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ビットコインのトークン規格である「BRC-20」の仕組みや問題点などを解説

解説系記事

ここ最近、暗号資産(仮想通貨)業界を賑わせているのが、BRC-20トークンです。BRC-20とは、Ordinals Protocol(オーディナルズプロトコル)を使って、ビットコイン上で新たなトークンを発行する規格を指します。

一部のBRC-20トークンは大きな価格上昇を見せており、中でも500万倍を記録したPEPE(ぺぺ)が話題となっています。しかし、急速な需要の拡大によって、ビットコインブロックチェーンのネットワーク手数料が高騰する問題も発生しました。

この記事では、ビットコインのトークン規格「BRC-20」の仕組みや問題点、今後の展望などを解説していきます。

ビットコインのトークン規格「BRC-20」とは?

BRC-20とは、ビットコインブロックチェーン上で、新たなデジタル資産を発行するトークン規格です。2023年3月8日、Domo氏という匿名の開発者によって発表されました。

別名「Bitcoin Request for Comment」とも呼ばれており、イーサリアムのトークン規格であるERC-20が名前のもとになったと考えられます。

また、BRC-20トークンが誕生した背景には、Ordinals Protocolの存在があります。ここでは、Ordinals Protocolの詳細や、Inscription(インスクリプション)について確認していきましょう。

Ordinals Protocolによって発行

Ordinals Protocolとは、元Bitcoin Coreの開発者のCasey Rodarmor氏によって開発されたプロトコルです。

Ordinals Protocolでは、過去から現在まで発行されたsatoshi(1BTCの1億分の1の単位)に通し番号(序数:Ordinal number)を付与します。それぞれユニークな番号が付与されたsatoshiに対し、テキストや画像、動画などのデータを紐づけることで、新たなデジタル資産を発行する仕組みとなっています。

BRC-20トークンは、このシステムを使用してsatoshiにトークンデータを関連付け、FT(ファンジブルトークン)として発行したものです。

なお、ビットコイン上で発行する「ビットコインNFT」に関しても、Ordinals Protocolを利用しています。ビットコインNFTについて詳しく知りたい方は、ビットコインNFTとは?特徴やイーサリアム上のNFTとの違いを徹底解説をあわせて参考にしてみてください。

Inscriptionについて

Ordinals Protocolでは、固有の番号を持つsatoshiに対して、テキストや画像データなどを書き込み、紐づけています。このデータを書き込み、個別のsatoshiに関連づけることを、Inscription(碑文)と呼んでいます。

テキストや画像データを書き込んでいるのは、Witnessフィールドと呼ばれるエリアです。通常、ビットコインのブロックサイズは1MBですが、Witnessフィールドを使用することで、合計4MBまでのデータの記述が可能です(3MBが外付けされている)。

なお、Ordinals Protocolは、2017年のSegregated Witness(SegWit)と、2021年のTaprootという2つのアップデートによって実現した技術となっています。

BRC-20トークンを売買する方法

そんなBRC-20トークンですが、売買するためにはOrdinalsに対応したBRC-20ウォレットが必要です。有名なウォレットとしては、Ordinals Wallet(オーディナルズウォレット)が挙げられます。

基本的な売買方法は、一般的なDEX(分散型取引所)を使うのとそこまで変わりません。BRC-20ウォレットを作成した後、マーケットプレイスに接続し、購入したいBRC-20トークンを選択します。

画面に沿って手続きを進めれば、ウォレットに入金したビットコインでBRC-20トークンを購入できるでしょう。トークンを売却したい場合は、数量と価格を設定してマーケットプレイスにオーダーを出します。

BRC-20トークンを売買できる主要なマーケットプレイスは、以下の通りです。

  • Ordinals Wallet
  • UniSat
  • BRC-20.io

人気の高いBRC-20トークン

2023年6月現在、BRC-20トークンはすでに24,000種類以上が発行されています。その中でも、特に人気が高い3銘柄をご紹介します。

  • ORDI
  • PEPE
  • PIZA

ORDI

ORDIは、最も人気が高いBRC-20トークンの一つです。BRC-20トークンの中でも最も高い取引高を記録しており、OKXやKuCoinなどの中央集権取引所にも上場を果たしています。

