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ブロックチェーン開発に取り組む日本企業【7選】提携先を選ぶ際のポイントや注意点も紹介

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ブロックチェーンは群雄割拠の時代を迎えており、世界各国で熾烈な開発競争が続けられています。日本も例外ではなく、国内企業でもブロックチェーンの独自開発が進んできました。各社がそれぞれの強みを活かしたサービスを展開しており、公官庁から一般ユーザーまで幅広い種類のブロックチェーンが登場しています。

一般企業がブロックチェーン技術を導入する際は、開発企業との提携が不可欠です。それぞれの得意分野を理解した上で、自社の課題解決に最適な企業と手を組まなければなりません。そこでこの記事では、ブロックチェーン開発に取り組む日本の企業を紹介した上で、提携先を選ぶ際のポイントについて紹介します。

ブロックチェーン開発に取り組む日本企業の現状

ビットコインやイーサリアムなどの有名ブロックチェーンでは、法人ではなく財団や個人が開発の主体でした。しかし昨今では、企業もブロックチェーン開発へ積極的に進出しています。日本国内においても、企業の規模に関わらずブロックチェーンのサービスを展開する会社が現れています。日本市場におけるブロックチェーン開発の特徴は、以下の通りです。

アプリ開発が主流でありインフラ基盤を手掛ける企業は少数

世界的なWEB3の潮流を受けて、日本企業もブロックチェーン領域へ挑戦しています。参入する企業は日を追うごとに増えており、スタートアップだけでなく大企業でも積極的な投資が行われています。しかし、その大半はアプリ開発やNFT取引所といった事業が主流であり、ブロックチェーンインフラを開発する企業はさほど多くありません。ブロックチェーン開発は難易度が高く、エコシステムを拡大する上で政治力も求められるからです。そのため2023年3月時点では、ブロックチェーン開発に取り組む日本企業は10社ほどに留まっています。

エンタープライズ版ブロックチェーンの開発が多い

日本でブロックチェーンインフラに取り組んでいる企業では、エンタープライズ版のサービス開発が主流です。エンタープライズ版とは、法人向けのサービスを指します。法人顧客の業務インフラとして導入され、ビジネスの効率化や不正防止に効果を発揮します。具体例は、以下の用途です。

  • 金融業界における証券トークンの発行・取引
  • 海運業界における通関業務の効率化
  • 食品業界におけるトレーサビリティ管理
  • 製造業におけるCO2排出権の取引
  • 公官庁における公文書管理

エンタープライズ版の特徴は、一般的なブロックチェーンと異なりビジネスでの特定業務に最適化されている点です。

エンタープライズ版のブロックチェーンであれば、ノードへの参加者は限定されます。ネットワークの中立性はやや損なわれるものの、トークン価格の乱高下やハッキングといったリスクの低減も可能です。現状のパブリックチェーンはさまざまなリスクを抱えており、実社会にはそれほど普及していません。これに対してエンタープライズ版であれば、広く一般のユーザーにも浸透する可能性が秘められています。あらゆるビジネスへの展開が模索されており、大きなビジネスチャンスが眠っています。

ブロックチェーン開発に取り組む日本企業

ここでは、ブロックチェーン開発に取り組む日本の企業を紹介します。IT企業を中心として、日本国内でもさまざまな事業者が独自ブロックチェーンの開発を進めています。

株式会社NTTデータ

株式会社NTTデータは、日本のブロックチェーン開発において大きな存在感を放つ企業です。さまざまなWEB3プロジェクトでソフトウェア開発に参画しており、NTTデータの元でデジタルアセット市場のインフラ構築が進んでいます。その具体例の一つが、「株式会社Progmat(プログマ)」の設立です。このProgmatは金融インフラの基盤構築を目指しており、国内の大手金融機関が共同で出資しました。NTTデータもこの新会社に資金を投じているほか、ソフトウェア開発の側面からも同社を支援しています。

NTTデータは、金融業界だけでなく海運や製造業での実績も豊富です。実際に、貿易分野では「TradeWaltz(トレードワルツ)」というエコシステムを展開しており、多国間での通関業務を支援しています。この通関インフラを更に普及させるため、「株式会社トレードワルツ」という関連会社も立ち上げました。このように各業界でのインフラ基盤の再構築に向けて、ブロックチェーン技術を積極的に活用しています。

