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東電が参画する位置情報ゲーム「ピクトレ」とは?

解説系記事

近年、遊びながら稼ぐ「Play to Earn」のゲームが多く生まれています。しかし、収益モデルの弱さや社会的価値の不在によってユーザーが離れ、消えていったものも少なくありません。

そうした状況がある中、東京電力パワーグリッド株式会社を始めとした3社が、位置情報ゲーム「ピクトレ」をリリースすることを発表しました。ピクトレでは、ユーザー側は報酬を獲得でき、東電側も管理・点検コストが削減できるメリットがあります。

本記事では、ピクトレの概要や特徴などを詳しく解説していきます。

「ピクトレ」の概要

引用:https://pictree.greenwaygrid.global/

ピクトレは無料のスマホゲームアプリで、Digital Entertainment Asset Pte.Ltd(以降、DEA社)と東京電力パワーグリッド株式会社、Greenway Grid Global Pte.Ltdの3社によって提供されます。2023年7月に3社が覚書を交わし社会的な問題を解決するゲームを開発することを発表し、2024年4月13日に前橋市限定でリリースされる予定です。

ピクトレはユーザーがチームに所属して電柱や鉄塔、マンホールの写真を撮り、成績に応じてポイントが付与される仕組みです。写真を撮った電柱や鉄塔は自分のチームのものとなり、ゲーム上に保存されます。

手に入れたポイントは、Amazonギフト券や暗号資産(仮想通貨)のDEAPcoinなどへと変換できます。ユーザーは街を歩き、写真を撮ることで報酬を獲得できるゲームです。

ユーザーが撮った写真は東電側にも管理・点検コストの削減として役立ちます。サビや老朽化による傾きや倒壊の恐れがある電柱や、切れた電線など異常の早期発見が期待できます。つまり、ゲームで遊ぶことが身近なインフラ設備の保守につながるということです。

ピクトレは現在実証試験の段階にあります。まずは前橋市を5つのエリアに分け、4月13日〜6月29日の期間限定で提供される予定です。

「ピクトレ」の特徴

引用:https://pictree.greenwaygrid.global/

ここでは、ピクトレの主な特徴を紹介していきます。

  • 電柱や鉄塔などの撮影を行いポイントを稼ぐ
  • 「アンペア」「ボルト」「ワット」から1チームを選択する
  • 報酬のポイントはAmazonギフト券やDEAPcoinなどに交換できる
  • 東電側にもメリットがある
  • 電柱NFTも登場予定

それぞれ詳しく見ていきましょう。

電柱や鉄塔などの撮影を行いポイントを稼ぐ

ピクトレでは電力アセットと呼ばれる電柱や鉄塔、マンホールにチェックインし、撮影した写真を投稿し、それぞれをつなげて算出された距離に応じてポイントを稼ぎます。ゲームにおいて距離を算出することは「電線をつなぐ」と表現し、優秀な成績を収めたチームや個人ランキング上位者には多くの報酬が与えられる予定です。

ピクトレは無料のアプリであり、ユーザーに対してコストが発生することはありません。散歩感覚で街中の電力アセットを撮影し、スキマ時間で報酬を手に入れられます。

「アンペア」「ボルト」「ワット」から1チームを選択する

ピクトレでは「アンペア」「ボルト」「ワット」の3つのチームから、1つを選択して所属します。同じチームのメンバーと協力し、なるべく長い距離の電線をつなぐことを目指していきます。

自分で探せる数には限りがあるため、チームで協力しあってのプレイが重要です。ゲームの画面には各チームが保有する電力アセットと未保有の電力アセットが表示されるので、チームで連携して効率よく撮影していきましょう。

報酬のポイントはAmazonギフト券やDEAPcoinなどに交換できる

ゲーム内で優秀な成績を収めることで獲得できるポイントは、Amazonギフト券や暗号資産のDEAPcoinなどに交換できます。また、各シーズンの終了時には、チームランキングに基づいた報酬の獲得チャンスもあります。

ランキングによって獲得できるポイントの数や交換レート、暗号資産の入手方法など、詳細はまだ公開されていません。今後、ピクトレの公式サイトやX(元Twitter)から発信される情報に注目していきましょう。

東電側にもメリットがある

ピクトレでユーザーに写真を撮ってもらうと、東電側にも管理・点検コストを削減できるメリットがあります。

近年は台風や地震によって電柱が倒壊することも少なくありません。2018年9月4日の台風21号では800本以上の電柱が倒れて電線も多く切断され、250万戸以上が停電しました。東電が管理する電柱は600万本あり、毎年多大なコストを費やして点検を行っています。

ユーザーに撮ってもらった写真で点検ができれば、東電はコストをかけて現地に人員を向かわせる必要がありません。さらに、問題の早期発見にも役立ちます。ピクトレは、ユーザーへの報酬と東電のメリットが両立した、画期的な仕組みを導入しています。

電柱NFTも登場予定

ピクトレでは、電柱NFTが登場する予定です。電柱NFTには位置情報が記録されており、入手するとゲームを優位に進めることができるようになります。

現時点では、ピクトレの開発を行うDEA社のNFTマーケットプレイスである「PlayMining NFT」での電柱NFTの販売は確認できませんでした。ポイントと同様に、今後新たな情報が発信されると考えられます。

