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FT/NFTがリーチするセグメントは?Web3時代の顧客分析

解説系記事

Web3時代におけるマーケティング手法の一つとして、トークンの活用が注目を集めています。トークンは既存商品への特典提供やリワードとして機能し、エンゲージメントと顧客体験を向上させます。

それでは、FT/NFTの魅力に反応する顧客層は具体的にどのようなセグメントに属しているのでしょうか?

本記事ではFT/NFTがリーチするセグメントについて詳しく解説します。皆様のマーケティング、新規事業のお役に立てるソリューション情報となれば幸いです。

マーケティングにおける顧客分析

マーケティングにおける顧客分析は、顧客の行動やニーズ、好みを理解し、製品やサービスを最適化するための重要なプロセスです。具体的には、セグメントの特定、ターゲット顧客の行動パターンの把握、購買傾向の分析などが行われます。

Web3時代の顧客分析

比較項目 従来の顧客分析 Web3時代の顧客分析
データソース 購買履歴、行動データ DLT※1
プライバシーとセキュリティ 中央集権的管理 分散化、高い匿名性
顧客との関係 一方向のデータフロー 双方向のインタラクション

Web3時代の顧客分析では、ブロックチェーン、NFT※2、DAO※3を活用し、顧客の行動や嗜好を深く理解していきます。従来の分析が購買履歴やアンケート調査などに依存していたのに対し、Web3ではDLTによる公開情報の分析に重点が置かれます。

DLT上で顧客行動はリアルタイムで公開されるので、よりタイムリーでパーソナライズされたマーケティング戦略を実現できます。

※1 DLT(Distributed Ledger Technology:分散型台帳技術)は中央管理者を介さないデータ管理システムです。
※2 NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)はデジタルコンテンツの所有を証明するブロックチェーン技術です。
※3DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自立組織)は中央管理者を介さずに事業やプロジェクトを推進できる組織形態です。

マーケティングに使用されるFT/NFT

Web3時代のマーケティングでは、FT※4とNFTを活用します。FTはリワードや支払い(アイテム購入、入場料)などに使われ、顧客ロイヤルティや行動を促進する役割を果たします。NFTは会員券、商品販売特典、記念品などに用いられます。

FT/NFTを用いたWeb3時代のマーケティングを「トークングラフマーケティング」といいます。トークン保有からユーザー属性を分析し、パーソナライズされたコミュニケーションを展開します。

※4 FT(Fungible Token:代替性トークン)は様々なトークンと替えることのできる暗号資産です。

FT/NFTがリーチするセグメントは?

FT/NFTを用いたマーケティングを進める際、どのようなセグメントにリーチしやすいのでしょうか。様々な観点から解説します。

地域別で分析

FT/NFTがマーケティングなどで有効に使用できる地域は、暗号資産の保有率によって決定されます。保有データを活用し、Web3ビジネスを展開する地域を決定していきましょう。

米国では2023年時点で暗号資産(FT/NFT)の保有者は2,700万人を超えているとの試算があります。Web3ビジネスは全世界的な展開となります。プロジェクトの公式サイトでは、英語表記化は重要です。また、先進国だけでなく、インドやベトナム、フィリピンなど発展途上国での暗号資産保有率が向上しています。特にベトナムでは「Axie Infinity」を成功させたSkyMavis社があることから、P2Eプロジェクトなどへの理解が高いとされています。

日本もFT/NFTの保有者数は少なくありません。2023年時点で500万人以上が何らかの形でFTやNFTを保有しているという統計がでています。BCG※5の認知度も上がっており、FT/NFTを用いたマーケティングや事業はさらに増加すると予想されています。

※5 BCG(Block Chain Game)はブロックチェーン技術を用いたゲームです。
参考:暗号資産決済企業TripleA「Cryptocurrency Ownership Data」
参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「NFTの動向整理」

年代別で分析

FT/NFTの保有率は30代で高くなっています。次いで20代、40代の順です。2022年時点において、30代では16%程度の方が暗号資産を保有した経験があるという統計があります。

このことから、Z世代マーケティングを進める企業にとって、FT/NFTは有力なマーケティングツールであるといえます。

一方で、一般的にCEX※6では年齢制限が設けられています。特に日本国内の取引所はKYC※7が徹底されており、未成年の暗号資産トレードはできません。FT/NFTをマーケティングに使用する場合は民法上の制限もしっかりと理解しておく必要があります。

※6 CEX(Centralized Exchange:中央集権型取引所)
※7 KYC(Know Your Customer:本人認証)

性別で分析

暗号資産の保有率は性別で顕著に異なります。例えば、日本国内の30代男性は20%以上がFT/NFTを保有した経験があるのに対し、同年代の女性では10%以下に留まります。

女性をターゲットにしたWeb3マーケティングを進める際は、より細分化されたセグメントが必要になります。

参考:SBI金融経済研究所「誰がデジタル金融資産に投資しているのか」

年収別で分析

一般的に高年収になるほど、暗号資産保有率は上がるとされています。可処分所得の増加と共に、ポートフォリオに暗号資産が組み込まれる可能性が高まるからです。一部統計によると、年収1,500万円以上の方の暗号資産保有率は30%以上という結果がでています。

