、ブロックチェーンの親和性は高く、国内外でさまざまなサービスがリリースされています。少子高齢化は日本以外の国も悩ませる問題であり、終活が今後世界的なトレンドとなる可能性があります。

ぜひ記事の事例を参考に、ご自身がいずれ直面する終活について考えてみてはいかがでしょうか。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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