現代のサプライチェーンは複雑化し、不透明性や非効率な管理といった課題が顕著化しています。OriginTrail(TRAC)は、分散型ナレッジグラフ(DKG)を活用し、サプライチェーンデータを効率的に管理・共有する革新的なソリューションです。
本記事では、OriginTrailがどのようにサプライチェーンの透明性を向上させ、業務効率化に貢献するかを解説します。
この記事の構成
OriginTrail(TRAC)とは?
OriginTrailは分散型ナレッジグラフとブロックチェーン技術を融合した「信頼できる知識インフラ」です。サプライチェーンの透明性向上、もしくは製品のトレーサビリティに貢献するために開発されました。一方で、科学研究やGX※など、幅広い分野での利用も期待されています。
※ GX(Green Transformation)は経済成長と環境対策を両立させる取り組みです。
分散型ナレッジグラフ?
分散型ナレッジグラフ(DKG:Decentralized Knowledge Graph) は、データを管理・共有するWeb3基盤の知識ネットワークです。データはブロックチェーン技術とナレッジグラフ(情報管理のシステム)を組み合わせて管理されます。複数の情報源から得られるデータを統合利用することで信頼性と透明性を確保します。
サプライチェーンの業務効率化に貢献するOrigin Trail
- データの偽造防止
- トレーサビリティ
- 情報保全
Origin Trailを利用することで、製品の原産地や流通経路を正確に把握できるため、ラベルの偽造防止につながります。また、暗号化技術によってプライバシー情報漏洩なども起こりません。さらに、インターネット上で製品や資産の動きをリアルタイムで追跡できるため、サプライチェーンや物流の最適化につながります。
Origin Trailのネイティブトークン
トークン | TRAC | OTP |
用途 | DKGの運営
データ公開・更新の手数料 ノード運営のステーキング/報酬 ガバナンス投票 |
パラチェーン取引の手数料
ガバナンス投票 |
供給量 | 固定供給量 5億トークン | 初期供給量 5億トークン |
ネットワーク対応 | Ethereum、Polygon、
Gnosis、Polkadotなど |
Polkadot上のOriginTrailパラチェーン |
ステーキング用途 | ノード運営 | コラテーター(バリデーター)運営 |
ガバナンス影響 | ネットワークの運営方針 | ネットワーク更新
インセンティブ配分 |
TRACはOriginTrailの分散型知識グラフの基盤トークンです。データ公開、ノードやデリゲート運営、ガバナンス参加に利用されます。固定供給量5億の非インフレ型ERC-20トークンであり、マルチチェーンに対応しています。
OTPはPolkadotエコシステム内のOriginTrailパラチェーンで使用されるトークンです。主な用途は取引手数料(ガス)、ネットワークの運営ガバナンス、及びパラチェーン間のクロスチェーン相互運用の強化です。
OriginTrailの始め方
OriginTrailにはDKGノード運営、エッジノード運営、知識アセットを公開することで貢献できます。また、ネットワーク上で稼働するアプリケーションソフトも収益化が可能です。
OriginTrail DKGノード運営者として参加
OriginTrail DKGノードにはゲートウェイノードとホスティングノードの2種類があります。ホスティングノードは、知識アセットを保存し報酬を獲得します。50,000 TRACのステーキングが必須です。まずは用途に合わせてどちらのノードを運用するかを決定します。
ノード運営にはTRACトークン(ステーキング用)とブロックチェーンのガストークンが必要です。TRACは取引所で購入し、NeuroWebへはTeleport、GnosisやBaseへはブリッジを使って送ります。
なお、ノードは4GB RAM、2 CPUs、50GB HDD、Linuxサーバー環境といった最低限のスペック要件をクリアする必要があります。
エッジノード運営者として参加
エッジノードはDKGネットワークのデータ処理・管理やAIサービスサポートを行います。報酬も得ることが可能です。
推奨スペックとして、MacOSまたはLinuxでRAMは8GB以上が示されています。Knowledge MiningやdRAGをカスタマイズすることで、独自のデータパイプラインやAI検索システムを構築できます。カスタマイズが完了したら、エッジノードをDKG Mainnetにデプロイします。TRACトークン支援が受けられるInception Programへの参加も可能です。
TRACトークン保有者として参加(バリデーター)
