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聞いたことがあるけどよくわからない、フルオンチェーンNFTを解説

解説系記事

今回はNFTに関する用語で「フルオンチェーン」について紹介していきます。

聞いたことがあるけどよくわからないという方も多いと思いますが、NFTを発行する方だけでなく、購入する方にも覚えて頂きたい用語の一つです。

NFTとブロックチェーンの相性について

NFTという新しいマーケットが誕生したのは、イーサリアムのスマートコントラクト機能があったからに他なりません。

しかし、ブロックチェーンにはメリットがある反面、デメリットもあります。
その辺りを少し深堀してみたいと思います。

ブロックチェーンのスケーラビリティ問題について

ブロックチェーンのデメリットの一つがスケーラビリティ問題です。

ブロックチェーンのブロックに格納できるデータ量は少なく、ビットコインの1ブロックは1MBです。(現在は1MBの取引データの他に署名データとして3MBが追加され、合計4MBになっています)

ではイーサリアムの場合はどうかというと、ビットコインのようにブロックサイズの決まりはありませんが、スマートコントラクトのサイズが決まっていて、上限が24.576KB(2022年6月現在)となっています。

また、ブロックチェーンにはテキストしか格納できない為、jpegやpngなどを置くことも不可能です。

つまり、NFTの画像はイーサリアム上のブロックチェーンに置く事ができないのです。

NFTの画像データはどこにある?

では、NFTの画像はどこに置いてあるのか説明していきます。

IPFSについて

結論から言いますと、イーサリアムブロックチェーン以外のサーバーに置いてあります。

普段私たちが使用しているPCなども同じことが言えますが、自宅や会社のPC本体のサーバーは容量が限られているので、写真や動画など容量が大きいものはGoogleやAmazonなどのクラウドサーバーに保存している方も多いと思います。

NFTも同じで、容量が大きい画像でjpeg、pngなどは外部のファイルサーバーを使用しています。

その多くがIPFSと呼ばれるファイルサーバーを使用しています。

IPFSとは「InterPlanetary File System」の略称で、直訳すると「惑星間ファイルシステム」となります。

IPFSはP2Pネットワークで動いている分散型のファイルストレージで、「コンテンツ指向型のプロトコル」とも呼ばれ、IPFS以外にも「arweave」というファイルサーバーもあります。

通常使用しているサーバーは「ロケーション指向型プロトコル」と呼ばれますので、この二つを説明しながらメリットやデメリットを紹介していきます。

ロケーション指向型プロトコル

一般的に使用されているHTTPで始まるWebサービスはロケーション指向型と言われますが、これは、何かを探している時に「どこ」にあるかという「場所」を提示しています。

例えば、「モナリザの絵」を見るために検索するとサイト一覧が表示され、どのサイト(場所)で見るかを決める必要があります。

このことをロケーション指向型プロトコルと言います。

ロケーション指向型は運営主体が決まっていますので、サーバー攻撃などを受けるとダウンしてしまったり、運営が倒産してしまうとサイトは見れなくなってしまいます。

そのような事態になると、自分のデータが保存されているものは無くなってしまったり、個人情報があれば盗まれてしまう、などのリスクを伴っています。

コンテンツ指向型プロトコル

一方「モナリザの絵」を見るときに、サイト(場所)ではなく、「モナリザの絵」というコンテンツを提供してくれるのがコンテンツ指向型です。

IPFSは分散型のサーバーなので、すべてのサーバーに同じ情報が保存されています。

この場合、「どこ」と言う「場所(ロケーション)」の概念はなく、「何を」という「コンテンツ」を重視しているので「コンテンツ指向型」と呼ばれます。

つまり、モナリザの絵が見れるならサイトはどこでも良く、わずらわしいサイト選択の必要がないのがIPFSです。

さらに、コンテンツ指向型は分散型サーバーなので一つのサーバーがシステムダウンしたり攻撃を受けても、他のサーバーにある「モナリザの絵」は入手することができるので、データを保存する場合のリスクがとても少ないです。

保存した画像などが損失する可能性が低く、また取り出しも容易なので、NFTなどの画像を格納するのにとても適しているファイルサーバーです。

フルオンチェーンについて

NFTの画像がブロックチェーンに格納することができずに、IPFSという外部のファイルサーバーに保存されていることを説明してきました。

しかしNFTの作品の中にはブロックチェーン上に画像を保存しているものもあり、それらは「フルオンチェーンNFT」などと呼ばれます。

ここからは、フルオンチェーンではないNFTと「フルオンチェーンNFT」について説明していきます。

ブロックチェーンにはどのように格納されている?

