現在、様々なブロックチェーンで発行されているNFTですが、その中でも主要なプラットフォームと言えばイーサリアムが挙げられるでしょう。
しかし、ここ最近ではビットコインのブロックチェーン上で発行するNFTに大きな注目が集まっています。2023年3月には、BAYC(Bored Ape Yacht Club)で有名なYuga Labs社がビットコインNFTのコレクションを発表し、業界でも話題となりました。
この記事では、そもそもビットコインNFTとはどのようなものなのか?という特徴や仕組みなどをわかりやすく解説していきます。
また、ビットコインNFTの代表的なコレクションや、今後の動向・問題点などもご紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
ビットコインNFTとは?
ビットコインNFTとは、その名前の通りビットコインブロックチェーン上で発行されたNFTのことです。
詳細は後述しますが、NFTを発行するプロトコルの名前や仕組みから、Ordinals NFTやInscriptions(インスクリプション)などとも呼ばれています。
また、ビットコインNFTはイーサリアム上で発行されている多くのNFTと異なり、全ての画像データをブロックチェーンに記録しています。こういったNFTは、フルオンチェーンNFTと言い、永続性の観点で優れた特徴を持っています。
フルオンチェーンNFTについて詳しく知りたい方は、聞いたことがあるけどよくわからない、フルオンチェーンNFTを解説の記事を参考にしてみてください。
ビットコインNFTの特徴・仕組み
次に、ビットコインNFTの特徴や、NFTを発行している仕組みについて解説していきます。
Ordinalsというプロトコルによって発行されている
ビットコインNFTは、Ordinalsというプロトコルによって発行されています。Ordinalsとは、2022年にスタートしたプロトコルであり、元Bitcoin Coreの開発者であるCasey Rodarmor氏によって開発されました。
Ordinalsは、過去に発行されたsatoshi(1BTCの1億分の1の単位)に通し番号を付与し、そこに画像データを付与する仕組みを採用しています。
このOrdinalsを使用することで、ビットコインブロックチェーンに画像データなどを直接記録した、フルオンチェーンNFTを発行することが可能です。
ビットコインNFTを発行している仕組み
ビットコインNFTは、Ordinalsによってシリアル番号を付与したsatoshiに対し、画像や動画などのデータを付与する形で発行します。
つまり、ビットコインNFTとは画像データなどが付与された、固有の番号を持つsatoshiだと考えればよいでしょう。
この画像などのデータをsatoshiに書き込むことを、OrdinalsではInscription(インスクリプション:碑文)と名づけています。また、それぞれのsatoshiが持つ番号は序数(Ordinal number)と呼ばれていることも、予備知識として知っておきましょう。
代表的なビットコインNFTのコレクション
次に、ビットコインNFTの中でも、人気が高い代表的なNFTコレクションを3つご紹介していきます。
- Bitcoin Punks
- TwelveFold
- Pixel Pepes
Bitcoin Punks
Bitcoin Punksは、世界最古のNFTの一つとして有名なCryptoPunks(クリプトパンクス)をオマージュしているNFTコレクションです。
非常に高額な価格帯で取引されており、オリジナルのCryptoPunksでも人気が高いエイリアンタイプのNFTは、過去に9.5BTCで取引が行われました。
現在流通しているビットコインNFTの中でも、代表的なコレクションの一つだと言えるでしょう。
TwelveFold
画像引用元:TwelveFold公式サイト
TwelveFoldは、2023年3月にYuga Labs社がリリースした、ビットコインブロックチェーン上のジェネラティブNFTコレクションです。
12×12のグリッド(格子状の形)のデザインが採用されており、合計で300個のNFTがリリースされました。
NFTの販売はオークション形式で行われ、24時間で735BTC(当時約1,650万ドル)もの売上を記録しています。
Pixel Pepes
画像引用元:Twitter
Pixel Pepesは、インターネット掲示板などで有名なカエルのキャラクター「Pepes」のNFTコレクションです。
CryptoPunksを意識したピクセルアートとなっており、ビットコインNFTの中でも比較的人気が高いコレクションとなっています。
ビットコインNFTとイーサリアムNFTの違い
大きな話題となっているビットコインNFTですが、ここではイーサリアム上で発行されるNFTとの違いをまとめていきます。今回は、以下の3つの項目に沿って違いを比較していきましょう。
- 発行数
- 永続性
- データの保存先
発行数
ビットコインとイーサリアムのNFTの違いとして、まず発行数が挙げられるでしょう。前述の通り、ビットコインNFTは1BTCの1億分の1にあたるsatoshiに紐付ける形で発行されています。
ご存知の方も多いと思いますが、ビットコインの発行枚数は2,100万枚が上限に設定されています。そのため、画像データなどが紐付けられたsatoshiの数にも上限があるため、ビットコインNFTを無限に発行することはできません。
一方、イーサリアムのNFTは理論上際限なく発行できるため、希少性という面で両者には違いがあると言えるでしょう。
ブロックチェーンの永続性
