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Cosmos(ATOM)とは?相互運用性の実現を目指すプロジェクトについて解説!Polkadotとの比較も

解説系記事

Cosmos(ATOM)は、異なるブロックチェーン同士をつなげる相互運用性(インターオペラビリティ)の実現を目指すプロジェクトです。

従来のブロックチェーンには相互運用性がない場合が多く、異なるチェーン同士での通信・データ共有・取引が困難という課題があります。

Cosmosはこの問題を解決し、チェーン間での円滑な取引や開発の実現を目指しています。

この記事では、Cosmosの仕組みや技術的な特徴、また最近のCosmosの動向について解説します。

CosmosとATOMの違いについて

引用元:Cosmos

詳細な解説の前に、CosmosとATOMの表記が持つ意味の違いについて確認しておきます。

個々の暗号資産(仮想通貨)の呼称において、「ブロックチェーン技術」そのものを指す言葉と、当該ブロックチェーンを技術的な基盤とした「通貨」を指す言葉が混在していることが多く見られます。

CosmosとATOMについても、まずはその違いを理解しておきましょう。

Cosmosについて

Cosmosは、ブロックチェーンが抱える相互運用性の問題を解決するために生まれたプロジェクトです。

現在、私たちが利用しているブロックチェーンでは「Bitcoinのチェーン」や「Ethereumのチェーン」がそれぞれ別個のものとして存在しています。これらのネットワークやエコシステムは相互につながっておらず、ゆえに不便さが生じてしまっています。

Cosmosは、これらのチェーンを相互に接続することで円滑な取引を実現し、業界の発展に寄与することを目的としています。

なお、厳密にはCosmosはブロックチェーンの名称ではありません。

ブロックチェーンの名称は後述するCosmos Hubであり、CosmosはCosmos Hubも含めたエコシステムの総称と位置づけられています。Cosmosのエコシステムについては後ほど解説します。

ATOMについて

ATOMは、Cosmosのエコシステムにおけるネイティブトークンであり、同時に通貨単位や取引における通貨記号として使用される表記でもあります。

ATOM建ての金額を表示する際や、取引所での取引ペアの表示に使われます。例えば「1ATOM」や「ATOM/USD」のように用いられます。

まとめると、「Cosmos」はブロックチェーンを中心とするエコシステムを総体的に指す名称であるのに対して、「ATOM」はネイティブトークンの名称、あるいは通貨単位や取引記号として使用されます。

この両者は文脈に応じて使い分けることが望ましく、したがって本記事でもこの2つの用語は区別して用いることとします。

Cosmosの歴史

引用元:Cosmos

Cosmosの歴史は暗号資産業界の中では古く、Tendermintが開発された2014年まで遡ります。

Tendermintは、Cosmosの開発基盤となっているブロックチェーンプロトコルです。このTendermintを使ってブロックチェーンを複数作り、そのブロックチェーン同士をつなげるというところからCosmosの「相互接続」の発想が誕生しました。

その後、2016年にホワイトペーパーが公開。同時に、Interchain Foundation(ICF)という財団も設立されました。2017年にはInterchain Foundationの主導でICOが行われ、資金調達に成功しています。

2019年にはCosmosエコシステムのブロックチェーンであるCosmos Hubがローンチ。そして2021年には、Inter Blockchain Communication(IBC)と呼ばれる「異なるブロックチェーン同士の通信」を行う機能が有効化されました。

Cosmosが生まれた背景には、イーサリアムなどの主要プラットフォームが抱える課題がありました。特に重要な問題だとされていたのが、「スケーラビリティ」と「中央集権性」の2点です。

スケーラビリティの問題は、ガス代の高騰や処理の遅延に直結するとされ、2024年現在でもブロックチェーン業界の課題として認識されています。

また、Cosmosの考案者であるJae Kwon氏、Zarko Milosevic氏、Ethan Buchman氏の3名は、イーサリアムのようなプラットフォームの中央集権化についても危機感を抱いていました。

Cosmosは、スケーラビリティと中央集権性の2点に対する課題感から開発がスタートし、その後生じた相互運用性への問題意識も土台として、現在も開発が進められています。

