現在のDeFi業界では、RWA(Real World Asset)に大きな注目が集まっており、今後のトレンドになっていくことが予想されています。
RWAとは、不動産や株式、ゴールドなどの現実資産をブロックチェーン上でトークン化したものであり、これからのDeFiの利用促進に大きく貢献すると考えられるでしょう。
そこで本記事では、RWAとはそもそもどういうものなのか?という概要・特徴や、RWAのメリットなどを解説していきます。
また、RWAの具体的なユースケースもいくつかご紹介していくので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
RWA(Real World Asset)とは?
早速ですが、RWAの概要・特徴をご紹介していきます。また、今後RWAが利用されていくために必要とされるOracle(オラクル)についても確認していきましょう。
- 現実資産をブロックチェーン上でトークン化したもの
- ブロックチェーンやDeFiの利用を促進すると期待されている
- Oracle(オラクル)の必要性について
現実資産をブロックチェーン上でトークン化したもの
RWA(Real World Asset)とは、その名前の通り、現実世界の資産をトークン化したものです。ここでいう現実資産とは、不動産や株式、農産物、ゴールド、カーボンクレジットなどを指します。
RWAは、今後のDeFiの利用が大きく拡大すると期待されている分野であり、トークン化することで現実資産の取引の流動性や利便性、透明性を高められるとされています。
また、RWAはイーサリアムなどの分散化されたブロックチェーン上で発行されたトークンです。DeFi(分散型金融)のプラットフォームを通して誰でもパーミッションレスに取引できることから、まさにweb3化された現物資産の取引方法だと言えるでしょう。
後に詳しくご紹介しますが、大手DeFiプロトコルのMakerDAO(メイカーダオ)もRWAへの対応を開始し、実際に住宅ローン債権を担保にした融資を行っています。
MakerDAOの詳細を知りたいという方は、MakerDAO(メイカーダオ)とは?概要・特徴やDAIの発行方法などをわかりやすく解説の記事もあわせて参考にしてみてください。
ブロックチェーンやDeFiの利用を促進すると期待されている
RWAがDeFiでのメインストリームの一つになることで、ブロックチェーンやDeFiの利用を大きく促進すると期待されています。
2023年4月24日現在、DeFi全体のTVL(プロトコルに預けられている暗号資産の合計価値)は約489億ドル(約6,570億円)です。しかし、全世界の不動産の推定価値は約326.5兆ドル(2020年時点)と言われており、ゴールドだけの時価総額でも13.1兆ドル(2023年4月現在)にのぼります。
これらの数字を比較すると、伝統的な金融業界の現実資産と、DeFiに預けられている資産の価値には大きな開きがあると言えるでしょう。
このように莫大な価値を持つ現実資産が仮に一部でもRWAとしてトークン化されることで、多くのユーザーがDeFi市場に流れ込むと予想できます。
Oracle(オラクル)の必要性について
上記のように大きく期待されているRWAですが、ブロックチェーン上で適正な価格で取引されるためには、Oracle(オラクル)の活用が必須となります。
Oracleとは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトに外部データ(オフチェーンデータ)を送信するサービスのことです。Oracleが扱うオフチェーンデータには様々なものがありますが、主に暗号資産(仮想通貨)のトークン価格をDeFiプロトコルなどに提供していることが多いです。
今後、DeFiでRWAが発行・取引される際にも、Oracleが提供する市場価格などのデータ参照が必須になると考えられます。また、絵画や骨董品など、資産によっては適正な市場価格が不明確なものも存在するため、RWAのために新たなオラクルネットワークの構築が必要になるケースもあるでしょう。
なお、代表的なOracleとしては、Chainlink(チェーンリンク)などが挙げられます。
RWA(Real World Asset)の3つのメリット
次に、現実資産をトークン化するRWAの3つのメリットをご紹介していきます。ブロックチェーンやDeFiを活用したRWAが登場したことで、現実資産の取引方法にもweb3の変革が生まれつつあります。
RWAにおけるDeFiの必要性についても触れているので、ぜひチェックしてみてください。
- 流動性の向上
- アクセス性の向上
- 透明性の向上
流動性の向上
RWAのメリットとして、まず取引の流動性が向上することが挙げられます。
例えば、美術品を例にして考えていきましょう。絵画などのアート作品を集めるコアなコレクターは多いものの、美術品は取引の流動性が高い資産だとは言えません。また、美術品はブローカー(美術商などの中間業者)を挟んで取引を行うことが多いため、取引コストが高くなる点もデメリットだと考えられます。