ビットコインとイーサリアムのNFTには、依存するブロックチェーンの永続性という観点でも違いがあります。これは両者のブロックチェーンの総量(サイズ)の違いが関係しています。
ビットコインは主に通貨の送受信を目的としているブロックチェーンであり、1つのブロックサイズは1MBと決められています。一方、イーサリアムにはスマートコントラクトなどが保管されているため、ビットコインの分散型台帳よりもかなり大きな総量に膨れ上がっている状況です。
つまり、イーサリアムブロックチェーンの方がストレージコストが高く、個人レベルで分散型台帳を維持するのはなかなか難しいと言えるでしょう。今後もイーサリアムのブロックチェーンサイズは大きく拡大していくと考えられるため、最終的に分散性・永続性が失われる可能性もあります。
こういった比較をすると、イーサリアムよりもビットコイン上で発行されたNFTの方が永続性があると言えますが、これについては後に触れるように反論もあります。
データの保存先
最後の比較ポイントが、NFTの画像データの保存先です。先ほども少しご紹介しましたが、ビットコインNFTは全ての画像データがブロックチェーン上に記録された、フルオンチェーンNFTとなっています。
一方、イーサリアムで発行された多くのNFTは、コストの問題から画像データを外部のIPFSなどに保管しています。イーサリアムブロックチェーンには、その画像データの保存場所を示すURLなどしか記録されていません。
つまり、データを管理するIPFS自体が消滅してしまった場合、ユーザーが所有しているNFTの画像を失ってしまう可能性もあるということです。また、画像データを後から書き換えるといったことも不可能ではないでしょう。
このように画像データの保管場所という点でも、ビットコインとイーサリアムのNFTには大きな違いがあります。
ビットコインNFTの今後の動向や問題点
最後に、今後予想されるビットコインNFTの動向や、課題点などをご紹介していきます。
- ビットコインブロックチェーンの需要が拡大
- 主要NFTマーケットプレイスが取り扱いを開始する可能性
- ビットコインNFTへの反対の声も多い
- ガス代が高騰する可能性がある
- NFTを発行するまでのハードルが高い
ビットコインブロックチェーンの需要が拡大
ビットコインNFTは誕生して間もないテクノロジーではありますが、直近で急激に取引高が増加してきています。
今後、ビットコインNFTがより多くのユーザーに取引されることで、ビットコインの主要なユースケースの一つとして認められる可能性があります。
今後の動向によっては、ビットコインブロックチェーンの需要がさらに拡大するきっかけになるかもしれません。
主要NFTマーケットプレイスが取り扱いを開始する可能性
2023年3月、ビットコインNFTの需要拡大を受けて、大手NFTマーケットプレイスのMagic Eden(マジックエデン)がビットコインNFTの取り扱いを開始しました。
現在は二次流通のNFTのみを取り扱う形ですが、今後はMagic Eden上でビットコインNFTを発行できる機能を提供していく予定とのことです。
このMagic Edenの動きにならい、OpenSeaなど他のNFTマーケットプレイスが追随する可能性も考えられるでしょう。
ビットコインNFTへの反対の声も多い
大きな注目を集めるビットコインNFTですが、反対の声を上げているユーザーも一定数いるようです。反対派の主な主張としては、ビットコインNFTによってブロックチェーン総量が大きく増加してしまうという意見になっています。
前述の通り、ブロックチェーンの総量が増加すると、それを維持するためのストレージコストが高くなってしまいます。中には、ビットコインの分散型台帳を維持できないユーザーも現れ、分散性・永続性が脆弱になってしまうかもしれません。
また、ビットコインNFTが発行されると一つ一つの価値が異なるsatoshiが誕生してしまうため、デジタル通貨としての機能が失われるのでは?との懸念を表明しているユーザーも存在しています。
ビットコインNFT自体が新しい技術であるため、今後さらなる議論が行われる必要があるでしょう。
ガス代が高騰する可能性がある
ビットコインNFTに対して、ガス代の高騰を招いてしまうのでは?といった問題が指摘されています。ブロックチェーンのガス代はネットワークの混雑具合によって変化するため、ビットコインNFTの発行や取引が活発になるほど、ガス代が高くなる可能性があるでしょう。
一方、ビットコインNFT関連のトランザクションが増加することで、マイナーの収益が増加するとして好意的に捉えている意見もあるようです。
NFTを発行するまでのハードルが高い
ビットコインNFTを発行できるOrdinals Protocolですが、使い勝手がよいとは決して言えません。実際にビットコインNFTを発行するためには、自分でノードを建てる必要があるなど、現時点ではかなり参入障壁が高いと言えます。
今後、さらにビットコインNFTが普及していくためには、簡単にNFTを発行できるサービスがリリースされる必要があるでしょう。
ビットコインNFTの特徴やイーサリアム上のNFTとの違いまとめ
今回は、現在大きな話題となっているビットコインNFTの特徴などを詳しく解説してきました。ご紹介したように、ビットコインNFTは「satoshiに画像データを紐付ける」という仕組みをもとにして発行されています。
Yuga Labs社も「TwelveFold」というNFTコレクションをリリースするなど、今後はビットコイン上でNFTを発行するプロジェクトも増えてくると考えられます。
イーサリアム上のNFTと比較しても希少性や永続性などで優れているため、ビットコインNFTは今後さらに注目を集めていくと言えるでしょう。