Cosmosの技術的特徴

引用元:Cosmos

ここからは、Cosmosの技術的な特徴について解説します。

また、ネイティブトークンのATOMについても、その役割も含めて説明します。

Cosmosが提案する解決策

Cosmosが、スケーラビリティの問題を解決するために提案した策は、イーサリアムのようなスマートコントラクトプラットフォームと真逆の性質を持っています。

特に、dApps(分散型アプリケーション)とブロックチェーンの関係性においては、以下のような相違点があります。

  • イーサリアム:1つのスマートコントラクトプラットフォーム上にdAppsを配置
  • Cosmos:dAppsがそれぞれ独自のチェーンを持ち、独自チェーン同士を接続する

これにより、Cosmosでは1つのブロックチェーンにトランザクションが集中することなく、取引遅延やガス代の高騰を避けることができます。

Cosmosのエコシステム

すでに述べた通り、Cosmosはブロックチェーンを指すものではなく、エコシステム全体を包括している概念です。

そして、このCosmosエコシステムには、以下4つの主要な技術が含まれています。

  • Cosmos Network:ネットワーク
  • Cosmos Hub:ブロックチェーン
  • Cosmos Atom:独自トークン(暗号資産)
  • Cosmos SDK:ブロックチェーンの開発キット

上記4つについて、それぞれ概要を解説します。

Cosmos Network

Cosmos Networkは、Inter Blockchain Communication(IBC)と呼ばれる通信で出来た通信網のことを指します。

この通信のおかげで、Cosmosが目指す「異なるブロックチェーン同士での情報のやり取り」が実現しています。

IBCでは取引情報を専用のルートで送信することができ、その途中には情報の正当性を確認するフィルターが存在します。

このフィルターのおかげで、仮にやり取りをするチェーン同士の間に信頼関係がない場合でも、安全に情報のやり取りをすることができます。

Cosmos Hub

Cosmos Hubは、IBC通信の中継点(ハブ)になるためのブロックチェーンです。このチェーンは2019年3月に稼働を開始しました。

コンセンサス・アルゴリズムには、Proof of Stake(PoS)の仕組みを応用した「Delegated Proof of Stake(DPoS)」を採用しています。

なお、Cosmos HubはCosmos Networkの利便性向上につながるものの、Cosmos Networkの存続においては必須の要素ではありません。Cosmos Hubがなくても、Cosmos Network自体はなくならない点には注意が必要です。

Cosmos Hubは、Cosmosエコシステムの中で作成される他のブロックチェーン「Zone」の経由地点となっており、Zone間で円滑に通信ができるように管理する役割を担っています。

Cosmos Atom

Cosmos Atomは、Cosmos Hubの中で利用される暗号資産です。すでに述べた「ATOM」と同じものを指しています。

ブロックチェーンであるCosmos Hubを機能させるためには、ネイティブトークンであるCosmos Atomは必須の存在です。

しかし、上述した通りCosmos Hubが機能しなくてもCosmos Networkには影響がないため、Cosmos Atomも同様に「Cosmos Networkを機能させる」点においてはなくても構わない要素でもあります。

なお、Cosmos Atom自体には、ステーキング、ガバナンス投票、取引手数料の支払いなどの用途があります。

Cosmos SDK

Cosmos SDKは、IBCに対応した独自のブロックチェーンを簡単に作ることができる開発キットです。

Cosmosでは、まずCosmos SDKで独自のブロックチェーンを作ります。このチェーンをそのままCosmos Networkに接続することで、Cosmosのエコシステム内で他のチェーンと接続できるようになります。

Polkadotとの違い

Cosmosの他に、ブロックチェーン同士を相互に接続することを目指すプロジェクトとしてPolkadotがあります。

CosmosとPolkadotは、主に以下の4点について違いが見られます。

  • 独自ブロックチェーンの開発方法
  • チェーン間の通信方法
  • ハブの役割
  • シェアードセキュリティ

上記4つについて、それぞれ概要を解説します。

独自ブロックチェーンの開発方法

Cosmosの場合は、独自チェーンの開発キットであるCosmos SDKが用意されています。

一方、PolkadotにもSubstrate(サブストレート)と呼ばれる開発キットがあります。

異なる開発キットを用いているものの、独自のキットを使ってブロックチェーンを作る点は似ていると言えます。

チェーン間の通信方法

チェーン間の通信方法は、かなり大きな違いがあります。

まずCosmosでは、IBCによりチェーン同士が対等な関係で通信を行います。

これに対しPolkadotには、親チェーンと子チェーンの関係が存在します。

親チェーンはリレーチェーン、子チェーンはパラチェーンと呼ばれており、リレーチェーンはパラチェーンに対して様々な機能を提供する代わりに、パラチェーンから情報を汲み取っていくという関係性があります。

