XRPは既存の国際金融システムをDLTで改善するソリューションとして注目されています。海外送金にXRPを利用される方も多いのではないでしょうか。
一方で、国際送金を効率化させるWeb3プロジェクトはXRP以外にもあります。
本記事ではXRPの競合プロジェクトを解説します。新しいWeb3プロジェクトが競い合う中で、国際金融システムはさらなる発展を遂げていきます。
この記事の構成
XRP(リップル)
© 2013 – 2023 Ripple, All Rights Reserved.
項目 | 詳細 |
開発運営会社 | Ripple Labs Inc. |
公式サイトURL | https://ripple.com |
銘柄記号 | XRP |
発行上限 | 1000億枚 |
承認方式 | PoC(Proof of Consensus) |
発行日 | 2012年 |
XRPは米国のRipple Labs Inc.によって開発された暗号資産です。国際送金機能に特化しており、分散型台帳システムは「XRP Ledger」、国際送金ネットワークは「RippleNet」と呼ばれています。
国際金融の課題
- コスト
- 送金時間
- 安全性
コスト
既存の国際金融における送金コストは大きな課題です。特に金融インフラの整っていない地域からの送金は高額になります。
世界銀行が行った2022年の調査によると国際送金の平均コストは6%となっています。特にサハラ以下のアフリカ地域では7.8%に達し、国連目標(3%以下)を大幅に上回っています。
参考:世界銀行「世界的な逆風の中、2022年の本国送金は5%拡大」
参考:農林水産省翻訳「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット」
送金時間
国内の大手銀行などは国際送金に数日から一週間程度の日数がかかります。特に銀行の営業日や異なるタイムゾーンの影響を受けやすく、休日や祝日によって送金時間がのびることもあります。
また、国際送金には中間機関が関わることが多く、国や地域によって国際送金日数がさらにのびる可能性があることも認識しておく必要があります。
参考:SMBC信託銀行「よくある質問」
参考:ゆうちょ銀行「国際送金が受取人に届くまでの日数は何日程度ですか。」
参考:みずほ銀行「海外からの送金はいつごろ口座に入金されますか」
安全性
国際送金は中央管理型組織(SWIFTや銀行など)によって進められます。そのため、安全性は一般的には高いと言われており、国際送金の保証をする国や地域の制度もあります。日本では資金決済に関する法律により、国際送金は保護されています。
しかし、サイバー犯罪や不正アクセスのリスクはゼロではありません。2016年にはバングラデシュ銀行がハッカーにより約8100万ドルを盗まれた事件が発生しています。
参考:資金決済に関する法律
XRPが国際金融で果たす役割
- 送金の高速化
- 送金の低コスト化
- ブリッジ
XRPは国際金融において、送金の高速化、低コスト化、ブリッジという3つの新しいユーザビリティを提供します。
送金の高速化
XRPはブロックチェーン技術を活用して送金を数秒で完了させます。従来の送金システムが数日かかることを考えれば革新的な時間短縮になります。
送金の低コスト化
XRPは中間機関や人的手続きを削減することで手数料を大幅に下げます。SWIFTを利用した場合の送金手数料は数%に及ぶのに対し、XRPでは数円程度※1のコストに圧縮できます。
※1 送金手数料は利用する取引所が独自に設定する場合があります。
ブリッジ
XRPはブリッジ銘柄としても機能します。XRPは多くの取引所でトレードが可能です。日本国内でも多くの取引所がXRPをラインナップしています。
関連記事:「ホワイトリストとグリーンリストの違いは?暗号資産の評価基準を解説」
XRPの競合は?
