NFT(Non-Fungible Token)といえば、デジタルアートやブロックチェーンゲーム内のアイテムなどを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、NFTを様々な方法で活用する動きが出てきており、実際にビジネスや実社会にも導入され始めています。
この記事では、神社でのNFTの活用方法に着目し、すでに登場している活用事例などを詳しくご紹介していきます。また、神社にNFTを導入するメリットについても解説しているので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
神社でNFTを活用している3つの事例
早速ですが、本記事の本題となる、神社でのNFTの活用事例をいくつかご紹介していきます。
まだまだ活用事例は少ないですが、今後、神社を運営していく中でNFTを活用していきたいと考えている神職の方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 竹神社:デジタル御朱印
- 山祇神社:御朱印NFT
- 検見川神社(古事記project):お守りNFT
竹神社:デジタル御朱印
画像引用元:神社で日本初、NFTを活用した地域文化のデジタル実装に向けて、NFT「竹神社デジタル御朱印」の頒布を8月より開始します。
三重県明和町の観光推進をしている一般社団法人明和観光商社は、同町内にある竹神社にてデジタル御朱印の無料配布を行いました。株式会社博報堂とCryptoGames株式会社と共同で行われたプロジェクトであり、新たな観光需要を生み出していくことなどを目的に実施されています。
それぞれのデジタル御朱印は、NFTとして発行されています。竹神社で満月のときにだけ提供される「限定御朱印」を1枚入手するごとに、デジタル御朱印も1枚配布される形となっています。
スマートフォンとSNSアカウントさえあればNFTを受け取れるため、NFTやブロックチェーンの知識がないユーザーでも入手できるように配慮されているといえるでしょう。また、配布されるデジタル御朱印は、竹神社の花手水をモチーフとしたデザインが採用されました。
画像引用元:神社で日本初、NFTを活用した地域文化のデジタル実装に向けて、NFT「竹神社デジタル御朱印」の頒布を8月より開始します。
明和観光商社によれば、今回のデジタル御朱印の配布は、以下のような目的を持って取り組んだとしています。
- 地域文化の再認識
- 再訪の動機付け
- 初来訪のきっかけ作り
- デジタルな体験価値の共有
「生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」のインタビュー記事によると、デジタル御朱印を目的に、東京や大阪から参拝に来られる方もいたとのことです。実証実験を行った2022年3月18日の1日だけでも、200人以上の参拝者が訪れており、竹神社への興味・関心を引きつける効果的な活用方法だったといえるでしょう。
山祇神社:御朱印NFT
画像引用元:山祇神社公式サイト
岩手県紫波町にある山祇神社では、遠方にお住まいの方にもご利益を届けられるよう、御朱印NFTの発行を行っています。神主の方がお祓いした御朱印をデジタルデータ化し、NFTとして発行することで、誰でも手軽に入手できる仕組みとなっています。
NFTの活用方法としては、前述の「竹神社のデジタル御朱印」に近い内容かもしれません。しかし、竹神社は実際に参拝に訪れる必要があるのに対し、山祇神社の御朱印NFTは誰でも入手できるという違いがあります。
御朱印NFTは、Zaif NFT Marketplaceにて入手可能です。御朱印NFTの専用ページには、山祇神社公式サイトからアクセスできるようになっています。
画像引用元:Zaif NFT Marketplace
また、山祇神社がある紫波町は2022年6月10日に「Web3タウン表明」を行っており、街全体でweb3.0やDAO(自律分散型組織)を積極的に活用する方針を示しています。そういったこともあり、山祇神社では暗号資産(仮想通貨)での賽銭に対応する予定を発表していたり、メタバース空間で神社に参拝できるデジタル化に取り組んでいる状況です。
検見川神社(古事記project):お守りNFT
画像引用元:日本初。「お守りNFT」が神社から発売。
千葉県千葉市にある検見川神社は、古事記projectと協力して、お守りNFTの発行を行っています。古事記projectとは、古事記や日本神話をもとに様々なコンテンツを作成しているクリエイターチームです。
