これまで気象データは、政府機関や専門的な気象機関が大規模設備を使って収集されてきました。気象データが利用される先も、天気予報や災害対策といった専門分野でした。
WeatherXMのミッションは気象データの民主化を進めること。ます。ウェザーステーション(デバイス)を設置することで、誰でも簡単に気象データを収集でき、多くのユーザーと共有できます。
本記事では、WeatherXMの概要や特長、始め方、注意点をわかりやすく解説します。
この記事の構成
WeatherXMとは?
出典:https://weatherxm.com/
WeatherXMは、分散型気象ネットワークによって気象データを収集・共有するWeb3サービスです。集められたデータは研究機関だけでなく、個人ユーザーも料金を支払うことで使用可能。
いままで気象データの収集と使用は、特定の組織に独占されてきました。しかし、WeatherXMは気象データの収集と使用を誰でも可能にします。また、気象データを収集するデバイスも個人の裁量で設置できます。
WeatherXMの特長
- ユーザー主導のデータ収集
- $WXMトークンによる報酬システム
- DePIN
ユーザー主導のデータ収集
WeatherXMに世界中のユーザーが参加することで、中央集権的な気象データ収集をユーザー主導のデータ収集にシフトします。あらゆる場所でユーザーニーズに応じた正確なローカルデータが得られるようになります。
$WXMトークンによる報酬システム
ユーザーは、提供した気象データ量に応じて報酬を得ることができます。報酬で支払われるトークンはERC20規格の$WXMです。$WXMは日本国内の取引所ではトレードできませんが、海外のCEXではトレードできます。
DePIN
WeatherXMは、ブロックチェーン技術によって既存インフラを刷新していくDePIN※1です。気象データ収集データは暗号化され、ネットワーク上で分散管理されます。ユーザーは保有情報を第三者に知られることなく、プロジェクトに貢献できます。
※1 DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network:分散型物理ネットワーク)
WeatherXMの開発元
WeatherXMは、2020年にギリシャのアテネで設立されました。2024年5月には、Factionをはじめ、Borderless CapitalやAlumni Venturesなどのベンチャーキャピタルから約7.7百万ドルの資金調達に成功しています。
WeatherXMは、すでに80カ国以上で5,000以上のウェザーステーションを設置し、分散型の気象データネットワークを構築しています。
WeatherXMの始め方
WeatherXMは日本人でも利用できます。しかし、デバイスを購入する必要があります。ギリシャからの発送になるため、手元に届くまでに時間を要します。
1.ウェザーステーションの選択と購入
出典:https://weatherxm.com/shop/
WeatherXMで使用されるウェザーステーションには、設置環境に応じて3つのモデルが用意されています。
H2 Heliumは、Helium-LoRaWANネットワーク※2を利用するため、リモートエリアや低接続環境に最適です。D1は安定したWiFi接続が利用できる地域向けモデルになります。H2とD1の価格は同じ400ドルなので、ネットワーク環境に応じて選択をしましょう。
Pulse 4Gは4G-LTEネットワークを活用します。日本であれば、4G通信環境は国土の60%程度(国民居住区域では99%以上)をカバーしているので、山地や離島などでの通信も期待できます。価格は約900ドルです。
※2 ブロックチェーン技術を活用した無線IoTネットワークです。
2.ウェザーステーションの開封と準備
デバイスの到着後、パッケージを開けて本品と付属品を点検してください。パッケージには風速計、風向計、M5マイナー(データ送信機)、GPSアンテナ、LoRaWANアンテナ、電源ケーブルが含まれています。
バッテリーを準備し、風向計や風速計を取り付けます。D1 WiFiモデルはUSB-Cケーブルで接続し、インターネットに接続します。Pulse 4Gモデルには、LTEゲートウェイも付属しています。
また、組み立てと設置には金具やネジが使用されます。必要に応じて工具を用意しましょう。
3.ウェザーステーションの設置
ステーションは屋外の高い場所に設置します。具体的には周囲に障害物がない場所を選び、2メートル以上の高さで設置してください。風速計や風向計をしっかりと取り付け、設置面が水平になるように調整します。風向計の矢印は北に向けてください。太陽光パネルも設置し、電源が確保されるようにします。
4.M5デバイスの設定とネットワーク接続
M5デバイス(マイナー)を室内に設置し、GPSアンテナを取り付けて電源を入れてください。WiFiまたはLoRaWANを使用してネットワークに接続し、デバイスの周波数を設定します。
設定画面から「WiFi Config」に移動し、デバイスをネットワークに接続します。インターネット接続後、スマホのブラウザで指定のIPアドレスにアクセスし、ネットワーク設定を完了します。
