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日本酒の熟成酒に紐づいた「熟成酒NFT」とは?仕組みや日本酒業界に与える影響について解説

解説系記事

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)といえば、デジタルアートで活用されることが多いですが、近年は様々なビジネスでの活用も進んでいます。ビールやウイスキー、日本酒などのお酒とNFTを組み合わせる活用事例も登場しており、今後も多くのユースケースが誕生してくると考えられます。

この記事では、日本国内のNFTマーケットプレイスであるHINATA(ヒナタ)で取り扱いが開始された、日本酒の熟成酒に紐づく「熟成酒NFT」について詳しく解説していきます。「熟成酒NFT」の特徴や仕組み、日本酒業界に与える影響・可能性の考察などをご紹介していくので、NFTのビジネス活用に興味のある方はぜひ最後までご覧ください。

日本酒の熟成酒に紐づいた「熟成酒NFT」とは?

画像引用元:酒蔵が発行・販売する、熟成酒を保有することができる「熟成酒NFT」を8月17日より取扱い開始!

「熟成酒NFT」とは、株式会社FUWARIが運営するNFTマーケットプレイス「HINATA」にて、2023年8月17日から取り扱いが開始されたNFTです。様々な酒蔵が製造・販売する日本酒と紐づいており、NFT保有者には実物の熟成酒とNFTを交換できる権利が付与されます。

一般的な日本酒は、製造されてから1年以内に消費されることがほとんどです。また、熟成酒を製造するためには、長期熟成するために日本酒を管理・保管する必要があり、多くの資金・費用を必要とします。そのため、日本酒を長期熟成させた「古酒」「熟成酒」の種類は決して多くありません。

しかし、日本酒の中には、時間の経過とともに味に深みが増したり、旨味が成長したりするなど、新しい発見ができるお酒があります。本プロジェクトは、NFTを活用して日本酒の長期熟成を行うための資金調達を行い、ユーザーに日本酒の新たな価値、可能性を提供することを主な目的にしていると考えられます。

年月とともに日本酒の旨味とNFTの価値が成長することをコンセプトとしており、NFTを長く保有することで日本酒の旨味だけでなく、NFT自体の価値が上昇するという点が大きな特徴だといえるでしょう。

画像引用元:Agedsake NFT|JAPANESE SAKE NON-FUNGIBLE TOKEN

なお、当記事執筆時点(2024年3月31日)で、株式会社本田商店(兵庫県姫路市)、村重酒造株式会社(山口県岩国市)、多賀株式会社(滋賀県多賀町)の3つの酒蔵が「熟成酒NFT」を販売しています。株式会社FUWARIの公式プレスリリースでは、今後も日本全国の様々な酒蔵が「熟成酒NFT」の発行・販売を行っていくとしています。

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日本酒に紐づく「熟成酒NFT」の特徴や仕組み

ここでは、「熟成酒NFT」の特徴や仕組みについて、より詳しくご紹介していきます。以下の3つの項目に沿って、詳しく確認していきましょう。

  • 実物は酒蔵で保管され、ユーザーはNFTと熟成酒の交換が可能
  • 今後はNFTの二次流通にも対応することが予定されている
  • 「権利確定日時」という仕組みが設定されている

実物は酒蔵で保管され、ユーザーはNFTと熟成酒の交換が可能

「熟成酒NFT」では、実物の日本酒は販売元の酒蔵で管理・保管される仕組みが採用されています。NFT保有者は、実物の日本酒を自分で管理・保管をする必要がなく、飲みたいときにNFTと交換できるため、手軽に熟成酒を保有できるといえるでしょう。

ただし、品質保持のために各日本酒ごとに「最大保管期間」が設定されています。最大保管期間が過ぎても交換されていない日本酒に関しては、その時点でNFT保有者に日本酒が郵送される仕組みとなっています。

また、1つの「熟成酒NFT」に対応するのは、実物の熟成酒1本のみです。そのため、熟成酒と交換できる権利は、1つのNFTに対して1回のみに制限されています。

今後はNFTの二次流通にも対応することが予定されている

当記事執筆時点(2024年3月31日)で、「熟成酒NFT」は各酒蔵から直接購入する一次流通にのみ対応しています。しかし二次流通にも対応していく予定となっており、今後はより活発にユーザー間で「熟成酒NFT」の取引が行われると考えられます。

「熟成酒NFT」の特性上、年月が経つほど、日本酒の旨味とともにNFTの価値も上昇します。二次流通での取引が開始されれば、発行から長い期間が経過している熟成酒NFTほど、より高い価格帯で取引される可能性があるでしょう。

「権利確定日時」という仕組みが設定されている

画像引用元:酒蔵が発行・販売する、熟成酒を保有することができる「熟成酒NFT」を8月17日より取扱い開始!

