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HyperLiquid(HYPE)とは?大規模エアドロップ後の価格動向と技術的特徴を解説

解説系記事

2024年11月29日、分散型取引所(DEX)プロジェクト「HyperLiquid」は、独自トークン「HYPE」のエアドロップを実施しました。初期価格3.2ドルからスタートしたHYPEは、わずか数時間で4.18ドルまで急騰。その後も上昇を続け、完全希薄化後時価総額は42億ドル(約6,300億円)を記録しています。

HyperLiquidは、1秒間に最大20万件のトランザクション処理を実現する独自のレイヤー1ブロックチェーンを開発。ガスレス取引や完全オンチェーンの注文管理など、従来のDEXに比べても優れた技術的特徴を備えています。

一方で、エアドロップ後の急激な価格上昇に対しては、技術面での実現可能性や市場評価の妥当性を疑問視する声も見られます。本記事では、HyperLiquidの技術的特徴と市場動向について詳しく検証していきます。

HyperLiquidとは

引用元:HyperLiquid

「すべての金融取引を1つのブロックチェーン上で実現する」

これが、HyperLiquidの掲げるビジョンです。このビジョンを実現するため、HyperLiquidは独自のレイヤー1ブロックチェーンを開発しました。同ブロックチェーン上で分散型取引所(DEX)を運営し、2024年11月末の時点でユーザー数は約23万人、24時間取引高は約24億ドル(約3,590億円)を記録するまでに成長しています。

特筆すべきは、プロジェクトの開発体制です。開発を手がけるのは、ハーバード、カルテック、MITといった名門校出身者で構成されるチーム。メンバーには、Airtable、Citadel、Hudson River Tradingなど、著名な技術系企業や金融機関での実務経験を持つ人材も含まれています。

また、多くのWeb3プロジェクトがVCなどからの資金調達に依存する中、HyperLiquidは完全な自己資金での開発を貫いています。この独自の開発体制により、外部からの圧力に左右されることなく、純粋に技術的な革新性を追求することが可能となっています。

その結果、DEX市場において、取引高シェア4.1%(5位)という存在感を示すまでに至っています。

HyperLiquidの技術的特徴

引用元:HyperLiquid

HyperLiquidは、従来のDEXが抱えていた技術的な制約を解決するための機能を実装しています。高速な取引処理、ガスレス取引、完全なオンチェーン管理など、その特徴は多岐にわたります。特に注目すべきは、これらの機能をトレードオフなく実現している点です。

高性能な独自チェーン

HyperLiquidの中核となるのが、独自開発したレイヤー1ブロックチェーンです。このチェーンは1秒間に最大20万件のトランザクション処理が可能で、現状でも1秒間に10万件の注文処理を実現しています。これは、イーサリアムなど既存のブロックチェーンと比較して、圧倒的な処理性能を誇ります。

この高速処理を実現しているのが、「HyperBFT」と呼ばれる独自のコンセンサスアルゴリズムです。HyperBFTは、ユーザーからの注文に対して極めて高速な処理を実現しています。通常の注文は0.2秒程度で処理され、混雑時でも0.9秒以内には処理が完了します。これにより、従来の中央集権型取引所と変わらないスピーディーな取引体験を提供しています。

ガスレス取引の仕組み

HyperLiquidは、すべての取引においてガス代が不要な設計を採用しています。従来のDEXでは、取引ごとにガス代が必要となり、これが取引の障壁となっていました。HyperLiquidは、独自のレイヤー1チェーンを活用することで、この問題を解決しています。

また、取引手数料は、14日間の取引量に基づく段階的な構造を採用しています。メーカー(注文を出す側)には即時のリベート(報酬)が支払われ、テイカー(注文に応じる側)からの手数料はコミュニティに還元される仕組みとなっています。

完全オンチェーンの注文管理

多くのDEXが注文管理の一部をオフチェーンで行っているのに対し、HyperLiquidはすべての注文情報をブロックチェーン上で管理する「完全オンチェーン」の設計を採用しています。これにより、取引の透明性と検証可能性が確保され、不正な操作や改ざんのリスクを最小限に抑えることが可能となっています。

オラクル(外部データの参照)についても、複数の大手取引所から収集した価格データを組み合わせて最適な価格を算出しています。この価格は3秒ごとに更新され、常に市場の実勢価格を反映する仕組みとなっています。

既存DEXとの比較

引用元:HyperLiquid

HyperLiquidは、従来のDEXが抱えていた課題を解決しつつ、新たな価値提案を行っています。しかし、いくつかの機能においては、技術面での検証が必要な部分も存在します。

パフォーマンス面での優位性

HyperLiquidの最大の強みは、その処理性能にあります。従来のイーサリアム上のDEXが1秒間に数十件程度の処理に留まるのに対し、HyperLiquidは1秒間に10万件という圧倒的な処理能力を実現しています。

また、取引手数料の設計も特徴的です。一般的なDEXでは、ガス代と取引手数料の二重コストが発生しますが、HyperLiquidではガス代が不要。さらに、取引量に応じた段階的な手数料構造により、活発な取引を行うユーザーほど有利な条件でのトレードが可能となっています。

