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XRP(リップル)が計画するステーブルコイン事業を解説

解説系記事

XRPはSECからの訴訟問題を抱えつつも、着実にトークン価格を維持向上させ、国際送金をサポートするシステムとして広く認知されるようになりました。XRPの価値はまさに、XRPを開発・運営するリップル社の積極的なビジネス戦略と実績に裏付けられています。

2024年4月、リップル社は新たなWeb3事業として米ドル連動のステーブルコイン発行計画を発表し、大きなニュースとなりました。
Web3時代の国際送金システム構築を目指すリップル社にとって、ステーブルコインの発行は何を意味するのでしょう?

本記事ではリップル社が計画するステーブルコイン事業の概要や狙い、展望をまとめて解説します。

XRP(リップル)

項目 内容
シンボル XRP
ネットワーク名 RippleNet
承認方式 PoC(Proof of Consensus)
特徴 高スループット、低手数料、即時国際送金
市場規模 約4兆5千億円(2024年5月時点)
開発・運営企業 リップル社
発行年 2013年1月
公式サイト https://ripple.com/

XRP(リップル)は、リップル社が開発・運営する暗号通貨です。XRPは高いスループットと低い手数料が特徴で、従来の国際送金の遅延やコストを大幅に削減するソリューションとして大きな期待が寄せられています。

ステーブルコイン

ステーブルコインは、価格の安定性を追求した暗号資産です。法定通貨や金銀などのコモディティと連動することで価格変動を抑えています。ステーブルコインの中には米ドルだけでなく、ユーロや円などと連動するものもあります。例えば、米ドル連動のUSDT(Tether)、ユーロ連動のEURT、円連動のJPYCなどが挙げられます。

ステーブルコインは、急激な市場変動リスクヘッジのために使われる事が多いです。ステーキングなどで長期運用のために購入するひともいます。

XRPのステーブルコイン事業

項目 内容
シンボル XRP
ネットワーク名 RippleNet
承認方式 PoC(Proof of Consensus)
特徴 高スループット、低手数料、即時国際送金
市場規模 約4兆5千億円(2024年5月時点)
開発・運営企業 リップル社
発行年 2013年1月
公式サイト https://ripple.com/

XRPのステーブルコイン事業には、まだまだ不明点が多いのが現状です。しかし、裏付け資産として米ドル預金や国債などが当てられることから、DAI※1やかつてのUST※2といった銘柄とは異なることがわかっています。

※1 DAIはETHによる資産裏付けを行っています。
※2 USTは発行済みのLUNAをバーンさせることで資産裏付けを行っていました。

ステーブルコイン発行の狙い

  1. ボラティリティリスク回避
  2. 金融機関との連携強化
  3. 相互運用性の強化
  4. 収益性の確保

1.ボラティリティリスク回避

リップル社は既存の国際送金ネットワークの革新を目指しています。XRPは比較的安定した市場価格を保持していますが、それでも法定通貨に比べると大きな価格変動があります。法定通貨と連動しているステーブルコインは、通貨間の交換や送金においてボラティリティリスク回避に役立ちます。

2.金融機関との連携強化

法定通貨に裏付けられたステーブルコインは、金融機関へ信頼性を示す手段としても機能します。リップル社からステーブルコインが発行されることで、今まで以上にブロックチェーンを利用する金融機関は増えるでしょう。

3.相互運用性の強化

最初にリップルのステーブルコインがローンチされるチェーンは、XRPLとイーサリアムです。将来的には、他のブロックチェーンやDeFiプロトコルに拡張し、相互運用性を向上させる計画があります。安定した市場価格と送金の速度に加えて、相互運用性の強化でリップルステーブルコインの利便性は向上します。

4.収益性の確保

ステーブルコインは発行する側に収益面で大きなメリットをもたらします。送金の手数料収入だけではありません。資産裏付けに使用される米ドルや国債、コモディティなどは運用が可能です。年間の利ざやだけで大きな収益をもたらします。USDTを発行するテザー社は、2023年第1四半期の純利益は14.8億ドルに達しました。

すでにステーブルコイン事業の収益性は多くの企業に認知されており、決済システムサービス大手PayPalも独自のステーブルコインPYUSD※3を発行しています。

※3 PYUUSDは日本国内で購入はできません。

想定されるユーザー

ユーザー 利用目的
金融機関 低コストでの国際送金と決済
法人顧客 デジタル資産の利用と財務管理の効率化
国際送金サービスプロバイダー 送金コスト削減とトランザクション速度向上
暗号通貨トレーダー ボラティリティリスク回避
DeFiユーザー 安定した担保資産として活用
一般消費者 硬貨や紙幣のデジタル化
新興市場の企業 インフレ対策および決済手段

金融機関や法人顧客は低コストで安定的な国際送金手段として利用が広がる可能性があります。既存の国際送金システムで何日もかかっていた業務を数秒で完了させるといったイノベーションは魅力的です。

一般消費者やトレーダーに対しては、市場ボラティリティ回避のリスクヘッジ銘柄として利用されるでしょう。ただし、他のステーブル銘柄もあるため、競争は避けられません。DeFiユーザーにとっては、安定的な資産運用手段として選ばれる可能性があります。

XRPのステーブルコインのメリット/デメリット

メリット デメリット
  • 高速トランザクション
  • 低手数料
  • 価格安定性
  • 相互運用性
  • 透明性
  • 規制リスク
  • リップル社依存
  • 市場競争