通常、お守りは授与されてから1年経つとご利益がなくなり、神社にてお焚き上げしてもらう必要があります。しかし、検見川神社のお守りNFTはバーン(焼却)の仕組みを活用し、授かってから1年で自動的にお焚き上げされるという、現実のお守りと同じ仕組みを採用しています。
また、お守りNFTはバーン後に新しいNFTに変化するようになるなど、ユニークな仕組みを採用しているといえるでしょう。
お守りNFTは合計10種類のラインナップがあり、中には「フロアプライス下落除」や「ウォレット安全」といった面白いお守りも提供されています。
画像引用元:古事記projectくりぷと!公式サイト
また、検見川神社はお守りNFTのメリットとして、友人・家族に贈答する際、郵送する必要がない点も挙げています。実際、お守りNFTであれば、相手がウォレットを持っていれば迅速に贈答することが可能です。
今後、検見川神社では「御朱印NFT」や「ご奉納NFT」の発行も予定しており、web3.0やNFTを活用して新たなユーザー体験を提供していくと考えられるでしょう。
神社にNFTを導入する3つのメリット
ここまで、神社でのNFTの活用事例をいくつかご紹介してきました。しかし、神社にてNFTを活用することで、どのような効果を期待できるのでしょうか。
今回ご紹介した事例からわかった、神社にNFTを導入するメリットについて確認していきましょう。
- 業界で注目を集めることができる
- 神社の経営が改善する可能性がある
- ユーザー(参拝者)に新しい体験を提供できる
業界で注目を集めることができる
NFT × 神社のメリットとして、暗号資産業界などで注目を集められることが挙げられるでしょう。現状、NFTを活用している神社はほとんどなく、NFTを導入するだけで各種メディアに取り上げてもらえる可能性が高いです。
実際、前述の「竹神社によるデジタル御朱印」や、「検見川神社(古事記project)のお守りNFT」は、新しい取り組みとして様々なニュースサイトで紹介されています。竹神社に関しては、NHKのWeb版ニュースサイトでも記事化され、情報が拡散されました。
このようにNFTを取り入れることで、神社の知名度が向上し、新しい参拝者を獲得できる可能性があります。ただし、今後他の神社でもNFTを活用する動きが活発化した場合、目新しさはなくなってくるでしょう。
神社の経営が改善する可能性がある
NFTを活用することで、神社の経営が改善する可能性があります。神社は収益を第一の目的とした場所ではありません。しかし現実問題として、神社を運営・維持していくためには資金が必要です。
検見川神社と共同でお守りNFTを発行する「古事記project」によると、全国に約8万社あるとされる神社のうち、90%は経営難に陥っているとしています。
こういった状況の中、NFTを活用して注目を集めることで、新たな参拝者を集めるきっかけになるでしょう。参拝者が増えれば、多くの寄付や賽銭などの資金を得られることにつながります。
また、御朱印NFTやお守りNFTであれば、参拝ができない遠方にお住まいの方にもご利益を届けることは可能です。こういったNFTを活用した取り組みをすることで、神社の収益源が広がる可能性があります。
ユーザー(参拝者)に新しい体験を提供できる
神社でのNFTの導入は、ユーザー(参拝者)に新しい体験を提供できる可能性があります。
例えば、前述の「竹神社のデジタル御朱印」であれば、参拝後に御朱印を入手した後、スマートフォンでQLコードを読み取り、デジタル御朱印を受け取るという新しい体験を提供しています。
また、「検見川神社のお守りNFT」に関しても、バーン(焼却)機能でお守りをお焚き上げし、お守りNFTが変化するという面白い体験をもたらしています。
このような体験は、これまでの神社では経験できないことです。ユーザーの注目を集めたり、新しい層の参拝者を増やすきっかけになり得ます。
神社でのNFTの活用事例やNFTを導入するメリットまとめ
今回の記事では、神社でのNFTの活用事例や、神社にNFTを導入するメリットについて詳しく解説してきました。現状、NFTを活用している神社の事例はまだ少ないですが、今後はこういった取り組みがさらに拡大する可能性があるでしょう。
前述の通り、全国にあるほとんどの神社が運営に苦しんでいるとされています。参拝者に対して、NFTを活用した新しい体験を提供することで、神社側としても経営が改善するきっかけになるかもしれません。