技術面での課題

一方で、HyperLiquidの機能には、いくつかの技術的な懸念点も存在します。特に、完全オンチェーンでの注文管理は、データ量の増大に伴うスケーラビリティの課題を引き起こす可能性があります。

また、独自のコンセンサスアルゴリズム「HyperBFT」は、まだ実践での検証が十分とは言えません。特に、ネットワークの分断や攻撃に対する耐性については、より長期的な運用実績が求められる状況です。

エアドロップと価格動向

2024年11月29日に実施されたHYPEトークンのエアドロップは、暗号資産(仮想通貨)市場で大きな注目を集めています。しかし、その価格動向には慎重な分析が必要です。

エアドロップの実施内容

HYPEトークンの総供給量は10億枚に設定され、そのうち31%がエアドロップとして早期ユーザーに配布されました。配布対象となったのは、2023年11月から開始されたポイントプログラムに参加したユーザーです。

具体的な配布例として、8万3,450HYPE(投稿時のレートで4,600万円相当)を受け取ったユーザーも報告されており、エアドロップの規模の大きさが話題となっています。

トークノミクスの分析

HYPEトークンの主な配分先は、以下のような構成になっています。

  • エアドロップ:31%
  • コア貢献者向け:23.8%
  • 将来の発行とコミュニティ報酬:38.88%

このうち、コア貢献者向けの配分は1年間のロックアップ期間が設定されています。しかし、エアドロップ分については特に制限が設けられておらず、短期的な売り圧力となる可能性も指摘されています。

市場評価の妥当性

引用元:CoinMarketCap

初期価格3.2ドルでスタートしたHYPEは、短期間で4.18ドルまで上昇し、その後さらに5.93ドルを記録。完全希薄化後時価総額は42億ドル(約6,300億円)に達しています。

この急激な価格上昇の背景には、プロジェクトの技術力への期待がある一方で、投機的な需要も大きいと考えられます。特に、エアドロップ後の価格形成については、「エアドロップハンター」と呼ばれる投機的な参加者の影響を考慮する必要があります。

今後の展望と課題

引用元:HyperLiquid

HyperLiquidが掲げるビジョンの実現には、複数の重要な課題が存在します。

技術面での発展可能性

現状の1秒間10万件の処理能力は印象的ですが、この数値は理論値である可能性も否定できません。実際の運用では、ネットワークの安定性やデータの整合性確保のため、より控えめな処理能力となる可能性があります。

また、完全オンチェーンでの注文管理は、データ量の増大に伴うストレージコストの上昇を招く可能性があります。この課題に対する具体的な解決策は、現時点では明確には示されていません。

市場における競争力

DEX市場はすでに多くのプロジェクトが競合しており、技術的な優位性だけでは持続的な成功は困難です。HyperLiquidは現在、取引高シェア4.1%を確保していますが、この数字の多くはエアドロップ後の投機的な取引に支えられている可能性があります。

投資リスクの検討

現時点でのHYPEトークンの評価には、以下のような重要な懸念点が存在します。

  • エアドロップによる一時的な市場の過熱
  • 将来の大規模なトークン供給による希釈化リスク
  • 技術的な実証が十分ではない段階での高評価

特に注意が必要なのは、現在の価格水準が実需ではなく投機的な期待に支えられている可能性が高い点です。

また、総供給量の38.88%が将来の発行とコミュニティ報酬として確保されていることから、中長期的な視点では大規模な供給圧力が市場に影響を与える可能性も考慮する必要があります。

HyperLiquid検証まとめ

HyperLiquidは、高い処理性能と独自の技術的特徴を掲げて注目を集めていますが、現時点での42億ドルという時価総額は、プロジェクトの実態と比較してやや過大評価である可能性は否定できません。

ガスレス取引や完全オンチェーンの注文管理といった特徴は、取引の利便性向上に貢献する可能性を秘めています。しかし、これらの機能の実用性や安定性については、まだ十分な検証期間を経ているとは言えません。

また、エアドロップ後の急激な価格上昇は、プロジェクトの本質的な価値というよりも、市場の投機的な期待を反映している可能性が高いと考えられます。優秀な開発チームという背景は魅力的ですが、それだけでは長期的な成功は保証されません。

HyperLiquidが掲げる「すべての金融取引を1つのブロックチェーン上で実現する」というビジョンの達成には、まず現在のトランザクション処理性能の実証と安定性の確保が必要です。さらに、機関投資家の参入や実取引の増加など、実需の拡大に基づく成長モデルを示せるかどうかが、プロジェクトの真価を決めることになるでしょう。

Sparrow

Sparrow

フリーランスのWebライター。ブロックチェーンの非中央集権的な世界観に惚れ込み、暗号資産・NFT・メタバースなどのWeb3領域に絞って記事を執筆。自らの暗号資産投資やNFT売買の経験をもとに、難しいと思われがちなブロックチェーンについて、初心者にもわかりやすい記事を書くことを心がけています。好きなNFTクリエイターは「おにぎりまん」氏。
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