ここ最近、NFT(Non-Fungible Token)はデジタルアートやPFP(プロフィール画像)の枠を超え、様々なビジネスで活用され始めています。中でも、お酒関連のビジネスではNFTの活用が積極的に行われており、複数の活用事例やユースケースが登場しています。
博報堂とJAL(日本航空株式会社)による共同企画プロジェクト「KOKYO NFT」で取り扱いされている「黒糖焼酎 NFT」もその一つであり、ユニークなNFTの活用事例として挙げられます。この記事では、「黒糖焼酎 NFT」の概要・特徴やユーティリティ(保有者特典)、他のお酒関連NFTプロジェクトとの違いを考察していきます。
これから自社ビジネスにNFTの活用を検討している事業者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
「黒糖焼酎 NFT」とは?
画像引用元:Kokuto Shochu NFT – KOKYO NFT
「黒糖焼酎 NFT」は、鹿児島県奄美市にて黒糖焼酎の製造・販売を行う株式会社西平酒造が提供するNFTです。博報堂とJAL(日本航空株式会社)が共同で企画・プロデュースする「KOKYO NFT」にて販売されており、NFT保有者に様々な体験を提供する「体験型NFT」となっています。
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詳細は後述しますが、NFT保有者には2026年夏の黒糖焼酎の完成まで、毎年西平酒造で酒造見学ができる権利や、酒蔵で開催されるライブイベントに参加できる権利が提供されます。他のお酒関連NFTプロジェクトと比較しても、ユーザー体験にフォーカスしている点が大きな特徴だといえるでしょう。
画像引用元:KOKYO NFT公式X(旧Twitter)
なお、黒糖焼酎とは、さとうきびから作られた黒糖を原料に蒸留する奄美大島の特産品の一つです。日本の酒税法の特例通達により、黒糖を原料とした酒類の製造は大島税務署管内(奄美群島)でしか認められていません。
中でも、西平酒造は創業95年の歴史を持つ老舗の黒糖焼酎メーカーです。こだわりの一つとして「ミュージシャンが手造りで醸す」ということを掲げるなど、独自の製法で黒糖焼酎を蒸留しています。
具体的には、黒糖焼酎の酒樽にスピーカーをつけて熟成する「ソニックエイジング製法」という独自の方法で製造しています。流す音楽のジャンルによって「味わい」「色付き」「香り」が変化するとされており、24時間365日異なる3種類の音楽(奄美民謡、ロック、ラテン)を流して熟成させています。
画像引用元:Kokuto Shochu NFT – KOKYO NFT
また、「黒糖焼酎 NFT」は、1つあたり33,000円(税込36,300円)の価格で販売されており、60個のみの限定販売です。暗号資産(仮想通貨)のETH(イーサリアム)での決済にも対応しており、0.043ETH(ETHの表示価格は時価で変動)で購入できます。
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「黒糖焼酎 NFT」のユーティリティ・保有者特典
「黒糖焼酎 NFT」は、NFT購入者に提供するユーティリティ・保有者特典を大きな特徴としているプロジェクトです。以下の4つの項目に沿って、NFT保有者に付与されるユーティリティを詳しく確認していきましょう。
- 奄美大島での酒蔵見学体験
- 酒蔵でのライブイベント参加権
- 黒糖焼酎の製造工程体験
- 黒糖焼酎のボトル3種類をプレゼント
奄美大島での酒蔵見学体験
画像引用元:Kokuto Shochu NFT – KOKYO NFT
「黒糖焼酎 NFT」の保有者は、2026年夏の黒糖焼酎の完成まで、毎年夏・冬の年2回、西平酒造の酒蔵を見学することができます。ソニックエイジング製法による黒糖焼酎の熟成風景を見学できるのは、NFT保有者にしかできない貴重な体験だといえるでしょう。
また、異なる音楽で熟成した黒糖焼酎を試飲し、それぞれの味わいや香りの違いを体験できる点も、「黒糖焼酎 NFT」ならではのユーティリティだといえます。
酒蔵でのライブイベント参加権
画像引用元:Kokuto Shochu NFT – KOKYO NFT
