近年、酒にNFTを組み合わせたプロジェクトが多く誕生しています。NFTを導入することで取り組みを発信して実際に購入してもらったり、購入者に特別な体験を提供することが可能です。
日本酒においても、さまざまな事例が生まれています。日本酒は日本が世界に誇る伝統的な飲み物ですが、一方で消費量の減少や販路がないなどの理由で採算がとれず、日本酒メーカーが廃業に追い込まれてしまうケースも多く、酒蔵は年々減少を続けている現状があります。
そうした状況がある中「Sake World NFT」では日本全国の日本酒のNFTを販売し、酒蔵に新たな収益の可能性を生み出しています。
本記事では、日本酒のマーケットプレイス「Sake World NFT」の特徴や実際の注文方法などを詳しく解説していきます。今後NFTを通じた新しいビジネスを模索している人は、ぜひ記事を読み進めてみてください。
この記事の構成
「Sake World NFT」の概要
「Sake World NFT」とは、日本全国の酒蔵が製造する日本酒をNFTチケットの形で販売するマーケットプレイスです。株式会社リーフ・パブリケーションズが運営しており、2億7,500万円の事業資金を新規調達して、2023年12月に正式にリリースされました。
Sake World NFTでは、日本酒の引渡しを受けることができる権利をNFTチケットにして販売しています。
日本酒など酒を販売する際には酒類販売業免許が必要で、誰でも販売できるわけではありません。Sake World NFTでは日本酒の実物と権利を分離し、必要な際にNFTチケットと引き換えて送ることによって、誰でも販売できる仕組みを実現しています。
Sake World NFTは、2024年8月に経済産業省事業「Web3.0・ブロックチェーンを活用したデジタル公共財等構築実証事業」に採択された、政府からもお墨付きを得たプロジェクトです。採択後も、ゲームプラットフォームのDigital Entertainment Assetと提携して販売・流通を促進するための実証事業を展開したり、クラウドファンディングを実施して日本酒づくり体験施設「My Sake World」の建設を進めるなど、さまざまな取り組みが発表されています。
日本酒のマーケットプレイス「Sake World NFT」の特徴
ここでは、日本酒のマーケットプレイス「Sake World NFT」の特徴を4つ紹介していきます。
NFTを通じて日本酒の購入が可能
Sake World NFTでは、日本酒と引き換えができるNFTチケットを購入できます。NFTはクレジットカードか暗号資産MATICを通じて購入可能です。暗号資産の準備は不要で、メタマスクなどの専用ウォレットも作る必要はありません。
購入したNFTはSake World NFTのアカウント内のウォレットに保存され、発送を依頼すると、自宅の住所まで実物の日本酒が送られてくる仕組みです。
即時発送や保管、熟成後などさまざまな飲み方を選べる
Sake World NFTでは、以下2つの発送方法があります。
・即時発送
・保管後発送
即時発送とは購入後すぐに発送依頼をかける方法、保管後発送とは最大25年まで熟成させてから発送する方法です。保管後発送の場合は25年までの範囲で期間を自分で選ぶことができますが、別途費用がかかります。
日本酒には冷酒から熱燗まで温度による違いを楽しむ以外にも、時間をかけて熟成させる飲み方があります。熟成させることで、甘く風格のある奥深い香りや、口に含んだときのやわらかさが生まれます。ぜひさまざまな方法で日本酒を楽しんでみてください。
全国179箇所の酒蔵、600種類以上の日本酒を販売
2024年12月11日時点で、Sake World NFTでは全国179箇所の酒蔵、600種類以上の日本酒が掲載されています。Sake Worldの公式サイトは、日本酒の情報を発信するためのプラットフォームとしても機能しており、各酒蔵の歴史や文化、こだわりや独自の製法などが掲載されています。
また、600種類以上が販売されている日本酒のページには、それぞれの味の特徴やおすすめの飲み方、製造した酒蔵の情報が記載されています。価格帯は1,000円程度から10万円を超えるものまで幅広いです。ぜひ予算に合わせて銘柄を選んでみてください。
購入者と酒蔵、両方にメリットのある仕組み
Sake World NFTの仕組みは、購入者と酒蔵の両方にメリットを提供します。
購入者は即時と熟成の飲み方を選べるだけでなく、自由にNFTを売買できます。この仕組みによって、日本酒が資産としての価値を持つようになり、購入者の体験価値を向上させます。
一方、酒蔵にとっては、熟成前に購入代金を受け取れることが大きなメリットです。通常、熟成酒は長期間の保管後に販売が可能となりますが、この仕組みを活用すると熟成前に資金を確保できます。従来の店頭販売型のビジネスモデルとは異なり、キャッシュフローの改善が期待できます。
さらに、NFTの二次転売時には、酒蔵に購入代金の5%がロイヤリティとして支払われます。こうした仕組みによって、酒蔵は持続的な利益を得ることが可能です。