ハブの役割

Cosmosのエコシステムにおいてハブの役割を果たしているのはCosmos Hubです。しかし、Cosmos Hubはネットワークにとって必須の存在ではないため、仮にCosmos HubがなくともCosmos Networkは存続できます。

一方、Polkadotにおけるハブの役割を果たすリレーチェーンは親チェーンにあたる存在であり、これがなくなるとPolkadot自体が機能しなくなります。

シェアードセキュリティ

シェアードセキュリティとは、51%攻撃などに対抗するために、親チェーンのセキュリティを子チェーンにも提供する仕組みです。

CosmosのIBCにはチェーン間の親子関係が存在しないため、通常は個々の独自ブロックチェーンそれぞれが、自分たちの独自のノードで検証作業を行っています。各チェーンの負担は大きくなるものの、プロジェクトの決定・実行に関する自由度は高いと言えます。

一方、Polkadotではリレーチェーンがパラチェーンのセキュリティ対策も請け負っています。これにより、セキュリティに関するパラチェーンの負担は軽減されています。

Cosmosに関する最新事情

引用元:Cosmos

ここからは、Cosmosに関する最新の動向について解説します。

USDCがCosmosに対応

Circle社が発行するステーブルコインUSDCがCosmosにも対応することが、2023年8月に発表されました。

Circle社は、USDCをネイティブのまま各ブロックチェーン間で転送する「クロスチェーン転送プロトコル(Cross-Chain Transfer Protocol:CCTP)」を、イーサリアム、アバランチ、アービトラムの3つのブロックチェーンに対応させていました。そしてCosmosについても、CCTPに対応することが明らかになっています。

また、Cosmosのエコシステムにおいては、トークン発行プロトコルのノーブル(Noble)を介してUSDCのネイティブ対応がなされることになっています。

ATOMがリキッドステーキングに対応

2023年9月、ネイティブトークンのATOMがリキッドステーキングに対応することが明らかになりました。

リキッドステーキングは、ステーキングによりロックした資産と1:1の割合で価値を担保したトークンを新たに発行することで、ステーキングに参加して利回りを得ながらも、発行したトークンによる運用も同時に可能にするサービスです。

ATOMのリキッドステーキング対応にあたっては、Cosmos Hubに「リキッドステーキングモジュール」が導入されました。

これによりリキッドステーキングプロパイダーは、ステーキングされたATOMをリキッドステークATOMに変換し、ユーザーに提供することが可能になりました。

その結果、ユーザーはATOMをステーキングして報酬を得ながら、他のDeFiでリキッドステーキングATOMの運用ができるようになりました。

Cosmos(ATOM)の今後の展望まとめ

本記事では、Cosmos(ATOM)の特徴について解説しました。

CosmosはPolkadotと同様に、ブロックチェーンの相互運用性の実現を目指すプロジェクトです。しかし、この両者は競合関係ではなく、それぞれ異なる特徴を持って相互運用性の課題に取り組む共創関係にあります。

また、USDCのCosmosへの対応や、ATOMがリキッドステーキングに対応したことは、Cosmosの今後の展開に大きなプラス要因となるでしょう。

本記事を読んでCosmos(ATOM)に興味が湧いた方は、ぜひATOMを手にして、実際にステーキングなどのサービスを利用してみてください。

Sparrow

Sparrow

フリーランスのWebライター。ブロックチェーンの非中央集権的な世界観に惚れ込み、暗号資産・NFT・メタバースなどのWeb3領域に絞って記事を執筆。自らの暗号資産投資やNFT売買の経験をもとに、難しいと思われがちなブロックチェーンについて、初心者にもわかりやすい記事を書くことを心がけています。好きなNFTクリエイターは「おにぎりまん」氏。
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