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市町村などの自治体がデジタル住民票NFTを発行するメリット・デメリットとは?

解説系記事

2021年12月、新潟県山古志地域が「Nishikigoi NFT」というデジタル住民票をリリースして以降、いくつかの自治体が同様の機能を持つNFTを発行しています。デジタル住民票を発行することで、「デジタル住民」と呼ばれる地域外の関係人口の増加が期待できます。

この記事では、現在注目を集めているデジタル住民票NFTのメリット・デメリットを詳しくご紹介していきます。地域活性化のために、デジタル住民票の活用を検討している自治体職員の方は、ぜひ最後までご覧ください。

市町村などが発行するデジタル住民票NFTとは?

デジタル住民票NFTとは、市町村や地域の任意団体などが発行する住民票の機能を持ったNFTのことです。

NFTの所有者は「デジタル住民」と呼ばれ、その地域を盛り上げていくための提案を行ったり、提案に対して投票を行う際の投票権が得られます。また、地域によっては温泉の入浴料が無料になるなど、観光面でのメリットを提供しているケースもあったりします。

ただし、NFTを所有したからといって、保有者はその地域の本当の住民になれるわけではありません。あくまで、その地域を盛り上げてくれるファンのような存在だといえるでしょう。

現在発行されているデジタル住民票NFT

2023年7月現在、すでに発行されているデジタル住民票NFTとしては、以下が挙げられます。

・新潟県山古志地域:Nishikigoi NFT
・山形県西川町:山形県西川町デジタル住民票NFT
・静岡県松崎町:日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業

新潟県山古志地域:Nishikigoi NFT

画像引用元:OpenSea

2021年12月、新潟県山古志地域の地域団体「山古志住民会議」は、日本で初めてデジタル住民票NFTを発行しました。NFTは「Nishikigoi NFT」と名付けられており、山古志地域発祥として知られる錦鯉をモチーフにしたアートとなっています。

Nishikigoi NFTの保有者は、「山古志DAO」と呼ばれるコミュニティにおいて、地域づくりの提案に対する投票権が与えられます。現在、デジタル住民は山古志地域に暮らす実際の住民の数よりも多く、徐々にコミュニティが拡大している状況です。

詳しくは、Nishikigoi NFTとは?NFT活用で人口800人の限界集落を再興する新たな地域づくりについて解説でご紹介しているので、ぜひあわせて参考にしてみてください。

山形県西川町:山形県西川町デジタル住民票NFT

画像引用元:HEXA NFTマーケット

山形県西川町は、2023年4月に日本の自治体で初めてデジタル住民票NFTのリリースを行いました。前述のNishikigoi NFTは、あくまで「山古志住民会議」という地域の任意団体が発行したものとなっています。

西川町のデジタル住民票NFTは、販売個数1,000個に対して13,440件もの注文が入るなど、大きな需要が発生したことで話題となりました。NFTの保有者は、町長が参加するオンラインコミュニティに参加できたり、西川町にある温泉に無料で入浴できるなどの特典を利用することが可能です。

山形県西川町のデジタル住民票NFTについては、INO(Initial NFT Offering)とは?新しいNFTの販売(資金調達)方法を解説の記事で詳しくご紹介しています。

静岡県松崎町:日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業

静岡県松崎町は、鳥取県智頭町や株式会社ガイアックスなどと連携して地方創生を推進する「美しい村DAO」に加入しています。2023年3月、同DAOが行う「日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業」の取り組みとして、デジタル住民票NFTを発行しました。

デジタル住民票は10,000円で販売されており、保有者は実際の町民と同じようなサービスを受けることが可能です。具体的には、地域にある温泉の入浴料が半額になったり、町が運営する美術館に無料で入館できます。

他の市町村でもデジタル住民票の実証実験を開始

石川県加賀市では、2023年3月6日〜24日にかけて、観光やワーケーションを中心とした関係人口の増加を目的に、デジタル住民票の実証実験を開始しました。ここまでご紹介した事例と同様、NFTでデジタル住民票を発行しており、同市では「e-加賀市民制度」と呼んでいます。

画像引用元:PRTIMES

「e-加賀市民証(デジタル住民票)」を持っている方は、専用コミュニティに参加できたり、乗合タクシーを利用できるなどの機能が与えられたようです。暗号資産(仮想通貨)利用者やクリエイター、一般希望者など合計100人にサービスを体験してもらい、アイデアや課題などを洗い出しています。

こういった自治体の動きから分かる通り、今後も全国の市町村でデジタル住民票を活用する取り組みが行われると考えられるでしょう。

デジタル住民票NFTのメリット

このように、全国的に注目されつつあるデジタル住民票NFTですが、導入することでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは以下の3つの項目に沿って、デジタル住民票NFTのメリットをご紹介していきます。