「熟成酒NFT」では、「権利確定日時」という仕組みが設定されています。これは、時間の経過とともに旨味が増す熟成酒の特性上、ユーザーに長くNFTを保有してもらうための仕組みだといえるでしょう。

ユーザーは、権利確定日時にNFTを保有している場合のみ、次の年の権利確定日時までに、実物の熟成酒とNFTを交換できる権利が与えられます。つまり、NFTと熟成酒の交換権利は、1年に1度のみ付与される仕組みです。

ただし、権利確定日時にNFTを保有していたとしても、実物との交換前に二次流通でNFTを売却してしまった場合、日本酒との交換権利はなくなる仕様となっています。

株式会社FUWARIの公式プレスリリースでは、NFTと熟成酒の交換ができないケースとして、以下のような事例が挙げられています。

  • 権利確定日時が来る前に「熟成酒NFT」を二次流通で出品・販売してしまう。
  • 権利確定日時には「熟成酒NFT」を保有していたものの、実物との交換依頼をする前に二次流通で出品・販売してしまう。
  • 権利確定日時に「熟成酒NFT」を保有していたユーザーから二次流通でNFTを購入した場合、次の権利確定日時で自分が権利者になるまで、熟成酒との交換はできない。

「熟成酒NFT」が日本酒業界に与える影響・可能性を考察

ここまで「熟成酒NFT」の概要や特徴、仕組みなどをご紹介してきましたが、「熟成酒NFT」は日本酒業界にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。

先ほども少し触れましたが、日本酒の古酒・熟成酒を製造するためには、長期的に日本酒を管理・保管する必要があります。しかし、長期間に渡って日本酒を管理するには、保管費用が発生するだけでなく、日本酒を管理する場所も確保しなければいけません。

これらの問題は、酒蔵経営のリソースを圧迫することに繋がります。現状、日本酒の「古酒」「熟成酒」の数が少ない理由は、こういった経営面の諸問題が関係している可能性も否定できません。

しかし、日本酒とNFTを組み合わせた「熟成酒NFT」の登場により、これらの問題を解決できる可能性があります。「熟成酒NFT」では、これから熟成させる日本酒をNFT化して販売することで、早期の資金調達を行います。

つまり、熟成酒の販売前から資金を確保できる仕組みであるため、酒蔵のキャッシュフローの改善に繋がります。運転資金が潤沢になることで、酒蔵としても費用がかかる熟成酒の製造に挑戦しやすくなるといえるでしょう。結果的に、これまでになかった新しい価値を持つ古酒、熟成酒が誕生することに繋がります。

また、NFTを使った資金調達は、銀行融資のような定期的な利払いが発生しません。融資金利の負担がなく、酒蔵の健全経営に繋がることから、今後は資金調達の一つの手段としてNFTがより注目を集める可能性があるでしょう。

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日本酒の熟成酒に紐づいた「熟成酒NFT」まとめ

今回の記事では、国産NFTマーケットプレイス「HINATA」にて取り扱いが開始された「熟成酒NFT」の特徴や仕組み、これからの日本酒業界に与える影響・可能性などについて解説してきました。

ご紹介した通り、「熟成酒NFT」は様々な酒蔵が製造する熟成酒と紐づいており、保有者はNFTと実物の熟成酒を交換できる仕組みとなっています。ユーザーは自分で日本酒を管理・保管する必要がないことから、手軽に熟成酒を保有できるといえるでしょう。

また、酒蔵としても「熟成酒NFT」を販売することで、早期の資金調達を行うことができます。結果的にキャッシュフローの改善に繋がることで、熟成酒の製造に挑戦しやすくなり、新たな価値を持つ日本酒が誕生する可能性があるでしょう。

「熟成酒NFT」は、まだ始まったばかりのプロジェクトではありますが、今後の日本酒業界に様々な影響を与える可能性があります。これからの「熟成酒NFT」の動向には、注目していく必要がありそうです。

GM

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2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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