前述の通り、西平酒造の黒糖焼酎はミュージシャン軍団によって製造されており、夏には酒蔵を会場にしてライブイベントを行っています。黒糖焼酎を飲みながら参加できる音楽ライブは、「黒糖焼酎 NFT」の保有者しかできない体験だといえるかもしれません。
黒糖焼酎の製造工程体験
画像引用元:Kokuto Shochu NFT – KOKYO NFT
NFT保有者は、黒糖焼酎の仕込み時期である冬に製造工程を体験することも可能です。具体的には、黒糖ブロックをハンマーで割る作業や、発酵中の黒糖焼酎の撹拌作業などを体験できるとされています。
黒糖焼酎の製造過程にも興味・関心がある方にとっては、非常に貴重な体験になるといえるでしょう。
黒糖焼酎のボトル3種類をプレゼント
画像引用元:Kokuto Shochu NFT – KOKYO NFT
NFT保有者には、ソニックエイジング製法で製造した、それぞれ3種類の黒糖焼酎(200ml×1本、約180ml×2本)がプレゼントされます。
ただし原則として、黒糖焼酎が完成する2026年夏に西平酒造を訪れた保有者に対し、現地でのプレゼントとなる点には注意が必要です(郵送を希望する場合は、別途送料が必要)。
また、黒糖焼酎のプレゼントに加え、NFT保有者には西平酒造のお酒を割引で購入できる権利も付与されるとしています。
「黒糖焼酎 NFT」と他のお酒関連NFTプロジェクトとの違いを考察
画像引用元:KOKYO NFT公式X(旧Twitter)
現在、お酒業界ではビジネスにNFTを活用する動きが進んでいます。ウイスキーや日本酒、ワインなどとNFTを組み合わせる事例も登場しており、日々ユースケースは拡大している状況です。
特に、発行したNFTとウイスキーなどを紐付けることで、ユーザーがNFTと実物のお酒を交換できる仕組みを採用した活用事例が多くあります。NFTと実物のお酒を紐づけることで、早期の資金調達を実現したり、取引の流動性を高めたりする効果があるでしょう。
また、中には時間の経過とともに価値が上昇するお酒を、NFTの価格上昇で表現するプロジェクトも存在しています。こういったプロジェクトでは、NFT売買による収益機会をユーザーに提供します。
このような仕組みを導入している事例として、ウイスキー樽の所有権をNFTで細かく小口化する「UniCask(ユニカスク)」や、日本酒の熟成酒に紐づく「熟成酒NFT」、お酒特化のNFTマーケットプレイスである「Blockbar(ブロックバー)」などが挙げられるでしょう。
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上記のようなNFTプロジェクトが多い中、「黒糖焼酎 NFT」は独自のユーティリティ(保有者特典)提供に主眼をおいた形でNFTを活用しています。通常では経験できないユーザー体験(ユーティリティ)の提供にフォーカスしており、NFTをその特典獲得のための会員権のような形で活用しています。
また、提供するユーティリティに関しても、酒蔵でのライブイベント参加権や製造工程体験など、一般的には経験できない貴重なものとなっています。NFTの活用方法に加え、提供している独自のユーティリティという観点からも、他のプロジェクトとは大きく異なるNFT活用事例だといえるでしょう。
これから自社ビジネスでのNFTの活用を検討しているお酒関連事業者にとっては、参考となる一つの事例、ユースケースだといえるかもしれません。
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鹿児島県・奄美大島の酒蔵が提供する「黒糖焼酎 NFT」まとめ
今回の記事では、鹿児島県奄美市の株式会社西平酒造が提供する「黒糖焼酎 NFT」について詳しく解説してきました。ご紹介した通り、「黒糖焼酎 NFT」は博報堂とJALが共同プロデュースする「KOKYO NFT」にて取り扱いされている「体験型NFT」です。
従来のお酒関連のNFTプロジェクトとは、大きく異なる方法でNFTを活用しており、ユーティリティ(保有者特典)の提供に注力した特徴を持っています。これからNFTの活用を検討しているお酒関連の事業者の方は、一つの参考事例として「黒糖焼酎 NFT」に注目してみてもよいかもしれません。