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ビットコインETFが日本で承認される日は来るのか?現在の税制やETF承認状況のまとめ

解説系記事

2024年1月に米国で現物価格連動型のビットコインETFが承認されました。この承認によって、証券会社に口座を持つ人が気軽にビットコインへ投資できるようになり、わずか1年弱で1,000億ドル(約15兆円)の売上を達成しています。

しかし、2024年12月現在、日本ではまだビットコインETFは承認されていません。2024年11月頃から国会の場で頻繁に議論されるようになりましたが、まだ具体的な話には進んでいない現状があります。

本記事では、日本のビットコインETFの現状や承認されることのメリット・デメリット、世界各国の承認状況をまとめていきます。

ビットコインETFとは

ビットコインETFとは、ビットコインの価格と連動するように設計された投資信託です。証券会社で取り扱いされる金融商品であり、暗号資産取引所で口座を作ったり、専用ウォレットを作成しなくても、ビットコインへ間接的に投資することが可能です。

ビットコインETFには「先物価格連動型」「現物価格連動型」の2種類があります。米国では、先物価格連動型は2021年10月から、現物価格連動型は2024年1月より取引されています。

米国では、以前より先物価格連動型ETFの購入ができましたが、買い替え時のコスト高騰や現物価格との乖離が発生する恐れがあるため、積極的に取引されてきませんでした。そうした中で、2024年1月に米国で現物価格連動型のビットコインETFの承認が行われました。

2024年11月時点で、米国で上場する12本のビットコインETFの純資産総額は1,000億ドル(約15兆円)です。この時価総額は日本のソフトバンクや三井住友グループに匹敵する額であり、承認から1年弱で多額の資金が流入したことを示しています。

関連記事:ビットコインETFの承認は、なぜ暗号資産市場にとって重要なのか?

日本でのビットコインETFの承認状況

2024年12月17日現在、日本では先物価格連動型と現物価格連動型、いずれのビットコインETFも承認されていません。

昨今、国民民主党や日本維新の会によって、ビットコインETFの承認を始め、申告分離課税20%の適用、他の暗号資産と交換する際には課税しないなど規制を緩和する提案が行われています。しかし、石破総理は「国民の理解が得られるのか、丁寧に検討する必要がある」と発言し、すぐには決断をしない方針を示しています。

こうした発言を受けて、国民民主党の玉木雄一郎氏は、Xでのツイートを通じて失意をあらわにしています。

暗号資産の税制改正に関する石破総理の答弁にはがっかりだ。20%の申告分離課税や損失繰越控除の適用もゼロ回答。暗号資産のETFにまで消極的。ビットコイン大国を目指す米国とどんどん差がついていく。検討ばかりでWeb3先進国にするとの国家戦略はいったいどこに行った?国民民主党が頑張るしかない。

玉木雄一郎(国民民主党)のXより引用

米国やカナダ、オーストラリアなどの国々でビットコインETFの取扱いが始まる中で、日本ではまだ承認の目処が立っていません。

日本に住みながらビットコインETFに投資できるのか?

日本に住みながらでも、海外証券会社を利用することでビットコインETFへの投資は可能です。金融庁は海外証券会社の利用について、以下の通り発表しています。

外国証券業者に関する法律第3条により、外国証券業者が国内にある者を相手に証券取引行為を行う場合には、国内に支店等の営業拠点を設け、監督当局の登録を受けなければなりません。

しかし、登録を受けない外国証券業者であっても、その取引相手が証券会社やその他金融機関等の場合、もしくは証券業者が「勧誘」及び「勧誘に類する行為」をすることなく国内居住者から注文を受ける場合は、国内居住者との取引をすることができます。

金融庁:外国金融サービス業者が我が国市場に参入するにあたって適用される法規制

より引用

海外証券会社の利用は問題ありませんが「勧誘」および「勧誘に類する行為」していない業者を選ぶ必要があります。

また、海外証券会社を利用する場合でも、以下の制約やリスクを受け入れなければなりません。

・居住地や各国の納税番号の取得など、口座開設の条件をクリアする必要がある

・取引にドルやユーロなど外貨を利用する可能性がある

・日本の法律の保護(投資者保護基金や資産の分別管理など)を受けられないことがある

・日本の税法に基づき確定申告をする必要がある

口座開設前には、各証券会社の条件を確認するようにしましょう。

なお、海外証券会社でビットコインETFを購入して利益が出た場合には、申告分離課税が適用され税率は20.315%になります。ただし「売却損について配当金との損益通算は不可」「損失の繰越はできない」の2点は、国内証券会社とは事情が異なるので注意してください。

また、海外証券会社の利用はあくまで自己責任となります。海外証券会社を利用してビットコインETFに投資する際は、リスクや税務上の注意点を十分に理解した上で行うことが重要です。

日本でビットコインETFが承認されるメリット

ここでは、日本でビットコインETFが承認されると、どのようなメリットがあるか解説していきます。

ビットコインへ投資しやすくなる

日本でビットコインETFが承認された場合、国内証券会社を通じて購入できるようになります。これは、暗号資産取引所の口座開設や専用ウォレットを持たなくてもビットコインに投資できることを意味します。

近年、ビットコイン含む暗号資産への注目度が高まりつつありますが、株やFX、CFD先物など従来の金融商品と比較すると、まだ利用者の数に差があります。暗号資産取引所と国内証券会社の口座開設数の比較は以下の通りです。

