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BCGの詐欺/ラグ計画を見破るポイントは?Web3時代の自己防衛策

解説系記事

2022年、放置系BCG(Block Chain Game)やM2E(Move to Earn)系BCGのラグ事例が多く見られた一方で、2023年はSNS系BCGのラグが目立ちました。放置系BCGやM2E系BCG、MMORPG系のBCGと異なり、SNS系BCGは低コストで制作が可能です。また、紹介インセンティブが設定されることもあるため、インフルエンサーなどによって拡散されやすく、Web3初心者が被害にあいやすいといった特徴もあります。

本記事では詐欺/ラグ計画を見破るポイント、Web3時代の自己防衛策を分かりやすく解説します。

BCGの詐欺/ラグ

BCGの詐欺やラグは、主にゲームが正式ローンチされる前に運営が資金を持って消える行為を指します。一方で、BCGが正式ローンチしても油断はできません。アップデートコスト拒否やトークノミクス崩壊など、様々な理由で運営が消えることもあります※1。計画的ではなくても、結果的に詐欺やラグになります。

※1 ソフトラグと呼ばれることがあります。

詐欺/ラグのプロセス

BCGの詐欺やラグのプロセスは、典型的な投資詐欺プロセスと大きな違いはありません。まず魅力的な収益やプロジェクト展開を宣伝し、ユーザーの興味を引きます。その後、ユーザーから資金を集め、ある時点で突然プロジェクトを中止し、資金を持ち逃げします。

ただし、持ち逃げされる資金が暗号資産ということで、DLT※2上である程度の集金先が特定できるといった特徴もあります。

※2 DLT(Distributed Ledger Technology:分散型台帳技術)

BCG詐欺/ラグの推移

BCGがWeb3や暗号資産への認知度を向上させたことは間違いありません。特に、投資や金融などに関心が無かったクラスタにも、DeFi※3への理解を促進させました。

一方で、BCGを介してWeb3や暗号資産を知った初心者たちは、ハイテクな手法を用いる詐欺グループのターゲットとなってきた歴史があります。

ここではBCGの発展推移と詐欺グループの動向を解説します。

※3 DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)

2018年~2020年

BCGは2018年にローンチしたAxie Infinityによって広く認知されるようになりました。特にP2E(Play to Earn)というゲームをするだけで暗号資産を稼げるというシステムは画期的でした。

BCGへの認知度が高まると、ゲームで使用されるNFTを利用した詐欺事件が増加します。多くの偽物NFTが流通するようになり、NFT売買のリスクも注目されるようになります。NFTに使用されるスマートコントラクトを悪用した不正な資金流出手法なども見られるようになりました。

2021年~2022年

2021年末にローンチされたSTEPNはM2E(Move to Earn)という、運動をマネタイズするシステムを提供し、話題になりました。特に2022年前半はM2Eに使用されるスニーカーNFTの価格高騰が話題となり、ちょっとしたバブルが到来しました。

この時もゲーム正式ローンチ前にラグを起すプロジェクトが多く散見されました。また、詐欺やラグではありませんが、M2Eに使用されるスニーカーNFTが暴落するなどし、損失を被ったユーザーも多くでました。

2023年~

詐欺やラグプルを成功させるためにはプロジェクトの実現性をPRし、多くの人々を引きつける必要があります。UIやUXを追及したホームページ、SNSコンテンツ作成、FTやNFTの設計、ゲームの作成、プロモーションやローンチパッドでのKYC(Know Your Customer:身元確認)、Audits(監査)など様々なプロセスでコストがかかります。

従来のP2E、M2EのBCGの制作コストは非常に高額になることがあります。そこで詐欺グループはより制作コストの少ないSNS系BCGを使用して犯罪を行うようになります。2023年はTwitter(現X)やDiscordで発言するだけで稼げるといったBCGのローンチが続きましたが、ほとんどラグ、もしくはソフトラグという結末を迎えています。2023年末には多くのインフルエンサーがPRしていたSNS系BCG「EYEN」がラグプルを起しています。