「Sake World NFT」の購入方法を解説
ここでは、Sake World NFTの購入方法を解説していきます。購入のためには、アカウントを作る際のメールアドレスと、クレジットカードもしくは暗号資産MATICが必要になりますので、あらかじめ用意しておくようにしましょう。
なお、Sake World NFTは酒を扱うサービスであり、20歳未満は登録できないので注意してください。
Sake World NFTでアカウントを作成する
まずは、Sake World NFTのトップ画面の右上にある「無料ユーザー登録」のボタンを押します。ニックネームとメールアドレス、パスワードを入力してください。
その後、メールアドレス宛に認証番号が送られてきます。その番号を元に認証を行いアカウントの作成が完了します。
欲しい日本酒を選ぶ
次にSake WorldもしくはSake World NFTの公式サイトで欲しい日本酒を選びます。
Sake Worldとは日本酒に関する総合的な情報を発信するサイト、Sake World NFTはNFTの売買を中心としたサイトです。Sake Worldから日本酒を探して購入する場合は、最終的にSake World NFTの決済ページへ飛ぶ仕様になっています。
Sake Worldでは銘柄や酒蔵から、Sake World NFTでは地域やお酒のタイプ(純米酒、吟醸酒など)、味わい(甘口、辛口、濃厚、淡麗など)や価格帯から、日本酒を選ぶことができます。
日本酒のNFTを購入する
購入したい日本酒を見つけたら、購入ボタンを押しましょう。その際に「即時発送」と「保管後発送」の2つから発送方法を選べます。保管後発送の場合は、最長25年までの間から希望の期間を選ぶようにしてください。
最後にクレジットカードもしくは暗号資産の支払い方法を選択して、購入手続きが完了します。
酒に関連する他のNFTプロジェクト
ここでは、酒に関連するNFTプロジェクトを3つ紹介していきます。
サントリー:NFTつきビール
飲料メーカーのサントリーは、2024年11月にNFTを搭載した限定ビールを発売しました。
限定ビールとは「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2024」の715mlのボトルのことです。このビールの封を切ると、NFCが検知して消費の証明となるNFTを受け取れます。
NFCとは、交通系ICカードや自動レジに用いられる近距離無線通信技術のことです。この技術を利用して限定NFTを配布し、顧客の体験価値を向上させています。
サントリーは、2023年3月にWeb3事業を行う社内ベンチャー子会社として、GoodMeasure社を立ち上げました。同社が運営する、サントリーのものづくりに共感するファンのコミュニティ「SAKAZUKI(サカズキ)」には数百人規模の参加者がいます。今後もサントリーの歴史や商品を活かした、さまざまな取り組みが行われることになるでしょう。
Whiskey&Co.:三島ウィスキープロジェクト
蒸留酒のクラフトスピリッツの製造や販売を行うWhiskey&Co.社では、静岡県三島市のふるさと納税の返礼品として「key3NFT」を提供しています。
key3NFTは保有数が多いほど、熟成年数の長いウイスキーの購入権利を獲得できる仕組みです。例えば「key3NFT1000(寄付金額44万円)」を入手すると、3年熟成のウイスキーを毎年1本優先的に購入できる権利が付与されます。
また、Whiskey&Co.社は、企業やインフルエンサーの取り組みを支援するプラットフォームFiNANCIiEで「key3」という独自トークンを発行しています。FiNANCIiEのコミュニティでは限定イベントやプレゼント抽選会、Whiskey&Co.社の取り組みの発信などが盛んに行われています。
TISとSAKEX:「トークン活用型ブランディング支援サービス」
システム開発会社のTISと、NFT技術を通じて日本酒の魅力を発信するSAKEXは、山形県東置賜郡の米鶴酒造が提供する日本酒と特別体験をNFT化として販売する実証実験を開始しました。
NFTはSAKEXが運営するECサイト「SAKEX」で販売されます。購入者には米鶴酒造の日本酒「米鶴 米の力 特別純米 亀粋」が発送され、米鶴酒造社長との日本酒ペアリング特別ディナーに参加できます。
この取り組みでは、購入した後も継続的な関係を築いていくことも狙いとしています。今後NFT保有者限定のコミュニティが形成され、購入者と生産者間の継続した関係を築くための試みが行われていく予定です。
まとめ
酒をテーマとしたNFTプロジェクトは多くあります。「即時発送」「保管後発送」を選べて、酒蔵にも二次転売の収益が分配される画期的な仕組みを導入しているSake World NFTは、そうしたプロジェクトの筆頭ともいえる存在です。
Sake World NFTは、暗号資産やメタマスクなどの専用ウォレットを持っていなくても購入できます。日本酒に興味のある人は、ぜひ一度Sake WorldやSake World NFTの公式サイトを覗いてみてはいかがでしょうか。