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ドナルド・トランプ氏のビットコインに対する姿勢の変化

解説系記事

2024年11月5日に、アメリカの大統領選の投票が行われます。野党の最大勢力である共和党からはドナルド・トランプ氏が立候補する可能性が高く、現在他の候補者とともに激しい選挙戦を繰り広げています。

以前よりトランプ氏はビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)について、否定的な発言を繰り返してきました。しかし、今回の選挙戦が始まってからは、そうした様子に変化が見られます。

今回の記事では、ドナルド・トランプ氏のビットコインに対する姿勢の変化や、今後当選した場合に市場へどのような変化が予想できるか、詳しく解説していきます。

ドナルド・トランプ氏のビットコインに対する姿勢の変化とは

2017年1月〜2021年1月の4年間アメリカの大統領を務め、その間ビットコインに対して否定的な姿勢を示してきました。次の見出しで詳しく紹介しますが、当時はビットコインを米ドルに対しての脅威と捉え、公の場での発言やX(元Twitter)のツイートで批判を繰り返してきた経緯があります。

次の任期に挑んだ2020年の選挙ではバイデン氏との競り合いに敗れ、大統領の座を明け渡すことになりました。トランプ氏は選挙結果に異議を唱え、不正があったと主張しましたが、法的手続きや再集計の結果、バイデン氏の勝利が確定しています。

そして、2024年11月に行われる大統領選では、再びトランプ氏が立候補する見込みです。トランプ氏は、民主党の女性候補者でバイデン現大統領が支持するカマラ・ハリス氏や、無所属でロバート・ケネディ元大統領の甥であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏と、激しい選挙戦を繰り広げています。

トランプ氏は今回の選挙戦では、在任期間中とは異なり「多くの人がビットコインを受け入れている」「アメリカをビットコイン超大国に」など肯定的な発言をしています。これは、ビットコインを支持する若年層の支持を得て、投資家の寄付を得るためと考えられます。

次からは、在任期間中と選挙戦の開始以降に分けて、具体的な発言内容について解説していきます。

在任期間中(2017年1月〜2021年1月)の発言

2017年1月〜2021年1月の在任期間中、トランプ氏は「アメリカを再び偉大に」という方針を掲げ、ビットコインは米ドルを脅かす敵とみなしてきました。ここでは、そうした思いを象徴するようなツイートや発言を3つ紹介します。

2019年7月:「ビットコインその他の暗号通貨が好きではない」とツイート

トランプ氏がビットコインなどの暗号資産に初めて言及したのは、2019年7月のことです。当時は2018年後半から始まった暗号資産バブルが弾け、市場全体が下火になっていました。

トランプ氏は2019年7月11日のツイートで、以下のように発言しています。

「ビットコインその他の暗号通貨が好きではない。これらは通貨ではなく、変動が激しくなんの根拠もない。規制されない暗号資産は違法行為を促進する可能性がある」
「Facebookの暗号資産Libraにはほとんど信頼性がない。銀行をやりたいなら銀行設立の手続きをとるべきだ」

暗号資産Libraとは、Facebook社が主導して開発を進めていた(2022年7月に断念)ステーブルコインです。2019年7月当時に話題となっていたLibraについて、トランプ氏は信頼性が低く違反行為を助長するとして批判しました。

上記のツイートを見てわかるように、暗号資産を完全に否定しています。また基軸通貨と担保にするため変動が起きづらいステーブルコインを、他の暗号資産と一緒に考えている点から、理解が浅い様子が見受けられます。

2020年6月:「中国よりもビットコイン取り締まりを強化し追求しろ」と指示

ジョン・ボルトン氏による、トランプ政権時の暴露本「The Room Where It Happened」では、2018年当時に「中国よりもビットコインの取り締まりを強化しろ」「ビットコインを詐欺で追求しろ」と、ムニューシン財務長官に指示していたことが書かれています。

ジョン・ボルトン氏は、トランプ氏在任期間の2018年4月〜2019年9月に大統領補佐官を務めていましたが、外交の方針を巡って対立が深まった経緯があります。結果的に、トランプ氏によってボルトン氏は解任されました。

暴露本は2020年6月に発行されましたが、司法省が機密情報が含まれていることを指摘し、訴訟を起こすまでに発展しています。

2021年6月:「ビットコインはドルと競合する通貨で好きになれない」と発言

トランプ氏は、ニュースチャンネルのFox Businessのインタビューにて「ビットコインはドルと競合する通貨で好きになれない」と発言しました。この発言は、インタビューでビットコインに投資しないのか?と問われた際の返答です。

トランプ氏は、ビットコインは米ドルに影響を与える存在であり規制されるべきと、否定的な見解を示しています。2020年頃からはランサムウェア攻撃の身代金に暗号資産が用いられることが増えた点も、トランプ氏の見解を助長していると考えられます。