XRPのステーブルコインは多くのメリットを提供する一方で、規制や市場競争といった課題も抱えています。

XRPのステーブルコインは、数秒で完了する高速トランザクションと低手数料が大きなメリットです。米ドルに裏付けられているため価格安定性があり、送金間に大きな価値変動を起すリスクは低いです。また、第三者会計事務所による監査と月次証明書発行でシステムの透明性は確保されています。

一方で、各国の規制やリップル社による中央管理、市場競争の激化などの事業リスクもあります。すでにさまざまなチェーンからステーブルコインがローンチされており、開発中のCBDC※4などとも競合は避けられません。リップルのステーブルコインを成長させるうえで、長期的な経営戦略が重要になってきます。

※4 CBDC(Central Bank Digital Currency:中央銀行デジタル通貨)
参照:財務省「新しい通貨 ―CBDC Central Bank Digital Currency―」

競合銘柄との比較

発行者 裏付け資産 ブロックチェーン
USDT Tether 米ドル預金、企業債券

その他の資産

マルチチェーン
USDC Circle

Coinbase

米ドル預金、米国債 マルチチェーン
CBDC 各国の中央銀行 各国の法定通貨 専用ブロックチェーン

既存のブロックチェーン

SWIFTの取り組み SWIFT 金融機関間の決済インフラ 独自のネットワーク

米ドル連動のステーブルコインは、すでに数え切れないほどの銘柄が発行されています。特に有名なのは米ドル連動のUSDTとUSDCです。2024年5月時点で、USDTは市場規模でBTCやETHに次ぐ第3位となっています。また、CBDCにも注目です。米国政府がCBDCに積極的に取り組めば、リップルステーブルコインにとって強力なライバルとなります。

既存の国際送金システムであるSWIFTもチェーンリンクとの協業を進めており、将来的なコストダウンや効率化が期待できます。こちらもリップルの競合となります。

引用:CoinMarketCap
参照:SWIFT「Swift explores blockchain interoperability to remove friction from tokenised asset settlement」
関連記事:XRPの真の競合は?SWIFTか?CBDCか?それとも…!?
関連記事:CBDCを導入している国は?国家主導の暗号資産が果たす役割
事業リスク:https://jp.beincrypto.com/sec-filed-redacted-remedies-reply-ripple/

XRPのステーブルコイン事業は順調に進む?

XRPは2012年※5の設立から既存の国際送金システムにイノベーションをもたらす新技術として注目されてきました。XRPはSEC※6との法定紛争を得てなお、多くのTradiFi※7との協業関係・連携を維持しています。

ここでは、XRPがステーブルコイン事業を進めるうえで、重要となるポイントを解説していきます。

※5 XRPの発行は2013年
※6 SEC(Securities and Exchange Commission:米国証券取引委員会)
※7 TradiFi(Traditional Finance:従来の伝統的金融・金融機関)

SECとの関係

SEC※7はXRPが未登録の証券であるとみなし、2020年から訴訟を開始しています。また、リップル社が発行するステーブルコインにも否定的な印象を抱いているようです。規制リスクが残る限り、投資家やパートナー企業の慎重な姿勢が続き、事業進行に影響を与えることが予想されます。

一方で、SECとの紛争が解決した場合は、ステーブルコイン事業が順調に進む可能性があります。もちろん、XRP自体にも良い影響が出るでしょう。

SWIFTとの関係

SWIFTは、国際的な金融機関間の送金ネットワークであり、従来の国際送金の基盤システムです。しかし、SWIFTの送金は時間がかかり、手数料が高いという課題があります。

しかし、SWIFTもチェーンリンクとの提携で競争力を高めようとしています。これから、リップルとの競争はさらに激化することが予想されます。

XRPを支持する金融機関は?

国・地域 主なサポート企業/銀行
日本 SBIホールディングス
シンガポール シンガポール通貨庁(MAS)
UAE(アラブ首長国連邦) アブダビ国立銀行(NBAD)
サウジアラビア サウジアラビア中央銀行(SAMA)
タイ Siam Commercial Bank
スペイン サンタンデール銀行

XRPは米国でSECからの訴訟を受けていますが、同時に世界中の金融機関との協業を進めています。日本では海外送金サービスを展開するSBIレミットがXRPを導入しています。スペインのサンタンデール銀行はXRPを用いた国際決済アプリ「One Pay FX」を開発しました。

既存の金融機関とこれほど協業が進んでいるWeb3プロジェクトは、XRPが随一ではないでしょうか。これからも世界中の金融機関との取り組みに注目です。

参照:リップル社「Ripple helps Siam Commercial Bank drive innovation with instant cross-border remittances.」

まとめ

リップル社の積極的なビジネス展開は、TradiFiがリードしてきた金融市場を大きく変える可能性があります。国際送金システムの効率化で大きな存在感を示したXRPですが、ステーブルコイン事業でも成功は納められるのでしょうか?

以上、リップル社が計画するステーブルコイン事業の概要や狙い、展望を解説させていただきました。2024年後半、リップル社の動向に注目です。

AMEHARE

AMEHARE

ITの最新トレンドを発信しはじめて十余年。Web2から3の時代の変革もいち早く察知し、2012年ごろから仮想通貨に注目をし始める。次世代の文化やテクノロジーを情報を掴みつつ、NFT・メタバース・DAOなどの領域であらゆる情報を発信中。
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