X(旧Twitter)の全世界の月間利用者数は「5億4,000万人(2023年7月時点)」で、主にアメリカや日本、イギリスで利用されています。情報がタイムリーに伝わり拡散されやすいという特徴を持ち、著名人のツイートが暗号資産(仮想通貨)市場に大きな影響を与えることも少なくありません。
本記事では、過去から現在に至るまでのXと暗号資産の関係をまとめました。Xを情報収集や発信のツールとして使っている人はぜひ記事を確認してみてください。
この記事の構成
X(旧Twitter)と暗号資産の関係の概要
Xの前身となるTwitterで、創業者であるジャック・ドーシー氏が「just setting up my twittr」と最初にツイートしたのは2006年3月のことです。Twitterは140文字の短文(有料のTwitter Blueでは4,000文字まで)で気軽につぶやけて拡散性に優れているのが特徴で、現在は芸能人やスポーツ選手、学者、経営者など多種多様な人に利用されています。
世界で最初となる暗号資産のビットコインが誕生したのは、サトシ・ナカモトという人物がインターネット上に論文を公開した2008年の10月です。ビットコインが世間で知られるようになったのは2016年頃からのことですが、その前から一部のユーザーによってTwitter上で議論が行われてきました。
そして、2018年3月にTwitterで暗号資産に関連する広告を禁止してからは、情報の規制と緩和を繰り返してきました。現在では重要なニュースがすぐに拡散される、著名人の発言によってアルトコインの価格が大きく変動する、アプリに暗号資産関連の機能を追加するなど、Xを通じてさまざまな出来事が起こっています。
暗号資産の情報を追う上で、Xは今後も欠かすことのできないツールといえるでしょう。次からは、Xと暗号資産の関係について主な出来事を年代別に紹介していきます。
2013年〜2016年の動き
暗号資産の黎明期にあたる2013年〜2016年は、主に暗号資産取引所や関連メディア、ビットコインを保有する限られたユーザーによって情報発信が行われてきました。
2013年6月:ビットコインの関連情報が発信される
2013年6月のビットコインの認知度が低く売買できる取引所が少ない時期は、一部の暗号資産関連メディアやユーザーがツイートに使われてきました。当時のツイートを見てもわかるように、いいねやリツイートがほとんどなく、興味を持っている人がほぼいなかったことを窺わせます。
また、今のような暗号資産関連のメディアも少なかったため、ビットコインの価格情報を確認するのも容易ではありませんでした。
当時のツイートを見ると「第三次世界大戦はビットコインベースで行われるのか」「スターバックスにビットコイン決済を受け入れてもらおう」など、情報のアンテナが高いユーザーによって、ビットコインの未来についての議論が行われています。
2014年2月:マウントゴックス事件で公式アカウントのツイートが削除
2014年2月に暗号資産取引所のマウントゴックスが、合計744,000BTC(当時約420億円)ものビットコインをハッキングにより失ったことで話題になりました。Twitter上にはマウントゴックスの公式アカウントがありましたが、ハッキング被害判明後にすべてのツイートが削除され、現在はいくつかリツイートのみ確認できます。
日本でも多くの投資家が被害に遭い日本政府への補償を求めましたが、受け入れられませんでした。事件から9年経ってもまだ終結しておらず、現在はマウントゴックスの管財人による再生計画が進んでいます。
2016年12月:暗号資産取引所のZaifがフォロワーに同時送金できる機能を実装
2016年12月に暗号資産取引所のZaifは、Twitterのフォロワーに対して気軽に送金(投げ銭)できる機能を実装したことを発表しました。この機能を使うことで、相手側がウォレットを保有していなくてもビットコインを送金できます。
Zaifはサービス発表前の2016年の8月末より試験的に投げ銭機能を提供を始め、開始から48時間で15,000件以上の送金が行われました。当初はTwitterの後にFacebookやInstagtramへの展開も予定していたようですが、7年以上経った今も実装は確認できず、普及に苦戦している様子が感じられます。
2017年〜2020年の動き
2017年末にバブルを迎え、少しずつ暗号資産の存在が世に知れ渡り始めます。しかし、実用面よりも投機的な側面が注目されたため、企業からは懐疑的な見方をされることも少なくありませんでした。
2017年12月:暗号資産がインフルエンサーを中心に話題に
2017年後半からTwitterで暗号資産に関連するツイートが増え、取引所のCMが放映され始めたことで、若者を中心に一気に認知度が広がります。2017年12月には当時の最高値「1BTC=約230万円」を記録しますが、これはSNSで暗号資産の存在を知った個人投資家が作り出したと言っても過言ではありません。
この頃から暗号資産に関連する情報を発信するインフルエンサーも増え始め、ICO(新規公開の暗号資産を格安で購入できる)に誘導するツイートも多く散見されるようになります。
2018年3月:Twitterで暗号資産関連の広告が禁止に
2017年12月に最高値をつけたビットコインは、その後約1ヶ月ほどで「1BTC=約93万円」ほどにまで下落します。バブル崩壊で悪いイメージが蔓延していましたが、草コインの暴騰を夢見る人をターゲットにICOは行われ続けました。
そうした状況の中、2018年3月にはTwitter広告でICOを含む暗号資産関連のセールスを行うことが全面的に禁止されました。個人アカウントが暗号資産に関するツイートやニュースを発信することは認められた一方で、事業者に対する規制が強まり始めます。
2020年7月:大量のアカウントが乗っ取られ支払いに暗号資産が使われる
