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中古市場のブロックチェーン・NFT活用事例

解説系記事

近年は持続可能な社会を実現するために、政府や民間企業が一体となって「SDGs」へ取り組むことが求められています。新たな製品を生産せず既存の製品を活用する中古品は、資源が効率化され廃棄物が削減されるなど、SDGsの実現に大きく寄与することが期待されています。

昨今ではSDGsへの取り組みの加速化に加え、メルカリやヤフオクなどのサービスを使って個人がインターネット上で気軽に売買できるようになりました。こうしたこともあり、中古市場は年々拡大する市場として注目されています。

本記事では、成長市場である中古市場のブロックチェーン・NFT活用事例をまとめました。ブロックチェーン・NFTの事例に興味のある人は、ぜひチェックしてみてください。

中古市場とブロックチェーン・NFTの関連性

車やバイク、楽器、パソコン、ゲーム機、スマートフォン、書籍など、世の中には多種多様な中古品があります。中古品を購入する際は、外観に汚れはないか、テストで動かしてみて問題なく動作するかなど基本的なことは確認できる一方で、いつどこで買われ、どのような使われ方をしてきたか、といった過去の詳細な情報まではわからないことが多いです。

また、ブランド品のコピー技術も発達し、スーパーコピーと呼ばれる本物と見分けがつきづらい商品も流通しています。フリマアプリで本物と記載された商品を購入したが、実際に届いたものは精巧に作られた偽物だった、というトラブルも数多く報告されています。

そうした中古品に対する懸念や課題をブロックチェーンが解決できると、近年さまざまな事例が生まれています。ブロックチェーンは、取引履歴を含むさまざまな情報を書き込めることに加え、改ざんや不正がされづらいことが特徴で、容易に情報を確認することが可能です。

次からは中古市場でブロックチェーンやNFTを活用した具体的な事例を解説していきます。

中古市場とブロックチェーン・NFTの具体的な事例

ここでは、中古市場でブロックチェーン・NFTが活用された3つの事例を紹介していきます。

  • 高級時計
  • 中古車
  • 電子書籍

それぞれ詳しく見ていきましょう。

高級時計

近年、ロレックスやウブロ、パテックフィリップなどの高級時計は資産としても人気を集めています。数年前に新品の定価で購入した時計が、現在になってそれ以上で取引されることも少なくありません。

定価以上で取引された具体的な例としては、以下が挙げられます。

  • ロレックス デイトナ 116500LN 白文字盤:定価175万7,800円に対して中古販売価格約500万円まで高騰
  • パテックフィリップ ノーチラス 5711/1A:定価357万5,000円に対して中古販売価格が1,000万円を超える

機種や状態にもよりますが、定価の数倍で売買された事例は多くあります。

高級時計の中古市場が盛り上がっているのは、日本だけでなく海外でも同様です。2022年12月に香港で行われたオークション市場では、限定20本しか生産されなかったパテック・フィリップのモデルに5億円以上の値がつきました。

年々状態のいい中古の高級時計は減少していくため、今後は人気モデルの価格がさらに上昇していくとも予想されています。

課題と活用事例

中古の高級時計を求める人が年々増えている一方で、偽物も多く出回っています。ロレックスやパテックフィリップなど、スイスに本社を構えるメーカーが製造する高級時計1本に対して、偽物は2つ存在するという統計もあるほどです。

偽物の高級時計は、メーカーとしても悩みの種になっています。新品の販売時に発行する鑑定書自体の偽物も存在しており、模倣品によってブランドイメージの毀損や価値の低下につながるケースも少なくありません。

そうした状況の中、2019年5月から高級ブランドのヴァシュロン・コンスタンタンは、鑑定書をブロックチェーンに記録する取り組みを始めています。具体的には、時計の販売時に唯一性のあるERC-721規格のトークンにデジタルIDをつけて発行し、鑑定書として利用します。

このデジタル化した鑑定書をスマホでQRコードを読み取ることで、所有権を容易に移動することが可能です。また、鑑定書の保有者とブランド同士で匿名でコミュニケーションが取れるサービスも提供されています。

導入後

ブランド品に対してデジタル化した鑑定書を発行し、真贋判定に利用する事例は年々増加しています。同じ時計メーカーでは2020年3月にブライトリング、その他には2020年1月にアジアのマーケット向けに高級ブランドを取り扱うECサイトのリーボンズが、同様の仕組みの導入を発表しました。

世にあるブランド品は高級時計に限りません。今後はブランドのバッグやアクセサリー、衣服などへの展開も期待されています。

中古車

中古車市場の歴史は古く、始まりは1950年代といわれています。当時日本は経済復興を遂げ車を持つ人が増える中で独立系の中古車販売業者が登場し、1970年代頃からはオークション形式で販売されるようになりました。

1990年代には店頭に中古車が並ぶ業態が登場し、2000年代からはトヨタや日産などの車メーカーもグループ会社を設立して参入を始めました。近年は新車価格が高騰する中で市場が拡大を続け、2023年の規模は3兆9062億円になると予想されています。

中古車市場で取り扱われる車としては、自動車を始め、バイク、作業車などあらゆる種類が挙げられます。また、部品にバラして個別に販売することもあります。

課題と活用事例

中古車の使用度合いを判別する指標の一つとして、走行距離が挙げられます。走行距離は車に付帯するメーターによってカウントされますが、細工して巻き戻しすることで実際の価値よりも高く見せる行為が過去に行われてきました。