まず、外部にあるNFTの画像がブロックチェーンにどのような形で格納されているか説明していきます。

ブロックチェーンには、NFTの画像が保存されているIPFSのメタ情報が刻まれています。

メタ情報とは元となるファイルサーバーの情報のことで、NFT画像が保存してあるIPFSのURLがブロックチェーンに記載されています。

つまり、ブロックチェーンではNFT画像そのものは確認することはできないが、保存してある場所のみ確認できるということです。

現在のNFTのほとんどはフルオンチェーンではない

この状態はフルオンチェーンではありませんが、現存するNFTのほとんどがこの形式を取っており、フルオンチェーンNFTは数えるほどしかありません。

しかし、それはブロックチェーンの特性によることでもあるので致し方ないと思われてきましたが、時間の経過とともに、その技術やサービスも増えてきました。

フルオンチェーン化の技術

ブロックチェーンにNFTの画像を置く方法を簡単に紹介します。

かなり複雑なので詳細は省きますが、SVGという手法を取ります。

SVGとはScalable Vector Graphicsの略で、二次元グラフィックをXMLで記述するための言語(テキストファイル)です。

簡単にいうと「ドット画像をドットではなく、xy座標で描くこと」と言い換えることができます。

xy軸で書くことによりドット絵に見せるようなプログラミングをし、フルオンチェーンとしてNFTを発行することを可能にしています。

フルオンチェーンのメリットとデメリット

フルオンチェーンにもメリットとデメリットがありますので紹介します。

メリット

IPFSは分散型のファイルサーバーであることは先述した通りですが、IPFSはイーサリアムのようなブロックチェーンとは違い永続性があるとは限りません。

つまり、IPFSが万が一止まってしまうとそこに保存してある画像データは全て消滅してしまいます。

しかし、イーサリアムのようなブロックチェーン上にデータが保存できれば、半永久的にデータを残すことができます。

デメリット

CryptoPunksなど、NFTを代表するドット絵はこの手法を取り、フルオンチェーンとしてNFTを発行しています。

物理的にフルオンチェーン化ができない場合もありますが、実際にフルオンチェーン化するにはプログラムが使えるなど技術的な側面が必要になり、大きな障壁となっていると考えられます

しかし、最近になり、フルオンチェーンNFTを発行できるサービスも登場してきました(後述します)ので、今後はフルオンチェーン化NFTが増えてくる可能性もあります。

日本でのフルオンチェーンの活用例

世界を見てもフルオンチェーンのNFTはまだ少ないことは先述した通りですが、日本にはいくつかフルオンチェーンNFTを実現しているプロジェクトがあるので紹介します。

オタクコイン

オタクコインは、2018年月に発足した「一般社団法人オタクコイン協会」により推進されているプロジェクトです。

アニメ業界にブロックチェーン技術を取り入れ、世界中にいるアニメ・漫画・ゲームなどのファンを対象にして発行したコミュニティ通貨が「オタクコイン」です。

2021年の春に「オリジナル・オタクコインNFT」がOpeanSea上に発売されるとすぐに完売し、流通総額が25ETHを超える大人気NFTとなりました。

そして、2021年12月15日にイーサリアムブロックチェーン上にフルオンチェーン化した「オリジナル・オタクコインNFT」を100枚限定で発行し、フルオンチェーン化前の「旧オリジナル:オタクコインNFT」所有者に無償配布されました。

尚、フルオンチェーン前の「旧オリジナル・オタクコイン」はこの後No Image画像となりました。

フルオンチェーンのオリジナル・オタクコインNFT

(引用元:https://opensea.io/collection/original-otaku-coin

旧オリジナル・オタクコインNFT

(引用元:https://opensea.io/collection/limited-edition-otaku-coin

レプリカ・オタクコイン

オタクコインはイーサリアムブロックチェーン上でのNFTですが、Plyogon(MATIC)上で発行されたコインもあり、それが「レプリカ・オタクコイン」です。

1万種類以上のカラーバリエーションがあり、シリアルナンバー付のNFTとなっており、2022年3月10日にフルオンチェーン化された「レプリカ・オタクコイン」が配布されました。

旧オタクコインと同じように、フルオンチェーン化以前の「レプリカ・オタクコイン」はバーン(焼却)されました。

(引用元:https://opensea.io/collection/replica-otaku-coin

Isekai Saga

NFTコレクションである「異世界アニメキャラクターズ」から派生したフルオンチェーン型ゲームです。

プレイヤーがフラグメントと呼ばれるNFTを奪い合うゲームで、V1が2022年夏にリリース予定となっています。

リリースに先立ち、オタクコイン協会とコラボレーションをして様々なキャンペーンを展開しており、現在までホワイトリストの配布などが終了しています。

さらに、2022年6月10日よりキャラクターNFTのパブリックセールがスタートし、リリースが近づき更なる盛り上がりを見せています。

CryptoGamesの「FullOnChainNFT」サービス

フルオンチェーンNFTを発行できるサービスです。

NFTサービスの開発を行うCryptoGames株式会社が、2022年1月21日にフルオンチェーンNFT発行サービスである「FullOnChainNFT」の提供を開始しました。

サービスの内容は下記の3点が用意されています。

  • クリエイター向けフルオンチェーンNFT発行
  • アニメーションフルオンチェーンNFT発行
  • コレクティブルフルオンチェーンNFT発行

ブロックチェーンはEthereumとPolygonを選択できます。

先ほど紹介した「オリジナル・オタクコインNFT」もこのサービスを使用して発行されています。

公式サイトに利用までの手順や申請用のURLが記載されているので、興味のある方は確認していただければと思います。

まとめ

半永久的に画像が保存されるフルオンチェーンNFTは、NFTの価値を更に高め、クリエイターなどの発行者だけでなく、所有者にもメリットとなるでしょう。

今後フルオンチェーンNFTが増えてくる可能性があり、さらにNFT市場に活気が出てくることを期待したいと思います。

Yukimasa

Yukimasa

ブロックチェーン歴6年のライター。ブロックチェーンは必ず新しい時代を築き上げると確信し、その一躍を担うべく本格的に執筆活動中。とどまる事なく進化し続けるNFTやCryptoに関わる情報を初心者にもわかりやすく、そして的確に伝えていく。
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