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暗号資産/Web3に好意的な国はどこ?トークン保有率や税制を比較

解説系記事

2024年末にBTCが史上最高価格に到達しました。アルトコインも軒並み価格上昇しています。久しぶりにCEXにアクセスしたら、暗号資産が信じられない価格になっていたという方も多いのではないでしょうか?

そこで気になってくるのが暗号資産/Web3に対する国の理解・サポートです。本記事では暗号資産/Web3に好意的な国についてまとめて解説します。

暗号資産/Web3へ高まる期待

暗号資産はブロックチェーン技術を活用したデジタル資産です。ビットコインやイーサリアムが代表例として挙げられます。Web3はブロックチェーン技術を活用した次世代インターネットです。データや資産をユーザーが直接管理できる分散型のシステムを指します。

暗号資産とWeb3は、金融、エンタメ、データ管理の分野で新たなビジネスを創出する可能性を持っています。世界ではWeb3を新たな成長分野と位置づけ、当局の規制や税制面でのサポートが進められています。日本でも暗号資産の認知度が88%※(2024年12月)に達しており、自民党がWeb3推進体制を整備するなど、規制整備と技術普及が進んでいます。

※ 出典:2024年12月「メタマスク」を開発するコンセンシス調査

第二次トランプ政権の影響

出典:CMC「DOGE」

2024年末の暗号資産市場の上昇トレンド、世界各国のWeb3戦略に大きな影響を与えたとされるのがトランプ氏の大統領再選です。トランプ氏は暗号資産を国として活用する戦略を執るとされています。

また、Web3に理解のある人物を重要な政権ポストに続々と起用しています。特に、DOGE(政府効率化省)トップにイーロン・マスク氏を抜擢したことが大きなニュースになりました。偶然かもしれませんが、同省はマスク氏のSNSでたびたび登場するDOGEコインのシンボルと同じです。そして、DOGEコインの価格は2024年11月から急上昇しています。

TradiFiとの統合

TradiFi(従来型金融)と暗号資産の統合は急速に進んでいます。JPモルガンは独自のブロックチェーンを開発し、コインベース(Global A)は上場企業として信頼性を高めています。さらに、ロビンフッドが現物BTC ETFの迅速な上場を計画していることもニュースになっています。

一方で、規制をめぐる対立も顕在化しています。共和党系の州司法長官18名とDeFi Education Fundは、SECが州の規制権限を侵害しているとして訴訟を進めています。この訴訟には、SECの現委員長の退任報道やトランプ政権への期待が影響しているといわれています。

暗号資産/Web3に好意的な国

国名 暗号資産保有率 暗号資産売買税
スイス 11%以上 個人:非課税

法人:11.9%~21%

ポルトガル 投資家: 40%以上

全体: 数%程度

保有365日以上:非課税

保有365日未満:28%

スロバキア 約10% 保有2年以上:非課税
ドイツ 約8% 保有1年以上:非課税

保有1年未満600ユーロ超:25%+5.5%

エルサルバドル データなし 非課税
シンガポール 24%以上 非課税
ベトナム 17%以上 明確な課税規定なし(曖昧な税制)
韓国 13%以上 非課税
ドバイ 25%以上 非課税

暗号資産/Web3に関する規制や税制、技術普及への姿勢は国によって大きく異なります。ここでは、暗号資産/Web3に好意的な国を紹介します。

なお、各国民の暗号資産保有率はグローバル決済ソリューション企業「Triple A」の2024年データを出典元としています。調査企業や調査時期によっては数字が前後する可能性があることをご承知ください。

出典:Triple-A「Cryptocurrency Adoption is Growing Worldwide」

スイス

スイスは「クリプトバレー」と呼ばれるツーク州を中心に、暗号資産とWeb3分野で競争力を高めています。同州に拠点を構えるブロックチェーン関連企業は1,200以上です。

また、政府は2020年に「ブロックチェーン法」を採択し、暗号資産取引の合法性を明確化しました。税制も魅力的です。個人のキャピタルゲイン税は非課税、法人税は11.9%〜21%と低く設定されています。国民の暗号資産保有率は11%以上です。

ポルトガル

ポルトガルは、暗号資産に対して低い税率を設定しています。2023年の税制改正によって、365日以上保有した暗号資産の売却益が非課税になりました。さらに、NFT売買は課税対象外です。一方で、保有期間365日未満の暗号資産売買の税率は28%になります。また、マイニングやプロトレーダーの収益は、14.5%から53%の累進税率が適用されます。

国民の保有率は数パーセント程度と高くはありませんが、母集団を投資家に限ると40%以上に上ります。

スロバキア

スロバキアは暗号資産に好意的な国として知られています。2年以上保有した暗号資産の売却益は非課税です。短期保有の場合は所得税の一部として課税されます。また、暗号資産のマイニング収益は所得税として最大25%の税率が適用され、必要経費の控除も可能です。

首都リュブリャナでは暗号資産決済を導入する店舗や施設が増加しており、観光や日常生活における利用も進んでいます。国民の暗号資産保有率は10%程度です。

ドイツ

ドイツでは、1年以上保有した暗号資産の売却益は非課税です。1年未満の保有でも600ユーロ以下の利益に対する税金はかかりません。一方、600ユーロ以上の利益が出た場合は25%+連帯税5.5%を払う必要があります。また、マイニングやステーキングからの収益も通常の所得税率で課税されます。

