近年、NFT(Non-Fungible Token)は様々な活用方法が模索されており、企業や自治体による活用事例も複数登場しています。中には、ユニークな方法でNFTを活用したユースケースもあり、ネーミングライツ(命名権)NFTもその一つといえるでしょう。
この記事では、地方自治体を中心に導入され始めているネーミングライツNFTの活用事例や、ネーミングライツNFTに期待できる効果などを解説していきます。NFTを活用した何らかの取り組みを検討している自治体職員や企業担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
ネーミングライツ(命名権) × NFTの活用事例
ネーミングライツ(命名権)NFTとは、その名前の通り、ある特定の施設などの命名権をNFT化したものです。多くの場合、ネーミングライツNFTを購入したユーザーには、指定された施設などの名前を自由に決められる権利が提供される仕組みとなっています。
これまでになかったユニークなNFTのユースケースとして注目を集めており、自治体や企業などによる活用事例がいくつか登場しています。
ここでは、ネーミングライツ(命名権) × NFTのユースケースとして、以下の3つの活用事例を確認していきましょう。
- 公園の命名権NFT:山形県西川町
- カヌーセンターの命名権NFT:山形県西川町
- 踏切の命名権NFT:小田急電鉄株式会社
公園の命名権NFT:山形県西川町
画像引用元:日本初!自治体(山形県西川町)が実在する公園の「命名権NFT」を1,000円からオークション販売!NFTマーケットのHEXA(ヘキサ)
2023年8月31日、山形県西川町は日本国内で初の取り組みとなる、公園の命名権が得られるネーミングライツNFTをリリースしました。NFTの購入者には、町内外の多くの人々が訪れる「道の駅にしかわ」に隣接した「水沢名水公園」と呼ばれる公園の命名権が提供されます。
公園には、NFT購入者が命名した公園名記載の看板が設置されるため、ユーザーとしては自社サービスの宣伝などに活用できるメリットがあります。西川町としては、公園の命名権をNFT化するという日本初の取り組みを通して注目を集め、同町の関係人口創出や地域活性化を促進する狙いがあったと考えられるでしょう。
画像引用元:日本初!自治体(山形県西川町)が実在する公園の「命名権NFT」を1,000円からオークション販売!NFTマーケットのHEXA(ヘキサ)
なお、「公園の命名権NFT」は国産NFTマーケットプレイスであるHEXA(ヘキサ)にて、オークション形式で販売されました。合計で47件もの入札が行われるなど注目を集め、1,000円からスタートしたオークションは、最終的に130万円もの金額で落札されています。
今回のネーミングライツNFTによる販売収益は、西川町発展のための財源として利用されており、自治体による新しいNFTのユースケースだといえるでしょう。
関連記事:国産NFTマーケットプレイスHEXA(ヘキサ)の特徴や使い方をわかりやすく解説
カヌーセンターの命名権NFT:山形県西川町
画像引用元:山形県西川町が日本有数のカヌー競技場「月山湖」に新設するカヌーセンター命名権NFTを千円からオークション販売!QRコードで看板と連携。NFTマーケットのHEXA(ヘキサ)
2024年8月23日、山形県西川町は「公園の命名権NFT」に続くネーミングライツNFTとして、「カヌーセンターの命名権NFT」の販売を発表しました。
NFTを購入したユーザーには、同町にある日本有数のカヌー競技場「月山湖」に新設されるカヌーセンターの命名権が提供されます。前述した「公園の命名権NFT」と同様に、命名されたカヌーセンター名記載の看板が現地に設置されるため、ユーザーとしては自社の宣伝などに活用することができるでしょう。
画像引用元:山形県西川町が日本有数のカヌー競技場「月山湖」に新設するカヌーセンター命名権NFTを千円からオークション販売!QRコードで看板と連携。NFTマーケットのHEXA(ヘキサ)
「カヌーセンターの命名権NFT」は、HEXA(ヘキサ)にてオークション形式で販売され、最終的に150万円の価格で落札されました。落札価格だけでなく、合計で21件もの入札が行われたことなどから、自治体による地方創生の取り組みの一貫として、ネーミングライツNFTへの注目度の高さが改めてわかったといえるかもしれません。
なお、山形県西川町はNFTの利活用を積極的に行っている自治体として知られており、ネーミングライツNFTだけでなく、デジタル住民票NFTの発行なども行っています。自治体によるNFTの活用方法を模索している方は、この機会に西川町の取り組みを参考にしてみるとよいかもしれません。
関連記事:山形県西川町が進めるNFTを活用した取り組み事例を解説
関連記事:市町村などの自治体がデジタル住民票NFTを発行するメリット・デメリットとは?