PEPE

PEPEは、海外ミームとして有名な「カエルのペペ」のミームコインです。上場から500万倍もの値上がりを見せるなど、大きな注目を集めました。

PIZA

PIZAは、ビットコイン・ピザ・デーにあやかって発行されたと考えられるトークンです。大手海外取引所のBitget(ビットゲット)に上場しています。

BRC-20トークンの問題点

大きな盛り上がりを見せているBRC-20トークンですが、いくつか問題点も指摘されています。以下の3つの項目について、順番に解説していきます。

  • ネットワーク手数料の高騰
  • 現状では本質的な価値はほとんどない
  • ブロックチェーンの容量(サイズ)の肥大化

ネットワーク手数料の高騰

BRC-20トークンの問題点として、ネットワーク手数料の高騰が挙げられます。実際、BRC-20の登場以降、ビットコインブロックチェーンが混雑を起こし、手数料が大きく高騰しました。

下記の画像は、ビットコインの過去1年間のネットワーク手数料を示したものです。BRC-20トークンの取引が最も活発だった2023年5月8日には、手数料が約30ドル(約4,000円)まで高騰しています。

画像引用元:Blockchain.com | Charts – Fees Per Transaction (USD)

直近の手数料が1〜2ドルの間を推移していた点を考えると、かなりブロックチェーンが混雑していたことがわかるでしょう。メモリプール(未承認取引が待機する場所)には、50万件を超えるトランザクションが確認されるなど、多くのユーザーに影響を与えていたことがわかります。

現状では本質的な価値はほとんどない

現在、BRC-20は主にミームコインの発行に使用されており、投機以外の利用用途はありません。そのため、現状では本質的にほとんど価値がないトークンだといえるでしょう。

イーサリアムのERC-20のようにスマートコントラクト機能もないため、複雑なトランザクションを実行することも不可能です。BRC-20トークンの熱が冷めれば、急速に価値を失う可能性があります。

ブロックチェーンの容量(サイズ)の肥大化

BRC-20は、ビットコインのWitnessフィールドを使用して、satoshiにテキストデータを書き込んでいます。そのため、ブロックチェーンの容量(サイズ)に大きな影響を与えており、将来的にビットコインブロックチェーンが肥大化する可能性があるでしょう。

ブロックチェーンの容量が肥大化すると、それを維持する際のストレージコストが高くなってしまいます。結果的に、高いストレージコストを支払えるお金持ちや法人しかビットコインの分散型台帳を保持できず、分散性や永続性を維持できなくなるかもしれません。

事実、ビットコインコミュニティでは、ブロックチェーンからBRC-20を含めたOrdinalsを削除する提案が行われています。今後、ビットコインの容量が拡大し続けた場合、BRC-20のデータは切り捨てられてしまう可能性があるでしょう。

BRC-20トークンの今後の展望

暗号資産市場を大きく賑わせているBRC-20トークンですが、今後の展望が気になる方も多いでしょう。ここでは、以下の2つの項目をご紹介していきます。

  • ビットコインブロックチェーンの需要拡大
  • 取り扱う暗号資産取引所の増加

ビットコインブロックチェーンの需要拡大

現状では投機目的に利用されているBRC-20トークンですが、ビットコインブロックチェーンの需要を高めたことは事実です。同じOrdinals Protocolを使用しているビットコインNFTに関しても、一つのユースケースとして地位を確立しつつあります。

また、BRC-20に続く、BRC-21という新しいトークン規格がInterlay Labs社によって提案されています。BRC-21は、イーサリアムなど他のブロックチェーンで発行された通貨をビットコイン上で生成するトークン規格です。実現した際のユースケースとして、Lightning Network(ライトニング・ネットワーク)上での分散型ステーブルコインの利用が挙げられています。

今後のBRC-20関連の開発動向によっては、ビットコインブロックチェーンの需要がさらに拡大する可能性もあるでしょう。

取り扱う暗号資産取引所の増加

BRC-20トークンの今後の展望として、さらなる暗号資産取引所でのリスティングも挙げられます。BRC-20トークンが注目されて以降、KuCoinやBitget、OKX、Gate.ioなどの大手取引所が取り扱いを開始しています。

現状、BRC-20トークンを取引するためには、専用のウォレットが必要です。取引するまでのハードルが高いため、中央集権取引所での取り扱いはユーザーにとってポジティブだといえるでしょう。

今後も大手取引所での取り扱いが拡大すれば、BRC-20トークンの取引が活発になるかもしれません。

ビットコインのトークン規格「BRC-20」まとめ

今回の記事では、ビットコインのトークン規格である「BRC-20」について解説してきました。ご紹介したように、BRC-20トークンはOrdinals Protocolによって発行されており、satoshiにテキストデータなどを紐づける仕組みになっています。

現状では投機以外の目的がないトークンですが、ビットコインブロックチェーンの利用が一時的に拡大するなど、大きな注目を集めました。今後、BRC-20がビットコインにどのような影響を与えるのか、注目していく必要がありそうです。

GM

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2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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