暗号資産を法定通貨に換金する際は取引所を利用する必要があります。また、マイナーな銘柄を現金化する場合は海外取引所でトレードする手間も増え、手数料もかさみます。
それでは、安く、早く暗号資産を日本円や米ドルにするにはどうすればよいのでしょうか?
本記事では暗号資産を現金化する手法をケースごとに解説します。読者の皆様にとってベストプラクティスはどの手法になるでしょうか?この記事が参考になれば幸いです。
この記事の構成
暗号資産の現金化(換金)とは?
暗号資産を日本円や米ドルなどの法定通貨に換金することを現金化といいます。日本国内であれば、取引所で暗号資産を日本円にトレードしてから引き出すことで現金化は成功します。
一方で、海外取引所では暗号資産を日本円にして引き出すことできません。ユーザーは日本国内の取引所へ暗号資産を送金する必要があります。
AML/CFT※の徹底、トラベルルールの普及、取引所への取り締まり強化によって暗号資産の現金化は以前よりも難しくなったといわれています。
※ Anti Money Laundering/Countering the Financing of Terrorism
参照:金融庁「金融機関におけるマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策について」
参照:金融庁「暗号資産・電子決済手段の移転に係る通知義務(トラベルルール)」
参照:金融庁「無登録業者との取引は要注意!!無登録業者との取引は高リスク」
暗号資産の現金化ニーズ
暗号資産は国際送金やWeb3プロジェクトでの支払い手段として用いられています。しかし、法定通貨のように街中で使用できるケースは多くありません。つまり、暗号資産を日常生活で使用するためには取引所で現金化する必要があります。
なお、一部の国や地域ではビットコインATMが設置されており、現地通貨に換金することも可能です。しかし、日本ではビットコインATMを利用することはできません。
暗号資産を現金化する際のポイント
- 現金化までのコストを低く抑える
- 現金化までのスピードは速い方が良い
- チェーンと取引所の信頼性は重要
暗号資産の現金化する際は使用銘柄やチェーン、取引所をしっかりと比較することが大切です。
現金化までのコストは低く抑える
項目 | 推奨例 |
ガス代が安いチェーン | XRP,XLM,BSC,Polygon |
出金手数料が安い取引所 | GMOコイン,SBI VCトレード |
現金化の際のコストは低く抑えることが大切です。現金化までに使用するチェーン、取引所の選択によってコストは上下します。
ガス代を低く抑えられるのがXRPやXLM、BSC、Polygonです。国内取引所のトレードと出金コストはGMOコインとSBI VCトレードが低く設定しています。GMOコインの出金手数料は無料です。SBI VCトレードは50円〜です。
現金化までのスピードは速い方が良い
出典:https://ripple.com/ https://stellar.org/
現金化をするために国内取引所へ送金している途中で、市場に大きな変化があった場合は資産リスクが発生します。上昇トレンドであれば問題ないですが、下降トレンドの際は資産が目減りしてしまう可能性があります。
よって、なるべく早く取引所へ送金を完了させる必要があります。送金速度はブロックチェーンネットワークによって様々です。特にXRPやXLMは送金スピードが速く、数秒から数十秒で完了します。
なお、取引所から銀行への振込は数日営業日がかかることがあります。日本円なので変動リスクはありませんが、余裕をもって計画的に出金要請をしましょう。
チェーンと取引所の信頼性は重要
現金化のプロセスにおいては、ブロックチェーンネットワークと取引所の信頼性がとても重要になります。
ブロックチェーンネットワークの信頼性を測るうえで重要なのがスケーラビリティです。スケーラビリティはネットワークが処理できる取引数の許容度です。スケーラビリティの小さいネットワークでは、過度な送金ニーズが発生した場合にトランザクションが上手く進まない場合があります。
スケーラビリティにアドバンテージがあるチェーンとしてPolygon、BSC、Solana、Avalancheが挙げられます。ウォレットから取引所へ送金する際は比較検討をしてみましょう。
また、取引所の判断で法定通貨の出金制限がかかることがあります。メンテナンスでセキュリティを確保するための処置です。ハッキングなどで強制的に出金機能をシャットダウンさせることもあります。
取引所の出金制限リスクは過去の実績を評価しましょう。頻繁に出金制限が行われている取引所はリスクが高いといえます。
参照:Bitcoin ATM Map – CoinATMRadar
暗号資産現金化の方法をケースごとに解説
- 国内取引所からの現金化
- 海外取引所やホットウォレットからの現金化
- P2P(Peer to Peer)で現金化
暗号資産を現金化するには国内取引所のみを利用するケース、海外取引所やホットウォレットから進めるケース、個人同士の取引で進めるケース(P2P)があります。
国内取引所からの現金化
国内取引所のみを用いて暗号資産トレードや運用をしている方は、暗号資産を日本円にトレードして銀行に出金できます。
