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地方自治体によるブロックチェーンの活用事例

解説系記事

ブロックチェーンというと、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)を想像する方が多いのではないでしょうか。

しかし、近年では実社会におけるビジネスなどでも、ブロックチェーンを利用する動きが活発化しています。ブロックチェーンの活用を進める地方自治体も登場しており、中には実証実験を行っているケースもあるなど、今後さらにこの流れが加速すると考えられます。

この記事では、地方自治体によるブロックチェーンの活用に焦点を当てて、具体的な活用事例をいくつかご紹介していきます。

地方自治体によるブロックチェーンの活用事例

早速ですが、本記事の本題となる地方自治体によるブロックチェーンの活用事例をいくつかご紹介していきます。

今後、自分達の市町村でもブロックチェーンやNFTを活用していきたいと考えている自治体職員の方は、詳しくチェックしてみてはいかがでしょうか。

  • ブロックチェーンを活用した公的証明書の電子交付:福岡県飯塚市
  • e-加賀市民制度:石川県加賀市
  • ブロックチェーンを活用したデジタル地域商品券の発行:熊本県天草市
  • ブロックチェーンを活用した地産地消による環境価値を電子証書化:佐賀県佐賀市
  • SINRA(シンラ)プロジェクト:三重県尾鷲市
  • ふるさと納税NFTの発行:北海道余市町
  • デジタル住民票NFTの発行:山形県西川町

ブロックチェーンを活用した公的証明書の電子交付:福岡県飯塚市

福岡県飯塚市は、2020年1月〜2月と2022年6月の2回に分けて、ブロックチェーンを活用した公的証明書の電子交付に関する実証実験を行いました。

実験の内容としては、所得証明書など公的証明書の「申請・交付・受け取り・指定先への提出」という一連の行政手続きを、スマホアプリを使って行うというものです。また、公的証明書を電子交付する際には「信頼性の担保が何より重要」という観点から、ブロックチェーンを使って書類の真正性が証明されました。

2度にわたる実証実験の結果、今後の社会実装に向けた課題・問題が整理され、一定の成果をあげられたと飯塚市は結論づけています。

今後、公的証明書の電子交付が社会実装された際には、手続きが大幅に簡略化され、市民の利便性が大きく向上すると考えられます。また、これから超高齢化社会が訪れ、より人手不足が深刻化すると想定できます。窓口業務の負担を減らし、行政を効率化できる公的証明書の電子交付は、日本全体で必要なサービスだといえるかもしれません。

e-加賀市民制度:石川県加賀市

画像引用元:「e-加賀市民制度」導入へ向けた実証実験を3月6日(月)から開始します。

石川県加賀市は、2018年に「ブロックチェーン都市宣言」を行い、ブロックチェーンやNFTなど、web3.0技術に積極的なことで知られています。そんな石川県加賀市では、「e-加賀市民制度」と呼ばれる電子市民(デジタル住民)制度の導入に向けて、2023年3月6日〜24日に実証実験が行われました。

この制度では、専用のNFTを所有しているe-加賀市民(電子上の市民)に対し、幅広いサービスを提供することで、観光・ワーケーション・多拠点生活などによる関係人口増加を目的としています。

具体的には、専用コミュニティへの参加や、乗合タクシー、市内にある宿泊施設でのワーケーションサービスの利用権利などが提供されました。今後、e-加賀市民が利用できるサービスは、さらに拡大していく予定です。

現状は実証実験の段階ではありますが、加賀市によると、令和5年度(2023年度)からの導入を目指しているとのことです。

ブロックチェーンを活用したデジタル地域商品券の発行:熊本県天草市

画像引用元:電子商品券アプリ「天草のさりー」公式サイト

熊本県天草市は、デジタル地域通貨・電子商品券等を発行できる情報プラットフォームを活用し、独自のデジタル商品券アプリ「天草のさりー」を運用しています。

この情報プラットフォームは、SBIホールディングス株式会社、株式会社筑邦銀行、九州電力株式会社によって共同設立された「株式会社まちのわ」によって開発されています。なお、プラットフォームの基盤には、​ビジネス向けブロックチェーン​として知られるCorda(コルダ)が使用されています。