関連記事:「最終目的は訴訟ではなく、奪還!?Web3サイバー捜査の前線」

BCGの詐欺/ラグ計画を見破るポイント

BCGの詐欺やラグを見破るには運営チームの背景、過去の実績、コミュニティのフィードバックを確認し、不自然なプロモーションや過度な利益約束がないかを慎重に評価することが大切です。また、プロジェクトのロードマップや開発進捗が現実的かどうかも見極める必要があります。

ここではBCGプロジェクトの具体的な評価ポイントを解説します。

ローンチパッド評価

ローンチパッドは新しいBCGのための資金調達と計画発表のプラットフォームです。多くの有名なCEXで実装されています。DEXでも用意されていることがあります。

優れたローンチパッドは、一定の基準を満たしたプロジェクトのみをサポートし、投資家に対するリスク軽減策を追求しています。また、ローンチパッドの実績(成功したプロジェクト例やコミュニティの評判など)も信頼性を判断するために重要です。

Web3初心者さんには、日本国内のCEX(CoinCheckやZaifなど)が提供するローンチパッドの利用が推奨されます。国内CEXは金融庁監督下にあり、リスクを最小限にすることができます。

海外のローンチパッドプラットフォームはラインナップも充実しており、Web3プロジェクトへ早期アクセスする際に有効です。一方で、フィルタリング機能が十分でない場合は詐欺/ラグなどに遭う可能性が高くなります。

プロジェクトのKYCやAuditsを評価

KYCとAuditsはBCGプロジェクトの信頼性と安全性を評価する上で重要です。KYCは企業、CEOや運営者情報を明らかにし、もしもの際に責任を追及できます。Auditsは専門家によるスマートコントラクトやセキュリティ対策の評価結果を示します。監査会社として、CertikやQuantstampなどが有名です。

一方で、KYCやAudits情報自体が捏造されることもあります。KYC情報などはLinkedInやSNS情報などで参照する必要があります。また、Auditsが正当なものでも、詐欺やラグが確実に回避できるとは限りません。AuditsはあくまでBCGやWeb3プロジェクトに使用されるスマートコントラクトなどの技術的な側面の正当性を評価するものです。FTやNFTの価値は市場を分析し、個人の責任で評価しましょう。

参考:CertikQuantstamp

プロジェクトの資金調達状況

BCGプロジェクトが資金調達する方法は前述したローンチパッドを使用する他にも、VCや企業からの直接投資などがあります。不特定多数のユーザーから資金を少しずつ集めるローンチパッドを使用した資金調達よりも、VCや企業からの信任の方がBCGプロジェクトを評価する上で重要です。KYCやAuditsの他、VCや企業がバックアップしているという実績が加わるためです。

a16zやCoinbaseVenturesなど有名なVCがあります。日本でも前澤友作氏の「MZ Web3ファンド」があります。MZ Web3ファンドではM2Eプロジェクト「RUNBLOX」への投資を実施しており、多くの日本人ユーザー獲得のきっかけとなりました。

関連記事:「Web3.0プロジェクトの資金調達方法とVCが果たす役割」

BCGプロジェクト進捗状況

進捗状況 評価ポイント
FT/NFT先行販売 FTやNFTの先行販売状況
テストプレイ フィードバック情報をSNS等で確認
FT/NFT取引開始 市場価格分析

BCGプロジェクトの進捗状況を確認しましょう。公式サイト、もしくはホワイトペーパーでロードマップが記載されています。もし、ロードマップ記載がない場合はリスク評価を高めてもよいかもしれません。

BCGプロジェクトの進捗状況を評価する上で重要なポイントは3つあります。1つ目はFT/NFT先行販売です。BCGで使用されるFTやNFTが先行販売などで完売しているかを見ましょう。2つ目はテストプレイです。AL※4などでプレイヤーが限定される場合もありますが、SNSなどでフィードバック情報が見られるようになります。3つ目がFT/NFT取引開始です。チェーン上でトレードが可能になり、市場価格を分析できるようになります。

※4 AL(Allow List)はFTやNFTへの早期アクセス権などです。WL(White List)と呼ばれることもあります。

スマートコントラクト分析

スマートコントラクト分析はプログラミング言語(Solidityなど)を参照する専門的なプロセスです。初心者さんにとっては難しい取り組みかもしれません。しかし、BCGやWeb3プロジェクト評価サイトなどで分かりやすく解説されている場合があります。RugDocではリスク評価をHighやLowといった分かりやすい言葉で評価しています。スマートコントラクト解説もあります。