銀行振込の手数料は取引所ごとに異なります。また、振込も場合によって数日営業日かかる場合があります。
海外取引所やホットウォレットからの現金化
海外取引所やプライベートウォレットに暗号資産を保有している場合は、一度日本の取引所へ送金する必要があります。また、受け取り資産を使用可能にするために、送金者情報の詳細を報告する必要があります。これはトラベルルールに則った手続きとなります。
P2Pで現金化
P2Pはユーザー同士が直接取引をするプラットフォームです。日本国内では、暗号資産のP2Pサービスを提供している取引所はありますが、現金化は利用できません。よって、海外取引所のP2Pサービスにアクセスする必要があります。
売却できる銘柄は限定されますが、取引所内のトレードで対応できます。一方で、取引を提示しているユーザーごとに売却量が決まっているので、無限に換金できるわけではありません。
下記はP2P取引の一般的なプロセスです。
- 取引所のP2Pプラットフォームにアクセス
- 取引銘柄を決定
- 取引量と相手を決定
- 取引開始
- 現金化確認
- 取引完了
1.取引所のP2Pプラットフォームにアクセス
まずはP2Pプラットフォームにアクセスしてください。日本円取引に対応している取引所としてBybit、KuCoin、Bitgetが挙げられます。普段使用している海外取引所でもP2P機能があるかもしれないので確認してみましょう。
2.取引銘柄を決定
日本円とトレードできる銘柄を選択してください。多くのP2PサービスではUSDT、BTC、ETHが利用できます。取引所によって対応銘柄が異なるので事前に調べておきましょう。
3.取引量と相手を決定
換金する暗号資産の量を決定します。取引相手によって取引高が設定されているので、高額の換金は複数の取引相手との契約が必要になることがあります。
4.取引開始
日本円の振込先情報を入力して入金を待ちます。振込先は銀行の他、LINE Payや楽天Pay、PayPayなどが選択できることがあります。
5.現金化確認
振込先への送金を確認したら取引を完了させます。チャットなどで振込完了フォームなどのスクリーンショットを見せられても信用してはいけません。銀行口座やアプリなどで着金を確認してください。
6.取引完了
着金が確認できたら取引を完了させてください。着金が確認できない場合は取引を完了させずに、キャンセルをします。P2Pの安全性はこの着金確認プロセスによって担保されています。
以上でP2Pによる現金化取引は完了です。
暗号資産現金化のベストプラクティスはP2P!?
項目 | 国内取引所で現金化 | 海外取引所
ホットウォレットから現金化 |
P2P取引で現金化 |
現金化までのコスト | 無料~ | 高い | プラスになる可能性もある |
現金化までのスピード | 数時間~数日営業日 | 数時間~数日営業日 | 数分~ |
信頼性 | 高い(国内法に準拠) | 出金規制が頻繁に発生 | エスクローで信頼性確保 |
「現金化の方法をケースごとに解説」では国内取引所からの現金化、海外取引所やホットウォレットからの現金化プロセス、P2Pによる現金化プロセスを解説させていただきました。国内の銀行口座に着金するまでにかかる手数料や手間を考えると、ベストプラクティスはP2Pではないでしょうか。
P2Pの現金化は早くて安い
P2Pであれば暗号資産ペアでのトレードコスト、取引所間での送金コスト、銀行出金コストを全て回避することができます。また、銀行振込だけでなくPayPayや楽天Payなどの決済アプリへの振込も選択でき、早ければ数分で着金を確認することが可能です。
さらに、P2Pは個別ユーザーとの取引です。まれに取引を急ぐユーザーは暗号資産を市場価格よりも高く買ってくれる場合があります。
例えば、上記図ではドル円が157.2円/ドルに設定されています。これは2024年8月1日の価格です。しかし、同日の東京市場のドル円相場は149.7円/ドルです。つまり、USDTを現金化する場合は通常の為替よりも多くの円を換金できるのです。
P2Pの注意点は?
- 取引所の信頼性に左右される
- エスクローの利用
- 税制度への理解
P2P取引を利用することで暗号資産を早く、安く現金化できます。しかし、その信頼性は取引所の運営に左右されます。SNSで悪い評判が立っている取引所の利用は避けましょう。
エスクローは取引の仲介サービスです。銀行振込を確認し、取引所へ報告することでP2P取引が完了します。エスクローを利用することで、取引相手の詐欺行為などを防ぐことができます。エスクローがしっかりと機能していない場合はP2Pの利用はさけるべきです。
最後に、日本の税制度への理解も大切です。年間の雑所得が20万円を超える場合は確定申告が必要になります。P2P取引で得た利益も申告対象です。
まとめ
以上、暗号資産を現金化する手法をケースごとに解説させていただきました。国内取引所のみを使っているユーザーであれば、通常の日本円出金で問題ないでしょう。しかし、海外取引所やホットウォレットを使用している方にとって、P2Pは有力な現金化手法といえます。本記事が暗号資産を現金化する際の参考情報となれば幸いです。