関連記事:Corda(コルダ)とは?ビジネス向けブロックチェーンについて解説

SBIホールディングスのプレスリリースによると、ブロックチェーンを利用することで商品券の電子発行や、申し込みから購入、チャージ、決済までの全ての手続きをスマホアプリ上で完結できるとしています。

また、アプリでQRコードを読み込むだけで支払い・決済ができるため、従来の紙の商品券と比べて、ユーザーの利便性が格段に向上しているといえるでしょう。

「天草のさりー」はすでに運用が行われており、ブロックチェーンを使った自治体による活用事例の一つとなっています。

ブロックチェーンを活用した地産地消による環境価値を電子証書化:佐賀県佐賀市

画像引用元:自治体初、佐賀市がブロックチェーン技術を活用したリアルタイムでの環境価値の電子証書化に成功

佐賀県佐賀市は、2010年から「地域循環共生圏」を推進しており、地域資源を有効的に活用する取り組みを行っています。その一環として、2021年8月に地方自治体で初となる、ブロックチェーンを活用した地産地消による環境価値を電子証書化しました。

具体的には、佐賀市の清掃工場で作られた再生可能エネルギーの発電実績と、市内公共施設における再生可能エネルギーの利用実績をブロックチェーンにリアルタイムで記録し、佐賀市内での電力の地産地消を証明する「環境価値証書」を発行しています。

この取り組みを行うことで、地域住民の行動変容を促進し、脱炭素化や地域活性化に繋げる目的があるようです。全国的にも、このようなブロックチェーンの活用方法はめずらしく、環境都市宣言を行っている佐賀市ならではの事例だといえるでしょう。

SINRA(シンラ)プロジェクト:三重県尾鷲市

画像引用元:デジタルアートを保有して気候変動問題を解決する『SINRA』プロジェクトを開始

三重県尾鷲市は、SINRA(シンラ)プロジェクトを進める株式会社paramitaと提携し、尾鷲市にある森林の環境価値などを表したNFTの販売を発表しました。SINRAプロジェクトとは、ユーザーがデジタルアートを保有して気候変動問題をクリアしていくプロジェクトであり、NFTを使ってカーボンクレジットの可視化を行います。

SINRAプロジェクトでは、第一弾として尾鷲市の市有林で得られる二酸化炭素吸収量などの環境価値を「Regenerative NFT」として販売しています。NFT販売の収益の一部は、尾鷲市の自然資源の再生などに利用され、ユーザーはNFTを通じてカーボンクレジットを保有できる仕組みとなっています。

公式のプレスリリースによると、地方自治体がNFTを使い、カーボンクレジットを創出して環境保全を行うのは世界初の事例とされており、非常に面白い活用事例だといえるでしょう。

ふるさと納税NFTの発行:北海道余市町

画像引用元:北海道余市町とあるやうむ(北海道札幌市)およびトラストバンク、NFTアートのふるさと納税の返礼品を「ふるさとチョイス」にて5月7日に提供開始

北海道余市町は、日本全国の市町村で初めて、ふるさと納税の返礼品にNFTを導入しました。返礼品となるNFTのイラストは、NFTクリエイターであるPoki氏が描いており、同町の名産品であるワインをモチーフとしています。

また、NFTには、ワインの購入抽選券としてのユーティリティ(機能)が付与されており、多くのユーザーに購入してもらうための工夫がなされています。全国初の取り組みということもあり、余市町のふるさと納税NFTは話題を集め、ブロックチェーン業界を中心に知名度が大きく向上したといえるでしょう。

現在、NFTをふるさと納税の返礼品にする市町村は数多く登場しており、自治体によるNFTの活用方法の一つとして確立されつつあります。ふるさと納税におけるNFTの活用事例は、ふるさと納税 × NFTの可能性は?メリット・デメリットや取り組みをしている自治体の事例を紹介の記事でも詳しく解説しています。

