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io.netとは?GPU/CPUをシェアする分散型コンピューティング

解説系記事

AIやXRなどテクノロジー開発が進むにつれ、多くの企業や研究機関が高性能なGPUやCPUリソースを求めるようになりました。しかし、これらのリソースは高価であり、特にスモールビジネスやスタートアップにとってはアクセスが困難なことが多いです。

そこで注目されているのが、分散型コンピューティングプラットフォーム「io.net」です。

本記事ではio.netの概要やエコシステム、プロダクト詳細について分かりやすく解説します。

io.netとは?

io.netはオンデマンドで分散されたGPU/CPUリソースを共有するクラウドサービスです。AIスタートアップや開発者に向けて、高速かつコスト効率の良いコンピューティング能力を提供します。

開発者側は大規模なハードウェア投資をする必要はありません。コンピューティング能力を提供するユーザー側には暗号資産によるインセンティブが提供されます。

GPU/CPU DePINとは?

io.netの基盤となる技術がGPU/CPU DePIN(Decentralized Physical Infrastructure Network)です。DePINでは分散されたGPU/CPUリソースを統合し、ネットワーク全体で共有します。

一方で、分散ファイルシステム「FileCoin」のように独自のチェーンを構築するプロジェクトではありません。2023年12月時点において、トランザクション履歴はIO Explore(後述)で公開される予定です。また、io.netで使用されるIO CoinはSolanaチェーンでのローンチとなります。

関連記事:ファイルコイン (FIL)は有価証券?暗号資産の新たな局面を解説

io.netのアドバンテージ

  • コスト効率
  • スピードとアクセス
  • 大規模なGPU/CPUアクセス

コスト効率

io.netは従来のクラウドサービス(AWS、GCP、Azureなど)と比べ、GPU/CPUリソースのコストを大幅に低減させます。最新デバイスなどの設備投資が大きな負担となっているSME※1にとっては注目すべきソリューションとなります。

※1 SME(Small and Midsize Enterprises:中小企業)

スピードとアクセス

計算クラスター※2の初期設定も容易で、デプロイメントもシームレスです。GPU/CPUを提供する側のプロセスもすぐに完了します。

※2 計算クラスター(Compute Cluster)は、複数のコンピューター(ノード)が連動するコンピューティング環境のことです。

大規模なGPU/CPUアクセス

プロジェクトは世界中の余剰GPU/CPUの効率的利用を目指しています。特に機械学習や大規模なデータ処理を必要とするAIプロジェクトの開発段階において、大きな役割が期待されます。

開発運営情報

io.netはニューヨークに拠点を置く、GPU/CPU DePINサービスを開発する企業です。

AIスタートアップや開発者に向けて、コンピューティングパワーの不足を解消するソリューションサービスの実現を目指しています。

io.netがカバーする次世代のニーズ

AI開発だけでなく、XR技術※3やレンダリング技術※4開発でのGPUニーズは高まっています。また、CPUもクラウド利用が進むことでスマホはより使いやすく、デバイス自体も低価格化していく可能性があります。

※3 XR(eXtended Reality,Cross Reality)は仮想現実を示すAR、VR、MRなどの総称です。
※4 レンダリングは画像や動画などを生成する演算プロセスです。

GPU需要

GPUへのニーズは非常に高まっているといわれています。背景にはAI開発、XRやメタバースで使うレンダリングへの需要があります。また、一時期GPUはイーサリアムのPoW※5にも使用されており、2022年までの品薄に拍車をかけたといわれています。

Nvidiaなどの大手企業は需要を満たすべく生産を加速していますが、技術の進歩と新しい応用領域の開拓により、GPUへの需要は今後も増加することが予測されています。

AI開発者、ゲームデザイナー、メタバースのクリエイターなど、幅広いユーザーが高性能かつコスト効率の良いGPUアクセスを必要としています。

※5 PoW(Proof of Work)はブロックチェーンの承認プロセスです。
関連記事:リアリティ追求のカギ?GPUがメタバース構築で果たす役割

CPU需要

CPUはより広範な汎用処理に適しており、一般的なコンピューティング作業やサーバー運用に必要です。DX※6が進む中、様々なビジネスシーンでCPUの需要は高まっています。