国民の暗号資産保有率は8%程度であり、その多くが決済手段というよりも投資目的で保有されているようです。

エルサルバドル

エルサルバドルは、2021年にBTCを世界で初めて法定通貨として採用した国家です。政府保有のBTCは、2024年12月時点で5,942枚に上ります。暗号資産保有率に関して正確な情報はありませんが、2021年に全国民に対してBTCのエアドロップ(30ドル分)を実施しています。多くの国民が暗号資産を保有していると考えるのが妥当です。

Web3技術導入に関しても柔軟な姿勢を示しており、暗号資産関連のキャピタルゲイン税や所得税もかかりません。一方で、一般的な決済ではBTC導入は進んでいないようです。

シンガポール

シンガポール国民の暗号資産保有率は24%以上です。これは世界第二位の保有率となります。規制面では、シンガポール金融管理局(MAS)が2024年4月から顧客資産の信託口座での分別管理を義務付けるなど、投資家保護も強化しています。

また、キャピタルゲイン税はありません。そのため、暗号資産の売却益も非課税になります。さらに2019年以降、「デジタルペイメントトークン」に該当する暗号資産の取引では、物品サービス税(GST)が免除されています。Web3ビジネスを始める際の法人税率は17%です。暗号資産取引が事業活動と認定された場合は所得税が適用されます。

ベトナム

ベトナムは暗号資産の保有率が人口の17%以上に上ります。税制面では、暗号資産への明確な課税規定はまだ整備されていません(曖昧な税制)。このことから多くのCEXやWeb3ビジネス事業者がホーチミン市とハノイ市に集まっています。

ベトナム政府は「国家ブロックチェーン戦略」を発表し、2030年までにアジアのブロックチェーンリーダーを目指しています。

韓国

韓国は暗号資産およびWeb3分野で積極的な取り組みを進めています。国民の暗号資産保有率は13%以上です。2024年7月に施行された「暗号資産利用者保護法」は投資家保護や市場の透明性向上を目的とし、取引所の顧客資産管理の厳格化を義務付けました。

暗号資産の売買利益は非課税です。2025年1月より課税が開始されるということでしたが、延期になっています。企業によるWeb3事業参入も活発で、全事業者の56%が何らかの形でWeb3関連事業に参入しているといわれています。

ドバイ

ドバイは、中東における暗号資産/Web3の中心地です。国民の暗号資産保有率も25%以上と世界No.1です。

また、暗号資産/Web3に対し、明確な規制と優遇措置を設けています。2022年設立の仮想資産規制庁(VARA)がCEXライセンス制度を管理し、国民の暗号資産保護を進めています。暗号資産購入時の付加価値税(VAT)は非課税です。

日本は暗号資産/Web3戦略に好意的?

日本は暗号資産に対して比較的好意的とみなされていますが、規制や税制の整備は追いついていません。また、Web3ビジネスに関しても、理解はまだ深くないといえるでしょう。ここでは、2025年以降に日本が暗号資産/Web3分野で競争力を向上させるためのテーマを取り上げます。

1. 政策と規制の最適化

日本の暗号資産税制は最大55%の税率が課せられます。この税制は、投資家や企業のWeb3事業参入を阻害する可能性があります。シンガポール(キャピタルゲイン非課税)やドイツ(1年以上保有で非課税)など競争国の制度を考慮し、分離課税や損益通算を導入することが求められています。

2. 国内でのイノベーション

政府は2025年までにWeb3関連の産業規模を1兆円に拡大する目標を掲げていますが、進捗状況は不透明です。具体的にどのようなWeb3事業をどのようにサポートしていくのかが問われています。例えば、BCG、DePINは大きな収益をもたらす可能性がありますが、先述した税制の壁によってガバナンストークンの保有や売却などが経営者にとって大きな負担になります。Web3でイノベーションと産業振興を図るうえで、官民を超えた連携が重要になります。

3. 人材育成と社会への浸透

日本が暗号資産やWeb3分野で優位性を築くには、教育、地域社会への普及、国民への啓発が重要です。大学や専門機関でのブロックチェーンやWeb3技術の教育コースの拡充により、次世代の技術者育成を進めていきます。また、地方自治体と企業が協力し、地域通貨やデジタルプラットフォームを活用した実証実験を実施し、Web3技術の社会実装を加速させる取り組みも大切です。これらの基盤となるのが、政府や団体が一般市民への啓発活動です。Web3技術の利便性や安全性について広く知ってもらう必要があります。

まとめ

2024年末のBTC価格高騰をきっかけに、暗号資産やWeb3技術は再び注目を集めています。また、トランプ政権発足に伴い、世界各国は暗号資産/Web3に好意的な政策に舵を切ると予想されています。

本記事で紹介したように、暗号資産/Web3に好意的な国々は、規制の整備や税制優遇、産業育成が顕著です。日本も暗号資産/Web3で競争力を向上させるためには、外国の規制や制度を考慮し、積極的な取り組みを進める必要があるでしょう。

AMEHARE

AMEHARE

ITの最新トレンドを発信しはじめて十余年。Web2から3の時代の変革もいち早く察知し、2012年ごろから仮想通貨に注目をし始める。次世代の文化やテクノロジーを情報を掴みつつ、NFT・メタバース・DAOなどの領域であらゆる情報を発信中。
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