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ふるさと納税で大成功した燕三条がリリースするNFT「匠の守護者」とは

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「匠の守護者」というNFTトレーディングカードが、新潟県の燕市・三条市で誕生しました。「燕三条」と称することの多い燕市・三条市は金物や食器づくりが盛んなものづくりの街として知られています。有名企業やブランドが存在し、国内外から注目を集めており、ふるさと納税で大きな成功を収めたことでも知られるようになりました。

今回のNFTプロジェクト「匠の守護者」は、燕三条地域で活躍する職人たちをテーマにデザインされたもので、製品の信頼性や価値を高めるための情報を記録することができます。この記事では、「匠の守護者」が地域ブランディングに与える影響について解説します。

ふるさと納税で大成功した燕市・三条市が持っていたポテンシャル

一口に「燕三条」と言い習わしていますが、これは新潟県の隣り合った「燕市」と「三条市」の2つの自治体を合わせた名称で、上越新幹線の駅名として全国的に知られています。

燕市と三条市はもともと地場産業で同じ金属加工の街として有名でありながら、20年以上も前に合併の住民投票が僅かな差で否決されたという複雑な関係にあります。

そのような経緯を踏まえた上で「仮想都市・燕三条シティ」というプロジェクトが運営されており、本記事で取り上げる「燕三条NFT・匠の守護者」もその活動の一環として発行されています。

ものづくりの街として知られる

引用元:燕物産博物館

新潟県の燕三条地域がものづくりの街として発展したのは、信濃川や支流の中之川に囲まれているという「水の豊かな地域」としての地理的な要因が大きいと言われています。

すでに江戸時代初期に「和釘」の職人が定住するようになり、農家の副業として金属産業が盛んになりました。第一次世界大戦によりヨーロッパの工場が軍需産業に切り替わったため、ナイフやフォークといった食器の注文が大量に日本に発注され、その多くを燕三条地域の職人・商店が請け負いました。そして戦争終結後も、燕三条地域は洋食器の一大産地として発展することになります。

燕三条地域が今でも金属加工の街として栄えているのは、単に古くから取り組んできたというだけではありません。

加工業者・職人たちは、注文してくれる顧客の期待に応えるために様々な要望を受け入れてきた歴史があります。結果として柔軟性と多様性が生まれ、膨大な種類の製品を作るようになりました。一般的な加工品産地だと「単素材」「単製法」の製品が多くなりますが、燕三条では製法や素材も様々なものを取り入れ、独自の製法も確立してきました。

今でもチャレンジ精神を忘れていない燕三条では、地元出身ではないデザイナーの意見も積極的に取り入れて新しいスタイルのフォークやナイフ、包丁などを生産しています。

引用元:MORE THAN PROJECT

2012年にiFデザイン賞を受賞した包丁「ORIGAMI」は1枚の金属板で作られた包丁です。高い技術の結晶とも言える製品です。

ふるさと納税での成功

引用元:三条市ふるさと納税特設サイト

三条市はふるさと納税で大きな成功を収めたことで話題になりました。

令和4年度、ふるさと納税の寄附金額が12月末までに約47億円となり、前年度の約15億円に対して約300%という驚異的な成長率を達成しています。

令和3年、三条市はもともと外資系サラリーマンであった「澤正史」氏をCMO(チーフマーケティングオフィサー)として公募によって任命し、市役所でチームを編成して新しい形のふるさと納税の運用をスタートさせていました。1年というわずかな期間で大きな成果を挙げたと言えるでしょう。

ふるさと納税の返礼品として使われているのは、三条市の金属加工品だけではありません。三条市の豊かな水が育む農産物、また近年大きなブームとなっているキャンピング用品なども人気を博しています。