「ピクトレ」の類似事例「TEKKON」とは

引用:https://lp.tekkon.com/

ピクトレと類似した事例に「TEKKON」があります。TEKKONとは、シンガポールのNPO団体Whole Earth Foundationが提供するスマホアプリで、2022年9月にリリースされました。TEKKONでは電柱やマンホールの写真を撮り、稼いだポイントを「1ポイント=1円」でLINE Payへの変換が可能です。

ゲームは無料で始められ、開始時には犬NFTが1匹配布されます。無料で稼ぐことができますが、より効率的に獲得するためには、追加の犬NFTや課金アイテムの入手が必要です。

ピクトレとの違いとしては、主に運営母体が挙げられます。TEKKONはNPO法人であるのに対し、ピクトレは東電のグループ会社が運営に関わっています。TEKKONでは、撮影した写真を電力会社に販売することで収益化しているようです。

TEKKONには全世界にユーザー数14万人がおり、リリースから1年半以上たった今でも、SNSを中心に盛り上がりを見せています。一つの成功事例となったTEKKONに対して、今後ピクトレがどのように差別化していくかに注目していきましょう。

開発会社「Digital Entertainment Asset Pte.Ltd」の紹介

引用:https://dea.sg/jp/

ここでは、開発に携わっているDEA社の特徴を紹介していきます。

  • 「遊ぶことが報酬を生み社会を良くする」という世界の実現を目指す
  • PlayMiningとPlayMining NFTの2つのサービスを提供
  • DEAPcoinの発行と管理を行う

2018年に設立されたDEA社は、シンガポールに拠点を置き日本人が代表を務めている会社で、「Play to Earn」の分野においてさまざまな実績があります。それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

「遊ぶことが報酬を生み社会を良くする」という世界の実現を目指す

DEA社では設立以来「遊ぶことが報酬を生み社会を良くする」という世界の実現を目指しています。ユーザーは写真を撮り報酬を獲得し、東電は管理、点検コストを削減できるwin-winの仕組みを導入したピクトレは、そのような夢の世界を実現するための第一歩であり、大きな期待が寄せられています。

この仕組みを応用して、温室効果ガス削減のweb3ゲーム化、ペットの殺処分の防止や、産業廃棄物処理問題など、社会が抱えるさまざまな課題解決に向けての構想も進んでいるようです。

PlayMiningとPlayMining NFTの2つのサービスを提供

DEA社が提供するサービスは大きく「PlayMining」と「PlayMining NFT」の2つに分けられます。

PlayMining

PlayMiningとは、DEA社が提供するゲームのプラットフォームのことです。2024年3月24日時点では、以下8種類のゲームが提供されています。

  • JobTribes
  • Cookin’ Burger
  • Fujiwara Kamui Verse
  • Lucky Farmer
  • Menya Dragon Ramen
  • Rogue Roll Ruler’s
  • StoneStars
  • BouncyBunny

ユーザーは、上記ゲームのプレイを通じてDEAPcoinを獲得できます。

PlayMiningはリリースされた後に1年でID登録者が100万人を突破した、世界的に人気のあるコンテンツです。今後はピクトレも加わり、さらに多くのユーザーにプレイされることが期待されています。

PlayMining NFT

PlayMining NFTとは、PlayMiningのゲームで使用されるNFTやデジタルアートの売買ができるNFTマーケットプレイスです。

NFTを「OFFICIAL STORE」から購入する場合は手数料無料、「USERS(会員)」から購入する場合は落札額の3%を手数料としてDEAPcoinで支払う必要があります。

DEAPcoinの発行、管理を行う

PlayMiningのゲームでは、共通の暗号資産としてDEAPcoinが用いられています。ピクトレにおいても、DEAPcoinが重要な役割を果たす予定です。

DEAPcoinは、ビットポイントやOKCoinJapanなど国内取引所でも取り扱いがあります。

「ピクトレ」の今後

最後にピクトレの今後について詳しく見ていきましょう。

2024年4月13日より前橋市限定で実証実験を実施

ピクトレは、2024年4月13日より前橋市の一部のエリア限定で利用が始まります。利用可能となるエリアは「上・下川淵エリア」「本庁エリア」「大胡エリア」「赤城山エリア」「富士見エリア」の5つで、それぞれ期間が決められています。

撮影の対象は電柱とマンホール、ハンドホールで、イベントの様子はテレビやYouTubeで放映される予定です。

2024年5月に特別イベント「大学対抗戦」を開催予定

2024年4月に最初のイベントが開催された後は、前橋市に拠点を置く複数の大学で対抗戦が行われます。群馬大学、前橋工科大学、共愛学園前橋国際大学などの出場を予定しており、学校のプライドを賭けた熱い戦いが行われることでしょう。

まとめ

ピクトレを始めとした「Play to Earn」の仕組みによって、インフラ設備の保守点検以外にも、社会課題の解決に応用できる可能性があります。DEA社がすでに公表しているように、温室効果ガス削減やペットの殺処分の防止、産業廃棄物処理問題など、さまざまな事例が生まれてくることでしょう。

ピクトレの提供は、2024年4月13日から前橋市限定で始まります。興味のある方は、ぜひ公式サイトやSNS、YouTubeで発信される情報を確認してみてください。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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