スマートコントラクト分析で特に重要なのが流動性に関わるコードです。NFTのトレードが制限されたり、課税(TAX)が自動で課されるコードもあります。さらに悪質なスマートコントラクトになるとホットウォレットの中身を勝手に送信するようなものもあります。

スマートコントラクトがチェーンに公開されている場合はEtherscanなどのエクスプローラーで参照できます。

参照:RugDocEtherscan

Web3時代の自己防衛策

Web3初心者さんのBCGへのエントリーが増えてきています。ここではWeb3時代の自己防衛策として、事前にできる自己防衛策、そして事後にする自己防衛策について解説します。

事前にできる自己防衛策

  • SNS情報の活用
  • ウォレット操作の確認
  • 少額エントリー戦略

まず、BCGにエントリーする前に前述項である「BCGの詐欺/ラグ計画を見破るポイント
」を確認しましょう。その上で、SNS情報の活用、ウォレット操作の確認、少額エントリー戦略などをとり、リスクを最小限にすることが大切です。

SNS情報の活用

インフルエンサー情報が役に立つこともあるかもしれませんが、SNS系BCGではインセンティブを背景にしたポジショントークが発生する場合があります。より包括的にSNS情報をまとめて評価することが大切です。

ウォレット操作の確認

操作 説明
接続 ウォレットをウェブサイトやアプリに接続
承認 トランザクションや操作を許可
署名 トランザクションやメッセージにデジタル署名

BCGに使用されるDApps※5にはウォレット接続が必要になることがあります※6。ウォレットがどのようなことをしているのか、しっかりと確認します。怪しいと感じた場合は、ウォレット接続自体を控えましょう。

※5 DApps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)
※6 ウォレットは独自にDApps内に実装される場合もあります。

関連記事:「DAppsとは?スマートコントラクトで最適化されるWeb3.0ビジネス」

少額エントリー戦略

魅力的なリターンをPRするBCGは多いですが、まずは少額を入金してリターンが出金できるのかを確認することが大切です。大金がDAppsに入金されても出金できなければ意味がありません。制限がかかる場合は大きなリスクになります。

事後にする自己防衛策

  • Revoke(承認の取り消し)
  • 情報共有
  • ウォレット取替

Revoke(承認の取り消し)

詐欺/ラグが起こったBCGをやめても、トークンアクセスが承認されているままの場合があります。Revokeをすることで詐欺グループからのアクセスを遮断できます。有名なRevokeサイト(REVOKE、Unrekt)などでウォレット接続し、Revokeボタンを押しましょう。

リボークサイト:REVOKEUnrekt

情報共有

BCGで詐欺やラグプルが発生した際はSNSなどで情報を発信しましょう。被害拡大予防につながり、各ユーザーのRevoke対応も早めることができるかもしれません。警察など捜査機関への情報提供も国際的な犯罪対処や予防といった観点から大切です。

ウォレット取替

ウォレット接続の切断、Revokeをしてもウォレットアドレスが詐欺グループに共有されている場合があります。怪しいトークンが勝手に送られてくることもあるかもしれません。詐欺やラグプルに遭った際はウォレット自体を取り替えるという方法もセキュリティを高める上で有効です。

まとめ

BCGはゲームを楽しみながら暗号資産を獲得できるという魅力があります。一方で、BCGで使用されるFTやNFTを用いた詐欺やラグプルが多く発生しているのも事実です。ユーザーはBCGにエントリーする前にプロジェクトの評価をしっかりと行い、自己防衛策を進めることが大切です。

以上、BCGの詐欺/ラグ計画を見破るポイント、Web3時代の自己防衛策について解説しました。BCGに興味がある方、これからエントリーを計画されている方々に向けてお役に立てる情報となれば幸いです。

AMEHARE

AMEHARE

ITの最新トレンドを発信しはじめて十余年。Web2から3の時代の変革もいち早く察知し、2012年ごろから仮想通貨に注目をし始める。次世代の文化やテクノロジーを情報を掴みつつ、NFT・メタバース・DAOなどの領域であらゆる情報を発信中。
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