選挙戦の開始以降の発言

ここからは、選挙戦が始まって以降のトランプ氏の発言を解説していきます。冒頭でも述べた通り、支持率や寄付を意識しての発言の変化が見られます。

2024年3月:「何らかの規制が必要だが、多くの人がビットコインを受け入れている」と発言

2024年の始めから、アメリカの大統領選に向けた動きが見られるようになりました。

トランプ氏はニュース専門放送局CNBCに対して「何らかの規制が必要だが、すでに多くの人がビットコインを受け入れている」「現時点で自分がそれを排除したいどうかは決めていない」と発言しています。この発言から、在任期間中の暗号資産は詐欺、犯罪を助長するなどの否定的な見方からは、大きく変化しているように感じられます。

トランプ氏は「人々がドルから離れることを望まない」と発言しながらも、拡大する暗号資産やNFTの市場に興味を示し、一定の関心を寄せています。

2024年5月:暗号資産での寄付受け入れを宣言

トランプ氏は、2024年5月初めの演説で暗号資産の寄付を認めると宣言しました。 主要政党の大統領候補が、寄付に暗号通貨を採用するのは初めてのことです。

トランプ氏の公式サイトでは、法定通貨の他に暗号資産でも寄付ができます。トランプ氏はこの意図について「暗号資産軍団を編成する計画」と説明しており、2024年4月〜6月の間に約6億円の寄付を集めているようです。

2024年6月:ビットコインを規制する民主党を激しく避難

世界最大の通信社ロイター通信は、サンフランシスコでの資金調達イベントで、トランプ氏が「暗号資産大統領になる」と宣言し、規制を続ける民主党とは反対のアプローチを取る意向を示したことを報道しています。

現政権の民主党とは逆の意向を示し、若年層や暗号資産投資家の支持を得たい、という意図が感じられます。自由主義でリベラルな都市であるサンフランシスコでの発言は一定の効果があり、過剰な規制に反対するトランプ氏を支持する声が高まっています。

2024年7月:「ビットコイン超大国」にすると発言

トランプ氏は2024年7月に行われたビットコインカンファレンスというイベントで、大統領選挙で再選されれば「アメリカをビットコイン超大国にする」と発言しました。この発言は暗殺未遂事件があった7月13日の2週間後のことで、イベントを通じて合計2,100万ドル(約32億円)を調達したようです。

選挙戦が進むにつれ、暗号資産への肯定的な見方は強まっているように感じられます。「アメリカを再び偉大に」という従来からの方針は維持しつつ、暗号資産と共存する道を歩んでいくと考えているのかもしれません。

2024年8月:100万ドル〜500万ドルの暗号資産を保有していると報告

2024年8月に公開された文書では、トランプ氏自身がイーサリアムを中心に100万ドル〜500万ドルの暗号資産を保有していると報告されています。また、NFTのライセンス契約では715万ドル(約10億円)超の収入があったことも記載されています。

アメリカの大統領候補は、自身の資産や収入の出所を公開しなくてはなりません。この文書は最終更新日が2024年2月9日で、「Citizens for Ethics」という組織などによって作られています。

トランプ氏自身も、暗号資産によって大きな利益を得ているようです。

現在の選挙戦の状況とは

選挙戦で誰が当選するかの予想は、時期や媒体によって大きく割れています。

トランプ氏勝利 ハリス氏勝利 発表日
英政治経済誌「エコノミスト」 69% 31%(バイデン氏撤退前) 2024年6月14日
ベッティングサイト「プレディクトイット」 60% 40% 2024年7月22日
分散型の予測市場「ポリマーケット」 45% 52% 2024年8月17日

バイデン氏の撤退が決まってからは、民主党の候補であるハリス氏の勝利を予想する人が増えてきています。トランプ氏の支持率が低下している背景には、不倫口止めや不正会計処理などに関する34の罪状で有罪と評決を受けたことや、中国への強硬姿勢が足りないことが挙げられます。

今後も選挙戦の状況によって、大きく確率が変動する可能性があります。

ドナルド・トランプ氏が再選した場合に暗号資産市場はどうなるか

現在、トランプ氏が暗号資産に対して肯定的な姿勢であることは明らかであり、再選は市場へ強気の材料となる見解が強いです。アメリカでは2024年4月頃から、暗号資産関連企業への取り締まりが強化されていますが、再戦後はこうした動きに歯止めがかかる可能性があります。

一方で、ハリス氏など他の候補者が当選した場合は、市場へ弱気の材料になると予想されています。資産運用のバーンスタインは「選挙関連の明確なシグナルが出るまで、レンジ相場が続く」と述べています。

まとめ

今回の選挙戦で、トランプ氏は暗号資産に対して肯定的な姿勢を示し始め、選挙戦略の一環として有効に活用しようとしています。

アメリカの大統領選の投票まで3ヶ月を切り、各候補者による選挙戦が激化しています。選挙の結果は、暗号資産市場にも大きな影響を与えることでしょう。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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