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石高プロジェクトとは?Web3.0を活用して米農家を支援するプロジェクトについて解説

解説系記事

デジタルアートとしての印象が強いNFT(Non-Fungible Token)ですが、現在は様々なビジネスで活用され始めています。日本国内でもNFTを活用することで、ビジネス上の課題解決を目指すプロジェクトが複数登場している状況です。

本記事では、ブロックチェーンやNFTを活用し、米農家の販路拡大や経営安定化を目指す「石高プロジェクト」について取り上げます。

石高プロジェクトの概要・特徴や仕組み、他事業での横展開の可能性などを解説していくので、これからNFTなどをビジネスに活用していきたい事業者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

Web3.0で米農家を支援する「石高プロジェクト」とは?

画像引用元:石高プロジェクト|web3.0と現代の米本位制

石高プロジェクトとは、専用の「石高アプリ」というデジタルプラットフォームを通じて、消費者が米農家を支援するWeb3.0プロジェクトです。福島県西会津町が取り組む自治体の公式事業となっており、2023年8月に正式リリースされました。

具体的には、西会津町の基幹産業である米作りをより持続可能なものにするため、消費者にアプリを登録してもらい、西会津町で生産された米を継続的に購入してもらうという取り組みとなっています。言い換えると、アプリを通じて生産者と消費者を繋ぎ、米農家のさらなる販路拡大、経営安定化を目指しているプロジェクトだといえるかもしれません。

また、プロジェクト参加者と米農家が交流することで、町の関係人口・交流人口を増加させ、地域活性化を狙う目的もあると考えられます。

詳細な仕組みは後に解説しますが、消費者が米農家を応援・支援する仕組みの中に、ブロックチェーンやNFTが活用されています。

なお、石高プロジェクトでは、米の生産過程を芸術的な表現としており、生産者をアーティスト、生産者が育て上げた米を独自のアート作品として捉えている点も特徴的だといえるでしょう。

西会津町で石高プロジェクトが発足した背景

西会津町にて、石高プロジェクトがスタートした背景には、基幹産業である米作りの持続可能性が危ぶまれていることがあります。

西会津町は、全国的にも米作りが活発な地域として知られています。そのうえ日本国内でもトップクラスの品質の米を生産していることで有名であり、全国的にも高い評価を受けています。

しかし、地域住民の高齢化などの問題によって、米作りの担い手である農家が減少しており、耕作放棄地も増加しているとされています。また、西会津町は面積の84%を森林が占める中山間地域という立地的な環境から、「平地が少なく田んぼの大規模化による経営効率化が難しいこと」「点在する田んぼの水路整備や維持管理に金銭的・人的コストがかかる」といった問題を抱えている状況です。

上記に加え、サルやイノシシなどによる有害鳥獣被害が深刻化していることや、新型コロナウイルスを原因とした主食用米の需要減少による米価の下落など、米農家の経営悪化が大きな課題とされています。

こうした背景があり、西会津町の米作りについて、その持続可能性を危ぶむ声があがっていると考えられるでしょう。

米農家が米作りを継続していくためには、安定的かつ高い価格で米を販売できるさらなる販路と消費者を見つけることが重要です。このような状況を解決・改善するために、NFTを活用して米農家の販路拡大・経営安定化を目指す石高プロジェクトが誕生しました。