踏切の命名権NFT:小田急電鉄株式会社
画像引用元:世界初!NFTマーケットのHEXA(ヘキサ)が、小田急電鉄に実在する踏切の「ネーミングライツNFT」を1,000円からオークション販売!
2024年4月24日、東京都・神奈川県を中心に路線を持つ小田急電鉄株式会社は、世界初となる「踏切の命名権NFT」の販売を発表しました。国産NFTマーケットプレイスのHEXA(ヘキサ)にてオークション形式で販売され、NFT購入者には実在の踏切の命名権(ネーミングライツ)が提供されます。
命名できる踏切は、渋沢駅~新松田駅の間にある「渋沢5号踏切」(住所:神奈川県秦野市菖蒲394先)となっており、現地には命名された踏切名記載の看板が設置されます。小田急電鉄は、今回の命名権NFTを通して、「ネーミングライツNFTで命名された日本初の踏切」をお出かけの目的地にすることや、踏切設備のイメージの転換を目指すとしています。
画像引用元:世界初!NFTマーケットのHEXA(ヘキサ)が、小田急電鉄に実在する踏切の「ネーミングライツNFT」を1,000円からオークション販売!
なお、踏切名記載の看板が設置されるのは1年間のみです。1年経過後はオークション落札者に実物の看板がプレゼントされるなど、鉄道好きにとってうれしい特典も提供されています。
NFTの販売収益は、沿線地域の安全啓発活動に加え、踏切の安全設備維持などに活用するとしています。まだ事例は少ないですが、企業による面白いNFTのユースケースだといえるでしょう。
関連記事:鉄道 × NFTの活用事例を解説|鉄道会社がNFTを活用するメリットとは?
ネーミングライツ(命名権)NFTを導入することで期待できる効果を考察
地方自治体や企業がネーミングライツ(命名権)NFTを導入することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。以下の項目に沿って、それぞれ順番に確認していきましょう。
- 知名度を向上できる
- 新たな財源を確保できる
知名度を向上できる
自治体や企業などがネーミングライツNFTを導入することで、知名度の向上が期待できると考えられます。現在、自治体や企業によるNFTの活用事例は増えつつあるものの、その数はまだまだ少ない状況です。特にネーミングライツ × NFTのユースケースは全国的にもめずらしいため、このような取り組みをするだけでも一定の話題を集めることができるでしょう。
自治体であれば、ネーミングライツNFTの販売をきっかけに地域に興味を持ってくれる人が増え、観光誘致や地域活性化を促進できる可能性があります。関係人口を創出・増加させることができれば、そこから移住者の増加につながっていくかもしれません。
また、企業に関してもネーミングライツNFTの導入を契機として知名度が向上することにより、自社サービスの利用客増加などのポジティブな効果が期待できるでしょう。
ただし、今後多くの自治体や企業がネーミングライツNFTを販売開始した場合、徐々に目新しさがなくなり、得られる効果も限定的になっていく可能性があるかもしれません。
新たな財源を確保できる
ネーミングライツNFTを販売することで、新たな財源を確保できるメリットも挙げられます。
例えば、山形県西川町は「公園の命名権NFT」「カヌーセンターの命名権NFT」を販売したことで、合計280万円もの資金調達を行っています。これらの資金は西川町発展のための財源として活用されており、ネーミングライツNFTが地域活性化に寄与した事例だといえるでしょう。
このようにネーミングライツNFTを導入することで、自治体であれば地方創生のための財源を確保できる可能性があります。企業に関しても、NFTの販売によって本業以外の収入源を得ることが可能です。
特に日本の地方都市は、人口減少や少子高齢化などによる財政悪化が問題となっています。こういった課題を少しでも改善するための方法の一つとして、今後ネーミングライツNFTが注目されるかもしれません。
ネーミングライツ(命名権)NFTの事例や期待できる効果まとめ
今回の記事では、ネーミングライツ(命名権)NFTの事例や、NFTの導入で期待できる効果について解説してきました。ネーミングライツNFTは、自治体や企業などによる新たなNFTのユースケースとして注目されています。
これからNFTの活用を検討している自治体職員や企業担当者の方は、ネーミングライツNFTの販売を検討してみてもよいでしょう。