サーバースペックの向上/構築は、IntelやAMDといった大手サプライヤーの供給に大きく左右されてきました。io.netプロジェクトが成功すれば、新たなサーバー強化手段が選択肢として浮上します。

エッジコンピューティングのイノベーションも進んでいますが、io.netはまた違った分散化アプローチで末端端末(スマホやIoTデバイスなど)の性能を向上させるかもしれません。

※6 DX(Digital Transformation)はデジタル技術を用いたビジネス変革です。

io.netのプロダクト

ここではio.netがローンチ予定をしている主要なプロダクトを解説します。GPU/CPU提供を計画するユーザーは、特にIO WorkerやIO Coinへの理解を深めていきましょう。

IO Cloud

IO Cloudはオンデマンドで分散型のGPU/CPUクラスターをデプロイし、管理するプラットフォームです。主に大量のGPU/CPU処理を必要とする開発企業などがメインユーザーになります。

IO Cloudを利用する企業側は料金を指定の暗号資産銘柄の他、クレジットカードでも支払うことができます。支払い後に自動的にio.netのユーティリティートークン(IOSD)に変換され、GPU/CPU提供元に渡ります。

IO Worker

IO Workerは分散GPU/CPU機能を提供する側のプラットフォームです。ウォレット接続はこのフェーズでは必要ありません。

ダッシュボードではアカウント管理、コンピューティング活動のモニタリング、電力消費の追跡、ウォレット管理、セキュリティ対策、収益性計算などの機能を利用できます。

インセンティブを目的としたプロジェクトエントリーを計画するユーザーはIO Workerの仕組みについて理解を進める必要があります。

IO Explore

IO Exploreはio.netネットワークの履歴をユーザーに可視化します。

ブロックチェーンエクスプローラがブロックチェーンのトランザクションをいつでも参照できるように、IO Exploreはio.netにおけるトランザクションを公開し、ネットワークに透明性をもたらします。

IO Coin

IO Coinは分散型クラウドエコシステムの中心的役割を果たすio.netのネイティブトークンです。2024年第1四半期にSolanaチェーンからローンチを予定しており、io.netのガバナンスなどに使用されます。

ネットワーク上での支払いには、別途IOSDクレジットという米ドルにペッグされたユーティリティトークンが使用される予定です。

また、IOSDはGPU/CPUリソース提供者への報酬にも使用されます。GPU/CPUの使用時間に応じてIOSDが支払われます。GPU/CPUがアイドル状態の時も、ネットワーク上でホストされているモデルの推論に使用され、その際にもIOSDは報酬付与が予定されています。

BMEによるエコシステム

BME(Burn and Mint Equilibrium)はio.netのエコシステムです。ユーザーは、サービス購入のためにまずIO Coinを入手し、それをIOSDに変換する必要があります。
この過程で、IO Coinは永久に循環供給から削除(バーン)され、新たなIOSDトークンが作成(ミント)されます。

例えば、ある企業がio.net上で100ドル分のコンピューティングパワーを購入したい場合は、市場で100ドル分IO Coinを入手し、それをIOSDに変換します。IOSDはコンピューティングサプライヤーに報酬として直接転送されます。

io.netの始め方

GPU/CPU利用者、提供者ごとに「io.netの始め方」を解説します。

GPU/CPU利用者

  1. io.netへアクセス
  2. アカウント作成
  3. 「IO Cloud」選択
  4. 計算クラスター設定
  5. 支払い
  6. クラスターページで管理