5.WeatherXMアプリでのデバイス登録
出典:https://weatherxm.com/free-mobile-app/
スマートフォンにWeatherXMアプリをダウンロードし、アカウントを作成します。デバイスのシリアル番号を入力し、位置情報を正確に登録して、ステーションをネットワークに追加します。ウェザーステーションがデータ送信を開始し、ネットワークにデータが提供されます。
6.ウォレットの接続と報酬の管理
WeatherXMは、データ提供に対して$WXMトークンを報酬として支給します。MetaMaskウォレットをアプリに接続し、$WXMトークンを受け取る準備を整えます。
7.デバイスの確認と報酬の受け取り
M5デバイスの設定が完了し、すべてのシンボルライトが緑色に点灯していることを確認します。緑ライトはデバイスが正しく接続され、データの送信が正常に行われていることを意味します。報酬は日々のデータ提供量と質に基づいて評価され、$WXMトークンとしてウォレットに送信されます。
WeatherXMをうまく使うポイント
- 設置場所の選定
- データの安定的な送信を確保
- 定期的なメンテナンスとデータ確認
すでにSNSなどでWeatherXMについてのレビューが多く見られます。それらの情報をまとめて、WeatherXMをうまく使うポイントを解説します。
設置場所の選定
ウェザーステーション設置の際は、周囲に障害物の少ない場所を選定することが重要です。理想としては、平野や山頂、もしくは屋根の上やポールに設置します。風向きも人工物で変化しないように、大きな建物などの周りは避けましょう。
データの安定的な送信を確保
ステーションが常に正しくデータを送信できるよう、インターネット環境を整えましょう。WiFiモデルと4Gモデルのどちらが利用できるのかを考慮し、デバイス選びを進めてください。GPSの受信状況を確認することも大切です。M5デバイスを屋内の窓際に設置し、GPS受信が良好な状態を保つようにします。
定期的なメンテナンスとデータ確認
ウェザーステーションを定期的にチェックし、太陽光パネルやバッテリーが正常に作動しているか確認します。また、WeatherXMアプリを使ってデータの品質や送信状況を定期的に分析しましょう。問題がある場合は原因追求を進め、データ品質の向上に努めることが大切です。
WeatherXMの注意点
WeatherXMを始める際の注意点をまとめて解説します。
初期コスト
最初にWeatherXMの気象予測装置を購入する必要があります。値段は400ドル、または900ドルです。SNSレビューでは、1デバイスで数$WXM稼げるという情報が多いです。$WXMの市場価格は、2024年10月時点で0.5米ドル/$WXM程度です。400ドルのデバイスの場合、初期コスト回収には4〜5カ月必要ではないかといわれています。
設置の許可
自身の保有する土地や建物に、ウェザーステーションを設置する場合は問題ありません。しかし、観測に適しているからといって山や平原、他人の土地にウェザーステーションを設置してはいけません。不法侵入罪、器物損壊罪、軽犯罪法違反といった罪に問われる可能性があります。
データ品質の維持
収集されるデータの品質が重要です。WeatherXMは「Cryptographic Proofs of Location (PoL)※3」と「Quality of Data (QoD)※4」アルゴリズムを使用して、データの品質を評価します。収集するデータが低品質なものになると、大きく報酬を低下させることにつながります。
※3 WeatherXMのコンセンサスアルゴリズムです。
※4 WeatherXMのデータ評価システムです。
トークン価値の変動
出典:CoinGecko
報酬として受け取る$WXMの市場価格には注意を払いましょう。暗号資産はボラティリティリスクの高い金融商品です。1日に10%以上の価格変動が起こることも珍しくありません。値上がりした場合は問題ありませんが、値下がりした際はユーザー収益を圧迫します。
デバイスの故障
装置の故障やソフトウェアの問題が発生する可能性があり、これらは収益に影響を与える可能性があります。大手メーカーの家電ではないので、修理も自己責任下で行われることになります。デバイス到着後14日間の返金保証期間を設けていますが、送料が別ということで日本人にとっては大きなリスクです。
参照:WeatherXM「Terms & Conditions」
まとめ
以上、WeatherXMの概要や特長、始め方、注意点について解説させていただきました。
WeatherXMは、専門機関が独占していた気象データの民主化に貢献します。収集された気象データは専門機関だけでなく、個人ユーザーも使うことが可能になります。また、気象データを収集するユーザーにも報酬が与えられるといったシステムも画期的です。さまざまな地域に住むユーザーが積極的に気象データを収集することが期待できます。
WeatherXMを利用するユーザーが増えることで、気象データ収集は効率的かつタイムリーになっていくでしょう。特に、防災、第一次産業、保険業といった分野での貢献が期待されます。