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「キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト」から考察|寄付におけるブロックチェーン活用の可能性とは

解説系記事

「キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト」とは、NFTを購入することで世界の子どもたちにサッカーボールを届けられるプロジェクトです。

世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンも参画しているプロジェクトであり、一種の寄付のような特性を持っている活動だと言えます。

この記事では「キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト」をケーススタディとし、寄付やそれに類似した取り組みにブロックチェーンを活用する意義について考察します。

プロジェクト概要

引用元:キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト

「キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト」は、ブロックチェーン技術を用いたアプリケーション開発を行うdouble jump.tokyo株式会社と、株式会社TSUBASAにより共同実施されたプロジェクトです。

日本を代表するサッカー漫画「キャプテン翼」の要素が盛り込まれたNFTを購入することで、購入者自身にも世界の子どもたちにもサッカーボールが届けられます。

なお、本プロジェクトのサッカーボールは、「キャプテン翼」の原作者である高橋陽一氏が新たに描き下ろしたイラストがあしらわれた限定版になっています。

「NFTの売上を元に、世界中の子どもたちにサッカーボールを届ける」という本取り組みは、一種の寄付のような行為だと見なすことができます。

一方、この取り組みが一般的な寄付のスキームと大きく異なるのは、寄付を集めるためにブロックチェーンとNFTを活用しているという点です。

寄付やクラウドファンディングのように「大人数から資金を集める」という特性をもった取り組みについて、現状ではいくつかの課題があると考えられます。

そして、ブロックチェーンの導入はこれらの課題を解決できる優れた手段になり得ます。

ここからは、既存の寄付等のスキームが抱える課題点についてまずは解説します。その後、寄付等の活動にブロックチェーンを活用するメリットについて考察します。

寄付による支援行為が抱える課題

引用元:キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト

寄付は人々の善意によって成り立つ支援行為です。

しかし、大多数の人間から多額の資金を集めるスキームであるにもかかわらず、特にその資金の流れに関しては以下のような課題を抱えています。

集められた寄付金の使途が見えにくい

1つめの課題は、集められた寄付金の使途が見えにくいことです。

具体的には、以下のような理由から、寄付金が実際に使われた使途が見えにくくなってしまっています。

  • 透明性の欠如:多くの寄付団体では、集められた資金がどのように使われているかに関する詳細な情報を公開していない場合があります。これにより、寄付者は自分の寄付が本来の目的で使用されているかどうかを確認するのが難しくなります。
  • 管理コストと非効率性:寄付金が管理団体を通じて寄付先に届けられる過程で、管理費用やその他の経費が発生することがあります。これらのコストがどの程度であるかは必ずしも明確ではなく、寄付金の一部が予定された目的以外に使われてしまうこともあります。
  • 詐欺や悪用のリスク:残念ながら、寄付金を詐欺目的で集める偽の団体や、寄付金を不正に悪用するケースも存在します。これにより、寄付の仕組み自体の信頼性が損なわれることがあります。

当然のことながら、寄付者は自分の寄付金がすべて寄付先に届けられることを望んでいるはずです。

しかし、実際は上記のような理由からすべての寄付金が必ずしも本来の寄付先に届けられているとは限らず、場合によっては悪用されている可能性もあります。

寄付をしたことの証明が困難

もう1つの課題は、寄付をしたことの証明が困難である点です。

寄付はあくまで寄付者の良心に委ねられた行為であり、寄付をした本人が必ずしも見返りを求めているわけではないでしょう。

しかし「誰が・どの団体に・いつ・いくらの寄付をしたか」という履歴は、寄付が金銭を伴う行為である以上、正確に証明できる方が望ましいと言えます。

現実的な問題として、寄付を行ったという事実は「寄付金控除」という税制上のメリットを享受する際に重要になってきます。

日本では、納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して「特定寄付金」を支出した場合には、所得控除を受けることができます。

寄付金控除を受ける際は、特に以下の2点に注意する必要があります。

  • 適格な団体への寄付であるか:寄付先が「特定公益増進法人」や「認定NPO法人」など、税法上で定められた資格を持つ団体である必要があります。条件を満たしていない団体への寄付は、寄付金控除の対象にはなりません。
  • 領収書の保有:寄付金控除を受けるためには、寄付を証明する書類(通常は領収書)が必要です。領収書がない場合、税務上で寄付を証明することができず、その結果として控除を受けることができません。