日本アイ・ビー・エム株式会社

日本アイ・ビー・エム株式会社の手掛けるサービスが、「IBM Blockchain」です。エンタープライズ版のブロックチェーンであり、企業の課題解決に用いられます。IBM Blockchainは既に10社以上の企業で導入実績があり、さまざまな業界で普及しています。実際に活用された用途は、以下の通りです。

  • 株主総会における委任投票
  • デジタルチケットにおける真正性の確保
  • 建設現場における保険証明書の発行・照合
  • 食品業界の原料トレーサビリティ

IBMの強みは、企業の業務インフラに精通している点です。IBMはさまざまな業界の情報システムを開発しており、その設計を熟知しています。このため、業務インフラとブロックチェーンを連携させる技術に長けています。グローバル企業であるIBMの取り組みによって、IBM Blockchainは世界各国で浸透するエンタープライズ版サービスとなりました。

SBI R3 Japan株式会社

SBI R3 Japan株式会社は、アメリカのソフトウェア開発大手であるR3社の日本法人です。SBIホールディングスと合弁会社を設立し、日本市場でのブロックチェーン事業を展開しています。このR3社のエンタープライズ版ブロックチェーンが、「Corda(コルダ)」です。Cordaは、アメリカやヨーロッパ地域でさまざまな業界に採用された実績があります。実際に、イタリアの約100行の銀行が参加するブロックチェーンプラットフォーム「Spunta」に採用されました。

日本市場での実績も豊富です。三菱UFJ信託銀行が開発した金融インフラ「Progmat」は、Cordaをベースに開発されました。他にも、自治体による地域通貨の発行・流通にCordaが採用されるなど、導入実績を増やしています。

なおCordaの詳細は、以下の記事で解説しています。
Corda(コルダ)とは?ビジネス向けブロックチェーンについて解説

株式会社HashPalette

株式会社HashPaletteは、NFT専用のブロックチェーンインフラを展開する日本の法人です。「Palette Chain(パレットチェーン)」というコンソーシアム型のネットワークを提供しており、企業によるデジタルアイテムの発行を支援します。

Palette Chainの利点は、NFT専用に設計されている点です。イーサリアムなどのパブリックブロックチェーンの場合、DeFiやDappsによる負荷が大きいためガス代(手数料)は安定しません。加えて、一定のリテラシーが求められるため、初心者による利用は困難です。これに対して、Palette ChainはNFT専用のプラットフォームであり、NFT以外のアプリによる影響を受けません。加えて、クレジットカードなどの⽇本円決済にも対応できるため、一般消費者向けにNFTを供給する手段として適しています。

Stake Technolosies

Stake Technolosiesは、日本人のWEB3起業家である渡辺創太氏が創設した企業です。シンガポールに拠点を置き、Astar Networkの開発を手掛けています。

Astar Networkは、レイヤー1のパブリックチェーンです。Polkadotネットワークに接続されており、複数のブロックチェーンを結ぶ重要な役割を果たします。日本人のファンダーが推進するプロジェクトであるため、以下のように多くの日本企業がAstar Networkと提携を結びました。

このように、Astar Networkは日本発のパブリックチェーンとして、国内企業から高い注目を集めています。

合同会社サイバードリーム

合同会社サイバードリームでは、純国産のレイヤー1ブロックチェーン「Maxims」を開発しています。このMaximsブロックチェーンは、ビジネス用途での展開を視野に入れて開発されました。Microsoftのスタートアップ支援プログラムにも採択されており、社会実装に向けた取り組みを進めています。

Maximsの特徴は、強固なセキュリティを持つ点です。Maximsでは、秘密鍵がPCやウォレットには保管されません。秘密鍵は取引で必要な際に生成されるため、ハッキング被害のリスクを低減できます。加えて、格子暗号という強固な暗号方式を採用しています。

またビジネス環境に最適化されている点も、Maximsの長所です。ビジネスの現場で広く普及しているJava言語を採用しており、Windowsに適した開発環境が用意されています。このように、従来のブロックチェーンが抱えていたデメリットを克服するインフラとして開発されました。