XRPには競合するプロジェクトや技術も存在します。ここではXRPの競合となるSWIFT、CBDC、XLM、CELOについて解説します。
SWIFT
© 2023 Swift
SWIFTは世界中の金融機関が参加する国際送金ネットワークです。1973年に設立され、現在では全世界で11,000以上の金融機関が加盟しています。
SWIFTは国際送金における標準的なメッセージングシステムとして、取引の安全性や透明性を高めています。一方で、送金時間の長さ、高い手数料、人為ミスなどの問題も抱えています。
こうした問題に対処するため、SWIFTは独自にブロックチェーン技術を活用した金融ネットワークを構築しようと模索しています。XRPにとっては気になる競合です。
関連記事:「SWIFTがブロックチェーン技術を導入する狙いとは?」
CBDC
CBDC(Central Bank Digital Currency)は中央銀行が発行するデジタル化された法定通貨です。現金と同じ価値を持ち、中央銀行の負債として発行されます。
CBDCには金融の効率性向上とともに、中央銀行の金融政策実行をサポートする役割が期待されています。
CBDCはXRPの競合ですが、XRP開発陣はブロックチェーン技術を基盤としたCBDCとは「互換性がある」と主張しています。XRPはCBDCの発行や交換を支援するブリッジ銘柄として、役割を果たしていくかもしれません。
関連記事:「CBDCを導入している国は?国家主導の暗号資産が果たす役割」
XLM
© 2023 Stellar Development Foundation
XLM(Stellar Lumens)はStellarネットワークのネイティブトークンです。Stellarプロジェクトは2014年にRippleの共同創設者であるJed McCaleb氏によってスタートしました。XRPと同じく、国際送金に特化したDLT(分散型台帳技術)となります。
XLMはStellarネットワーク内での取引手数料やスパム防止の役割を果たすとともに、異なる銘柄間の交換を可能にするブリッジ銘柄としても機能します。
XLMはXRPと同様に、国際送金における速度向上や低コスト化を実現させています。XLMは特に個人や小規模な金融機関を対象としているところが大きな特徴です。
CELO
© 2023 Celo Foundation
CELOはCeloプラットフォームのネイティブトークンです。スマートフォンユーザーの間で暗号資産の使用を普及させることを目指しています。CELOトークンは取引手数料やガバナンス参加に使用されます。
Celoプラットフォームは法定通貨に連動したステーブルコイン「Celo Dollar」や「Celo Euro」を開発しています。ステーブルコインによる国際送金はSWIFTやCBDCへの直接的な対抗処置です。
CELOはスマートフォンの電話番号をパブリックキーとして使用することや、分散型金融や分散型アプリケーションの開発をサポートしていることなど、XRPとは異なる取り組みを進めています。
XRPの挑戦
XRPの競合は強力ですが、Ripple社も国際金融システム変革に向けて様々な方向で挑戦を続けています。詳しく見ていきましょう。
Ripple CBDC Platform
Ripple CBDC PlatformはRipple社が2021年5月に発表したCBDCを発行するプラットフォームです。XRP Ledgerを基盤にしており、国際送金プロセスに高速・低コスト・安全・相互運用性・カスタマイズ性などのメリットを提供します。
Ripple社はRipple CBDC Platformを利用して、パラオ共和国やブータン王国などの中央銀行と協力してCBDCの開発を進めています。また、日本やロシアなどもXRP Ledger上でCBDCの開発を開始していると報じられています。
中央銀行との連携
2021年7月にRipple社は30カ国以上の中央銀行とCBDCプラットフォームの採用に関して協議していることを明らかにしました。XRPの跳躍には中央銀行との連携強化が重要になってきます。
すでに解説したパラオ共和国やブータン王国以外にも、コロンビアやジョージア、モンテネグロなどでXRPと中央銀行との連携は進んでいます。香港では「不動産トークン化プロジェクト」にXRPが活用されています。
金融機関での採用
Ripple社は金融機関に対して、XRPを利用した国際送金サービス「On-Demand Liquidity(ODL)」や「RippleNet」などのソリューションを提供しています。
これまでに300以上の金融機関と提携し、40カ国以上の通貨ペアでODLを利用した送金を試行しています。日本国内でも三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)、SBIホールディングス、みずほフィナンシャルグループなどがXRPを活用し国際送金の効率化を進めています。
Swellでの発表
SwellはRipple社が毎年開催する、金融業界のリーダーや専門家が集まるイベントです。SwellではRipple社の最新発表や、金融イノベーションに関する議論が行われます。2023年11月のSwellでは主に「RippleNetからRipple Paymentsへの移行」、「Onafriqとの提携」といったテーマに注目が集まりました。
Ripple PaymentsはXRPを使って送金元と送金先の法定通貨をリアルタイムで交換できるようにします。事前に送金先の法定通貨を用意する必要はありません。
Onafriqはアフリカ地域最大のデジタル決済プラットフォームです。XRPはOnafriqとの提携により、アフリカ、中東地域で新しい決済ネットワークを構築しつつあります。
SECとXRP
XRPプロジェクトを成功させる上で、国や地域の規制に対応していくことはとても重要です。
米証券取引委員会(SEC)はXRPが未登録の有価証券に当たるとして、2020年12月にRipple社を提訴しました。2021年7月には、裁判所が「個人向けに販売されるXRPは有価証券ではない」との判決を出しました。そして、SECとXRPの主張の争いは2023年末になっても決着していません※2。
SECとの争いはXRPの価格動向に大きく影響しています。始めにSECがXRPを訴えた2020年12月には2日で21%もの価格下落を引き起こしました。一方、2023年7月にXRP側の主張が米国連邦地裁で一部認められると市場価格は70%程度上昇しました。
SECとの関係、米国連邦地裁の判決はXRPプロジェクトに大きな影響を及ぼします。Ripple社の対応と結果には、しっかりと注目していく必要があります。
※2 一部勝訴、SECの訴え棄却など様々な要素があり根本的な解決にはいたっておりません。
まとめ
XRPは2012年のプロジェクト開始当初から国際金融システムを改善するために様々な挑戦を続けてきました。一方で、国際金融システムを改善するための新たなWeb3プロジェクトにも有力なものがあります。SWIFTもチェーンリンクと連携し、独自のシステム改善を図ろうとしています。XRPとその競合プロジェクトが国際金融のイノベーションに果たす役割は益々大きくなっていくでしょう。
以上、XRPの競合プロジェクトについて解説させていただきました。海外送金を利用される方、国際金融システムのイノベーションに注目される方々に向けてお役に立てる情報となれば幸いです。