しかし、現実世界の美術品を担保したトークンを発行することで、DeFiを通したユーザー同士の自由な取引を実現します。
また、美術品は高額で取引されるケースも多いですが、ブロックチェーン上でトークン化すれば、複数のユーザーで分割保有することも可能です。分割保有によって一人あたりの購入費用が大きく減少するため、流動性の向上に寄与すると考えられるでしょう。
アクセス性の向上
RWAには、様々な資産へのアクセス性を向上させるメリットもあります。
実際、リアルな市場で取引されている資産の中には、一般ユーザーが気軽に取引できないものが存在しています。その中の一つとして、例えば海外不動産が挙げられるでしょう。
もちろん海外不動産を個人で購入することは可能ですが、利用する仲介業者によっては十分な不動産情報を持っていない可能性があります。また、現地で不動産を直接購入する場合、現地でのコネクションがある程度必要になってくるでしょう。
これはあくまで一例でしかありませんが、例えば海外不動産をRWAとしてトークン化すれば、多くのユーザーが手軽にアクセス(購入)できるようになると考えられます。
また、RWAのアクセス性をさらに高めるためには、DeFiは必要不可欠です。パーミッションレスに利用できるDeFiがあるからこそ、人種や国籍、性別など関係なく誰でもがRWAを取引できるようになるでしょう。
透明性の向上
RWAの最後のメリットとして、透明性の大きな向上が挙げられます。現実資産をブロックチェーン上のトークンとして発行すれば、過去の取引履歴などを全て追跡することが可能となります。
現状、何かしらの資産を購入する際に「過去に誰が所有していたのか?」「いくらで売買されてきたのか?」といった情報を把握するのは非常に難しいです。不動産のように登記簿謄本がある資産は別ですが、美術品などの詳細な取引履歴を知るのはほぼ不可能でしょう。
しかし、ブロックチェーン上のRWAであれば、過去の所有者などの情報を簡単に確認できます。また透明性が向上することで、購入する資産の真贋性の判断をしやすくなるというメリットもあります。
DeFiにおけるRWA(Real World Asset)のユースケース
最後に、DeFiにおけるRWAのユースケースをいくつかご紹介していきます。具体的なユースケースのイメージが湧かないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 現実資産を担保にした資金調達
- 農業生産物のトークン化
- 美術品のトークン化
現実資産を担保にした資金調達
DeFiにおけるRWAのユースケースとして、現実資産を担保にして資金調達をするという使い方が挙げられます。実際、DeFiプロトコルのMakerDAOでは、現実世界の住宅ローン債権を担保にし、700万ドルものDAIの融資を実行しました。
これはフランスの大手銀行Societe Generale(ソシエテ・ジェネラル)に対して行ったものであり、RWAを活用した歴史的なオペレーションだと言えるでしょう。
今後も、MakerDAOの事例のように、RWAを担保にして資金調達を行うユースケースは登場してくると考えられます。
農業生産物のトークン化
現在、農業生産物をRWAとしてトークン化する動きが登場してきています。小麦などの農産物は先物市場で活発に取引されている商品ですが、現状の暗号資産市場では農産物に投資する手段はありません。
LandXというDeFiプロトコルでは、小麦や米、大豆など農産物の1kgの価格に固定されたトークンを発行し、農家を支援する仕組みを構築しようとしています。投資家としても、本物の農産物と連動したトークンを購入することでインフレヘッジとなり、さらにDeFiの利回りを獲得できるメリットがあります。
LandXはテストネット段階のプロジェクトではありますが、今後も農産物をトークン化するようなユースケースはまだまだ登場してくるでしょう。
美術品のトークン化
先ほども少し解説しましたが、絵画や骨董品などの美術品をトークン化するといった使い方も考えられるでしょう。美術品をトークン化することで、DeFi上での自由な取引や流動性の向上を実現できます。
また、高額な美術品であってもトークンを分割することで、複数のユーザーで共同保有するといったユースケースも登場してくると考えられます。
将来的には「モナリザ」や「最後の晩餐」といった、世界的に有名な美術品のトークン化が行われるかもしれません
RWA(Real World Asset)の特徴やメリットまとめ
今回の記事では、現在大きな注目を集めているRWA(Real World Asset)について解説してきました。
ご紹介したように、RWAとは現実資産をトークン化したものであり、今後のブロックチェーンのマスアダプションに大きく影響するトピックとなっています。
実際、現実資産をトークン化することで流動性やアクセス性、透明性などを向上できるメリットがあるでしょう。
しかし、現状ではまだまだRWAのユースケースは少なく発展途上のジャンルなので、ある程度長期的な目線で動向をチェックしていく必要がありそうです。