特にアウトドア関連の成長は著しく、返礼品に対する寄付額の50%以上がアウトドア関連事業者に対するものであったと発表されています。

時代の流れを上手に読み込んだ燕三条地域ならではの成功事例と言えます。

三条市チーフマーケティングオフィサーが語る三条の底力

前述の三条市・澤CMOは、「そもそも三条市のポテンシャルが高かった」と語っています。

引用元:Twitter

澤CMOが語る三条市の魅力を要約すると以下のようになります。

  • 三条のものづくりはクオリティが高い
  • 開発や作り手にストーリーがある
  • 農業従事者の日々の努力は感動的

三条はプロダクトが強いだけでなく、「作り手にプライドがある」と澤CMOは語っています。地方都市に行くと「ウチには何もない」と言うことを良く聞くが、三条ではあまり聞かなかったという点も強調しています。

ふるさと納税についても、「何のためにやるのか」「何を目指していくのか」を明確にすることが必要であるとも語っています。単なるお金稼ぎではなく全国に地域の魅力を伝えることで税収を上げ地域に還元することが目的であると明確にしています。

地域の価値を落としてまでふるさと納税事業に躍起になる必要はなく、地域の魅力の発信というビジョンを共有することが大切であると澤CMOは語っています。

燕市・三条市が導入するNFTトレーディングカード「匠の守護者」とは

引用元:takuminoshugosha

2023年4月25日、三条市のふるさと納税にNFTトレーディングカード「燕三条NFT・匠の守護者」が燕市との共通返礼品として採用されると発表されました。5月18日から三条市と燕市の「ふるさとチョイス返礼品」のページで寄付申し込みが可能になります。

2019年、株式会社燕三条が販売していたトレーディングカードをNFT化したものです。

「ものづくり」の会社・商店・職人をNFT化

NFTに先立って2019年「株式会社燕三条」がご当地トレカとして「匠の守護者」を発行していました。このトレカをデジタルコンテンツ会社「Tales & Tokens」がNFTとしてサービス化したものが燕三条NFTです。

アートコレクションとして、またカードゲームとして楽しめるプロダクトであり、さらに燕三条ではクーポンとしても使えるというユーティリティがあります。

また、産学連携プロジェクトとして、デザインを手がけるのは「日本アニメ・マンガ専門学校」の学生デザイナーです。

このNFTがユニークなのは、燕三条地域で活躍するものづくり関連企業や団体、職人たちを擬人化してキャラクター化した点にあると言えるでしょう。

引用元:takuminoshugosha

「火・水・木・風・土」の5つの属性があります。「火の守護者」のデザインは燕三条地域で金属加工品を製造する会社を擬人化しています。たとえば、理美容鋏材の製造を手掛ける株式会社山村製作所は「景雲」という名前のイケメン侍に擬人化されており、建設機械部品を製造している近忠工業株式会社は大きな大きなハンマーを振り下ろす和服の女性に擬人化されています。

NFTのホルダーには燕三条地域で使えるイベント参加券や飲食店クーポンなどの特典が提供され、観光の促進を図ります。地域にかかわる「関係人口」の増加を促す「燕三条DAO」のディスコードとも連携して地域活性化を促進します。

「匠の守護者」の特徴

引用元:PR TIMES

「燕三条NFT・匠の守護者」は、ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」や「楽天ふるさと納税」などのサイトで購入できます。

概要

  • 寄付額:1キャラの寄付額=1万円
  • 返礼品特典:NFTの保有数によって、燕三条地域で使えるイベント参加券や飲食店クーポン券などを提供

キャラクターはランダムに封入されています。種類は全30キャラ+シークレット2キャラのコレクションです。寄付者にはNFTだけでなく、実際のトレーディングカードが封入されたパックを送付します。

2023年5月現在、匠の守護者シリーズは第4弾まで販売しており、第5弾が製作中です。

なぜNFTなのか?

