近年、NFT(Non-Fungible Token)は様々な活用方法が模索されており、企業や自治体による取り組み事例が複数登場しています。中には、NFTを活用して地方創生、地域活性化を目指す取り組みも実施されており、今後も様々なユースケースが登場してくると考えられるでしょう。
この記事では、NTTドコモが実施しているNFTを活用して地方創生を目指す「上川大雪 創生乃蔵 会員証」について解説していきます。NFTを利用した地方創生に関心がある自治体職員の方などは、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の構成
NTTドコモによる「上川大雪 創生乃蔵 会員証」とは?
画像引用元:日本酒好き必見!お酒造りに携わり、自分好みの日本酒を味わえる「上川大雪 創生乃蔵 会員証」とは
「上川大雪 創生乃蔵 会員証」は、国内大手企業のNTTドコモと北海道上川町にある上川大雪酒造が協力して実施している、NFTを活用した地方創生を目指す取り組みです。
「上川大雪 創生乃蔵 会員証」というNFT(非代替性トークン)を発行しており、この会員証NFTを購入した方は日本酒造りに関する様々な体験ができます。具体的には、コミュニティ内での酒質やラベルデザインに関する投票、現地での米の収穫祭イベントへの参加といった、日本酒造りに携われる経験ができます。
ユーザーとしては、通常では難しい貴重な経験を得られるだけでなく、上川大雪酒造の生産者やコミュニティのメンバーとの繋がりを持つこともできます。つまり、NFTを活用することで、コミュニティ内のユーザーに「通常では体験できない日本酒造りへの参画機会」を提供する取り組みだといえるでしょう。
なお、NTTドコモによると、本プロジェクトではNFTを通して「消費するだけではなく、地域に関わることによる地域創生」を目指していくとしています。
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「上川大雪 創生乃蔵 会員証」の特徴
ここからは「上川大雪 創生乃蔵 会員証」に関する特徴について、より詳しくご紹介していきます。以下の項目に沿って、順番に確認していきましょう。
- NFT購入者のみ限定コミュニティに参加可能
- 「上川大雪 創生乃蔵 会員証」は2種類のNFTがある
- メタバース上にて参加者同士の交流空間を開設
NFT購入者のみ限定コミュニティに参加可能
本プロジェクトでは、「上川大雪 創生乃蔵」という日本酒好きが繋がれるDiscordコミュニティが設置されており、これには日本酒好きなら誰でも参加することが可能です。一方、各種投票活動や現地での収穫祭イベントといった特別な体験は、「上川大雪 創生乃蔵」内にある限定コミュニティの参加メンバーにのみ提供されます。
この限定コミュニティに参加するために必要となるのが、「上川大雪 創生乃蔵 会員証」です。つまり、NFT購入者のみが特別な経験ができる会員制の仕組みが導入されています。
なお、「上川大雪 創生乃蔵」内の限定コミュニティは、DAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)であるとされており、コミュニティ参加者で意思決定をしていくという特徴を持っています。DAOについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
関連記事:【完全版】DAO(自律分散型組織)とは?特徴や今後の課題、有名なDAOまで徹底解説
「上川大雪 創生乃蔵 会員証」は2種類のNFTがある
画像引用元:NFTを活用し地域創生をめざす「上川大雪 創生乃蔵 会員証」を販売~参加者がデザイン決定など、消費だけではない関わりによる地域創生~
限定コミュニティへの参加に必要な「上川大雪 創生乃蔵 会員証」ですが、GOLDとSILVERの2種類が販売されています。価格はGOLDが14,000円(税込)、SILVERが10,000円(税込)となっており、GOLDの方が高額な分、投票企画の企画設計にも参加できるユーティリティが付与されています(詳細は後述)。
また、ユーティリティはNFTの一次販売での購入者にのみ付与され、二次販売による購入者には付与されません。具体的なユーティリティは、以下の通りです。