TRACトークン保有者はガバナンス参加だけでなく、バリデーターとしてプロジェクトに貢献することができます。
ノード委任基準はステーク量、運営手数料(Operator Fee)、ノードの信頼性(安定稼働状況)などが挙げられます。ステーク量が多く信頼性の高いノードほど、報酬獲得の可能性が高まります。
ノードがKnowledge Assetsを保存・検証すると、TRAC報酬が発生します。報酬は自動的に再ステークされ、将来的な報酬獲得率も向上します。トークンの引き出しには28日間の待期期間が必要です。同じネットワーク内で別のノードに再委任する場合は、待期期間なしで即座に送金できます。
Autonomous AI Paranetsを作成して参加(知識アセットの公開)
Autonomous AI Paranetsを作成して知識アセットを公開します。Autonomous AI Paranetsとは、特定のトピックに基づく知識アセットやAIサービスを集約し、自律的に運用される仮想ネットワークです。他のユーザーに利用してもらうことで利益を得ることができます。
パラネットをデプロイするブロックチェーンを選定し、ブロックチェーン上でパラネットを登録します。これにはスマートコントラクトを実行する必要があり、DKG Explorerツール(リリース予定)、または直接トランザクションを使って手続きを完了させます。
開発者として参加
アプリケーションを作成してネットワーク上で公開することで、各種サービスやデータを利用してもらいます。収益も上げることもできます。
開発にはDKGノードのセットアップやSDKのインストールが必要です。また、Blazegraph(データベース管理)やMySQLを設定し、Node.jsとnpmも用意します。
作成したアプリケーションはOriginTrailのテストネットで点検した後に、メインネットにデプロイします。
DKG利用者として参加
TRACを支払うことで、誰でもOriginTrailの分散型ナレッジグラフ(DKG)上に公開された知識アセットやAIサービス(dRAG APIやAIエージェント等)を活用することができます。Origin Trailを導入することで、既存ビジネスの効率化や競争力向上が期待できます。次章では、Origin Trailがビジネスにもたらすメリットを具体的に解説します。
OriginTrailのビジネス利用
OriginTrailのDKGは、サプライチェーン、医療、建設、GX、科学研究といった分野で信頼性の高いデータ管理とネットワークの透明性を実現させます。ここでは、OriginTrailのビジネス利用について解説します。
1. 流通業
流通業の物流のトレーサビリティや業務効率化にOrigin Trailが貢献します。ブロックチェーンによる不可逆のデータ管理なので、過去の物流記録も改ざんされることはありません。また、AIサービスによって季節ごとの物流ニーズを予想するといった利用もできます。
2. 医療・ヘルスケア業
患者データや医薬品の履歴をDKGで管理し、データのセキュリティを向上させます。異なる病院間での検査結果共有や、医薬品の製造・流通履歴の記録により、品質管理や治療の効率化が実現できます。マイナンバーカードやお薬手帳など、日本では医療情報のトレーサビリティ対策が進んでいますが、Origin TrailはDLTによってデータは暗号化されるため、プライバシーへの配慮もできます。
3. 建設業
建材の品質保証やインフラ設備の維持管理にDKGを活用します。建材の生産から流通、販売までの履歴を参照することで、不正建材の利用拡大を防止できます。また、橋や道路の定期点検データを総合的に管理し、修繕計画の効率化やインフラの長寿命化に貢献します。
4. 環境・サステナビリティ分野
炭素クレジットやリサイクル資源のトレーサビリティにDKGを活用します。CO₂排出量削減活動の記録や、リサイクル製品の回収・再利用履歴を管理し、環境保護活動の透明性を高めます。GXが進む中、グリーン証明書もさまざまなフォーマットが誕生しています。トレーサビリティを高めるためにDLTの利用は有効です。
5. 科学研究業
科学データや研究成果をDKGに登録し、データの正当性を保証します。研究者は安全にデータ共有ができ、共同研究も効率的になります。論文や実験データの共有は分散型科学(DeSci)をサポートします。
まとめ
OriginTrail(TRAC)は、ブロックチェーンとナレッジグラフ技術を組み合わせ、サプライチェーン全体の透明性と効率性を飛躍的に向上させます。サプライチェーンが複雑化する中、TRACは企業の業務改善とコスト削減に大きく貢献します。TRACプロジェクトは暗号資産市場の盛り上がりと共に、どのようなプレゼンスを世界で示していくのでしょうか?これからのビジネス展開に注目です。