燕三条NFTのデザイン・実装を手掛けたのは、「Tales & Tokens」という名称のサービスです。スマートフォン用のニュースアプリを提供する「スマートニュース株式会社」の子会社「スマニューラボ」が提供しています。

スマニューラボ社は地方活性化を目的として、地域の固有地名や民話、伝説、生活や産業に由来する文化などの無形資源を「コミュニティ資源」と名付けています。デジタルコンテンツとしてコミュニティ資源を可視化し、ユーザーに感動を届けることをミッションとしています。

Tales & Tokensに燕三条NFTプロジェクトの話を持ちかけたのは、三条市の澤CMOです。澤CMOは「ふるさと納税をいっときのお金集めの方法と割り切るのは意味がない」「地域と関連の薄い返礼品を送っても仕方ない」という考えを持っており、「本当に地域のファンを作るためには、自分たちが作ったものを大切にし、ストーリーを与える必要がある」とTales & Tokensに語ったということです。

Tales & Tokensの代表・佐々木大輔氏は、こういった人がパートナーであれば「地に足のついた企画」を粘り強くやっていけるのではないかとブログで語っています。

NFTプロジェクトというと、ときどき「実態がない」「リアルな感じがしない」と良く言われます。燕三条NFTは「地域のファンになってもらう」「ファンを納得させられるポテンシャルがこの地域にある」という強い思いで始めたものです。

「この場所が好きだ」という揺るがない軸を持っているプロジェクトには将来性が感じられます。

燕三条NFTホルダーはNFTの保有数によって燕三条地域で使えるクーポン券などの特典を得られるだけでなく、燕三条DAOのディスコードとも連携して地域の活性化に貢献できます。

引用元:Twitter

NFTに期待されるのは、関係人口の創出です。地域の活性化をしていくために「まずは関わる人を増やす」ことが重要ですが、従来の寄付やクラウドファンディングはどうしても一過性のものになりがちです。NFTを特別な体験やサービス、コミュニティへのアクセス権として活用することによって、濃密で持続性のある人間関係を構築することが期待できます。

地域ブランディングへのNFTの関わり方

地域の活性化にNFTを活用するという事例はすでに行われています。本サイトでも以下のような記事で紹介しています。

【NFTで地方創生!】各自治体の取り組みと将来性を解説
Nishikigoi NFTとは?NFT活用で人口800人の限界集落を再興する新たな地域づくりについて解説

NFTをデジタル住民票として発行して、ホルダーに特典や権利を付与すれば、現地に居住してなくても自治体に対する関心を継続的に持たせることができるのではと期待されています。

ここから、燕三条NFTにおけるNFT活用でどのように地域ブランディングを図っていくのかを解説します。

故郷が好きだと人生は豊かになる

本サイトの記事でも紹介している山古志村のNFT「Nishikigoi NFT」ですが、導入の旗振り役を担ったのが住民会議代表の竹内春華氏です。

燕三条NFTを導入するにあたり、澤CMOとTales & Tokensの佐々木氏は三条市から車で1時間ほどの山古志村を訪れています。デジタルコンテンツで創出されたコミュニティが村の生活や経済、村民の意識にポジティブな影響をもたらしている様子を実際に目撃し、中心的存在である竹内氏に会っています。大きな刺激を受けて帰ってきたと佐々木氏は語っています。

三条市にもキーマンとなる人物がいます。NFT導入計画前から「好き燕三条」をうたって活動している結城やすひろ氏で、三条凧合戦や燕三条戦隊カジレンジャーといった地域活性化の活動を行っている人です。「匠の守護者」の立ち上げにも深くコミットしています。

引用元:Twitter

結城氏は「故郷が好きだと人生は豊かになる」とTwitterのヘッダーにも堂々と記載しています。「つばさんBeast」という音楽ユニットも結成しており、デビュー曲のタイトルは「この街が好きだから」です。

結城氏のスタンスは「町おこし」や「地域創生」ではなく、ひたすら自分の身の回りを大切にすること、身の回りにある人やモノが好きだという思いを重視することです。

佐々木氏はこういった姿勢に大いに感銘を受けたと語っています。燕市と三条市という2つのエリアには、互いに影響を与えながら成長してきた歴史があり、良いものを作り出して発信していく仲間であることを大切にしたい。そういうストーリーを多くの人に知ってほしいという思いから燕三条NFTはスタートしています。