  • 地域の関係人口の増加が期待できる
  • 地域活性化のための資金調達ができる
  • 自治体の知名度を向上できる

地域の関係人口の増加が期待できる

デジタル住民票NFTの最大のメリットは、やはり地域の関係人口の増加が期待できることです。デジタル住民票をきっかけに、自分たちの地域に興味を持ってもらったり、観光誘致につなげられる可能性があります。

デジタル住民との交流を深めることで、実際に移住してもらい、本当の住民になってもらえる可能性もあるでしょう。実際、新潟県山古志地域では、住民票NFTをきっかけにして移住体験をするデジタル住民なども出てきているようです。

また、デジタル住民票をNFTとして発行することで、関係人口の数を可視化できるメリットもあるでしょう。

地域活性化のための資金調達ができる

デジタル住民票NFTを発行することで、地域活性化のための資金調達を行うことも可能です。

Nishikigoi NFTを発行した山古志地域では、2021年12月にデジタル住民票を1点当たり0.03ETH(2023年7月現在では約8,000円)で販売し、多額の資金調達に成功しています。調達した資金は、山古志地域を盛り上げ、存続させるための活動資金として活用されています。

このようにデジタル住民票NFTを発行することで、地域独自の資金調達を実現し、地域活性化のために活用できるメリットがあります。

自治体の知名度を向上できる

デジタル住民票NFTの最後のメリットとして、自治体の知名度を向上できることも挙げられるでしょう。現状、デジタル住民票を発行している自治体・地域の数はまだ少なく、導入するだけでも注目を集められます。

例えば、新潟県山古志地域に関しては、もともと錦鯉に興味があった人は別として、全国的に知名度が高い地域ではないと考えられます。また、自治体として初めてデジタル住民票を発行した山形県西川町についても、「住民票NFTのニュースで初めて名前を知った」という方も多いのではないでしょうか。

このように、デジタル住民票の取り組み自体が全国的にめずらしいため、知名度を向上させるには効果的な施策だといえます。デジタル住民票のニュースを契機に興味を持ってもらい、住民票NFTを購入してもらったり、観光に訪れてくれるきっかけになるかもしれません。

ただし、今後多くの自治体が住民票NFTを発行し始めた場合、徐々に目新しさはなくなっていくと考えられます。

デジタル住民票NFTのデメリット

さまざまなメリットがあるデジタル住民票NFTですが、以下のような問題点・デメリットを抱えています。

  • NFT保有者に提供できるサービスは限定的
  • 地域活性化にどこまで効果的かは未知数

NFT保有者に提供できるサービスは限定的

デジタル住民票NFTのデメリットとして、NFT保有者に提供できるサービスは限定的であることが挙げられます。

前述の通り、デジタル住民票NFTを持っているからといって、ユーザーはその地域の本当の住民になれるわけではありません。あくまでファンクラブにおける、ファンのような位置付けです。

その地域に居住し、納税しているわけでもないため、自治体としてもデジタル住民に行政サービスまで提供することは難しいでしょう。デジタル住民票を発行している自治体・地域はユーティリティの提供に力を入れていると思われますが、どうしても機能は限定的になってしまいます。

今後、NFT保有者に対してどのようなユーティリティを提供できるかが、デジタル住民票が普及するためのポイントになるかもしれません。

地域活性化にどこまで効果的かは未知数

デジタル住民票NFT自体、まだ始まったばかりの活動です。どの市町村・地域も手探り状態で活動を行っているといえるでしょう。

そのため、デジタル住民票が地方創生や地域活性化にどこまで効果的なのか、まだ未知数な部分が多いです。もちろん、現状で一定の成果が出ている地域は存在していると考えられますが、地方創生は長期目線で取り組んでいかなければいけない課題です。

デジタル住民票が地方にどれだけの効果を発揮するかは、もう少し長期的な目線で見ていく必要があるでしょう。

デジタル住民票NFTを発行するメリット・デメリットまとめ

今回の記事では、複数の市町村が発行しているデジタル住民票NFTの概要や、メリット・デメリットなどを解説してきました。

ご紹介したように、デジタル住民票を発行することで関係人口の増加や、地域活性化のための資金調達ができるメリットがあります。まだまだデジタル住民票を導入している自治体は少ないため、知名度の向上が期待できる利点もあります。

しかし、デジタル住民票NFTは、まだ始まったばかりの活動です。地域の活性化にどれだけの効果があるのか、未知数な部分が多いことは把握しておきましょう。

GM

gm

2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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