一方で、BCGの認知度向上に伴い、20代や30代の方々のNFT保有率も高まっています。この年代グループのコア年収は600万円以下です。

参考:MMD研究所「暗号資産の保有状況(個人年収別)」

FT/NFT保有者の顧客行動を分析

マーケティングでリーチできたFT/NFT保有者の行動はどのように分析/把握していくのでしょうか。具体的に解説していきます。

スマートコントラクトの活用

スマートコントラクトはブロックチェーン上の取引を自動で進め、公開してくれます。取引に使用されたウォレットアドレスやトレード金額も全てチェーン上に記録されます。チェーンを分析することで、FT/NFTの購入パターンや取引頻度を理解でき、顧客行動のインサイトを得ることが可能です。

どのプロモーションが効果的で、顧客がどのようなオファーに価値を感じているかを掌握することで、企業はより魅力的なプロモーションや製品を企画できるようになります。

関連記事:「NFTは自作可能?スマートコントラクトの作成からミントまでを解説」

ブロックチェーン分析ツールの使用

分析スタッフがFT/NFTを保有する顧客全てのブロックチェーンを追跡するのには限界があります。そこでブロックチェーン解析ツールを使っていきます。分析ツール「Dune」では簡単なSQL※8だけで、企業の個別ニーズに応じた分析が可能です。

Duneを使えば簡単なコーディングでNFTマーケットのトレンドなども掌握することができます。

※8 SQL(Structured Query Language)はデータベースを制御するための言語です。
関連記事:「Duneとは?SQLでブロックチェーンデータの分析/評価」

オラクルデータの活用

オラクルはブロックチェーン外部の情報をネットワーク内で利用可能にするシステムです。
ソーシャルメディアのトレンドやディスカッション情報を取り入れたスマートコントラクトの実行を可能にします。

外部の経済データや重要なイベント情報、市場の変動や社会的な動きがFT/NFT保有者の購入行動にどのような影響を与えるかを深く理解することができるようになります。

関連記事:「分散型オラクルとは?外部リアルタイムデータとブロックチェーンの接続」

リーチの次が重要

マーケティングに用いる、もしくは商品として売り出すFT/NFT情報が想定したセグメントにリーチした後は、クロージングまで顧客のリテンションを図ります。

アプローチ

アプローチは顧客育成のフェーズです。リーチできたセグメントの個別ニーズを深く理解し、ソリューション情報を提供していきます。

例えば、トレンドを反映したNFTのデザインや限定性をPRすることが効果的です。高収入層には独占性や高級感を持ったFT/NFTを提案します。顧客に対してFT/NFTの入手、もしくは購入のハードルを低くしていきましょう。

エンゲージメント

エンゲージメントは企業や商品と顧客の関係を深めていくプロセスです。インタラクティブなコンテンツ、オンラインコミュニティへの参加、限定オファーやイベントの開催を通じて、顧客の関心を深化させます。

顧客がFT/NFTを活用できるよう、その使用方法や利点を明確に伝え、エンゲージメントを高めることが重要です。ブランディングと長期的な顧客関係の構築につながります。

クロージング

クロージングは最終的な契約の段階です。FT/NFTをマーケティングに使用するにしても、商品として売るにしても、クロージングの段階で安全面と将来性を伝える必要があります。

将来的な用途、またスマートコントラクト仕様なども顧客に伝え、流動性のあるFT/NFTであればボラティリティに関してもしっかりと説明しましょう。透明性のある説明は顧客ロイヤルティを向上させます。

FT/NFTを用いたマーケティング事例

実際にFT/NFTを用いたマーケティング事例を解説します。

カルビー株式会社「NFTチップス」

2023年4月、カルビー株式会社はNFTをマーケティングに使用しました。ポテトチップス購入者に「ポテトNFT」を提供するキャンペーンを実施することで製品購入を促しました。

NFTの入手条件として「自社アプリの登録」を設定し、エンゲージメント向上を図っています。

東急電鉄「東急新横浜線開業記念NFT」

2023年3月、東急電鉄は新横浜線開業を記念して、限定デザインの鉄道車両NFTを無料配布しました。新横浜線開業を記念するとともに、鉄道ファンやアート愛好者をターゲットにしたエンゲージメントを図っています。NFT配布キャンペーンは、新たな顧客接点を作り出しました。

スターバックス「Starbucks Odyssey」

「Starbucks Odyssey」はスターバックスによるNFTマーケティングの取り組みです。アプリゲームやストーリーを進めることで、顧客は独自のNFTスタンプを獲得し、スターバックスのサービスと交換できます。

NFTスタンプはマーケットプレイスで売買も可能です。NFTトレードによって、顧客間の相互作用を促進し、エンゲージメントを深める狙いがあります。

まとめ

Web3時代のマーケティング戦略は顧客のデジタル体験やインタラクションを重視する方向へとシフトしています。FT/NFTの効果的な活用は、顧客との関係を強化し、ブランドロイヤルティを育成する上でとても有効です。

以上、FT/NFTがリーチするセグメントについて解説をしました。マーケティングに新しいFTやNFTを導入して、新たなビジネスチャンスを獲得しましょう。

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NFT HACK 編集部

ブロックチェーン専門のシステムエンジニアチームとして、プライベートチェーン開発やNFT自動発行システム、ウォレットコネクトを含む大手NFTマーケットプレイスの開発に従事。現在は世界各国でブロックチェーン専門のシステム案件を請け負っています。
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