地域NFTの意義

引用元:PRTIMES

「地方創生」という言葉に違和感を持っている地方在住者はたくさんいます。政策としてバランスを取るためのエクスキューズのような感じがあり、相変わらず「地方と都会」という二元論を繰り返しているに過ぎないという感覚を持っている人は多いでしょう。

繰り返しになりますが、地域発行のNFTの持っている意義は「関係人口の増加」です。地域NFTを「その地域で体験できる特別なサービスやコミュニティにアクセスできる権利」としてとらえることで「関係人口の増加」の可能性が見いだせます。

たとえばNFTの販売益で新しい企画やプロジェクトを生み出すことが可能になりますし、課題解決を自主財源ですすめることができます。アイデアや意見をNFTでつながった人たちから募ることもできますし、プロジェクトを推進するための協力も得られるでしょう。

NFTはクラウドファンディングのような性質を持っていますが、発行元である自治体が製品やサービス、コミュニティの価値を向上させることができれば、ホルダーは購入時よりも高い金額でNFTを売却して利益を得られます。また、NFTは二次流通でも発行元に利益が入る仕組みを実装できます。

体験や価値を上手に提供して、価値を感じる関係人口が増えればNFTの価値も向上するだけでなく、今まで首都圏・大都市圏に集中していた資源を地方に分配することも簡単にできます。

燕三条NFTのユーティリティ

引用元:ふるさとチョイス

燕三条NFTのユーティリティは2023年5月現在、以下のようなものに限られます。

  • トレーディングカード「燕三条トレカ匠の守護者」1袋郵送
  • 燕三条地域の飲食店クーポン
  • 三条凧合戦参加権利
  • 飛燕夏祭り参加権利
  • 地元民とめぐるシークレット工場見学権

匠の守護者は、地域の企業を擬人化したキャラクターを使用します。いくつかのキャラクターはアクリルフィギュア化もされています。

2023年5月に開始されたプロジェクトであるため、それほど目を引くような特典ではありません。ただ、澤CMOが言うように燕市・三条市は高いポテンシャルを秘めた地域ですので将来的に様々な施策を打ち出してくることが推測されます。

DAO組織も立ち上がったばかりですので、今後の計画についての情報は多くありません。NFTホルダーがリアルな体験として「帰省」して訪れたり、イベントを共に開催したりするなかで徐々にコミュニケーションが生まれていくでしょう。デジタル住民にも帰属意識が芽生えて燕三条のものづくりスピリットや文化、経済圏が広がっていくことが期待されています。

燕三条地域はものづくりの街であり、農業も盛んな地域です。アウトドア関連でも注目されている会社がいくつも存在します。DAOの誕生によってどのように活性化していくか見守りたいところです。

まとめ

燕三条がリリースするNFT「匠の守護者」を紹介しました。最後にこの記事をまとめます。

  • 燕市と三条市を合わせて「燕三条」と呼ばれる地域は古くから金属加工の街として知られている。
  • 三条市はふるさと納税で成長率300%という驚異的な数字を記録している。
  • 「匠の守護者」は燕三条地域のものづくりに関わる会社や職人を擬人化したトレーディングカードNFT。
  • 匠の守護者は地域で使えるイベント参加券などのユーティリティを盛り込んでいる。
  • 匠の守護者NFTには「この場所が好きだ」という思いが込められている。
  • NFT発行のキーマンは「故郷が好きだと人生は豊かになる」という思想を持っている人。
  • 地域NFTの持っている意義は関係人口の増加。
  • 燕三条NFTはDAOも発足しており、これからの活動が期待できる。

高いポテンシャルを持っている燕三条地域のNFTは、今後の地域NFTの可能性を示唆するものです。将来性に期待しましょう。

Spritz

Spritz

Web3領域を専門とするライター。DeFiやNFT分野への投資経験をもとに、クリプトに関する記事を発信しています。これまでに執筆した暗号資産に関する記事は70本以上。特に関心の強い分野は、セキュリティトークンです。ブロックチェーンによってもたらされる社会変革に焦点を当て、初心者にもわかりやすい記事を心がけています。
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