2018年初めのバブル崩壊から、約3年にわたり暗号資産価格が停滞する時期が続きました。コインチェックを始めとした取引所のハッキング被害や、詐欺まがいのICOが報告され「暗号資産=危険」という認識が広がります。
Twitter関連では、2020年7月に著名人や有名企業のTwitterアカウントが乗っ取られ「暗号資産を送れば2倍にして返す」といった不正投稿が相次いで報告されました。暗号資産の匿名性が悪用されたことで、イメージが一段と悪化する事態に発展しています。
2021年以降
2020年12月からビットコインは再び上昇を始め、2021年以降はイーロン・マスク氏のツイートが暗号資産市場に大きな影響を与えるようになりました。また、Twitter社が暗号資産関連サービスの提供や、特定のアカウントを停止するなど、さまざまな出来事が起こり始めます。
2021年1月:イーロン・マスク氏がプロフィールに「#Bitcoin」と記載したことで高騰
2021年1月、イーロン・マスク氏がTwitterのプロフィールに「#Bitcoin」と記載したことで、ビットコイン価格が「1BTC=334万円→387万円」に急騰しました。同氏は一時総資産額がアマゾン共同創設者のジョフ・ベゾス氏を超えた人物であり、暗号資産市場への本格参入の期待感により買われたと考えられています。
この頃からイーロン・マスク氏が暗号資産関連のツイートをするたびに、ビットコインやドージコインなどに大きな値動きが見られるようになります。
2021年3月:Twitter社の創業者ジャック・ドーシー氏の初ツイートがNFT化で発売
2021年3月には、Twitter社の創業者ジャック・ドーシー氏の初ツイート「just setting up my twittr」がNFT化され発売されました。NFTが本格的に流行を始める2021年中盤に先駆けてリリースした形になり、暗号資産起業家のシーナ・エスタビ氏が290万ドル(当時約3億6,200万円)で購入しました。
ドーシー氏はビットコイン愛好家としても知られており、暗号資産関連プロジェクトにも複数投資を行っています。
2022年10月:イーロン・マスク氏がTwitter社の買収を発表
2022年4月頃からイーロン・マスク氏がTwitter社を買収する話が上がり始め、10月に正式に完了しました。買収総額は日本円で6兆4,000億円といわれており、8割以上の従業員削減や上場廃止、上層部の解雇など、思い切った決定をしています。
また、広告収益からの脱却、有料会員に対する機能追加など、ビジネスモデル自体の変更も検討されるようになりました。暗号資産推進派の同氏がTwitter社を主導することとなり、買収以降はさまざまな改革が行われるようになります。
2022年12月:独自通貨「Coin」の開発画面がリーク
2022年12月にTwitter社の独自通貨となる予定の暗号資産「Coin」の開発画面が、Twitter上にアップされました。ツイートをしたのは、セキュリティリサーチャーで現在20万人以上のフォロワーを抱えるJane Manchun Wong氏であり、本文では「Twitterはコイン購入画面を開発中」と述べています。
このことについて、2023年8月にイーロン・マスク氏は自身のツイートを通じて「独自トークンの開発をしたこともなく、今後もない」と完全否定しています。
2023年7月:TwitterをXに改名し、スーパーアプリ化を進める
2023年7月、イーロン・マスク氏はTwitterのアプリ名を「X」に変更しました。今後はメッセージの投稿や買い物時の決済、株や暗号資産なども購入できる金融機能を実装した、スーパーアプリ化を進める意向を示しています。
同様のスーパーアプリにはWeChat PayやAlipayがありますが、Xは発信者を中心とするお金の循環があることが差別化につながるとされています。ただ、過去にはスーパーアプリ化に失敗して頓挫したGoogleやPayPalの例もあり、評論家の間では無謀という声も少なくないようです。
2023年10月:リップル推進派のアカウントが停止
2023年10月、リップルを積極的に支持し将来性について活発な議論を行っていた「Digital Asset Investor.XRP」のアカウントが停止されました。リップル支持派からは停止について、イーロン・マスク氏が個別の銘柄を不利な状況に追い込むために不当に行ったものではないか、と指摘し批判する声が上がっています。
イーロン・マスク氏は当件について言及していません。現在はDigital Asset Investor.XRPのアカウントは復旧し、通常通りツイートを見られるようになっています。
今後のX(旧Twitter)と暗号資産の関係
今後Xはスーパーアプリ化に向けて、決済や金融機能を実装していくことを予定しています。具体的には、以下の通りです。
- 入金と決済機能を整える
- クリエイターの記事や動画に対して課金する仕組みを作る
- クレジットカードやデビットカードを提供する
- 株や暗号資産を購入できる機能を実装する
今後も、スーパーアプリ化するXにおいて暗号資産が重要な役割を果たすと考えていいでしょう。
また、一度はイーロン・マスク氏の意向により広告に偏ったビジネスモデルからの転換を計りましたが、再度復帰する動きが見られます。XのCEOを務めるリンダ・ヤッカリーノ氏は「過去の広告主の90%が戻ってきている。Twitter社はすでに損益分岐点を超え、2024年初頭には黒字を達成できる」ことを主張しています。
まとめ
現在のXはリンダ・ヤッカリーノ氏がCEOを務めていますが、今後もイーロン・マスク氏は経営方針やアプリの開発において、重要な役割を果たすと考えられます。
Twitter社買収後の大改革もひとまず沈静化し、2024年以降は黒字化を見込んでいるようです。Xの次なる動きに注目していきましょう。