暗号資産取引所:1,014万件(2024年4月末時点)

国内証券会社:2,819万件(2024年1月末時点、ネット証券5社のみの数字)

また、2024年10月次の取引高には以下の違いがあります。

暗号資産現物取引:1兆1,164億1,100万円

株券等の売買代金合計:117兆9,372億円

100倍以上の差があることからも、暗号資産取引がいかに限られた人のみで行われているかがわかるのではないでしょうか。

ビットコインETFが国内証券会社に上場すると、従来の投資信託やREITと同様の流れで取引できるようになり、今まで以上の資金の流入が見込まれるでしょう。

申告分離課税の適用(税率が優遇)

ビットコインETFが承認されると、株や投資信託、FXなどと同様に、申告分離課税の対象となります。申告分離課税の税率は一律20.315%であり、現状の税制である雑所得と比較すると優遇されることがあります。

雑所得の税率は以下の通りです。

課税対象の所得額 税率 控除額
1,000円〜194万9,000円 5% 0円
195万円〜329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円から694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円から899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円から1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円から 3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

上記に対して住民税10%が追加されるため、暗号資産における最高税率は55%ということになります。

一見すると申告分離課税の税率20.315%の方が支払う税金が少なくなるように見えますが、実はそうとも言い切れません。なぜなら330万円までは割合が10%(住民税と合わせて20%)であることに加え、日本では「超過累進課税」を採用しているためです。

超過累進課税は、課税対象の所得額が一定額を超えた場合に、超えた分に対してのみ高い税率がかかる制度です。雑所得に分類される所得が330万円以内であれば、現行の制度の方が支払う税金が少なくなることがあります。

セキュリティの向上

ビットコインETFが承認されると、暗号資産取引所を通じてビットコインを保有するよりもセキュリティが向上するでしょう。

近年取引所がハッキング被害に遭い、顧客の資産が盗まれる事件が多く発生しています。2024年には、DMMビットコインが保有する資産482億円が不正流出し、結果的に廃業へ追い込まれてしまいました。

暗号資産取引所に資産を置き続けることには、一定のリスクが伴います。証券取引所を通じてビットコインETFを購入しビットコインへ間接的に投資することで、顧客はリスクを抑えながら運用できるでしょう。

信頼性の確保

ビットコインETFが承認されることは、暗号資産の信頼性向上につながります。

ETFは規制当局による厳格な審査を経て承認されます。これにより、従来の金融商品と同等の信頼性が担保され、機関投資家や一般投資家の心理的な参入障壁が大幅に下がることになるでしょう。

また、こうした信頼性の向上は、市場の長期的な発展と価格の安定化にもつながる可能性があります。

日本でビットコインETFが承認されるデメリット

メリットが多い一方で、ビットコインETFの承認によるデメリットやリスクも存在します。

手数料がかかる

一般的にETFでは販売・換金手数料や信託報酬などのコストが発生します。こうした点は現物のビットコインにはない特徴であり、得られる利益が圧縮される可能性があります。

販売・換金手数料とは名前の通りETF購入や売却時にかかる費用、信託報酬とは購入したETFを保有している間にかかる運用費用です。販売手数料は年0〜3%、信託報酬は年0.1%〜2.5%の範囲で決められることが多いです。

取引時間が制限される

証券会社やファンドによってETFの取引できる時間が決められています。こうした点は、原則24時間365日取引できる現物のビットコインと比較した場合のデメリットといえるでしょう。

ビットコインはボラティリティが大きいため、取引時間が制限される可能性が高いです。そのため、価格急変時の対応が遅れるリスクがあることは理解しておく必要があります。

ステーキングやレンディングを利用できない

ビットコインETFでは、証券会社を通じて間接的にビットコインへ投資することになります。そのため、ステーキングやレンディングなど現物ビットコインに対応しているサービスは利用できません。

ビットコインETFは、価格の上昇によるキャピタルゲインによる収益しか得られない可能性が高いです。

世界各国のビットコインETFの承認状況

米国での動きを受け、日本以外の国々では続々とビットコインETFの承認が進んでいます。具体的には、以下の国での承認が確認できました。

  • 米国
  • カナダ
  • オーストラリア
  • タイ
  • 香港
  • イギリス
  • アルゼンチン
  • ブラジル

多くの国でビットコインETFは採用され、より広い層への投資を実現しています。

まとめ

現在、ビットコインETFや税制の改正など、暗号資産に関するさまざまな議論が行われています。しかし、石破首相の発言にもあるように、ビットコインETFの承認や規制の緩和にはまだ時間がかかる見込みです。

日本は暗号資産取引量の多い国の一つです。日本でのビットコインETFの承認は、暗号資産市場全体にプラスな影響を与える可能性があります。

S.G

SG

月間100万PV超えの投資情報サイトや、ニュースサイトなど、暗号資産に関する記事を数多く執筆するフリーランスのライター。自身も2016年から暗号資産投資を行なっており、日進月歩の進化を遂げる暗号資産業界を常に追ってきた。ライター歴は3年で「文章で読者をワクワクさせ、行動に移させる」をモットーに執筆を行う。東南アジア在住、海外留学の経験があり、英語の翻訳記事も得意にしている。
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