デジタル住民票NFTの発行:山形県西川町

画像引用元:日本初!自治体が発行するデジタル住民票NFT(山形県西川町)は販売数の13.4倍の13,440個の購入需要を集めました。

2023年5月、山形県西川町は、全国の自治体として初めて「デジタル住民票NFT」を発行しました。デジタル住民票NFTとは、自治体や任意団体が発行する住民票の機能を持ったNFT全般を指す言葉です。

NFT所有者は「デジタル住民」として認められ、主に観光面において様々なユーティリティが付与されます。しかし、その地域で暮らす本当の住民ではないため、実際の住民のように行政サービスなどを受けることはできません。

山形県西川町では、デジタル住民票NFT保有者に対して町長が参加するオンラインコミュニティへの参加権や、同町にある温泉施設を無料で利用できるなどの特典を提供しています。NFTは1,000個限定の抽選販売が行われましたが、合計13,440件もの注文が入るなど話題となり、多くの関係人口を創出できた良い事例だといえるでしょう。

こういった成功事例を受けて、山口県美祢市や新潟県粟島浦村といった自治体に関しても、デジタル住民票NFTの発行を決定しています。

なお、デジタル住民票NFTに関しては、市町村などの自治体がデジタル住民票NFTを発行するメリット・デメリットとは?の記事でも解説しているので、気になる方は参考にしてみてください。

地方自治体がブロックチェーンを活用するメリットや今後の課題

様々な地方自治体がブロックチェーンの活用を進めていますが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

また、自治体が行政などにブロックチェーンを活用していく上での課題についても簡単にご紹介します。

ブロックチェーンを活用するメリット

地方自治体がブロックチェーンを活用するメリットとして、以下の項目などが挙げられます。

  • 業務の効率化が期待できる
  • データの改ざんなどの不正行為を防止できる
  • 情報やデータの消失を防止できる
  • 暗号資産業界などで注目を集められる

ブロックチェーンを導入するメリットとして、やはり業務の効率化が期待できることがあります。契約を自動化できるスマートコントラクトを活用すれば、業務効率を大幅に改善したり、事務的なミスなどを防ぐことができるでしょう。

また、現状ではブロックチェーンやNFTを活用している自治体は、まだまだ少ない状況です。活用方法によっては、大きく注目を集め、地域の関係人口を増やせるきっかけになるかもしれません。

ブロックチェーンを活用する上での課題

一方、ブロックチェーンを活用する上での課題としては、以下などがあります。

  • ほとんどが実証実験の段階
  • 法的な整備が追いついていない
  • ブロックチェーンに対する学習コストの高さ

現在、自治体がブロックチェーンを活用する動きは増えていますが、現状ではまだ実証実験段階のものが多い状況です。法的な整備も必要であるため、本格的に行政でブロックチェーンが活用されるためには、国による後押しも必要だといえるでしょう。

また、ブロックチェーン自体がまだ新しい技術であるため、技術者が不足しており、導入するにあたっての学習コストの高さも課題として挙げられます。

なお、自治体がブロックチェーンを活用するメリットや課題については、行政・公共サービスにおけるブロックチェーンの活用方法5選の記事でも詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。

地方自治体によるブロックチェーン活用事例まとめ

今回の記事では、地方自治体によるブロックチェーンの活用事例をいくつかピックアップしてご紹介してきました。地方自治体でブロックチェーンが本格活用されるまでには課題も多いですが、今後こういった流れが全国的に加速していくと考えられるでしょう。

GM

gm

2017年から仮想通貨投資を開始し、2020年から本格的にweb3.0の世界に参入。現在はフリーランスとして暗号資産やブロックチェーン、NFT、DAOなどweb3.0に関する記事を執筆。NFT HACKでは「初心者にもわかりやすく」をモットーに、読者の方々に有益となる記事の作成を行なっている。
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