- 「上川大雪 創生乃蔵」内の限定コミュニティへの参加権
- 酒質設計やラベルデザインの企画・投票参加権
- 米の収穫祭イベントなどへの参加権
- 限定コミュニティで造った日本酒四合瓶2本
「上川大雪 創生乃蔵」内の限定コミュニティへの参加権
前述の通り、「上川大雪 創生乃蔵 会員証」のNFTを購入した方は、限定コミュニティへの参加権が与えられます。限定コミュニティでは、各種イベントに参加したり、コミュニティメンバーと関わったりすることで、日本酒やNFTなどへの知見を深めることができます。
酒質設計やラベルデザインの企画・投票参加権
NFT購入者は、コミュニティ上での各種企画・投票イベントに参加できます。日本酒の味を決める酒質設計やラベルデザインに関する企画に加え、企画に対する投票にも参加可能です(投票企画の企画設計に参加できるのはGOLD保有者のみ)。
米の収穫祭イベントなどへの参加権
限定コミュニティの参加メンバーは、日本酒の原料である米の収穫祭など、現地での各種イベントに参加できます。
限定コミュニティで造った日本酒四合瓶2本
会員証NFTの購入者は、 限定コミュニティの参加者で造った日本酒の四合瓶(720ml)を2本を受け取ることができます。
メタバース上にて参加者同士の交流空間を開設
画像引用元:日本酒好き必見!お酒造りに携わり、自分好みの日本酒を味わえる「上川大雪 創生乃蔵 会員証」とは
NTTドコモは、同社が開発したメタバース上のコミュニケーション空間「MetaMe」にて、「上川大雪 創生乃蔵 会員証」での感想などを発信できる交流空間を開設しました。ドコモによると、「日本酒と接する機会の少ない人が本取り組みや日本酒、地域に関心を持つきっかけも提供する」としています。
また、メタバースなどを活用することで、従来型の地方創生(消費や現地訪問)では実現困難な「場所の制約を軽減した地域創生」の可能性も探っていくとしています。
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地方創生にNFTを活用するメリットを考察
画像引用元:日本酒好き必見!お酒造りに携わり、自分好みの日本酒を味わえる「上川大雪 創生乃蔵 会員証」とは
ここまで「上川大雪 創生乃蔵 会員証」のプロジェクト内容をご紹介してきましたが、地方創生・地域活性化を目的にNFTを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まず考えられるメリットとしては、「関係人口の創出」が挙げられるでしょう。今回ご紹介した「上川大雪 創生乃蔵 会員証」に関しても、NFTを通して地域との関わりを持ちながらの日本酒造り体験を提供することで、上川町の関係人口を創出する目的があったと考えられます。
NFTを活用した取り組みをきっかけに関係人口が増加すると、自分たちの地域への興味関心を集められたり、観光誘致につなげられる可能性があります。最終的には地域への移住人口増加にも繋がるかもしれません。
その他には、知名度を向上できるメリットも考えられます。現状、NFTを活用した取り組みを行う自治体や企業の数はまだまだ多くありません。そのため、NFTを導入するだけでも各種メディアなどで取り上げられ、注目を集められるといえるでしょう。
また、今回の事例とは少し異なりますが、自治体が独自にNFTを販売して収益を上げ、その資金を地域活性化に活用するといった取り組みも登場しています。以下の記事では、自治体などによるNFTの活用事例をご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
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NTTドコモによる「上川大雪 創生乃蔵 会員証」まとめ
今回の記事では、NTTドコモと上川大雪酒造が実施している「上川大雪 創生乃蔵 会員証」について解説してきました。「上川大雪 創生乃蔵 会員証」は、地方創生を目的とした取り組みであり、NFT購入者に日本酒造りに関する様々な体験を提供しています。
NFTを活用した地方創生、地域活性化の取り組み実施を検討している自治体職員の方などは、一つの活用事例として参考にしてみてはいかがでしょうか。