2023年8月に石高アプリを正式リリース

画像引用元:Web 3.0と現代の米本位制「石高プロジェクト」モバイルアプリ・リリース開始

上記のような課題を背景に誕生した石高プロジェクトですが、2023年8月に専用のデジタルプラットフォームである「石高アプリ」を正式リリースしました。

石高アプリはiOS、Androidの両方に対応しており、ユーザーは石高アプリを通じて西会津町の米農家を支援できます。

NHK福島放送局のインタビュー記事によると、2024年2月中旬時点で約130名のユーザーが石高アプリに登録しているとのことです。

画像引用元:Web 3.0と現代の米本位制「石高プロジェクト」モバイルアプリ・リリース開始

石高プロジェクトの特徴や仕組み

ここでは、石高プロジェクトの特徴・仕組みについて、より詳しくご紹介していきます。以下の項目に沿って、順番に確認していきましょう。

  • 石高プロジェクトの基本的な仕組み
  • 農家との交流イベントや体験イベントも実施予定

石高プロジェクトの基本的な仕組み

画像引用元:石高プロジェクト|web3.0と現代の米本位制

上記の画像は、石高プロジェクトの基本的な仕組みを表したものです。石高プロジェクトの仕組みを簡潔に解説すると、以下のような流れとなります。

  1. ユーザーが石高アプリをスマホにダウンロードする
  2. プロジェクトに参加している農家の中から、希望する農家と米の銘柄を選択する
  3. 米の収穫前に「米ボード※」(米の単位である「石」を意味するポイント)を購入する
  4. 田んぼを見学したり、SNSでのPRに協力すると「人的ボード※」が配布される
  5. 米の収穫後に米ボード・人的ボードに応じた「米手形」(米の配布を受けられる権利)が配布される
  6. 米手形を米に交換すると、自宅に西会津町産の米が郵送される

※「米ボード」は金銭的貢献、「人的ボード」は非金銭的貢献を証明するNFTです。

なお、「米ボード」と「人的ボード」は譲渡不可能なNFT(=NTT:Non-Transferable Token)、米手形はNFT(Non-Fungible Token)となっており、プロジェクト内での貢献度を可視化するためにブロックチェーンの技術が活用されています。

また、石高プロジェクトの特徴的なポイントとして、米が収穫される前に米ボード(石高)を購入するという点です。もし、米の収穫量が悪ければ、ユーザーが受け取れる分け前(米の量)は減少します。一方、収穫量が多い年は、多くの分け前を受け取れます。

つまり、米農家とユーザーが天候などのリスクを共有することで、米農家がより安定した収入を得られる仕組みを採用しているといえるでしょう。

農家との交流イベントや体験イベントも実施予定

石高プロジェクトでは、単純に農家から米を購入するだけでなく、ユーザーが西会津町の農家をより支援したいと思えるコミュニティ作りを計画しています。

例えば、今後は以下のようなイベントを実施し、ユーザーと農家の交流機会を設けていくとしています。

  • オンラインも含めた農家との交流イベントを定期的に実施
  • SNSなどを通じて米の生育状況や農家の思いをユーザーに届ける
  • 田植え、草刈り、稲刈りなどを体験できるオーナー制度の導入

上記のようなイベントを開催することで、ユーザーとしても特別な体験ができ、西会津町の農家との距離が近くに感じられるでしょう。また、田植えなどの体験イベントを実施することで、実際に西会津町を訪れてもらい、関係人口を増加させる狙いもあると考えられます。

石高プロジェクトの他事業での横展開の可能性を考察

画像引用元:Web 3.0と現代の米本位制「石高プロジェクト」モバイルアプリ・リリース開始

ここまでご紹介した通り、石高プロジェクトは、専用の石高アプリを通じて生産者と消費者を繋ぎ、米農家の販路拡大・経営安定化を目指しているWeb3.0プロジェクトです。

ブロックチェーンやNFTを活用することで、コミュニティ内における貢献度を可視化・証明しているユニークなプロジェクトとなっています。また、農家とユーザーが収穫量のリスクを分かち合うことで、生産者がより安定した収入を得られるという、これまでになかった新しい取り組みだといえるでしょう。

石高プロジェクトはまだ始まったばかりの取り組みではありますが、今後の動向によっては、米以外の農業や漁業などへも横展開できる可能性を持っています。

例えば、漁業が盛んな地域・自治体であれば、事前に漁獲高などを表すNFT(石高プロジェクトにおける「米ボード」)を購入してくれたユーザーに対し、その年の漁獲量に応じて海産物を送るといったプロジェクトを立ち上げられるかもしれません。

また、石高プロジェクトと同様、ユーザーと漁業者の交流イベントなどを実施することで、関係人口の増加や地域活性化に繋げられる可能性もあるでしょう。

しかし、石高プロジェクトは開始したばかりの実証実験段階のプロジェクトです。今後、様々な事業に横展開できるかどうか、これからの動向に注目しておく必要がありそうです。

Web3.0を活用して米農家を支援する「石高プロジェクト」まとめ

今回の記事では、Web3.0を活用して米農家を支援する「石高プロジェクト」について解説してきました。ご紹介した通り、石高プロジェクトはブロックチェーンやNFTを利用し、米農家の販路拡大・経営安定化を目指す福島県西会津町による公式事業です。

これまでになかったユニークな特徴を持つWeb3.0プロジェクトであり、地域産業を活性化させる可能性を持っているといえるでしょう。これから農業にNFTなどの最新技術を活用していきたい方は、石高プロジェクトにも注目しておくとよいかもしれません。

GM

gm

2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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