この2つの条件を満たさない場合、寄付金控除が適用されない可能性があります。

そして、ブロックチェーンのような透明性の高い技術を伴わない既存のスキームでは、「どの団体に、いくら寄付したか」を寄付者自身が証明することが困難になる可能性があります。

特に、寄付団体が何らかの理由で破綻した場合などは、寄付者が過去に実際に寄付をしたことを自分で立証するのはほぼ不可能になる恐れもあります。

寄付にブロックチェーンを活用するメリット

引用元:キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト

寄付のスキームにブロックチェーンの技術を導入することで、上述した課題が克服できる可能性があります。

ここではさらに考察を深め、NFTの活用が寄付を募る際にもたらすメリットについても解説します。

寄付金が正しく届いていることを確認できる

ブロックチェーンは「取引の透明性が高い」という特徴があります。

ブロックチェーン上で発生した売買に伴う資金の流れは、ブロックチェーンに刻まれた後、勝手に削除・改ざんされることはありません。

さらに、その資金の流れはブロックチェーン上に常に公開されているため、取引に関与した当人はもちろん、第三者からも取引の内容を確認することができます。

この透明性のおかげで、寄付者は自分の寄付金が最終的に誰の手元に渡っているかを自ら把握できます。

また、寄付を運営する団体が余計な管理コストをかけていたり、一部の資金を不正に悪用していた場合は、その事実も容易に明るみに出ることになります。

その結果、寄付のスキーム自体が非常にクリーンになることも期待されます。

寄付をした事実を証明しやすくなる

ブロックチェーンのもう1つの強みは「取引の追跡可能性が高い」という点です。

すでに述べた通り、ブロックチェーン上での資産のやり取りは半永久的にチェーン上に残り続けます。

つまり、「誰が・いつ・どの団体に・いくら寄付したか」がいつでも確認できます。

その結果、納税者が寄付金控除のメリットを受ける際はもちろんのこと、何らかの理由で「自身が過去に特定の団体に寄付をした」という事実を立証したいケースがあった場合、ブロックチェーンのおかげでその証明が容易になります。

IP活用を絡めて広範な寄付を募ることができる

「キャプテン翼 − ボールはともだちNFTプロジェクト」のように、NFTを活用して寄付を募ることは非常に有効です。

キャプテン翼のようなIPは日本人はもちろん、今や世界中の人々から好まれています。

熱心なファンも多く、関連グッズなどの市場は非常に大きな規模になっています。

その状況下で、寄付にNFTを活用した場合、IPが持つ「キャラクター性」を存分に生かして広く寄付を募ることができます。

法定通貨や暗号資産(仮想通貨)での寄付の場合はIPを活用することが難しく、「アニメや漫画、ゲームのファン」といった特定の層を巻き込むことは困難です。

しかし、今回のキャプテン翼の事例であれば、世界中のサッカーファンやキャプテン翼ファンを巻き込むことができます。

日本にはポケモンや鬼滅の刃など世界的に知られるIPが多数存在しているため、寄付等の活動にこれらのIPを活用することは非常に有効だと考えられます。

寄付におけるブロックチェーン活用の考察まとめ

寄付やクラウドファンディングのような「大人数から資金を集める行為」は、ブロックチェーンが持つ透明性と追跡可能性を最大限に活かせる領域です。

資金を集める側は、その透明性ゆえにクリーンな構造を作ることが求められ、結果的に非効率な運営や資金悪用のリスクが減ることが期待されます。

一方、寄付者の視点に立つと、自身が寄付をした事実が半永久的に証明できるようになることで、様々なメリットを享受しやすくなる可能性があります。

寄付やクラウドファンディング、あるいはそれらに類似したビジネスに取り組まれている方は、ぜひ自社事業へのブロックチェーン導入を検討してみてください。

Sparrow

Sparrow

フリーランスのWebライター。ブロックチェーンの非中央集権的な世界観に惚れ込み、暗号資産・NFT・メタバースなどのWeb3領域に絞って記事を執筆。自らの暗号資産投資やNFT売買の経験をもとに、難しいと思われがちなブロックチェーンについて、初心者にもわかりやすい記事を書くことを心がけています。好きなNFTクリエイターは「おにぎりまん」氏。
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