株式会社BOOSTRY

株式会社BOOSTRYは、「権利のデジタルアセット化」を目指している企業です。証券トークンの流通プラットフォーム「ibet」を提供しており、ブロックチェーンからウォレットまでを包括的に提供しています。野村ホールディングスが中心となって立ち上げた企業であり、野村證券の出身者がメンバーとして名を連ねています。

このibetの強みは、証券市場での運用に特化している点です。証券取引での実務に適した設計がなされており、デジタルアセット化を効率的に実現します。他にも、株主総会での議決権行使や資産管理など、証券市場へのブロックチェーン導入に向けて研究を進めています。

ブロックチェーン開発企業と提携する際のポイント

ブロックチェーン開発企業へ相談する前に、自社でブロックチェーン導入の方向性を決めておかねばなりません。ここでは、事前に確認すべきポイントを紹介します。

自社が解決すべき課題を明確化する

まず、社内において解決すべき課題を洗い出しましょう。この課題の解決にあたって、ブロックチェーン以外の手段がないのかを冷静に見極める必要があります。たしかにブロックチェーンは注目を集める新技術であるものの、ブロックチェーン導入が目的となってしまっては本末転倒です。ブロックチェーン導入には多大なコストと労力が発生するため、代替できる方策がないかを検討しましょう。

加えて、どれほどの時間とリソースを割り当てるのかも決めなければなりません。ブロックチェーン技術が社会全体にまで浸透するには、10年単位の時間を要します。よってブロックチェーンの黎明期には、赤字の期間が続く懸念も。長期的なビジョンを見据えて、ブロックチェーン導入に乗り出す覚悟が求められます。

プライベート・コンソーシアム・パブリックから自社に適したチェーンを選ぶ

自社の課題解決に適した種類のブロックチェーンを選定しましょう。ブロックチェーンには、以下の3種類が存在します。

プライベート型 コンソーシアム型 パブリック型
ノードの参加者 自社のみ 自社と提携先の企業 不特定多数
中立性 低い 中間 高い
自社の影響力 強い 中間 弱い

不特定多数のノードが参加するパブリック型では、改ざんが困難でデータの真正性を担保できます。一方で、エコシステム全体の意見が重視されるため、自社都合によるルールの変更ができません。加えて暗号資産(仮想通貨)相場の暴落など、外部要因の影響を強く受けてしまいます。

プライベート型の場合、データ処理速度が高速でルール変更も可能です。ただし中央集権的なシステムになるため、ブロックチェーン本来の強みを十分に発揮できなくなります。このように、ブロックチェーンの種類によって特性が異なるため、自社の課題解決にあった選択をしなければなりません。

ブロックチェーンの開発言語を確認する

ブロックチェーン導入にあたって、プログラミング言語を確認しましょう。ブロックチェーンの世界では、一般的なプログラミング言語ではなく専用の言語が用いられます。そのため自社のシステム管理者では対応できない場合も。よって、ブロックチェーン開発会社に対して、どのプログラミング言語なのかを事前に確認する必要があります。

またサービスによっては、Javaなど既存のプログラミング言語に変換できるものも存在します。自社の既存インフラとの相性を考慮した上で、提携先を選定してください。

自社の業界における導入実績を考慮する

ブロックチェーン開発企業のサービスについて、過去の導入事例を参考にしましょう。新興のWEB3企業では、自社の事業環境に関する知見がない場合も考えられます。特に業界ごとの慣習や法規制に対するノウハウは不可欠です。

これらの知見を持たない企業にブロックチェーン開発を委託してしまうと、思わぬトラブルに見舞われてしまいます。よってWEB3企業を選定する際は、自社が属する業界での導入実績があるのかを確認してください。

ブロックチェーン開発に取り組む日本企業のまとめ

本記事では、日本におけるブロックチェーン開発企業を解説しました。ビジネス向けブロックチェーンは、巨大な市場規模へ成長する可能性を秘めた領域です。そのためスタートアップから大手IT企業まで、さまざまな企業が開発に乗り出しています。

現状ではどのサービスも導入事例が少ないものの、今後の発展が期待されています。他社に先駆けてブロックチェーンを導入する際に、この記事の内容を参考にしてみてください。

段巴亜

dan

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