そうした問題に対して、株式会社世界は2022年3月に「オドチェーン」と呼ばれる、走行距離の改ざん防止をするシステムのベータ版をリリースしました。ブロックチェーン技術を活用したオドチェーンは仕組み上改ざんが不可能であり、主に車検制度が未整備な国に向けて展開される予定です。

海外ではドイツの車メーカーであるメルセデスベンツが、販売店や過去の利用者の履歴、車検の情報などがブロックチェーン上で記録されるプラットフォーム「Vehicle Residual Value Management Platform」の開発を進めています。

導入後

中古車業界でのブロックチェーンの活用は発展段階といえます。現在はスタートアップから車のメーカーまで、さまざまな会社が中古車販売にブロックチェーンを取り入れたシステムの開発を行っています。

中古車の需要が年々高まる一方で、2023年には大手中古車販売会社の大規模な不正が発覚し、業界としてのあり方までも問われる事態に発展しました。中古車販売に対して以前にも増して透明性が求められる中で、ブロックチェーンの技術がどのように活用されていくか注目が集まります。

電子書籍

新型コロナによる巣篭もり需要も追い風となり、電子書籍市場は近年大きく成長しています。年10%前後のペースで成長しており、2022年には6,000億円を超え、2027年には8,000億円に到達すると予想されています。

電子書籍を提供する主なサービスには「ビッコマ」や「LINEマンガ」「Kindleストア」などがあり、ジャンルとしては漫画を始め、写真集、雑誌の取り扱いがあります。年代別の利用率は男女ともに20代、30代が高いです。

電子書籍の仕組みは、ユーザーが電子書店から閲覧する権利を受ける形が一般的です。紙媒体の書籍のように所有権は移転しません。ユーザーが課金したとしても電子書籍の所有権は電子書店側にあります。

電子書籍は場所を選ばずオンラインで気軽に課金して閲覧できる一方で、転売することができません。また、課金した電子書店が閉店してしまうと閲覧ができなくなります。

課題と活用事例

電子書籍の課題として、電子書店が閉店することでユーザーが閲覧できなくなる点が挙げられます。2014年2月には、電子書籍を扱うエルパカBOOKSとReader Store(北米のみで国内は継続)が相次いで閉鎖を発表し、実際に課金したコンテンツを読めなくなるケースが発生しています。

そうした課題がある中で、2023年7月に早川書房の新レーベルであるハヤカワ新書は、NFT化された電子書籍を紙書籍とセットで発売しました。このNFT化された電子書籍の購入履歴や所有権の移転に関する情報はすべてブロックチェーン上に記録され、万が一電子書店が閉鎖した場合でも、ユーザーが保護される仕組みが導入されています。

NFT化されることで、誰がいつどこで売ったかがわかります。情報はブロックチェーンに紐づくため、転売が行われた際に出版社や作家に印税が入る仕様へ対応することも可能です。

ハヤカワ新書より発刊されたNFT化された電子書籍の一つである「名作ミステリで学ぶ英文読解【NFT電子書籍付】」は、定価は1,496円のところ、2倍以上となる3,480円で転売されました。他の書籍も定価以上で転売された実績があり、さらなる市場拡大の可能性を秘めています。

導入後

ハヤカワ新書がNFT化された電子書籍と紙書籍とセットで発売したのは2023年7月のことで、導入後の効果は確認できませんでした。しかし、話を聞いた作家の9割以上が前向きに捉えていることや、複数の転売事例が生まれていることから、今後他の出版社への広がりも期待できます。

今回の取り組みは世界で初めてのことです。早川書房と共同でサービスを提供する株式会社メディアドゥは「読者にお金を払っていただけるようなNFT版のアイデアをまだ施行できていない」「ウォレットを準備する手間がある」など、課題に感じていることも多いようです。

今後の市場拡大のためには、今回の事例を見た他の出版社が参入して活発化し、ユーザーが魅力的に感じるサービスの提供が求められることでしょう。

ハイブリッドNFTマーケットプレイスのクリプトモール

最後にデジタルNFTとアナログNFTの両方を取り扱うクリプトモールを紹介します。クリプトモールジャパンが運営するプラットフォームでは、デジタルNFTとアナログNFTの両方を取り扱っています。

デジタルNFTとは画像や動画などのデジタルデータを対象としていて、アナログNFTとは物理的に存在するものが対象です。従来NFTはデジタルデータに限定されていましたが、特許取得済みの「鑑定証明システム(R)」を組み込んだ「鑑定証明チップ(R)」を商品に内臓することで、世界に唯一無二の商品であることの証明を可能にします。

クリプトモールでは、デジタルNFTとアナログNFTの両方を含むものを「ハイブリッドNFT(TM)」と呼んでいます。ハイブリッドNFT(TM)は実際に存在するものでありながら、ブロックチェーン技術により唯一性が証明されるという特徴を持ちます。

ハイブリッドNFTは、NFTの裾野を広げ中古市場が抱える問題を解決できるとして、現在さまざまな業界から注目されています。

まとめ

近年のSDGsに向けた動きもあり中古市場は年々広がりを見せている中で、大手買取店の不祥事や売買のトラブルが発生しています。中古品の透明性を示すことは今後も強く求められると考えられます。

ブロックチェーンは情報を記録することができ、内容の改ざんが困難であるという特徴を持っています。透明性を示すために、今後さまざまなジャンルの中古品に対しての活用が期待できるでしょう。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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