GPU/CPU利用者(企業開発側)として始めるためのプロセスを解説します。

io.netへアクセス

io.netのホームページにアクセスします。

公式サイト:https://io.net/

アカウント作成

必要な情報を入力してアカウントを作成します。GoogleIDなどでもアカウント作成ができます。

「IO Cloud」選択

「クラスターのデプロイ」機能を使用して新しい計算クラスターを作成します。

計算クラスター設定

設定項目 説明
クラスタータイプ 使用するクラスターの種類を選択
サプライヤー GPU/CPUリソースを提供するサプライヤーを選択
プロセッサタイプ 使用するプロセッサのタイプを選択(CPU、GPU)
場所 クラスターを配置する場所(国)を選択
セキュリティ 必要なセキュリティレベルを設定
接続層 ネットワーク接続の品質レベルを選択
クラスターベースイメージ クラスターに使用するベースイメージを選択
クラスター名 クラスターのネーミング
利用可能なGPU 利用可能なGPUの数を指定

利用可能なGPU/CPUリソース(デバイス)、設置場所、通信環境など、ニーズに合ったものを選択します。

支払い

2023年12月時点で、支払い方法はIO Coinの他、Solanaチェーンの特定銘柄、クレジットカードなどが設定されています。

クラスターページで管理

作成したクラスターのリストを確認し、稼働、拡張、終了などの操作を行います。モニタリングも進めます。クラスターの詳細情報を監視し、稼働状況、請求情報、関連するワーカーデータを追跡します。

GPU/CPU提供者

  1. io.netにアクセス
  2. アカウント作成
  3. 「IO Worker」選択
  4. デバイスの設定
  5. OSの選択
  6. デバイスタイプの指定
  7. ドッカーとNvidiaドライバーのインストール
  8. ドッカーコマンドの実行
  9. 接続の待機

GPU/CPUリソースを提供する場合はIO Workerとしてio.netに参加します。WindowsおよびLinux(Ubuntu)を使うことができます。

io.netにアクセス

Webブラウザを使用してio.netのウェブサイトにアクセスします。

公式サイト:https://io.net/

アカウント作成

必要な情報を入力してアカウントを作成します。GoogleIDなどでもアカウント作成ができます。

「IO Worker」選択

ドロップダウンメニューから「IO Worker」を選択し、「新しいデバイスを接続」をクリックします。

デバイスの設定

供給者を選択し、デバイスに固有の名前を付けます。

OSの選択

Windows、もしくはLinux(Ubuntu)を選択します。

デバイスタイプの指定

GPU、CPUいずれかを選択します。

ドッカーとNvidiaドライバーのインストール

公式ドキュメントに従ってドッカー※7、CUDA※8、Nvidiaドライバー※9をインストールします。

※7 ドッカー(Docker)は、アプリケーションとその必要な部品をまとめ、どこでも同じように動かせるようにするソフトウェアです。

※8 CUDA(Compute Unified Device Architecture)はNvidiaのGPUを使って、計算処理を速くするソフトウェアです。

※9 NvidiaのGPUがコンピューターで正しく動作するためのソフトウェアです。

ドッカーコマンドの実行

ターミナルでドッカーコマンドを実行し、ドッカーデスクトップがバックグラウンドで実行されていることを確認します。

接続の待機

新しいデバイス(企業などの利用者)が接続されるのを待ちます。

まとめ

io.netはGPU/CPUリソースを効率的に共有することで、ビジネスや研究におけるコンピューティングの課題を解決します。利用者側、提供側ともに利用方法はとても簡単で、誰もがすぐにio.netを利用できます。

2024年はio.netプロジェクトの進化が問われる年です。IO Coin発行やGPU/CPU DePINの正式ローンチ動向に注目が集まります。

以上、GPU/CPU DePINであるio.netについて詳しく解説しました。本記事が皆様のビジネス戦略を進める上でお役に立てる情報となれば幸いです。

AMEHARE

AMEHARE

ITの最新トレンドを発信しはじめて十余年。Web2から3の時代の変革もいち早く察知し、2012年ごろから仮想通貨に注目をし始める。次世代の文化やテクノロジーを情報を掴みつつ、NFT・メタバース・DAOなどの領域であらゆる情報を発信中。
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